第52話 美幼女は、義母や義妹と語り合う。
「じゃあ、リーヤちゃん。髪乾かすから、こっち来てね」
「はい、お母様」
風呂から出て準備してくれていたパジャマに着替えたわたくしは、お母様がドライヤーを準備しているところに行く。
なおタケは、わたくしやカナと入れ違いにお風呂に今入っている。
「じゃあ、ここに座ってね」
「はいなのじゃ!」
わたくしは、お母様が示した鏡台の前のスツールに座ると、お母様は温かい風をドライヤーから出して、わたくしの髪を手で軽く梳きながら乾かしてくれ始めた。
「うわぁ。リーヤちゃんの髪の毛、ものすごく細くて量が多いのね。同じ黒髪だけど、日本人とは全く違うわ」
お母様は感心しながら、わたくしの髪を乾かしてくれるのが、眼の前の鏡に映る。
わたくしは、鏡をじっと見る。
……地球の鏡は歪みが無いから、綺麗に映るのじゃ! これが此方なのかや。
鏡の中の幼女は、大きな金色の眼をぱちくりしている。
「カナは少し癖があるけど、リーヤちゃんの髪はサラサラで真っ直ぐなのね」
お母様は慈愛溢れた表情で、わたくしの髪を丁寧に乾かしてくれる。
「さっき、カナにも聞いたのじゃが、お母様はどうして此方を大事にしてくれるのかや? 此方は、お母様からタケを奪うのじゃぞ。そう簡単には実家には帰れなくなるかもしれないのじゃぞ!」
鏡の中のわたくしは、少し不安そうな表情をしている。
「そうねぇ。さっき、わたしは貴方とタケシの婚約を認めたから、かな? 確かにタケは異世界からは中々帰れないかもね。それに最後は向こうで骨を埋める事になるかもしれないわ。」
お母様は、とても大変な事をコトも無いように話す。
……タケが、最悪地球には帰れずに、異世界で死ぬかもと思っているのかや!?
「なら、どうしてなのじゃ! 第一、この家に来た時は、此方お母様が怖かったのじゃ! お母様にタケとの婚約を認めてもらえるのか、それ以前にちゃんと此方のお話しを聞いてもらえるのか、とっても不安じゃったのじゃぁ!!」
「だって、2人とも真剣にお互いを思い合っているんだもの。これを引き離すのは、いくら親でもしちゃダメね。タケシも、もう25歳。そろそろ自分の事は自分で決めないといけない歳だわ。そのタケシが、リーヤちゃんを伴侶として選んだ。そしてリーヤちゃんも真剣にタケシを選び、愛してくれている。なら、親のわたしは認めるしかないじゃないの。そりゃ、リーヤちゃんの寿命や種族の違いは、気にはなるわよ」
少し困った顔のお母様が鏡に映る。
「でもね、こうやってちゃんと話し合えるし、わたしの事も心配してくれたのよね。タケシに会えなくなるかもって。そういう優しい子なら、ヒトだ魔族だなんて些細な問題よ」
ドライヤーを止めて、お母様はわたくしを後ろからそっと抱いてくれる。
「だから、貴方はわたしの娘なの。心配しないで、ここにいる間はわたしに甘えなさい!」
「はいなのじゃ!!」
鏡の中のわたくしは、金色の眼からポロポロと涙を溢していた。
「あらあら! 泣き虫なの、リーヤちゃん? さあ、めでたい話に涙は無用よ!」
お母様は、そっとわたくしの目元をティッシュペーパーで拭ってくれた。
「ホント日本語でお話できるから助かるわ、リーヤちゃん。よく難しい日本語覚えたわよね。確か向こうの言葉は、地球でいう所の古いラテン語の変形と聞いているけど」
「此方、日本のアニメとかを見たくて一生懸命勉強して覚えたのじゃ。そしてタケが来てからは、会話をタケと日本語で話したいから一杯練習したのじゃ!」
……確か、最初に日本語を聞いたのは、フォルちゃんが見ていた動画じゃったな? あれはタケが加入する少し前の話なのじゃ。
「ふーん、そうなのねぇ。じゃあ、詳しい事は後からお布団の中で、ゆっくり聞きましょうか。わたしもタケシが風呂から出たら風呂に入るから、カナと一緒に待っててね」
「はいなのじゃ!」
「リーヤおねーちゃん、髪の毛乾いた? あ、さすがおかーさん、仕事早いね」
ちょうどのタイミングで現れたカナはパジャマに着替え、自分の部屋で髪の毛を乾かし、髪をルーズサイドテールに纏めている。
……お母様と同じ髪型なのじゃ。此方も、もう少し長くなったら、色々髪型試すのじゃ!
