第4話 新春、リーヤが楽しむ日本のお正月 後編(リーヤちゃんの初詣)
「タケ、此方の姿、どうじゃ!」
「おにーちゃん、わたしどう?」
僕がマサト先輩と科学談義をしていた間に、リーヤ達の着付けが終った様だ。
「あ、……」
僕は玄関から出てきたリーヤの晴れ姿を見て、言葉を失ってしまった。
真紅の布地に牡丹を大きくあしらった振袖。
あまりにもリーヤに似合いすぎて、どう言葉にして良いのか分からない。
……なんか水着姿よりも凄いんだけど。
「ほう、馬子にも……」
「バカダンナ! すっごく可愛いわ、リーヤちゃん」
アヤメ夫婦、一瞬言葉を失って、すぐにリーヤを褒めた。
タクトがあまりな事を言うので、アヤメはポカポカとタクトを叩く。
「さすが、異世界のお姫様。綺麗だよ、リーヤさん」
コウタは、照れずにリーヤを褒める。
「あれ、タケシくん。早く褒めて上げなよ」
マサト先輩は、ぼーっとしている僕の背中を軽く押す。
「タケ、どうしたのじゃ? 此方、何処かおかしいのかや?」
「おにーちゃん、早く義姉ーちゃんを褒めてあげて! わたしの事はついでで良いけど」
リーヤは小首を傾げて不思議そうな顔だし、カナも変な顔だ。
「あ、あ、えーっと……。リーヤさん、いえリーリヤ・ザハーロヴナ・ペトロフスカヤ様、僕は貴方を一生をかけて守り愛すると誓います!」
……あれ、僕! 今、何言ったんだ?!
「えー!! 此方恥ずかしいのじゃぁ!」
「おにーちゃん、プロポーズ今するのぉ!」
「はぁ、亡くなったあの人そっくりだよ。まったくバカな親子だねぇ」
僕の言葉にリーヤは恥ずかしがり、カナは驚き、母は呆れる。
「ん! あ、僕って何を口走ったんだよぉ!! リ、リーヤさん、今の言葉に嘘偽りは一切無いのですが、タイミングというかなんというか、今じゃないですぅ!」
「もう慌てん坊のタケなのじゃ! 此方、頑張って早く成長するから、早く式場でその言葉を聞かせるのじゃ! 綺麗で見惚れてからの戯言という事に今はしておくのじゃ!」
リーヤは顔を耳まで真っ赤にしつつも、嬉しそうだ。
僕も多分茹蛸のように顔が赤いであろう。
ものすごく体温が上がったような気がしているのだから。
「タ、戯言じゃないです。リーヤさんが綺麗で可愛すぎて、言葉が出なかったんです! ちゃんと幸せにしますよぉ。もちろん、今すぐには結婚できませんけど、ちゃんとリーヤさんが大きくなるまで辛抱しますし、リーヤさんにつりあうよう頑張りますからぁ!!」
もうすっかり頭が廻っていない僕は、妙な事しか言えない。
……だってぇ、あそこまでリーヤさんの振袖姿が綺麗だなんて思わなかったもん。
「あらぁ。すっかり面白い事になっているのね」
「ワシ、さっきから撮影中なのじゃ。これは皇帝陛下や今回来ていない面子にも映像を流すのじゃ!」
黒地の留袖をキリっと着たマユコが面白そうな顔をして玄関から出てくる。
そしてチエは、クリーム地にサクラの花の振袖にHDカメラを持って僕とリーヤを映す。
「リーヤおねーちゃん、ひゅーひゅー」
「うん、わたしもイイオトコ見つけるんだ! ね、アンズちゃん」
ピンクの振袖を着たアンズと青い振袖を着たアリサは、妙に嬉しそうだ。
「はあ。おとーさんは、もう少ししっかりして欲しいの」
淡い緑にピンクの花柄の振袖なカナミは、母と父が追いかけっこやっているのを見て呆れている。
「で、おにーちゃん。わたしは、どうなのぉ!!」
「カナ! うん、綺麗だよ」
カナは淡い黄色系の振袖姿だ。
「ちょ、義姉-ちゃんと違って簡単すぎぃ!!」
カナ、膨れっ面で文句ありそうだけど、僕は今それどころでは無いのだ
「此方、チエ殿に今のプロポーズ動画貰うのじゃ!」
「ちょ、恥ずかしいよぉ!!」
……あー、もーどうにかしてぇぇぇ!!
◆ ◇ ◆ ◇
「ごめんね、リーヤさん。リーヤさんがあまりに可愛すぎて言葉出なかったんだよぉ」
「別に此方は怒ってはおらぬのじゃ。ただタケがアホじゃなと思っただけなのじゃ!」
わたくし達は、皆で揃って近くにあるという大きな神社へ初詣に行っている。
「だから、ごめんなさい」
タケは、ペコペコと頭を下げる。
……タケのバカ。あまりにポカンとしておったので、此方はびっくりしたのじゃ。その上、あのような場所でまたプロポーズ等とは……。
「じゃから怒ってはおらぬぞ。呆れただけなのじゃ。まあ、嬉しかったのも半分なのじゃ!」
……そーいえば、タケからのプロポーズは何回目じゃったかのぉ。結構あった気がするのじゃ。こりゃ、此方と結婚するまでに100回はプロポーズしてくれるかもなのじゃ!
