コラボ企画第二弾! 「ハロウィンでの一夜の夢」 第1話「ポータムは、ハロウィン前日で大混雑!」
今回もサンボン様の「戦隊ヒロインのこよみさんは、いつもごはんを邪魔される! ~君の思いが、料理が、ウチを強くする~」とのコラボを行う事になりました。
こよみさんは以下です
https://ncode.syosetu.com/n0206gj/
全4話になりましたが、是非とも、皆さま楽しんで下さいませ。
「此方、暇で退屈なのじゃぁ!」
リーヤは、異世界門に設置された臨時税関・検疫所にて日本語で愚痴る。
「暇じゃないですって。ちゃんと門からこっちに来る人のチェックをしないとです」
僕は、リストと前を通過する人の顔や体調等をチェックしながら許可を出していた。
今日は、日本時間で言えば10月30日、ハロウィン前日だ。
最近、すっかりとコスプレイベントとして日本へ定着したハロウィン。
本来はキリスト以前、古代ケルト人が行う新年の祭り、日本でいう所の「お盆」、死者の霊が家族に合いに帰ってくるのを迎える宗教行事だ。
それがアメリカにてバカ騒ぎ&コスプレイベントとなり、お祭り好きな日本人が、宗教関係無く受け入れたのが現在。
過去は東京の渋谷にて暴動寸前までなってしまっていたのだが、新型感染症や警察の活動などにより、近年は大人しく愉しむイベントになっている。
それもこれも異世界が身近になっての事。
「身近に異世界が出来て簡単に来られて、そこでコスプレ関係無しにファンタジーを比較的安全に楽しめるのなら、渋谷よりこっちに来るよね」
「タケや、何ぶつぶつ言っておるのじゃ?」
リーヤはやっと真面目に仕事を始める。
「いえ、ポータムが賑やかになって大変だなって」
僕は、誤魔化すように話す。
「あ、あの子かわいー! まるでホンモノの悪魔っこみたい!」
「うわー、猫娘さん! この子もかわいー!」
「ちっこいけど、褐色の子も可愛いよね。お人形さんみたい」
「あの狼男、よく出来ているの! まるでホンモノみたい!」
列に並んで順番を待っている女性観光客達から黄色い声が聞こえる。
どうやらリーヤやフォル達を見ての感想らしい。
今日は、フォルにキャロ、そしてギーゼラにヴェイッコも頑張って大勢の観光客を捌くべく仕事中だ。
……そりゃ、リーヤさんは可愛い僕の婚約者ですからね。でも、やっぱり僕とかキャロ姉さんにはコメント無いよね。
つい、自慢してドヤ顔をしそうになるが、自重せねばと思う僕だ。
「此方、ハロウィンは納得したのじゃが、ナゼに捜査室の此方人等が税関で仕事をせねばらなんのじゃ?」
リーヤは僕に愚痴る。
その様子に、ますます観光客から「かわいー!」という声が聞こえた。
なお、リーヤ。
今日はいつもの赤いゴシックドレス。
なんのかんの言いながら、リーヤもTPOを考えておしゃれをしている。
「それはですね……」
僕は、小声の異世界共通語で話す。
「リーヤさんには、以前説明しましたよね。僕達が京都で出会ったバケモノの事を」
「ああ、確かダークスフィアという連中の事じゃな」
僕達が日本観光に行ってた際、京都で二回テロに巻き込まれた。
一回は狂信者達の自爆テロ、そして二回目がダークスフィアの「怪人」と呼ばれる生体改造兵器によるテロだ。
ダークスフィア、彼らは異端生物学者達によって産み出された「怪人」達による組織。
彼らは各所でテロを巻き起こし、多くの犠牲者も生み出した。
だが、日本政府は彼らと戦う超法規的特殊治安部隊「勇者戦隊ヴレイファイヴ」を作った。
ヴレイファイヴ自体の存在はマスコミにも明かされ、僕が詳しくは知らなかったのだが、政府広報による動画配信もあり話題にはなっていた。
後に警察・公安関係から情報が僕の元へとも降りてきたが、なんと戦隊の総司令「高田」こそが敵の首領。
そして彼を倒すべく紅一点の戦士ヴレイピンクが活躍したと知った。
