第61話 「海ほたる」での戦闘:その2「海ほたるへ進入!」
「では、そろそろ僕達も出陣しますよ。コウタさん、陛下を宜しく御願い致します」
「おう!」
「大丈夫かなぁ。ボク、フォローするね」
僕はポータル室から出る前に、コウタに少年皇帝の事を頼んだ。
そこが不安なナナは助けてくれるらしい。
「タケ、僕を信用していないのかい? 大丈夫、伊達に邪神と戦っていないから。そうだ、リーヤ。イイ事を教えてあげるよ」
「何なのじゃ、陛下?」
陛下は少年っぽい顔で僕をからかう。
そしてリーヤの耳元に近付いて、何かひそひそ話をした。
「なんとぉ! そんな方法があるのじゃな、陛下?」
「もう十分に魔力運用できているリーヤならできるよね。タケをソレで助けてあげてね」
ビックリしているリーヤに、イタズラ少年の顔で話す皇帝陛下。
その様子は、お互いに美形なだけにお似合いなのだ。
……僕ではリーヤさんとは外見は釣り合わないからねぇ。こればっかりはしょうがない。内面で釣り合えるようにがんばらないと!
「ほう、タケ。此方が陛下と仲良う話しておるのを見て、嫉妬をしたのかや?」
実に小悪魔っぽい表情で僕をからかうリーヤ。
その様子は、実に愛らしい。
「そ、そんな事ないですってば。さあ、皆さん。気合入れていきますよ。あれ? 僕が仕切っちゃダメですよね、マム、アヤメさん、陛下」
つい流れで仕切っちゃっているのに気がついた僕は、指揮官達に意見を聞く。
「そうねぇ、今回はタケの方が上役ですの。だから、わたくしは構いません事よ」
「タケシくん。わたしは捜査室の皆さんの力を完全には把握していないから、『海ほたる』潜入まではわたしが指揮するけど、後は貴方に任せますわ」
「タケ。最初から余を自由に使えと命じたよな。という事で、僕を使いまわしてね」
……はぁー。このお気楽指揮官共はぁ。全員、前線で戦いたい人達だものね。もーしようがない。やるだけやりますか。
「はい、分かりました。陛下はコウタさんやナナさんの言う事をちゃんと聞いてください。ドラゴンを制圧後は、リタ姫と一緒になってゲート防衛と『海ほたる』奪還・アクアブリッジ確保部隊に分かれて下さい。そちらの分割は現場のナナさんに任せます」
「りょーかい! ボク頑張るね」
「なんで、そこで俺じゃないのかなぁ」
「だって、コウ兄ぃ。すぐに突撃するもん。指揮は後方でどーんとしてなきゃ!」
夫婦が夫婦漫才を始めたので、そちらはナナに手綱を任せた。
「こちらですが、マムとアヤメさんは前方で敵の制圧、ギーゼラさんは影潜りで先行して情報収集と敵を混乱させて下さい。ルナさんも天井などから先行偵察しつつ、敵の無力化・捕縛を御願いします」
高速剣戟が得意なマム・アヤメは、敵の制圧にぴったり。
特殊移動が可能なギーゼラ・ルナは、先行させて偵察をしてもらった方がありがたい。
「ヴェイッコさんは僕とリーヤさんの護衛を、リーヤさんは随時魔法攻撃、僕は後方で指揮をしつつ支援狙撃します。これで良いですか?」
後は随時状況に合わせて動けば良い。
「そうねぇ。アヤメ様、これでいいかしら?」
「はい、エレンウェ様。わたしも問題ないですわ」
本来、指揮をするべき2人だけど、根は前線志向だから、こうなるのは当たり前。
「ルナっち、今回も頼むね」
「うん、ギーちゃん!」
飛竜戦でも組んでもらった2人は、きちんと動いてくれるだろう。
「拙者は、いつでも何でもタケ殿の指揮でするでござる」
「此方も、タケの指揮で仕事をするのが梳きなのじゃ!」
……この2人は、最初から問題ないよね。
「では、行きましょう!」
「おー!」
◆ ◇ ◆ ◇
「総員、傾注! 『海ほたる』で状況が動いた。まもなく『風の塔』から部隊の侵入が可能になる。各員、準備を!」
ヘリコプター搭載型護衛官(DDH)「いずも」のブリーフィングルームにて、戦闘部隊指揮官の中尉から説明が始まる。
「すいません、中尉。状況をもう少し詳しく教えて下さい。このままじゃ、部下に死んで来いって言わなきゃならないんです。ドラゴンやら沢山の武装兵士の中に、突っ込めとは言えないです」
陸自少尉が、海自中尉に質問をする。
「そうだな。警察の方々も居るんだ、説明は必要だな。これは俺の独自判断で情報開示をする。事件が終わって公式発表があるまでは、部隊外には漏らすなよ」
「はい!」
少尉は、中尉が真剣な顔を崩して話し出したことに安心したが、次の瞬間驚いた。
「えー! もうドレイクは退治済み、警察の特殊部隊手伝いと主婦が撃退したんですって!!」
「ああ、ついでに言うなら作戦は9年前に現れた『異形の女神』様が指揮をして進入、既にトンネルまでの通路を確保済みだそうな。あ、犯人共も殺さずに全員逮捕済みだってな」
「はぁぁぁ???」
「あの女神様が来てくださったんだ!」
「女神様ってあの超美人の!!」
別の意味でブリーフィングルームは盛り上がった。
◆ ◇ ◆ ◇
「さあ、ここからが本番よ」
僕達は、上でのドラゴンと陛下達の戦いの隙をついて、「海ほたる」への連絡道を進む。
「そろそろ、テログループも大慌てのはず。この混乱を生かして、まずは人質の居る場所を探すの。たぶん大きなフロアーに纏めているはず。可能性としては5階の展望デッキ辺りか4階のショッピングフロアーかしら?」
アヤメの指示でイルミネーターに「海ほたる」のフロアーマップが映る。
「5階のデッキは狙撃がしやすいので犯人は居たくないでしょうね。なら4階でしょうか。これ間に大きな吹き抜けがあるので、気をつけないと移動中に撃たれますよ」
僕は狙撃手としての意見を言う。
「なるほど。タケシ君、さすが狙撃手としての勉強もしているのね。じゃあ、そういう事に注意しましょう。移動は非常用階段を基本使用。注意して移動しましょう」
僕達はリーヤによる不可視フィールドに包まれて、「海ほたる」1階大型車駐車場に入る。
……いよいよ実戦、こんな卑怯な犯人達を許さないぞ!
「さて、ワシらは一仕事終ったのじゃ。トンネルまでには大した兵も居らぬかったし、シンミョウ殿のシールドでごり押しすれば、いかなAKでも問題ないのじゃ!」
チエちゃんが居れば大抵なんとかなるでしょ?
「そりゃワシが虐殺して良いのなら、施設ごと一瞬なのじゃ。それがイヤじゃから、少しずつやっておるのじゃ。そうそう火災もタクト殿が鎮火させたのじゃ。もうすぐ消防・救急隊も現地に到着するのじゃ。これでまずは一手勝ちなのじゃ!!」
テログループって間が悪いですよね。
いくらドラゴン持ち出しても、この面子を怒らせたら無意味なのに。
「そこは作者殿が悪いのじゃ! はようリーヤ殿を活躍させるのじゃ!」
はいはいです。
お2人からファンアート貰っているのですから、活躍させないとね。
「ワシ、別に羨ましくはないのじゃぞ!」
はいはい、分かりました。(笑)
では、明日の更新をお楽しみに。




