第59話 新米騎士爵は、完全武装をする!
「では、チーム分けをするのじゃ!」
マユコの家の応接間兼作戦ルームに、沢山の人達が集まり出撃準備をしている。
今から「海ほたる」奪還作戦が実行されようとしているのだ。
◆ ◇ ◆ ◇
「タケシ、皆さんいってらっしゃい! 必ずここに帰ってきてくださいね」
「リーヤおねーちゃん、おにーちゃんを宜しくねー!!」
僕達は母と妹に見送られて、四国を離れた。
「お母様。ここにポータルは、ずっと置いておくのじゃ。これからも連絡をしてくれれば、東京や異世界へ繋げるので利用するのじゃ!」
「えー、これですぐにおにーちゃん達にまた会えるんだ!」
「そうじゃ。さし当っては事件解決後にまた帰ってくるのじゃ。では、行ってくるのじゃ!」
チエは移動用ポータルを我が家の玄関横に設置した。
これで一瞬で東京や異世界にでも行ける。
「じゃあ、行ってきます、母さん、カナ!」
「お母さま、此方も行ってくるのじゃ! 土産話持って帰ってくるのじゃ!」
「いってらっしゃい!」
そして僕達は四国を一時離れた。
◆ ◇ ◆ ◇
「わたくし共、超常犯罪捜査室からはわたくしことアヤメ、そしてタクト、ルナ、そしてコトミさんが作戦に参加します」
アヤメは意気揚々としている。
どうやら彼女は、現場に出たいタイプなのだろう。
「わたしの方は、わたしマユコ、コウタ、ナナ、助っ人として高野山からカレン、シンミョウちゃんが参戦します。リタちゃんは今はアレフ星だから、後から『槍』クンと一緒に来る予定なの」
魔神すら統べる女王たるマユコに神殺しの英雄コウタ、そしてその仲間達がくれば、ドラゴンすら怖く無い。
〝あらぁ、タケシクン。わたしの事を女王様なんて嬉しいわぁ〟
マユコの念話がすかさず飛んでくるのが怖い。
「後はワシに『朧』、そして異世界組じゃな。ではチーム分けをするのじゃ!!」
チエは、張り切って指名を始める。
「まずは、ここのC4システム。今回はマサト殿が来られぬので、代わりにメインがコトミ殿、そしてフォル殿に指揮を頼むのじゃ!」
「はーい、久しぶりの大舞台。ダンナの代わりに頑張ります。コウタ先輩、アタシちゃんとサポートするからミスしないでね?」
「コトミちゃぁん、まだ俺の事を弄るのぉ!」
コトミは、肘でコウタを突いて遊ぶ。
その様子が学生時代の悪友っぽくて、実に微笑ましい。
「皆さん! わたしぃ、頑張りますのでぇ、宜しくお願いしますぅ」
フォルは、ぺこりと頭を下げた。
「キャロ殿、そしてアンズ殿はこの場所の警護及びカンナ、チナツ、フェア殿達の子守を頼むのじゃ!」
「わかりましたわ、ワタクシ承りましたわ」
「はいです! わたしに全部おまかせー!」
アヤメの娘、コトミの娘、そしてマムの息子という守るべき存在をキャロとアンズが警護してくる。
「フェア、お姉ちゃん達のいう事をちゃんと聞いてお留守番していてね」
「はい、おかーたま!」
「カンナも無理言わないでね」
「そんなの分かってるよ。またフェア君と遊べて嬉しいよ。ね、チナツちゃん」
「うん、おかーさんも近くに居るし、安心だもん」
お子様組、その心構えが実に頼もしい。
「次は戦闘チームじゃ。まずは『風の塔』チーム。ワシが単独で直接塔のヘリポートに転移して、そこから皆を異空間ポケットから出して戦闘開始するのじゃ。メンバーはタクト殿、火災鎮圧と亜竜退治を頼むのじゃ!」
「あいよ、姉さん! 俺、久方ぶりの出番だよ。カンナ、お父さん頑張るよ!」
火の王たるホノカグツチノミコトを身に宿すタクト。
彼なら火災現場に行こうとも焼けることは無いだろうし、亜竜も怖く無い。
「次は治療系も出来る母様に高野山組。要救助者を助けながら、邪魔をする馬鹿者共を出来るだけ殺さず、ノックアウトするのじゃ!」
「えー、わたし手加減苦手なのにぃ」
「マユ御姉様、まだダメなんですか? 随分米軍相手にご練習なさったと聞きましたけど」
「カレンちゃん。あれから随分経つから、わたしだいぶ加減を忘れちゃったのよ」
恐ろしいことに、マユコは米軍の精鋭部隊相手に手加減の練習をしたらしい。
殺さずに無力化できれば一番ではあるが、それを世界有数の部隊相手に「練習」するのが、実にバケモノとしか言えない。
〝あれぇ、何かバケモノとか聞こえるんですけど〟
……え、僕そんな事思ったのですか?