「あのコヨミ殿が敵の首魁を討ち取ったそうじゃな。京都での戦い方はカッコよかったのじゃ。じゃから此方も『海ほたる』での戦い時にはカッコよく登場するように考えたのじゃ。それにあれから戦隊モノも研究中なのじゃ! アレは時代劇にも似ていて面白いのじゃ!」
リーヤは、コヨミの事を思い出しながら嬉しそうに話す。
僕達は、偶然にも京都でヴレイピンクこと桃原こよみ、そして彼女を愛する上代耕太と出合ったのだ。
……こうやって、また1人戦隊『沼』に落ちてゆくんだ。
僕は知り合いがどんどん『沼』に嵌っていくのを見たことがあるだけに、あえて特撮関連には踏み込まないでいる。
……ライダー関係とか、イケメンでお母さん人気も狙うらしいからねぇ
「大半の怪人達は退治されたらしいんですが残党が居て、ポータムに逃げているらしいんです。元は生物学者が異端の手法に手を伸ばした結果なんです。確か『DS-n細胞』でしたっけ? おそらくレトロウイルスによってES細胞を作る際に出来たものなんでしょうけど、改造には元の遺伝子情報が必要です」
僕はリーヤに軽く説明をする。
……まあ、説明している僕だって生物関係は門前の小僧レベルだから、完全に理解しているんでもないけどね。
「そこでホンモノのドラゴンさえ居る異世界があるとすれば、彼らにとっては宝、未知の遺伝子情報の宝庫。こちらの警察組織の不備も加えて逃亡場所兼新たなる研究対象となれば、こちらに逃げてくるのは当たり前です」
「うみゅー。タケの話は難しくて半分も分からんが、様は生き残りのザコがポータムへと逃げた可能性があるという事じゃな」
文句を言いながら、リーヤは話の根幹をちゃんと捕まえている。
「ええ、そういう事です。だから、僕達がここで監視をしてダークスフィアの残党が来ていないか確認をしているんです」
「それは理解したのじゃ。じゃが、どうやってダークスフィアかどうか判別するのじゃ?」
リーヤは当然の事を尋ねる。
「一応は、日本政府から該当する方の情報は来ています。ただ、今日みたいにハロウィンでコスプレが多い中、変身した姿をコスプレと言い張られたら見逃すかもです。まあ、気休め程度かと」
「なんじゃ、此方は気休めに使われておるのかや!」
リーヤは日本語の大声で叫ぶ。
そうすれば、周囲で処理を待っている日本人観光客達の視線は、おのずとリーヤに向かう。
「こ、こよみさん、あれって!」
「うん? あ、ウチと京都で喧嘩したあの子やないか!」
どこかで聞き覚えのある男女の声がした。
僕は、その声の方向へ視線を向けた。
「あ! コヨミさんじゃないですか! それとコウタくん!」
僕は声の主を呼んだ。
「やっぱり、武士さんでしたか! それに、リーヤさんも!」
「うーん、やっぱりどう見てもチンチクリンやなあ」
如何にも人が良さそうな大学生のコウタは以前どおりだし、小柄で中学生っぽいコヨミも相変わらず口が悪い。
「なんじゃとぉ! もっかい言ってみるのじゃ! 此方の何処がチンチクリンなのじゃ!」
「何や、何回でも言うたるわ。このメダカみたいなチンチクリンがあ!」
お互い湯気を出しそうな勢いでガルガルする2人。
その様子に周囲の視線が痛い。
「「2人ともやめて!」」
僕とコウタの声がハモル。
「なんじゃ、別に此方はコヨミ殿と喧嘩をしているんじゃないのじゃ」
「イヤイヤ耕太くん。ウチも大人やさかい一々リーヤちゃんと喧嘩したりせえへんで?」
なぜか、2人とも急に落ち着いて僕達に文句を言う。
「だって、同じ敵と戦った戦友なのじゃからな」
「うんうん、ウチも自分より小っちゃいけど、なかなかここまで強い女の子はおらへんからな!」
いきなり2人は「ねー」と仲良く話し出した。
「ふぅ、もーリーヤさんたらぁ」
僕は一安心をした。
…こんなところで2人が暴れたら、大変な事になりかねないもんね。
「すいません、武士さん……こよみさんも、普段はここまで喧嘩早くは無いんですけど……」
コウタは僕に平謝りをする。
「いえいえ、前回お会いした時も思ったけど、2人のタイプって案外似ているから、同族嫌悪ってのがあるのかもね」