「じゃあ、おかーさんがお風呂に入っている間に、アイスでも食べながらお話ししよーよ」
「アイスは何なのじゃ?」
「甘酒のおいしーやつだよ!」
「なんとぉ、甘酒とは何なのじゃぁ!?」
その後、わたくしは初めて食べた甘酒アイスに感動した。
「この味わいは何なのじゃぁ! 濃厚な味わいがたまらんのじゃぁ!!」
◆ ◇ ◆ ◇
「さあ、色々聞かせてもらうわよね、リーヤちゃん!」
「そうそう、おねーちゃん。今日は寝かせないかもぉ」
「お、お手柔らかに頼むのじゃぁ……」
ここは本来広間、最初にわたくし達が案内された部屋だ。
いつもはそれぞれの部屋で寝ているそうだが、今日はこの大きな部屋に布団を3つ敷き詰めて、ガールズトークをするらしい。
……以前、ナナ殿、リタ殿とは夜のガールズトークをしたのじゃが、今日はそれより大変な気がするのじゃぁ……
なお、タケはお母様にさっさと自分の部屋に行きなさいと、追い出されている。
「母さん、カナ。あまりリーヤさんを虐めないでね」
「わたし、イジワル姑なんてならないわよ」
「おなじくワタシもイジワル小姑になんて、なりませんからね、おにーちゃん!」
タケがわたくしを心配してくれたが、お母様はわたくしをハグして意地悪なんてしないと言い、カナはカナでタケにベーっと舌を出してからかう。
「はいはい。じゃあ。母さん、カナ、リーヤさん。おやすみなさい」
「はい、おやすみ、タケシ」
「おやすみなさい、おにーちゃん!」
「おやすみなのじゃ! タケ」
そしてタケは自室へ向かった。
「さあ、リーヤちゃん。始めるわよ。まずは、リーヤちゃん自身のことからね。魔族種のことについても教えてね。代わりにわたしは、タケシの子供の頃からの話してあげるわ」
「はいなのじゃ! タケの子供の頃の話、此方聞きたいのじゃ!」
「リーヤ殿、お母様と真の意味で親子に成れたのじゃな!」
嫁と姑問題って難しいですよね。
お互いに悪意が無くても、今までの生活が違うから受け取り方を間違えて拗れる事もあります。
そして拗れが大きくなると、夫婦間にも拗れが波及し、最後は悲しい結末を迎える場合も……。
世の男性諸君、難しいだろうが頑張るんだぞ!
「そういえば、ワシも甘酒アイス食べたかったのじゃ。アレは何処の製品なのかや?」
これは、愛媛県西条市にある株式会社名水アイスの「甘酒アイス」です。
普通のもの、使用酒粕がアノ銘酒「獺祭」のプレミアム、そして他にも定番の小豆バー、Wみきゃんヨーグルトアイスバー、などなどがあります。
公式サイトから通販可能ですので、遠方の方も一度お食べいただければ幸いです。
なお、リーヤちゃん達が食べたのはプレミアムです。
私もこれ書いていて欲しくなったので、近所のスーパーで買ってきました。
「ワシも通販してみるのじゃ!」
そうそう、以前の話で紹介したモナカもお店の公式サイトから購入できますので、どうぞです。
では、明日の更新をお楽しみに。




