第21話 新米騎士爵は、銭湯で話を聞く。
「お待ちしてました、ブルーノさん。お勤め、お疲れ様です」
「タケ殿、どうしてここに?」
帝国騎士団ポータム警察署から出てくるブルーノを、僕は待ち構えていた。
「それは、警察にブルーノさんが出所・釈放される日時を聞いていたからですよ」
「じゃなくて、どうして俺に会いに来られたかって話なんですが?」
ブルーノは不思議そうな顔で、頭一つくらい背が低い僕を見る。
……ブルーノさん、身長190cm以上ありそう。僕だって172cmだから、日本人としては低いほうじゃないけど、頭ひとつは背が高いんだもの。
「それはですね、誰の邪魔もされない場所でお話ししたい事があったからです。そうですねぇ。だいぶお身体が汚れられていますようなので、一緒にお風呂で裸の付き合いしませんか?」
「はい??」
……掴みはOKだね。最近、この手の奇襲を良くやっているんだけど、予想外の事されたら、皆混乱しちゃうよね。
〝男湯なぞ描写しても、誰も喜ばぬぞ。せめてワシを呼んで女湯の中継をするのじゃ!〟
どこぞの魔神将が、久方ぶりに脳内突っ込み念話をしてくるが、無視。
今日は真面目な作戦なのだ。
〝タケ殿のいけずぅ!!〟
ああ、チエさんが煩いが無視するのだ。
◆ ◇ ◆ ◇
「はー、こりゃ良いなぁ。地球式の風呂が、こんなに気持ちいいなんて」
「でしょ? ここは地球式というより日本式ですね。大抵、皆病みつきになるんです。これが温泉ならなお更ですよ。陛下もお楽しみされましたし」
僕とブルーノはポータム地球人街にあるスーパー銭湯に来ている。
ヴラドレンと一緒に逮捕され、ずっと騎士団詰め所の地下牢屋内で閉じ込められていたブルーノ。
だいぶ汚れていて、服共々臭いが酷かった。
なので、綺麗になってもらうべく、スーパー銭湯へ僕のオゴリで連れて行き、一緒に併設されているコインランドリーで服を洗濯中なのだ。
湯船に男2人浸かっているのだが、絵ずら的には見栄えは良くないだろう。
〝じゃから、女湯の中継を!〟
……はいはい、ご自分でご自由にどうぞ、チエさん!
〝タケ殿のいえづぅ!〟
まだ女湯中継に未練があるチエには困ったものだ。
「すまないね、タケ殿。ここまでしてもらって助かったよ」
「いえいえ。これから話しをお聞きするのに、こちらとしても汚れたお姿でリーヤさんの前に出てもらうのも困りますから」
リーヤの事だ。
汚れきったブルーノの姿を見て、鼻を摘み「臭いのじゃ」とでも言いそう。
「おい! 俺の苦労慰安はついでかよ!」
「そういう訳でも無いですよ。ヴラドレン私兵団の隊長という事で、事件にそう関係ないのに今まで釈放されなかったのは大変だったと思います。なので、ゆっくりお疲れを癒してからお話しをお聞きしたいというのも本当です」
僕は、ゆっくり背を伸ばす。
「それにお互い武器を持たず、誰にも聞かれないところでお話したかったですから。あ、来ましたね。こっちですよ、コウタさん」
ちょうど今回の主賓が到着したのを、僕は見つけた。
「お! お待たせしたね。タケシ君」
「すいませんが、お知り合いですか。タケ殿?」
「はい、モエシア辺境伯、コウタ・クヌギ様です」
「はい!!!?」
再び驚愕の声を上げたブルーノであった。
◆ ◇ ◆ ◇
「お疲れ様です、コウタさん。アルフ星でお仕事だったとは聞いていましたが」
「うん。話し聞かないバカばかりで困ったよ。そりゃ虐殺したら御終いだけど、それは俺がイヤだし、説得するのに随分と手間取ったよ」
湯船に座り、身体を伸ばすコウタ。
「では、とんぼ返りでポータムへいらしたのですか?」
「チエちゃんのおかげで、こっちには直ぐ来れるしね。それに今回のヴラドレンの案件は俺の名前を使われているから、話を聞かないわけにもいかないし」
最近は、以前よりはポータムに顔を出しているコウタ。
どうやらナナが真面目に領主夫人の仕事をしているので、自分だけ何もしないのも悪いとでも思っているのだろう。
「さて、ブルーノくんだったっけ? ヴラドレンの事で色々聞きたいけど、イイかな?」
「はいですぅ」
すっかりコウタの「圧」に圧倒されているブルーノ。
気さくな人とはいえ、英雄に分類される人物相手なのだから、びびるもの仕方が無い。
……デモンスレイヤー、ドラゴンスレイヤー、ゴッドスレイヤー。コウタさんの称号には後、他には何があったっけ?
〝ワシが作ったジャイアントも倒したし、イフリートやショゴス、その他いっぱい退治したのじゃ、コウタ殿は!〟
チエの補足説明で、更に英雄の凄さを実感してしまう。
……僕には、こんな活躍は無理だよね。
〝ヒトには役割というものがあるのじゃ。タケ殿は、まずリーヤ殿の英雄であれば良いのじゃ! コウタ殿もナナ殿の英雄から始まったのじゃ。ナナ殿を邪神が害しようとしたから、邪神を倒しただけのじゃ。そういうタケ殿も端末とはいえ邪神を倒して居るのじゃぞ〟
……そういえばそうでした。きれっぱしの末端端末だとしても邪神を僕も倒していたよ。飛竜とは言え、ドラゴン種も倒しているから、僕も似たようなものなのね。
僕は納得しつつ、コウタとブルーノの話に聞き耳を立てた。
「最近、タケ殿は奇襲型の攻撃を多用しておるのじゃな?」
人間、想定外の行動をされると困りますものね。
そして困惑状態の間にペース掴んで、自分の土俵に引き込む。
これも作戦かと。
「作者殿も策士じゃが、いつも策におぼれてTCGでは負けさらして居るのぉ」
ごめんなさいね!
そりゃ認定ジャッジ資格あるくらいルールには詳しいけど、プレイ中は脳みそ動かないんだもの。
デッキ構築段階でメタ読みして、上回ってやっと勝負になるレベルですから。
「まあ、ヘタの横好きで良いでは無いかや? ワシも、ヘタな著作に挑戦しては失敗ばかりなのじゃ!」
自分、小説もヘタの横好きレベルですけどね。
「でも、ファンが居るだけマシなのじゃ! 今後とも励むのじゃぞ!」
はいです。
では、明日の更新をお楽しみに。




