第6話 戦いは中盤へ。
猫娘ラーラを撃退した僕は、次の相手を探す。
今戦場は、こう着状態。
リーヤVSヴェイッコの遠近対戦。
マムVSヴレイシルバーVSタカコの剣使い対戦。
コヨミVSギーゼラのチビッ子対戦。
メイVSヴレイバイオレットの乙女対戦。
フォルVSアキラのムチャクチャ対戦。
今、退場しているのは最初に吹き飛ばされた青乃という男性とラーラ。
良く見るとコウタは解説席のチエの横で呆れた顔をしている。
……コウタくん、戦わない事を選んだんだね。今回はコヨミさんが危ない訳じゃないしね。
僕は戦わない事を選んだコウタを少し羨ましく思いながら、ターゲットを探す。
今、誰も目の前の敵を相手するのでいっぱいで、僕が唯一フリーなのだ。
……なら、狙うのは!
僕は、容赦なくヴェイッコにライフルの照準を合わせた。
……後で、美味しいご飯作るからごめんね。
リーヤに切りかかる、ヴェイッコの無防備な背中に容赦なくライフル弾を叩き込む僕。
「あ、あいた!? タケ殿、卑怯でござる!」
背中を押さえて僕の方を向いてしまったヴェイッコ。
BPもごっそりと減る。
「隙アリなのじゃぁ!」
そこに大きな球電を叩き込むリーヤ。
「あれぇでござるぅ!!」
バチバチと放電しながら、豪快に場外へと吹っ飛んでいくヴェイッコ。
これで、残りの敵は9人。
「リーヤさん、一気に広範囲爆裂呪文を。僕も榴弾撃ちます!」
「了解なのじゃ!」
敵が居なくなったリーヤは僕の背後に立ち、大規模破壊呪文の詠唱を始める。
僕は、リーヤを守るように狙撃グレネードを構える。
「爆炎を司る魔神、我に仇名す敵を屠る力を我に貸さん。うなれ、『爆炎陣』!!」
戦場の中心に紅蓮のプラズマ球が発生する。
僕は、フォルが操る一番大きくてやっかいなシームルグ号を狙った。
……グレネードに重機関銃を撒き散らすアレは、流石にチートだよぉ。アキラくんだったっけ、かわいそうに。
フォルは器用に1人で万能トラックを操ってアキラを攻撃した。
まさかトラック相手に戦うとは思っていなかったアキラは、僕が攻撃する前に場外へと撥ね飛ばされていた。
「次は、タケお兄さんなの!」
フォルは、僕に照準を合わせたけど、もう遅い。
「ブラスト!」
リーヤの起動ワードと同時に僕は25mm榴弾をシームルグ号へと叩き込んだ。
◆ ◇ ◆ ◇
戦場を、大きな爆炎と衝撃波が走る。
そして僕は、爆発の煙の中からシームルグ号とギーゼラがBP0となり、場外へと吹き飛んでいくのを確認した。
残り6人は、全身から煙を立てながら起き上がる。
全員BPが、ごっそりと減っている。
「あの子達が邪魔ですわ。先にあっちを倒しますの!」
僕の方へ、タカコが日本刀を前に突っ込んでくる。
少々派手に動きすぎたから、ターゲットにされるのもしょうがない。
……もう僕の役目も終わりだね。じゃあ!
その間にメイとバイオレットの戦いは、突撃技を使ったメイの勝利で終った。
「タケ!」
「ここは僕に任せてください。後を頼みます! 是非とも優勝してください、リーヤさん」
もう後は、マムを倒せばリーヤが勝てない相手はまず居ない。
すでに全員のBPは削りきっている。
ならば、やることはただ一つ。
お互いに身体を燻らせながら、尚も戦うマムとヴレイシルバー。
そしてマムは目の前の相手しか見えていない。
僕は、迫り来るタカコを一端忘れてマムをライフルで狙う。
「今だ!」
僕は、マムの胸を狙い3連射をする。
「きゃ!」
かなり減っていたマムのBPは、僕の狙撃で殆ど0になり、その隙をシルバーのショーテルに切られて退場となった。
「貴方一体、どこ見てんのですか?!」
突撃してきたタカコの刀が、ずぶりと僕の胸に突き刺さる。
「タケぇ!!」
リーヤの悲鳴と一気にBPが減るのを感じながら、僕はライフルを手放しワザとタカコにぶつかる様に接触する。
「ライフル使いが銃を手離して何をするのかしら?」
「それは、僕と一緒に退場するんですよ!」
僕は、隠し持っていた手榴弾を爆発させた。
◆ ◇ ◆ ◇
「マム、ヴェイッコさん、ギーゼラさん、フォルちゃん。ごめんなさい」
自爆退場になった僕は、ある意味卑怯な手を使って負かせた仲間達に早速謝った。
「まさか、タケちゃんがあそこまで必死にリーヤちゃんを勝たせに行くとは思わなかったわ。まあ、わたくしは最初から気兼ねなしに強豪と戦えるくらいにしか思っていなかったし。なんて言っても『アノ』チエさんでしょ。『望み』なんてあてにしていないもの。良くやったわね」
「今回はバトルロイヤルでござる。一対一にこだわりすぎた拙者の負けでござる。第一、有効打を拙者、リーヤ殿に殆ど当てられていなかったでござるよぉ」
「うん、アタイの油断も悪いし、リーヤんに広域殲滅呪文を使う機会を与えたのは流石だね。今回のツケは強い敵を倒す時に返してね」
「タケお兄さん、お見事な作戦ですぅ。今回のMVPはお兄さんかもぉ。わたしぃ、望みがあったけど元々頑張ったら手に入るものだから気にしなくてもいいですよぉ」
直接ではないとはいえ僕が倒してしまった4人ともすっきりとした顔で、僕に対して恨み言の一つも言わない。
マムやギーゼラ、フォルに到れば、逆に僕を褒めてくれた。
「後は、リーヤさんに任せました。正直、マム以外ならいい勝負になるでしょうね」
僕は4人が残った戦場を見た。
「では、僕はコウタ君を手伝いに行きます。いい匂いしていますから、多分ご飯頑張って作っていると思いますので」
そうこう話している間に、かなりBPが減っていたコヨミは、リーヤとメイから同時攻撃を喰らい、場外退場になっている。
残りは3人の女性達の戦いになった。
……がんばれ、リーヤさん!