〝気のせいならいいわぁ〟
実に思考すら油断出来ないお母さまである。
「まあ、最悪わたしがなんとかしますよぉ。お見合いも決まったわたしぃ、無敵ですのぉ。カレン御姉様もわたしぃに任せてください」
「えー、シンミョウ。わたしを置いてかないでよぉ。独身組、わたしが最高齢になっちゃうよぉ」
高野山尼僧組は、この期に及んでも結婚話をするのは余裕があるのか、どうなのか?
「次は対ドラゴン組じゃ。こちらは、コウタ殿、ナナ殿、陛下、アレク殿に朧じゃ! 海ほたる組と一緒にゲート施設内のポータルから現場入りして、朧によって屋上へ急速移動、そこからドラゴンを仕留めるのじゃ。後からリタ殿はこちらに向かうように連絡しておくのじゃ!」
「了解。陛下、また一緒に戦えるのが楽しみでございます」
「コウ兄ぃ。ボクも一緒だよぉ。忘れないでよぉ!」
「さあ、僕も久しぶりに手加減無く暴れん坊皇帝しちゃうぞ!」
「陛下、くれぐれもご無理はなさらぬように」
「皆様、宜しく御願い致します。皆様の防御、及び移動は私、朧にお任せください」
こちらのチームは、火力マシマシ。
ドラゴン相手でも負けはしないだろう。
「最後は、『海ほたる』潜入組じゃ。指揮はアヤメ殿頼むのじゃ。他はルナ殿、そして異界技術捜査室全員。隠密と確実な作戦行動が要求されるのじゃ。頑張るのじゃぞ!」
「では、皆さん。一時的ではありますが、わたくし遠藤アヤメが指揮をさせて頂きます。是非とも犠牲者をこれ以上出さずに、作戦を成功させましょう!」
「はーい!」
「さあ、閉鎖空間ならアタシの蜘蛛の巣で一網打尽ね」
ルナはにっこりと不敵に笑う。
僕は手の中の愛銃をしっかりと握った。
「タケ、此方頑張るのじゃ! 怖い思いをしておる皆を助けるのじゃ!」
「ええ、絶対皆助けましょう!」
僕はリーヤの顔を見て、更に思いを強くした。
いよいよ始まる「海ほたる」奪還作戦。
これからが注目ですよ!
「ワシ、良いチーム分けしたじゃろ。捜査室組は対人戦闘向きじゃし、纏めて運用したほうが間違いないからなのじゃ」
確かにドラゴン相手よりは良いかもですね。
因みに自衛隊や警察とは連絡済なのですか?
「もちろん、連絡・相談済みなのじゃ。アヤメ殿が居るから警察は直ぐなのじゃ。勝手に動いてはお互いに迷惑なのじゃ。自衛隊機には仕留め損ねたところのダメ押ししてもらうのじゃ。それに自衛隊や警察の動きは敵にある程度見えて居ろうが、ワシらの動きは予想外なのじゃ。いきなり本陣に転移されるとは思うまいて」
確かに普通の軍隊や警察の動きじゃないですからね。
では、明日の更新をお楽しみに!
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