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僕は異世界で美幼女姫様と刑事をする。〜異世界における科学捜査の手法について〜  作者: GOM
第8章 捜査その8:リーヤの昔話

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第2話 リーヤ、猫かぶりする

「ようこそ、異界技術捜査室へ。リリーヤ様」


 わたくし、リーリヤ・ザハーロヴナ・ペトロフスカヤは、親元から離れ、1人隣り領モエシア、境界がある街ポータムへと来た。

 わたくしを無理やり領主後継ぎにしようとする(エカテリーナ)と、わたくしは大喧嘩をして実家に居られなくなったからだ。

 現領主である(ザハール)は、まだ壮年な自分には時間があるからと、わたくしに家出同然の出立を認めてくれ、自分が昔から良く知る人物を紹介し、社会経験、そして生活の糧としての仕事まで斡旋をしてくれた。


 ……わたくし、絶対1人でも生きていけます。この姿をお母様やお父様に見せて、独立した女性になりますの!


 近年、地球の文化が帝国内にも流入し、女性の社会進出が増えてきている。

 家を守る、その古き考えを押し付ける母と、少しでも自由でいたい、1人のヒトとして生きたいわたくし。

 母とは考え方の違いから大喧嘩になったのだ。

 昔はこうではなかった母、すっかり変わってしまったのは、姉や兄が居なくなったのが原因なのだろうか。


「エレンウェ様。今回、わたくしの我がままを聞いてくださりました上に、出迎えありがとう存じます。冬終わらん頃、春風の女神が現れんとする頃に、貴方様と良き出会いを致しました事を感謝致します」


 わたくしは領主令嬢として、目の前に立つエルフ女性に恥ずかしくない出会いの挨拶をした。


「こ、こちらこそ、リリーヤ様との良き出会いがありました事を最高神様に感謝致します。リリーヤ様におかれましては長旅の折り、お疲れでしょうから一度お休み頂き、それから捜査室を案内したいと思います」


 わたくしの完璧な挨拶に少し驚いたエルフ女性であるが、すぐに貴族らしい挨拶を返してきた。


 ……ふむ、神殿付きの元騎士団副長とは聞いていましたが、なかなか礼儀もしっかりなさっていますね。出身は神殿だが帝国貴族の階位も持っていらっしゃるとか。


 わたくしが目指す「独立して生きる女性」、その姿が目の前のエルフ女性である気がする。


 ……お父様は、わたくしの考えを全部お見通しなのかしら。もしかすると、今回の家出もお父様の掌の中なのかも……。


 わたくしは、エルフ女性に連れられて、少し奇妙な形の建物へと案内された。


 ……エルフ族は華奢で戦士に向かないと聞きますが、エレンウェ様は背筋をきちんと伸ばし、綺麗な歩き方をしていらっしゃる。外見からしておそらく、わたくしより少し歳上に見えますの。


 エレンウェに案内された建物は、今まで一度も見たことが無いものだった。

 それは、石とも木とも違うもので作られている。

 どちらかというと、漆喰に近い様に見える。

 また沢山、高級なはずのガラスを使っていて、室内が見やすく中も明るくなっている。

 わたくしは、つい気になって建物を色々見てしまった。


「リリーヤ様、この建物が気になられますか? こちらは地球、異界の技術を使って建てられたものですのよ」


 わたくしはキョロキョロと令嬢らしからぬ表情をしてしまったのを、エレンウェはくすりと笑い説明をしてくれた。


 ……わたくし、恥ずかしいですわ。


「わ、わたくし、何も気になどしておりません。エレンウェ様の見間違いではないでしょうか?」


「いえ、お気に障られたらすいません。実はお父様、ザハール様から色々リリーヤ様のお話は聞いていますの。無理をなさって、高級貴族らしい所作をなさらなくても、ここではいいですのよ」


