第63話 「海ほたる」での戦闘:その4「裏でうごめく悪意!」
「よし、3人目! フロアー制圧! ふぅ」
僕は照準線から眼を外し、大きく一つため息をする。
「海ほたる」1階大型車輌駐車場に居た3人の敵兵。
僕達は、彼ら全員を殺すことも、また大きな音を立てて上の階層にいる敵兵に気づかせる事もなく、フロアーの敵兵全員無力化に成功した。
「これで、失血死もしないし、身動きも出来ないわ。悪い子達は後からいっぱいオシオキね!」
マムは倒した3人の敵兵に最低限の治療をした後、全員を大型の結束バンドで捕縛した。
ダメ押しでリーヤが昏睡魔法を使っていたので、事件解決までは彼らが起きる事もあるまい。
「此方達に掛かれば、こんなものなのじゃ! タケは此方を褒めるのじゃ!」
小声でドヤポーズをするリーヤ。
自慢げな格好が実に愛らしい。
……多分、僕の心を和ませようとしているんだろうね。
「はいはい。リーヤさんは偉いですからね」
「そういうタケも急所を完全に外しての無力化は、お見事なのじゃ!」
……ホント、ありがとうね、リーヤさん。その一言の為に僕は頑張れるんです。
「ありがとうございます。では、皆さん次行きましょうか。ルナさんは糸を使って上の階へ上がって、先に4階・5階の偵察をして来てください。くれぐれも敵に気が付かれない様に」
「はいな! タケシさんまーかせて! じゃあ、早速行って来ます。情報は随時流しますね」
ルナは僕達に手を振った後、某蜘蛛男のように糸を器用に使い、上の階層へ登っていった。
「次はギーゼラさん。ここの止まっているエスカレーターを影に潜んだまま移動して、僕達が登る前に上のフロアーの偵察を御願いします」
「りょーかい! 敵が居たら無理しない程度に倒したら良いんだよね?」
「そうですね。無音でヤれるならどうぞ」
ギーゼラは影の精霊カンナを身に纏い、漆黒のボディスーツを装備しているかのよう。
……戦隊モノの、なんたらブラックって感じだね。そういえば、まだ黒の女性演者は居なかったような?
僕達は、ギーゼラが動いていないエスカレーターを、影に潜り上っていくのを確認し、次の行動の準備をする。
「こちらタケ。CPどうぞ?」
「はい、CP。コトミです。イルミネーター経由で状況は随時確認していますが、無事に1階を制圧した様ですね」
CPに呼びかけると、フォルで無くコトミが答えてくれた。
「はい、その通りです。CP、フォルちゃんは、どうしていますか?」
「フォルちゃんは、対ドラゴン組、皇帝陛下との通話を担当していますの。そちらは全員日本語が分かりますから、アタシが通信しています」
陛下とアレクは日本語が分からない為、通訳が必要。
そして非戦闘員で通訳ができるのは、フォルのみ。
役割分担としては正解だろう。
「そうでしたか。ではコトミさん、宜しく御願い致します。少し確認事項があります。敵兵からデジタル通信機を確保しました。敵のCPに先ほどまで繋がっていましたので、敵の動きを把握するのに役にたつかと……」
敵の通信手段を確保できたのは、今回敵兵を生け捕りに出来たからだ。
射撃で殺せば、通信機も一緒に破壊される可能性が高い。
接近戦を交えて無力化できれば、敵装備品の回収も可能となる。
「こちら、『風の塔』、チエじゃ。こちらは完全に制圧済みじゃ。トンネル火災も鎮火させたので、消防・救急隊に警察や自衛隊部隊にも入ってもらっておる。なので、ワシは分身をそちらに送るのじゃ!」
チエが通信に割り込んできたかと思うと、虚空からチエが現れた。
「皆の衆、ご苦労なのじゃ! 通信機はワシが一旦預かるのじゃ。今からCPへ跳んで、システムに繋ぐので少々動くのは待つのじゃ! ワシらも『風の塔』で何個か通信デバイスは確保したのじゃが、複数個からのデータが集まれば、余計に敵の動向が分かるのじゃ! そして敵の動きが見えたら勝ちは、もうすぐなのじゃ!」
そうチエは早口で話し、僕達からデジタル通信機を貰うと、「ばいばいきーん!」と言って、再び虚空へ消えた。
「あのヒトというか魔神様って、自由ですねぇ」
「此方、将来ああなるのが夢なのじゃ!」
僕にそっともたれ掛かるリーヤ。
僕は、リーヤの頭をヘルメット越しにそっと撫でた。
◆ ◇ ◆ ◇
「ミスター・ウォン! ご無事ですか!?」
屈強な男達が、豪華なスイートルームへ入ってきて、大声の英語で叫んだ。
「ええ、大丈夫ですよ。ここはウチの開発した防弾ガラスに囲まれていますから、何も怖く無いですね。キミ達もご苦労さまです。警備部は、トップデッキの上の方々の安全確保を優先して下さい」
「はっ! 了解であります」
コウタがドラゴンと戦った超大型豪華客船、いや超国籍企業ケラブセオン・エンタープライズ、アジア支社の社屋兼アジア地区マネージャーの家たるリコリス号。
その最上階フロアーの窓からコウタの戦う様を見ていた、中国系に見える三十路くらいの優男は、息を切らして走ってきた白人警備担当者に礼を言った。
「実に面白いものを見せてもらいました。機械や火砲の力を借りずに、あのドラゴンを生身の人間が倒すなんて、実に素晴らしいです。これだから、暗躍は辞められないのですよねぇ」
ケラブセオン・エンタープライズ アジア地区マネージャー、デビット・ウォンは、にやりと笑って小声で呟いた。
彼の笑みは、どことなくコウタ達によって倒された邪なる神に似ていた。
「なにやら、怪しげな人物が登場したのじゃな。ワシ、こやつが気になるのじゃ!」
チエちゃん、楽屋裏で本来チエちゃんが見えないところを覗いて、先の展開を読むのは違反ですよぉ。
「ワシは何事からも自由なのじゃ! まあ、作者殿を虐めるとワシの出番削られるから、この程度にしておくのじゃ!」
実に、自由奔放な魔神将ですね。(苦笑)
では、明日の更新をお楽しみに!