◆ ◇ ◆ ◇
「なあなあ耕太くん、ニンジンはこうやって切ったらええんかな?」
「そうですそうです、上手ですよこよみさん」
「えへへ……」
仲睦ましく料理をしているコウタとコヨミ。
実に微笑ましい情景だ。
「ええと……コウタくん、何を作ってるの?」
「はい。せっかくなので、お疲れ様を兼ねておにぎりと豚汁でも作ろうと思いまして」
僕が2人のところに行くと、コウタはこんにゃくを手で一口サイズに千切っていた。
「へえ、じゃあ僕も手伝っていいかな?」
「はい! ぜひお願いします! では武士さんは、おにぎりをお願いしてもいいですか?」
卑怯にも見える戦い方をしたので、少し心苦しい僕は罪滅ぼしにと料理を手伝うことにした。
「うん、任せて。具はこれでいいのかな?」
「はい」
そうこうしていると、先ほど僕と相打ちになったタカコがこちらに来た。
「あら、じゃあワタクシもお手伝いするわ」
「助かります!」
コウタはタカコに気軽に頼んだので、僕はそっとタカコに近付いて先ほどの戦い方について謝った。
「先ほどはすいませんでした。だまし討ちみたいな形になってしまって……」
「いえいえ、わたくしも『若さ』という望みで頭に血が上りすぎましたわ。しかし、まさか彼女を守る為に、あんな自爆攻撃までするとは思いませんでしたの」
まるで浄化されたように、先ほどまでの鬼気迫る表情とは大違いのタカコ。
「今回は誰も死なない戦いなら、逆にワザとおとりになって強い方と相打ちになるのも手だと思いました。まあ、命掛かった戦いでは、決してやりません。勝っても死んだら、残った人が悲しみますからね」
「そうよね、確かに命あってのモノダネだわ。囮作戦、見事だったわよ、坊や」
僕をまるで子供のように褒めてくれるタカコ。
「すいません、僕もうじき26歳になるんですが」
「あら、ごめんなさい。彼女さんも小さくて可愛いから、てっきり貴方も若いのかと思いましたの」
毎度、若く見られがちなので、今更な僕は笑ってタカコに返した。
……リーヤさんが可愛いのは当たり前だけどね。
「えへへ、耕太くん楽しいなあ」
「そうですね、こうやってみんなで作るご飯もいいですね」
「うん!」
僕がもくもくとオニギリを作る間に、イチャコラしているコウタとコヨミ。
少し羨ましがりながら、僕はリーヤの健闘を祈った。
「タケ殿、自己犠牲精神が強すぎないかや? いかな優勝する気は無いとしても無茶なのじゃ!」
今回、最有力なのは、接近戦最強のマム。
そしてダークホースのフォル。
この2人を倒しておけば、リーヤが優勝するのは間違いないという判断なのでしょうね。
都合よく、タカコ母さんがタケくんに向かってきたのと、マムが目の前の戦いに集中していたから出来た事。
マムが本調子なら魔力シールド張られるし、避けられるでしょうね。
「本気でリーヤ殿のサポートに徹したのじゃな、タケ殿は」
今回は誰も死なない戦い、なればどんな卑怯な策でも取るのがタケ君かと。
「そこは、ワールドトリガーのランク戦のノリじゃな」
ええ、今回は少し参考にさせてもらいました。
サンボン様のシナリオでは、タケ君の戦闘シーンはフリーだったので、だいぶ自由に書かせてもらいました。
タケ君、珍しく手加減無しに戦闘しているのですから、そこはかっこよく描きたいですもの。
「なるほどなのじゃ。では、最後のシーンへ進むのじゃ!」
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