第3話 新米騎士爵は、幼女2人に困惑する。
今度は異世界CSIの話。
タケ君が、リーヤちゃんやチエちゃんに困らせられる話です。
では、どうぞ!
「くぅ、チエ殿。何かインチキはしてはおらぬか? 此方、一向に勝てないのじゃ」
「それはないのじゃ。ワシ、ゲームでは正々堂々戦うのじゃ。インチキしても何も面白くないのじゃ!」
今は休憩中。
ゲーム機のコントローラーを握った二人の美幼女が、
対戦ゲームをプレイしている。
「うむぬ、タケ。このゲームに何か隠し技とか無いのかや?」
「僕は、そこまで詳しくないですよ。たぶん、フォルちゃんや目の前に居るチエさんの方が詳しいと思いますよ」
いろんなゲームのキャラクターが対戦をするゲーム、ステージから追い出されるか、吹き飛ばされたら負け。
2人は、正月くらいから良くこのゲームで対戦をしている。
コウタの実家に着付けに行った後から、2人は良く一緒に遊んでいる。
……見た目は可愛い美幼女たちなんだけど、どちらも剣呑だものねぇ。最初は大人しくすごろくだったはずなのに。
皆でボードゲーム形式の経営シミュレーションゲームで遊んでいた頃からエキサイト、どーやらインチキした人がいたらしく、そこから対戦ゲームへと発展。
そして勝負はチエとリーヤの一騎打ちとなり、リーヤは一向に勝てていない。
「うー! もー怒ったのじゃ! 此方、絶対に勝てないのじゃぁ!」
リーヤはコントローラーを放り投げた。
「リーヤ殿は短気なのじゃ。こういうゲームでは押すべき時と引くべきがあるのじゃ! 実戦でも同じじゃろ?」
「それはそうなのじゃが。うむむ、せめてこの扱うキャラクターが此方自身だったら、もっと自由に動けるのじゃ!」
「ほう、それは面白いアイデアなのじゃ。ぐふふ、ワシイイ事を思い付いたのじゃ」
僕はチエの笑顔を見て、とてもいやな予感がした。
これは、何かが絶対起こる。
そう思った。
「では、ワシは一端準備に帰ってくるのじゃ! また何かやる時は連絡するのじゃ! では、ばいならー!」
そういうと、魔神幼女は異空間へと跳躍した。
「もしかして、これはわたくし達も巻き込まれるパターンかしら?」
「ええ、マム。間違いなく。あの魔神将が何もしないはず無いです。生き死にの問題は絶対無いでしょうが、困った事にはなるでしょうねぇ」
休憩中、優雅に本を読んでいたマム、悪寒でぶるっと震えていた。
「て、こたぁ自分も危ないんですか?」
「たぶん、そこは大丈夫かしら。アタクシも今回は大丈夫そうな予感がしますの」
「ええ、そうなったら留守番を御願いしますわ」
今も本を読んで勉強中のブルーノは怖がる様子を見せるも、キャロリンは案外平気そうだ。
マムも2人には留守番を御願いするつもりらしい。
「え、わたしも巻き込まれるんですかぁ?」
「だろうねぇ、アタイはまだしもゲーマーのフォルちゃんは逃がしてくれないと思うよ」
「拙者も同意見でござる。拙者はゲームダメでござるから呼ばれないでござろう」
フォル、チエとはゲーム仲間なだけに巻き込まれるだろう事はボクも想定内だ。
ギーゼラとヴェイッコに関しては……、どうなんだろう?
