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第2話 新人捜査官は、家宅捜査へ行く!

 時間は、銃撃戦から30分程前に(さかのぼ)る。


「ペトロフスカヤ警部補、もうすぐマナレーゼ一家(いっか)の屋敷に到着します」


「そうか。しかし、『坊や』。イイ加減、その硬い口調なんとかならぬか。ここでは此方(こなた)其方(そなた)の2人きり。その上、日本語での会話じゃ! もっと柔らかく話すのじゃ!」


 現地マフィアのボス亭へ向かう車中。

 僕は、リーヤと2人で家宅捜索へ向かっている。

 罪状は、麻薬所持及び販売について。

 一週間程前に発生した、貴族殺人事件に係る案件だ。


「そうは申されましても、僕は『お貴族様』相手にどうお話して良いのやら」


 ……だって、僕がこの間まで住んでいた日本では高貴な方々なんて、(すめらぎ)な方々しかいらっしゃらない。

 なのに、いきなり貴族身分制度バリバリな異世界に出向させられた僕の身を考えて欲しいものです。


「その割には、此方にアニメやら科学とかの話をする際には、眼を輝かせてスラングいっぱいで話すのじゃが」

「う!」


 僕は普段は大人しく静かな(はず)のに、昔から自分の得意分野になると饒舌になって早口で論述してしまうクセがある。


 ……しょうがないじゃない。オタクな話できる人、僕の周囲にあまりいなかったんだもん。


「し、しかし何で今回は僕と警部補なのですか? 例えばヴェイッコさんやギーゼラさんでは駄目だったのですか?」


 僕は話題変更の為に、今回の仕事についてリーヤに話した。


「おい、逃げたな。『坊や』、しょうがないから、また後で話をするのじゃ」


 ……うーん、逃げられないね、こりゃ。


「今回の件についてじゃが、大人数で押しかけて向こうを刺激せぬ為に2人で行く事にしたというのがマム(室長)の案じゃ! しかし、其方とヴェイッコ(狼男)では仰々しいし、対魔法が駄目じゃ」


 ……ヴェイッコさんは、銀だけでなく魔法アレルギーあるからねぇ


「また此方とギーゼラ(ドワーフ娘)では、見た目で完全に舐められるじゃろうて」


 ……身長135cmと130cmの若い女の子2人組ではしょうがないよね。


「かと言え、其方とギーゼラでは、威厳もへったくれも無いのじゃ」


 ……ボケとツッコミばかりになるんだもん、ギーゼラさんと話すと。


「いうまでもなく、此方とヴェイッコは相性最悪じゃ! なればという事で此方と其方になった訳じゃ」


 ……そう言われれば、しょうがないけどね。


 我が異界技術捜査室は、先ほど話題に出た面々に加えて、事務のフォル(猫娘)、検死官のキャロリン(マッドドクター)マム(エルフ神官)を加えて、総勢7人からなる。

 少数精鋭といえば聞こえが良いが、その実情はあまりに特異で使いにくい人材を集めて作られている。

 ここ、異世界と地球の文化が混ざる街ポータムで発生する地球技術由来の事件について、科学的捜査を行う為に異世界帝国と地球側の思惑の上で作られた「ハミダシモノ」達の独立愚連隊、それが捜査室という訳だ。


「ま、まあ、それはソレという事で。あ、到着しました」


「うみゅみゅ? もう着いたのでおじゃるか。どうも自動車というのは風情が無いのじゃ!」


 僕は、広大なマナレーゼ宅の門扉の前に自動車を止めた。

 この世界には、まだ自動車は多く導入されていない。

 もちろん誰もが運転免許という段階では無いので、僕が運転手というのも今回の仕事に選ばれた理由なのだろう。


 そして、まだ馬車が大手を振っていて、道路の舗装状態も良くない上に石畳。

 この車も四駆のオフロードタイプ。

 道が狭いところ用に日本国産の小型普通車タイプを選んでいる。


「では、門番に聞いてきます」


「では、()しなに頼むのじゃ!」


 僕は自動車を降り、門の前に立つオークさんらしい門番に共通語で尋ねた。


「すいません、自分はポータム治安維持警察隊、異界技術捜査室のモリべと申します。今回、この屋敷に領主より家宅捜査令状が発行されております。ご主人のマナレーゼ様に取り次ぎ願えませんでしょうか?」