わたくしはタケにばれないように、口元を隠してうふふと笑う。
「リーヤちゃん、楽しそうね。良かったわ、わたし気合入れて着付けしたものね」
「振袖の柄は、ワシが『楽屋裏』まで行って調べて頼んできたのじゃ。『第四の壁』向こうまで行って苦労したのじゃが、その労力に見合った結果なのじゃ!」
わたくしをマユコとチエが挟む。
マユコが嬉しそうなのは理解できるが、チエの話は全く理解できない。
「まあ、ワシの事は気にせぬで良いのじゃ! リーヤ殿を着飾らせたい人は多いと言う事なのじゃ!」
わたくしは、まだ謝っているタケの方を見た。
「だから、ごめ……」
「タケ、もう良いのじゃ。此方は、今気分が良いから全部許すのじゃ。じゃから、背を伸ばしてちゃんとするのじゃ! 此方の婚約者として恥ずかしい格好はするのでは無いのじゃ!」
「う、うん! ありがとう、リーヤさん」
タケは背を伸ばす。
ラフな格好が多いタケにしては珍しく、今日はスーツをきちんと着こなしている。
「タケ、其方の服も似合っておるのじゃ!」
「あ、ありがとう、リーヤさん。僕、最近ようやく背広に着られないようになった感じなんです。今日のものは、騎士爵とか警部補として正式な場所に着ていけるように、パターンオーダーしたものなんですよ」
確かわたくしの知識では、背広は量販店で吊るされた量産品と、個人の体型に合わせて布地から切り出された高級品があるはず。
「では、高額だったのではないかや?」
「ちょっと奮発したんだ。だって、愛するお姫様のナイトが着る服だからね」
……此方、嬉しいのじゃ! じゃが、今日は抱きつきに行けぬのじゃあ!
わたくしは、顔が熱くなりつつも、振袖の動きにくさを少々恨んだ。
◆ ◇ ◆ ◇
「リーヤさん、何御願いするの?」
「……ひみつなのじゃ! タケには特に内緒なのじゃ!」
僕とリーヤは神社の祭壇の前に並んで拍手を打った。
……ずっとリーヤさんと一緒に居られますように。
〝ずっとタケと一緒に居られますように〟
「え!」
僕は横に並ぶリーヤの顔を見た。
「じゃから、内緒なのじゃ!」
その顔は満面の笑みだった。
僕は、この愛らしくて小憎らしくて可愛くてたまらない幼女を愛してしまった。
身分違い、種族違い、年齢違い、生まれた星の違い、寿命の違い。
僕達2人の間には、大きな壁が立ちはだかっている。
「なんじゃ、タケ? 嬉しそうなのじゃ!」
「ええ、とっても嬉しいです!」
それでも、僕達は2人一緒に歩んで行ける。
「リーヤさん、足元気をつけて」
僕は小さい、しかしとても暖かい手を取った。
「タケ、ありがとうなのじゃ!」
この手は、何があっても一生離さない。
そう僕は、宇宙中の神に今日誓った。
追伸
なお正月2日、3日と、僕はリーヤ、カナ、チエに色んな場所に引きずり回された。
チエと以前約束していたケーキーバイキングにも3人を連れて行った。
一流どころのケーキはとても美味しかったのだが、3人から後日太ったと怒られたのは理不尽では無いか。
そう、僕は新年そうそう思った。
ぐすん。
「ひゅーひゅーひゅー、タケ殿熱いのじゃ! リーヤ殿も可愛いのじゃぁ!!!」
チエちゃん、最後の祭壇前のシーン、何か舞い下りてきちゃいましたよ。
なんか、こっ恥ずかしいけど、書かなきゃいけない、絶対この2人を幸せにしなきゃなんて思っちゃったんです。
「それはワシも思うのじゃ。もーたまらんのじゃ。ワシ幸せで満腹なのじゃぁ!」
チエちゃん、良かったですね。
しかし、楽屋裏ってこことかツイッターの話まで、ネタバラシしなくてもいいじゃないですか。
メタ発言にも程がありますよ。
「別に問題あるまいなのじゃ! リーヤ殿を可愛くしたいのは作者殿だけでなく、池原殿もそうじゃろ?」
そうですけどねぇ。
今回も池原さまが振袖の柄に困っていたのを私が探して来た訳ですが。
「とにかく池原阿修羅さまには、永遠に頭があがらぬのじゃ!」
ええ、気合入れて2021年もリーヤちゃんを可愛く書きます!
「ということで、年末年始話は終わりなのじゃ! 続きは2月くらいになる予定なのじゃ。少し待つのじゃ!」
では、皆さま良いお年をお迎えくださいませ!
イラスト:池原阿修羅さま




