第1話 鈍感タケとにっこりリーヤ、日本で年末を過ごす!
「タケ、此方の衣装どうなのじゃ?」
リーヤは僕にドヤ顔をして見せる。
今日は、真面目に捜査室の事務所で事務仕事中なのだ。
「あれ、今日は赤くてファーが沢山付いたドレスなんですね?」
「タケ、どうなのじゃと聞いておるのじゃ!」
リーヤは僕がちゃんと答えないので、少し膨れっ面だ。
「もちろん可愛いに決まってますが? 今日は何か変わったイベントとかありましたっけ?」
「タケや、地球人の其方が忘れてどうするのじゃ? 今日の日付を日本のカレンダーで見るのじゃ?」
僕は情報端末のカレンダー表示を異世界から地球にする。
「あ! 今日は12月24日。そうか、クリスマスイブなんだね。それで、サンタ風な衣装なんだ!」
「やっと分かったのかや? 此方、タケに喜んでほしくてサンタドレス準備したのじゃ!」
やっとニコニコ顔になったリーヤ、くるりと廻って衣装を自慢する姿が実に可愛い。
「まったく女心が分からないのでは困りますよ、タケ」
「そうですわね。ワタクシも昔、元彼が鈍くて困りましたわ」
マムとキャロリンの御姉様組は、渋い顔で僕の鈍感さに文句を言う。
「タケっち、アタイの髪型を変えたのも気づかないもんね」
「そうだったでござるか? 拙者、気が付かなかったでござるよ」
「ヴェイっち、アンタもダメだよぉ!」
ギーゼラとヴェイッコも僕をネタにふざけ合う。
「クリスマスかぁ。日本に居た時はイルミネーション綺麗だったのぉ!」
「イルミネーションとは、それ以前にクリスマスとは何ですか、フォルさん?」
うっとり顔のフォルに聞く新人捜査員のブルーノ。
ブルーノは、ルカの怪盗事件以降、雇われ先のスダレンコフ子爵から許可を受けて、異界技術捜査室の下っ端捜査員となった。
先日の「ハロウィン蟹怪人事件」の際には、名乗り上げ用の爆薬の設置やらシームルグ号での荷物運びをしていて、戦闘には参加していなかった。
「イブセマスジーは手ごわかったのじゃ! 詳細はワシも活躍した『こよみ』殿とのコラボ話を読むのじゃ!」
まったく意味不明な事を話す魔神将チエ。
今日は、捜査室の事務所内に設置されている「どこでも○ア」ことポータルの設定に来ているらしい。
「よし、出来たのじゃ! これで、ここのポータルは移動先を選択式にしたのじゃ! リーヤ殿、ギーゼラ殿。これで2人の実家まで直通なのじゃ!」
「チエっち! ありがとー! この間も村のインフラ設置してくれて、皆喜んでいるの!」
ギーゼラは自分よりも小さなチエに飛びつく。
「いえいえなのじゃ! ワシ、皆が喜ぶ姿が大好物なだけなのじゃ!」
「チエ殿、此方も感謝するのじゃ! これで、いつでもお父様、お母様にご挨拶できるのじゃ!」
リーヤもチエに抱きつく。
可愛い幼女達が3人抱き合うのは良い眺めだ。
……ただ、3人とも50歳以上なのはいうまでも無いけど。チエさんは1000歳じゃすまないだろうねえ。
〝乙女の年齢は気にしてはだめなのじゃぞ、タケ殿!〟
僕の内心呟きにすかさず反応して念話してくる魔神将、さすがである。
「いいでござるなぁ。拙者の実家はとても遠いでござるからなぁ」
「ヴェイッコ先輩はまだ良いですよ、帰る実家あるんですから。自分にはもう親も帰る家も無いですから」
「あら、ブルーノさん。ここにはわたくし達という家族が居ますよ。貴方が裏切ったりしない限り、ずっと一緒ですわ」
「ま、マムぅ。怖い事言わないで下さいよぉ」
ブルーノの愚痴を上手く流すマム、皆その様子に笑いあった。
「ヴェイッコ殿、ならば今度休みが取れたらワシと一緒に実家へ帰らんか? そうすればポータルを設置出来るのじゃ!」
「いいでござるか! チエ殿、何から何までありがとうでござるぅ!」
ヴェイッコもチエに抱きつきそうになるので、すかさず逃げるチエ。