うむという感じで僕の意見に同意しているコウタ。
やはり同じ事を思っていたらしい。
「あはは! とりあえず、ようこそポータムへ!」
僕は他の観光客の邪魔にならない様に、2人を臨時税関のテントの中に招き入れた。
「さて、これは仕事として聞くけど、2人はどうしてポータムへ来たの?」
「実は、僕達結婚する事になりまして、新婚旅行の第一弾としてこちらに来たんです。家からも近いですし、一度はポータムに来てみたかったですから」
なるほどの回答。
ここ最近、近場で楽しめる異国、いや異世界ということでポータムを訪れる日本人観光客は多い。
なにせ、「海ほたる」からすぐにポータムへと行けるのだから。
今日のポータム異世界門でのハロウィン渋滞も、身近にモンスターに出会えるというのもある。
今も、泣いている女の子をあやしているヴェイッコの姿がテントの向こうに見える。
コウタとコヨミは仲良く手を握り合って微笑みあっているのが、実に良い。
「ところで……武士さんのお仕事って、税関……いえ、違いますね。本当は“公安”、といったところでしょうか?」
「あ、そういえば話していなかったよね、前は。僕は、ポータムで皇帝陛下直属の公安組織、異界技術捜査室で科学捜査員をやっているんだ。まあ、最近は科学捜査よりも銃撃っているのが多いけどね」
「なるほど……じゃあ、この前はリーヤさんの護衛、といったところでしょうか。リーヤさんは、どうやらこちらでいうところの貴族、といった感じですし」
コウタは僕に色々聞いてくる。
その間にも、リーヤとコトミは色々と話し込んでいる様だ。
「ほう、コトミ殿。コウタ殿と結ばれたのかや。めでたい話なのじゃ、その上羨ましいのじゃ。此方はタケと婚約まではしたのじゃが、こんな身体じゃから、エッチまではいけないのじゃ」
「あ、そうなん? 実はウチ、その……耕太くんと結婚してん! それで、その……毎日、幸せやねん……」
何か、聞いてはならないガールズトークをしている気がする。
「確かにリーヤさんは貴族、隣領主のお嬢さんですけど、今は同僚です。最近、僕とリーヤさんは婚約まではしましたけどね」
「お、おめでとうございます! それで、ご結婚は?」
「それはリーヤさんの肉体の成長次第かな? 流石に今のリーヤさんにエッチな事するのは違反でしょ?」
僕は、リーヤさんの方を見ながら、同じ幼い外見の彼女を持つコウタに愚痴る。
「そ、そうですよね! あ、で、でも……」
結婚もしているんだから、ヤル事やるのは当たり前。
僕は、コヨミを見ながら赤面しているコウタを少し羨ましく思った。
「そういえば、コウタ君はダークスフィアとの戦いの事には十分関係しているよね。今、こっちは少しややこしい事になっているんだ」
僕は部外者ながら、無関係でも無いコウタにポータムへダークスフィアの残党が来ているらしい事を話した。
「じゃあ、もしかしたらコヨミさんも……」
「うん、狙われる危険性も無い訳じゃない。一応注意していてね」
「はい、情報ありがとうございました」
「いえいえ。これもナニカの縁ですし……」
僕は、難儀な彼女を持つ仲間としてコウタに好意を持った。
「あらぁ、何が縁かしら。このサボり魔さん達はぁ!」
そんな時、僕の背後から聞きなれた、しかし恐ろしい声が聞こえた。
「ま、マムゥ!」
「タケちゃん、リーヤちゃん。これはどういう事かしらぁ!」
僕は、マムに絞られてしまう未来を予見した。
「今回もコラボ、楽しみなのじゃ。今度こそワシも乱入するのじゃ!」
チエちゃん、あまりコヨミさんにご迷惑をおかけしたらダメですよ。
「そこはそれ、ワシはデウスエクスマキナな魔神としてご都合主義をするのじゃ! どうせ本筋には関係ない話なのじゃ。好き放題するのじゃ!」
ちょっと心配になった作者です。
では、これからの話をお楽しみ下さいませ。
「次は15時頃公開なのじゃ!」
なお、イラストは、毎度お世話に成っております、池原阿修羅さまのものを再利用させて頂いています。