 僕は自動車を疑い深そうに見ているオークさんに、魔法や科学技術でホログラムが立体的に投影される警察手帳と、同じくホログラムにて内容が表示される巻物(スクロール)、この場合は裁判所から発行された家宅捜査令状を提示した。


 科学技術と魔法の融合、それこそがポータムという街を賑やかにかつ過激にしている理由だ。

 科学サイドは未知の技術・原理を知る為に、魔法サイドは便利かつ効率的な機器や理論を求めて。

 それは双方に多額の(マネー)を生み出し、犯罪を多数発生させる要因となりうる。

 そこで発生する、科学だけでも魔法だけでも解決出来ない事件捜査の為に僕達がいるという訳だ。


「分かっだ。少じ待て」


 だいぶ訛った感じの共通語でオークさんは話す。


「はい、後この自動車を駐車できる良い場所を教えて下さい」


 僕がオークさんにそう言って自動車に帰ろうとした時、爆音と銃声が屋敷の中から聞こえてきた。


「警部補!」

「うむ、これは突撃するのじゃ!」


 僕らは慌てふためく門番のオークさんを無視して、門扉を魔法で破壊し屋敷内部へと突入すべく自動車を走らせた。


  ◆ ◇ ◆ ◇


 玄関で相手をしてくれた執事らしい人の顔に警察手帳を押し付けるように見せつけ、僕たちは爆音がする部屋に突入した。


「これは、なんじゃ?」


 そこでは、この屋敷の主、シカーリオ(ローマ系犯罪組織)のマナレーゼ一家(ファミリー)とジャパニーズヤクザ 山西組が戦争を始めていた。


 そして話は、銃撃戦最中(さなか)の冒頭に戻る。

続きは、本日夕方公開です。

お待ちいただける間に、ブックマーク評価をして頂けると嬉しいです!


(追記)

 今回は、弾丸について少し解説を致します。

 第一話及びこれ以降で、銃がどんな弾を使うかを述べていますが、基本は数字でそのサイズを表しています。


 数字ですが、良く使われるのがインチサイズ(1インチ25.4mm)。

 .45口径とは、0.45インチ、約11.34mmになります。

 また、普通にmmサイズでも書かれますね。

 5.56×45mmNATO弾、これは弾の直径が5.56mm(.223口径)、火薬の入った薬莢の長さが45mmあるという意味です。


 ゲームとかでは、拳銃用にマグナム(Mag)弾が出てきて威力が凄そうなんですが、実際には「普通」の拳銃弾よりは強いってくらいで、ライフル弾には適いません。


 大体の目安として、小型自動拳銃用の弾.25ACPの威力を1としたら、以下になります。(ジュール換算)


 自動拳銃

 .22LR:2  (練習用の小型弾)

 .32ACP:1.7 (日本警察の拳銃 SIG P230JP)

 5.7mm×28mm:5 (PちゃんことP90)

 9mm×19mm:4.8 (ワルサーP-38、グロック17、ベレッタM9などなど)

 7.62mmトカレフ:7 (トカレフTT-33)

 .45ACP:5 (コルトM1911)

 .50AE:22 (デザートイーグル)


 回転式拳銃

 .38Spl:2.5 (日本警察ニューナンブ)

 .357Mag:9 (コルトパイソン)

 .44Mag:16 (S&W M29)


 ライフル弾

 5.56mmNATO弾:17.6 (M-16)

 7.62mmNATO弾:32.8 (M-14)

 .338ラプアマグナム:67 (レミントンMSR)

 12.7mmNATO弾:180 (PGMヘカート2)


 見ての通り、.50AE弾を除き、圧倒的にライフル弾の方が威力が上ですね。

 ライフル弾だと土壁や薄い鉄板くらい抜きますので、遮蔽物にするにはコンクリートとか自動車のエンジン部分を盾にして下さい。


 SAOのシノンが使う12.7mm弾なんて元々は第二次大戦中の戦闘機用として、または陸戦用として開発されたM-1重機関銃の弾。

 2km先の敵兵を撃ったら、上半身と下半身が真っ二つに分かれちゃった、ってくらい凄い威力なんです。

 こいつ相手にはコンクリートもアテにならんですねぇ。


 以上、弾丸についての解説でした。


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