第27話 猫娘は勇敢に戦う!
「ごちそうさま、だいねーちゃん!」
「おねーちゃん、今日もご飯美味しかったよ」
「お粗末様でしたぁ」
妹弟が喜んでご飯を食べてくれるのが、とっても嬉しい。
わたしは、この笑顔の為に頑張っているのだと実感できる時間なの。
「おねーちゃん、こんな料理を何処で知ったの? アタシもメイド学校で料理習うけど、全然違うの」
「ちぃねーちゃん、どーでもいいじゃん。美味しいんだから」
「これはねぇ、タケお兄さんから地球式の料理を教えてもらったのぉ。それに、このカセットガスコンロのおかげで火かげんの調整が楽なのぉ」
マムは、わたしが捜査室内の寮に寝泊りはしないと言ったら、不便しないようにと色々な地球の便利道具を支給してくれた。
「確かに便利だよね。照明も燃やさないランプがあるし」
リアは、テーブルの中心で部屋を照らしている充電式ランプを見て話す。
「オレは、時々差し入れでくれる甘いお菓子が好きだね」
食いしん坊のラウロは、まだ胃袋に余裕があるっぽい。
「さあ、もう寝る準備するのぉ。お湯を沸かすから、身体を拭いて歯も磨くの!」
「もー、だいねーちゃんったら。オレももうガキじゃないんだから、ちゃんとするって」
「えー、いつも朝起こしてもらっているのは、どこの坊やかしら」
「ちーねーちゃん! ねーちゃんこそ、だいねーちゃんに毎朝髪の梳かしててもらって居るじゃんかぁ!」
仲睦まじく、じゃれ合っている妹弟が可愛くて仕方が無い。
「はいはい。明日も早いから急ぐよぉ!」
◆ ◇ ◆ ◇
「うーん、もっとぉ」
「おねーちゃーん」
三人並んでベットの中で眠る毎日。
わたしは、明日の準備としてスマホで事件内容の再確認をしているのだけれども、両側からわたしに抱きつきにくる妹弟が温かい。
「もー、この子達ったらぁ。冬だから良いけどねぇ。でも、そろそろベット分けようかなぁ。ラウロも、そろそろ大きいしねぇ」
手狭になったベットの上でまどろみながら、幸せをかみ締めていた。
そんな時、スマホから警報が表示され、マナーモードのスマホが激しく振動した。
「え!」
それは、捜査室からのエマージェンシーコール。
防犯システムに侵入したとの警報。
「何があったのかしら?」
そして、もう一回警報が表示される。
それは、この家に侵入者が入った事を意味した。
警報システムがあったほうが安心よ、とマムはウチにもシステムを導入してくれていたから。
「同時に進入って・・・・・・。これは、わたし達を狙って?」
急いで、抱きつく妹弟から抜け出して、わたしは枕元に隠していた拳銃を持ち出した。
「ど、どうしよう。もしわたし達の命を狙ってだったら……」
恐怖で拳銃を握る手がブルブル震える。
……怖いの。とっても怖いの。みんな、こんな気持ちでも戦っていたの?
モニター越しでは何回も戦闘を行い、敵を撃ち殺しもした。
でも、あの時はシームルグ号という、鉄壁の「鎧」の中だったから。
今、わたしの身を守るのは部屋着だけ。
……どうしよう。怖いの。わたしぃ、戦えないのぉ。
「おねーちゃん、どうしたの? 怖い顔しているよ?」
そんな時、起き出したリアが寝ぼけ眼でわたしに話しかけてくれる。
「もー、ちーねーちゃん。なんで夜中にオレ起すんだ? まだ、朝まで時間あるでしょ?」
そしてラウロも眼を擦りながら起きだしてきた。
……そうなの! わたしは、妹弟を絶対守らなきゃならないのぉ! 怖いなんて言っていられないのぉ!!
「しっ、静かにして! 2人とも、すぐに動ける様に準備してぇ。今、家に誰か忍び込んできたのぉ。捜査室にも同時に来ているから、たぶんわたし達の命を狙ってだと思うのぉ。でも、大丈夫ぅ! おねーちゃんが戦うからぁ」
わたしは少しでも2人を安心させるように、拳銃を見せて笑う。
「え! おねーちゃん!」
「だいねーちゃん!」
妹弟は、抱き合って怖がる。
「本当に大丈夫なのぉ。おねーちゃんは、タケお兄さん達に戦い方も教えてもらったからねぇ」
わたしは、拳銃のセーフティを解除し、スライドを引いて初弾をチャンバーへと送った。
また、パジャマの胸ポケットに予備弾倉も入れておく。
ここまでの操作方法は、頑張って覚えた。
……タケお兄さんは言ってたっけ? 弾倉は、撃ち終えても胸ポケットに入れておくと役に立つって。
「じゃあ、押入れの中に隠れていてね。じゃあ、わたし戦ってくるのぉ!」
2人の心配そうな顔に笑顔で答えて、わたしは寝室を静かに出た。
◆ ◇ ◆ ◇
……誰も見えないのぉ。でも、嫌な感じがするのぉ。
猫族の力には暗視能力がある。
でも、この力を使うと眼が光るから、逆に目立つかもしれない。
……タケお兄さんがCQCの時のコツ、言ってたよねぇ。
わたしは、皆に教えてもらった戦い方を思い出す。
暗視能力はずっとじゃなくて、休み休み使う。
光る眼が見つからないようにする為。
……姿勢を低くして壁に近付き過ぎないだったのぉ。
ゆっくり猫族の柔らかい肉体を利用して、わたしは足音を立てずに歩く。
……わたし、運動オンチだったけど、今度からもっと練習しよう。大事な人を守るのには力が必要だもん。
辺境伯がわたしたちを守ってくれた時の事が、ふと頭に浮んで笑ってしまう。
――キシ。
床が軋んだ音が聞こえた。
わたしの足音じゃないし、聞こえた方向から妹弟でもない。
わたしは、家具の陰に隠れてしゃがみ、そっと顔を出して音の方向を暗視をした。
……居たの!
そこには2人の「賊」が黒ずくめで輝く眼のみを出した姿でいた。
片手には針のように細い短剣を持ち、周囲を警戒しながら進んできている。
……勝負なの! 手加減はしないの!
わたしは、教えてもらった事を脳裏に浮かべた。
そして、影から転がるように飛び出して、拳銃の引き金を2回引いた。
「緊張感がある展開なのじゃ! 日頃戦っておらぬフォル殿の戦い。恐怖に打ち負けず守りたい者の為に勇気を振り絞る姿がカッコいいのじゃ!」
チエちゃん。解説、ありがとうございます。
戦いなれていない女の子の心境、表現が難しいですね。
もっと勉強せねばです。
「まあ、そこそこ以上には書けておるとワシは思うのじゃ! 続きを早う書くのじゃ!」
はい、頑張りますね。
では、明日の更新をお楽しみに。