「ワシ、男から抱き付かれるのは勘弁なのじゃぁ!」
「うふふ。皆さん良かったですわね。わたくしもチエさんのお陰で毎日帝都から通勤できますもの。おかげで毎朝、フェアと一緒に朝食取れますのよ」
マムは逃げるチエをキャッチして感謝を述べる。
「マム殿に抱かれるのならOKなのじゃ!」
すかさず、種族として華奢なエルフにしては豊満なマムの胸に顔を擦り付けるチエであった。
「まあまあ、甘えん坊の魔神さんだこと。そうだ! ちょうど良い機会ですし、皆交代で休暇を取りませんか? 移動含めて5日くらい、2人ずつなら問題ないですし」
「賛成なのじゃ! 此方、タケと行きたい場所があるのじゃ!」
マムのお休み宣言に反応して大声で手を上げたリーヤ。
「リーヤさん、僕と何処へ行きたいんですって?」
◆ ◇ ◆ ◇
「リーヤお義姉ちゃん!」
「カナやぁ!」
ひしと抱き合う義姉妹。
僕とリーヤは一緒に休暇を取り、リーヤが行きたかった場所、僕の実家へと向かったのだ。
「ただいま、母さん」
「リーヤちゃん、タケシ。よく帰ってきたわね」
元気そうな母と妹の顔を見て僕は一安心だ。
「でも、よく年末年始に2人揃ってお休み取れたわね?」
「そこは此方が頑張ったのじゃ!」
今日は日本時間12月30日、新年3日まで休暇を取得したのだ。
「向こうとは季節も暦も違うしね。リーヤさんが日本のお正月を一緒に過ごしたいって話しになって、都合つけたんだ」
「なら、リーヤちゃんに振袖準備しなきゃ。今から着付け間に合うかしら。それに着物の準備が……」
「それはワシに任せるのじゃ!」
急に現れる魔神将、いつも通り僕達をパパラッチする為に分身が絶えず監視しているのだろう。
……チエさんにキスシーン撮影されるのと、便利なの。ハイリスクハイリターンなのは気のせいだろうか?
「毎年、岡本家では母様が晴れ着の着付けをしておるのじゃ! 最近振袖着れる年齢の子が居らぬので寂しかったのじゃ!」
どうやらマユコは着物の着付けも出来るらしい。
まさに万能なお母様だ。
「じゃあ、マユコさんが着付けをしてくださるの?」
「そうなのじゃ! こんな事もあろうかと着物はワシがあらかじめ準備ずみなのじゃ! カナ殿の分も準備済みなのじゃ!」
ご都合主義、「こんな事もあろうかと」を言いたいだけの気がするチエであるが、歓迎の話である。
「いいのかや! 此方、振袖を一度は着てみたかったのじゃ!」
「うわぁ! チエちゃん、ありがとー! おかーさん、イイよね?」
2人の娘の喜ぶ姿を見て苦笑する母。
「しょうがないわねぇ。マユコさんにはちゃんとお礼を言うのよ。チエちゃん、わたしも着付けをする時にはご挨拶に行くわね」
「はいなのじゃ! ワシ母様には今連絡をしてOKも貰ったのじゃ!」
ポータルのおかげで東京の岡本家にも一瞬で移動できる。
チエに感謝するばかりだ。
「此方、楽しみなのじゃ!」
リーヤの笑顔が実に眩しい。
今からリーヤの振袖姿が楽しみだ。
「久しぶりにリーヤ殿の出番なのじゃ! やっぱり可愛いのじゃ!」
別にメイちゃんが書きにくいという事は無いんですが、リーヤちゃんとかチエちゃんは完全に脳内に住み着いているので、書くのが楽ですね。
「池原殿にはいつも可愛いリーヤ殿のファンアートを書いていただき、感謝感激なのじゃ!」
ええ、クリスマス仕様がたまりませんです。
おかけで急遽ネタを思いついて、一日でこの話を書き上げちゃいました。
池原阿修羅さまには、脚向けて眠れませんです。
ということで、今回は前後2話構成で書いてみますので、宜しく御願い致しますね。
では、続きは31日に!
(追記)
の、予定でしたが、大晦日話だけで3000字越えたので、大晦日話は30日に、お正月話は31日にお送り致します。