 わたしは急いで貴族たる笑みを満たした表情に戻る。

 しかしエレンウェは、まるで母親のような顔でわたくしを見てくれた。


「そ、そのような……。わたくし、決して無理などしておりません!」


「それなら宜しいのですが。では、こちらでお休み下さいませ」


 わたくしは、簡単な机と布張りの椅子がある部屋に案内された。


「では、休ませて頂きますわ」


 わたくしは、椅子に行儀良く座った。

 帝国によくある木の板に飾り布が張られた椅子だと思って。

 しかし、……。


「あれ? きゃ!」


 予想よりも椅子が柔らかくて、わたくしのお尻は椅子に埋もれてしまった。


「あら! うふふ。すいません、そのソファー。地球製の物なので、思ったよりも柔らかいんです。説明していなくてすいませんでした」


 エレンウェは笑いながら、埋まってしまっていたわたくしを引っ張り上げてくれた。


「す、すまないのじゃ」


「え? 今、何を話されましたか?」


 ……しまった! つい、()が出たのじゃ!


「な、何でもありませんのよ。おほほ」


 わたくしは、笑って必死に誤魔化した。


 ……いつもの話し方では、領主令嬢には見えないのじゃぁ!!


  ◆ ◇ ◆ ◇


「あれ、もしかしてリーヤさんは、マム相手に最初は猫被っていたのですか?」


「しょうがないのじゃ! 初対面の御貴族様相手に、地を出すわけには行かなかったのじゃ!」


 わたくしは、タケに必死に説明する。

 なぜなら、猫を被っていた本当の理由、変わった話し方になった本当の理由は、タケにも話せないからだ。


 そう、かつて、この話し方が面白いと笑ってくれた、婚約までお互い約束しあっていた男の子の事は。


 ……あれから20年は経つのじゃ。もうあの子は大きく成長したじゃろうなぁ。今はどこにいるのかや? あの子は、此方が古風にしゃべるといつも面白いと喜んでくれたのじゃ。


「あの時はおかしかったわ。必死に誤魔化すんですもの。でもね、リーヤちゃん。あの時、わたくしは、ザハール様から全部事情を聞いていましたのよ。貴方の話し方が貴族向けで無い事もね」


「マムぅぅ! 此方、穴があったら入りたいのじゃぁ! あ、あそこの爆発跡に行くのじゃ!」


 わたくしは、急いで先だっての戦闘跡のクレーターへと逃げようとした。


「リーヤさん、逃げないで下さいな!」


 まだまだ小さいわたくしは、ひょいと簡単にタケに捕まった。


「た、タケ、武士の情けなのじゃぁ! 此方を離すのじゃぁ!!」


「いえいえ、可愛いリーヤさんのお姿が見えなくなるのは困ります。それに約束しましたよね、僕はリーヤさんとずっと一緒だって」


 そう言ってタケは、わたくしを後から強く抱いてくれた。


「あ! ……タケぇぇ」


 わたくしは、嬉しくなって向きかえってタケを抱き返した。


「まだ話してくれますよね」

「はい、なのじゃ!」


 わたくしは、この機会を逃さず、ぎゅーっと温かいタケをハグした。


 ……あの子の事は、まだ此方の中で整理できておらぬのじゃ。もう少ししたらタケにも話すのじゃ。内緒でごめんなのじゃ。


「リーヤ殿、もしかしてあの話し方には理由があったのかや? ワシは色んな世界や星々、国々を渡って来たので、言葉が混ざってしまったのじゃ! しかし、昔の『彼』とはのぉ」


 ええ、チエちゃん。

 なぜリーヤちゃんが「のじゃ系」なのか。

 もちろん日本語では無いので、ナマリの一種なのですが、日本語で当てはめると「のじゃ系」になる……ということにさせてください。

 ちょっと無理があるかもですが、そこはご容赦を。

 一応理由があるので、次回やそれ以降にお話しします。

 男の子の事は、また今度ね。


「では、明日の更新を楽しみに待つのじゃ!」

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