しかし、事態は僕の予想からは斜め上の方向へと向かってしまった。
◆ ◇ ◆ ◇
「ぐふふ、久しぶりの暗躍なのじゃ。ここまでの異界構築は10年前の迷宮以来なのじゃ。あそこで作った死なない設定を生かすのじゃ。後は攻撃力の均一化なのじゃ。通常技と大技、移動能力、起動能力なども大体統一するのじゃ! あ、空を跳べるリーヤ殿の飛行能力は封じるのじゃ!」
「チエ様、また何かなされるのですか?」
「面白い事を思い付いたのじゃ。誰も怪我すらしない対戦決闘なのじゃ! これはマユ母様が居ないタイミングで行うのじゃ! バレたら、ワシ死ぬのじゃ! メイ殿達にも参戦してもらうのじゃ。こちらに来て以降、暇そうなのじゃ。あ、あのちっこいのにも参戦してもらうのじゃ!!」
配下の上級魔神「朧」が心配しつつ頭を抱えている中、チエはドンドンと高度な魔術と科学技術を駆使し、ローマ帝国期に作られた「コロッセオ」モドキの建物を異世界に構築していた。
◆ ◇ ◆ ◇
「一体、チエさんはナニを考えて僕達をここに呼んだのでしょうか、コウタさん?」
お留守番のキャロリン、ブルーノ以外の捜査室の仲間は、東京にあるチエの実家に呼ばれていた。
「さあ、俺も詳しくは聞いていないし、今回は留守番だって。まあ、身重のナナ放り出しておけないし、マユ義母さんも今日は朝から留守だし」
「そうですか。で、向こうの方々は誰ですか? 猫耳があるってことはウチの関係者ですか?」
僕は辺境伯に挨拶をした後、状況を聞いた。
しかし、芳しくない答えしか返ってこない。
これは、絶対チエがろくな事を計画していないに違いない。
「あ、彼女達は……。ま、タケシくんには話しておいた方が良いか。実は『かくかくしかじか』で……」
「まあ、そういう事でしたか。ええ、チエさんに係った段階で何があっても驚くのは辞めました。ウチの異世界帝国に繋がるのも、隣の平行世界に繋がるのも大差ないです」
内心の驚きを誤魔化しながら話す僕。
……何暗躍しているんだ、あの魔神ちゃんは?
「すいません、何かわたくし達にもイイ事があるってチエさんが言うので」
「いえいえ、あの魔神ちゃんに係った段階で同じ被害者ですから。でも、絶対彼女は誰も泣かさないし、泣いているのを嫌がりますから、そこは安心ですよ。ね、コウタさん」
「ああ! 絶対、そこは信用しているよ。まあ、大変な目に合うのが毎度だけどね」
すまなそうに話す女性、おそらく2人の男女の母親なのだろう。
僕は安心させるように話した。
「タケ、此方あの四人と話しても良いのかや?」
「もちろんです。こういう出会いも素敵ですから、どうぞです」
「では、行くのじゃ! 此方、リーリヤ・ザハーロヴナ・ペトロフスカヤというのじゃ! リーヤちゃんと呼ぶのじゃ!」
「リーヤちゃんって言うの? え、この羽とか角、しっぽホンモノなの? かわいー! わたし、秋月芽衣って言うの!」
「わたしぃ、フォルトゥーナ・フェーリスって言います」
「ふぉるおねえさま、わたし、らーら・ふぁびうす」
リーヤは中学生くらいの女の子、メイと話しているし、フォルは同じ猫耳の少女、ラーラと話している。
恥ずかしそうに見える男の子とはヴェイッコやギーゼラがどつき漫才風に話している。
マムも母親と談笑中だ。
「皆の衆、お待たせしたのじゃ! これから『第一回チエちゃん杯、異世界! スマッシュバトルシスターズ!』大会を行うのじゃ!」
そんな時、チエが突然現れて、僕達は全員異空間へと引きずりこまれた。
……あー、問答無用なのねぇ。ん? この引きずり込むの、太陽とかに出口設定されたら無敵じゃない? チエさんの事だから、思いついているだろうけど?
〝ワシ、そういう身も蓋も無い攻撃は、余ほどの強敵以外は使わぬし、基本タケ殿らの成長優先で使わぬのじゃ!〟
脳内突っ込みに念話で返してくれる魔神将。
なんと、戦隊ヒロイン夫婦まで巻き込んだのだとか。
……ついでにゲームルールまで説明してくれて助かるけど、こりゃ大変だなぁ。完全に巻き込まれたコヨミさんにコウタくん、ごめんね。
僕は完全に被害者の仲睦まじい夫婦の事を思った。
……さて、何でも願いを叶えてくれるって言うけど、そんなの僕は必要ないんだけどなぁ。
「さあ、皆の衆、戦うのじゃ! ワシは審判をするのじゃ!」
はあ、他所様の子を巻き込んでのお遊び、困った事です。
「このアイデアは、サンボン殿のものじゃぞ。ワシを存分に使ってくれたのじゃ!」
それなら良いんですけどね。
誰も怪我させないでね。
「そこは安心なのじゃ。以前、コウタ殿達を案内した迷宮のシステムを使うのじゃ。絶対死なないし怪我もしないのじゃ!」
それなら安心かな?
「では、いよいよゲームの開始なのじゃ!」
16時更新をお楽しみに!




