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僕は異世界で美幼女姫様と刑事をする。〜異世界における科学捜査の手法について〜  作者: GOM
第8章 捜査その8:リーヤの昔話

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第8話 リーヤ、本当の意味で仲間になる

「こ、此方(こなた)、怖かったのじゃ。ここでも1人ぼっちになるのが怖かったのじゃ。変な娘と思われるのが怖かったのじゃぁ!」


 わたくし(リーヤ)はマムにしがみ付き、大声で泣いた。


「リーヤちゃん、貴方随分無理していたのね。大丈夫、ここの皆は貴方の事をバカになんてしないわ」


「そうでござるよ。お貴族様は大抵、獣人をケダモノと言ってニンゲン扱いしてくれないでござるが、リーヤ殿は拙者ともちゃんと話してくれるでござる。そんな素敵な女性をバカになぞするはず無いでござるよ!」


「うん。アタイもね、ドワーフの中じゃ浮いちゃっているんだ。普通、ドワーフは精霊術なんて縁も無いしね。だからリーヤっちの気持ちも少しは分かるんだ。いいじゃん、リーヤっちの話し方、可愛いよ」


「ワタクシ、魔族種については詳しくは無いですが、リーヤさんは年齢よりもかなり小さいように思います。精神的にもかなり無理されたのが成長の遅れに繋がっているのかもですわ。ここでは、煩い事を言う人は誰もいません。のびのびして大きく育たれたら良いと思いますの」


 捜査室全員がわたくしの周囲に集まり、頭をなでたり、背中を擦ってくれる。

 皆の温かい言葉が、心に染み入る。


「ど、どうして皆は此方を大事にしてくれるのじゃ? いかな領主令嬢でも此方には何の権力も無いのじゃ。此方と仲良くして何も良い事なぞ無いのじゃ!」


「そうねぇ。一緒に居て楽しいからかしら? 一生懸命猫かぶりしているのも可愛かったし、一生懸命仕事を覚えようとしている姿も可愛かったわ」


 わたくしは、マムの顔を見上げ、そして仲間達の顔を見回した。

 周囲の皆も、うんうんとマムの意見に頷く。

 ギーゼラなどは涙ぐんでいる。


「だから、もう泣かなくても良いし、無理しなくても良いのよ。ここでは、アンティオキーア領主令嬢ではなくて、わたくしの可愛い部下、子供なの。そして捜査室の仲間よ」


「あ、ありがとうなのじゃ! 此方、一生懸命頑張ってマムや皆の役に立つのじゃ!!」


 わたくしは、この時に本当の仲間になった気がした。


  ◆ ◇ ◆ ◇


「では、捜査会議に戻りますわ。今回の事件で怪しいのは服飾店の従業員、彼らが容疑者と思われます。しかし、動機が見えないですわね」


「ええ、マム。動機までは今回の御遺体からは見えないですわ。知人を殺した場合は顔を隠すとか、怨恨の場合は遺体損壊をする事もありますが」


 わたくしは、マムの話を聞きながらキャロリンに貰った「てぃっしゅぺーぱー」という薄くて柔らかい紙で涙や鼻水を拭った。


 ……紙で涙を拭くとは贅沢なのじゃ。しかし、この柔らかさはクセになるのじゃ。『といれっとぺーぱー』といい知ってしもうたら、もう無いと困るのじゃぁ。


「拙者が周囲から聞き込みをした感じでは、どんどん店が大きくなるのを羨ましがられておる様でござった。取引先の御貴族さまからも好評、特に女性客に大人気だとか」


「アタイが聞いた話では、そろそろ店を誰に継がせるのかという話が上がっているって。まずは支店を任せて実績を見てという話らしいの。もちろん第一候補は娘さんね」


 ヴェイッコやギーゼラから聞き込み情報が話される。


 ……うむぅ、此方商売は詳しくないのじゃが、家督乗っ取りなら分かるのじゃ。そうなれば、犯人は従業員で跡継ぎ第二候補が怪しいのじゃ!


「此方が思うに、従業員の中で一番権力を持つものが主犯では無いかと推理するのじゃ。それなら従業員同士で口止めも出来るのじゃ! 貴族内でも家督争いで死人が出る事はあるし、毒殺も聞くのじゃ。その場合、大抵犯人は家督に一番近いか、二番目の者なのじゃ! 娘殿は、何もせずに家督を得られるのなら、犯人では無いのじゃ」


「さすがリーヤちゃんね。貴族的な見方は今回役に立ちそうよ。確かに娘、マルッチェラさんは体格や動機の面から、犯人とは考えにくいわね」


 マムは此方を褒めてくれる。

 それが、わたくしはとても嬉しい。


 ……此方、褒めてもろうて嬉しいのじゃ! 最近は家族にも褒めてもらえていないのじゃ! ん? 犯人は従業員で、マルッチェラ殿が居る限り、家督は移らぬのじゃ。じゃが、マルッチェラ殿に何かあれば…・・・!


「マム、マルッチェラ殿の身が危ないのじゃ! 家督は娘殿が生きている間は従業員には移らないのじゃ!」


「あ! そうよね。これは急いでマルッチェラさんを警護しなくちゃ! キャロリン、自動車出せますか?」


「やっとワタクシの運転テクニックの出番よね。うふふ」


「自動車って何なのじゃ?」

「拙者も知らないでござる」

「アタイも知らないよ」


 その後、わたくしは眼を回すことになった。


  ◆ ◇ ◆ ◇


「そういう事があって、皆さんと仲良くなったんですね」


「そうなのじゃ! 此方、あれ以降ここで居るのが楽しくてたまらないのじゃ!」


 まだわたくしの頭をナデナデしてくれているタケ。

 その温かい手が、わたくしは大好きだ。


「いつまで猫被りするのか、皆で困っていましたの。いい加減、本音を聞きたかったですし。命を預けあう仕事ですもの、お互いを信用していないとね」


「アタイらも、この頃にはリーヤっちの事を聞いていたから、待ってたんだ」

「拙者、待ち遠しかったでござる」

「だから、アタクシ勝負に出たのよ」


 仲間達は温かくわたくしを見てくれる。


「リーヤさん、良かったですね」


 そして愛してくれるタケが居る。

 わたくしは、この幸せを精一杯かみ締めた。


「此方、幸せなのじゃ!!」


「リーヤ殿、幸せなのが嬉しいのじゃ。ワシも嬉しいのじゃ!」


 読者の方々にも愛していただき、生みの親としても感謝です。


「さて、そろそろ事件も解決じゃな。どういう解決になるのか、楽しみなのじゃ!」


 ええ、今回は3万字強の中篇を予定してます。

 なお、明日は追加でバレンタイン話も公開します。

 更に可愛いリーヤちゃんをどうぞ!

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