第46話 新米騎士爵は、地元に帰る。
「あー、やっと地元に帰った気がするー!」
僕は、上下線2本しか止まらない狭い駅ホームに降り、深呼吸をした。
「タケや、何か変な臭いがするのじゃ!」
リーヤは、ホームに降りた途端、小さくて可愛い鼻を摘む。
……その仕草、毎回可愛いんですけど。
「これは、近くにある製紙工場、紙を作っているところから臭っているんです。どうしても紙を作る時に使う薬品等が臭っちゃうんですよ。ここは日本でも有数の紙の街。ウチの事務所で使っているトイレットペーパーやティッシュペーパーも、ここの製品ですね」
……悲しいけど、地元民はこの「臭い」を嗅いで地元に戻ったと認識しちゃうんだよね。でも昔からしたら随分とマシになったらしい。母さんが子供の頃は工場横の国道を通る時は息できないくらい臭かったそうだし。
「案外、世界は狭いのじゃな。此方も毎日おせわになっておるのじゃ! そういう意味ではタケとは昔から縁があったのじゃな! しかし、東京や大阪と違って静かなのじゃ! 山も随分近いのじゃ」
リーヤは、僕に笑いかけてくれる。
「ここが、タケの生まれ故郷なのか。静かだが、微妙に力も感じるな。」
「四国は、弘法大師、空海殿の結界内じゃからな!」
陛下の問いにチエが答える。
四国八十八箇所の霊所を作った弘法大師、空海は四国は善通寺出身なのだ。
「ここは人口も9万程度、平地も少ない土地、一応、札所とかも市内にはありますけど。さあ、皆さん。では駅から出ましょうか?」
僕は先頭になってホームから伸びる階段を登った。
◆ ◇ ◆ ◇
「ありがとうございます」
僕は、驚愕している切符回収役の駅員さんに礼を言う。
……異世界人が、この駅を降りたのは初めてだからね。内緒だけど皇帝陛下が一緒なんだよ。
「では、ここからは……って、何でここにいるの、佳奈!」
「だってぇ、おにーちゃん! 駅への到着時間を知っていたら迎えに来るに決まっているでしょ!」
僕は驚いた。
駅の待合室に妹、カナが居たからだ。
「タケ、この子が話していた妹なのかや?」
リーヤはカナの前に歩み出る。
「あ、リーヤさんですよね。そして皆さん始めまして。ワタシ、守部 佳奈と言います。いつも兄がお世話になっています!」
カナは、サイドテールにした黒髪と体の一部を揺らして、ぺこりと頭を下げた。
カナ、僕の8歳年下の妹で17歳、今は地元の県立高校2年生だ。
「カナ殿じゃな。よろしくなのじゃ。此方の事はリーヤちゃんと呼ぶと良いのじゃ」
「そうなの! じゃあ、ワタシの事もカナって呼んでよね、リーヤちゃん!」
カナは両手でリーヤの両手を掴み。ぶんぶん振り回す。
そしてカナの身体の一部も大きく揺れる。
……どうやら、世間で言う小姑問題は大丈夫らしい。姑との問題よりもややこしいらしいし。
「で、リーヤちゃんは、おにーちゃんの何処が良かったの? 婚約したんだよね」
「そうじゃな、見ていて安心するへーぼんな顔と、いつも美味しいご飯を作ってくれるのと、此方の事をいつも守ってくれているところじゃな!」
「あーん、おにーちゃんらしいというか、カッコよすぎだよぉ!」
妙に盛り上がっている2人。
そういう意味では、十分小姑だと思う。
「カナ、そろそろ他の人の迷惑になるから、一旦駅から出ようよ。それに他の皆がポカン状態だから」
「あ、そうだったね。ん! おにーちゃん、今ワタシの何処見たのぉ!」
カナは僕の視線の位置を察し、急いでリーヤから手を離し胸を隠した。
そう、カナが揺らしたのはバストなのだ。
カナ、身長160cm弱、体重は平均くらいとは言っていた。
腰周りやウエストは華奢なのだが、胸のサイズが圧倒的なのだ。
……確か1年くらい前に偶然風呂場でカナの下着を見たときはサイズがDだった覚えがあるね。
「む、胸なんて見ていないよ。そういえば少し背が伸びたかな?」
「おにーちゃんの嘘つきぃ。胸見てたなんてワタシ言ってないよ! ワタシ、背なんて15の時から1cmも伸びていません! 胸のサイズは一つ大きくなったけど……」
……となるとEか。これ以上大きくなると奇乳となる。形としてきれいなのはCからEとは聞いた事があるが。
「まあ、許してあげるのじゃ、カナ殿! 久しぶりの兄上の帰還なのじゃからな」
「もー! チエさんは、おにーちゃんに甘すぎなの! この間の話も随分とおにーちゃんを甘やかしていたし」
チエは親しげにカナと話す。
話しぶりからして、2人は以前から連絡を取り合っているように聞こえる。
「一体、これはどういう意味なんですか、チエさん」
「ええ、そろそろわたくし達も紹介をしてほしいのだけれども」
僕とマムはチエに問いかけた。
「それはカナ殿から答えてもろうた方が早いのじゃ!」
「はい、皆様すいませんでした。皆様の事は兄からも聞いていますし、チエさんからも詳細な事を聞いています」
カナはチエに勧められて、話し出した。
「カッコいい男の子の皇帝陛下、お付きのアレクさん。綺麗なエルフのマムさんとお子様のフェアくん。イケメン狼のヴェイッコさん、元気ガールのギーゼラさん。天才可愛いフォルちゃん、美人お医者様のキャロリンさん、そしておにーちゃん大好きっこのリーヤちゃん。以上ですよね?」
カナは皆の顔を見ながら、それぞれ名前を告げる。
マム以降は、僕も話した事があったり全員の写真を送った事があるから、まだ分かる。
しかし、陛下の事は、まだ秘密にしていた筈だ。
どうしてカナが陛下の事を知っているのか?
「おにーちゃん、不思議そうな顔だね。あ、陛下の事ね。それはチエさんに教えてもらったの。チエさんとはSNSでいつもお話ししているし」
「そうなのじゃ! カナ殿とはタケ殿と知り合う前から相互フォローしあっているのじゃ!」
「なんでぇ? まさかチエさんは、そこまで先読みして……」
「居るわけなかろう? 本当に偶然なのじゃ。まあ、ワシはフォロワー数一万越えじゃからな!」
自慢げにフォロワー数をアピールするチエ。
「カナ、まさかチエさんの正体も……」
「うん、知っているよ。魔神将さんなんだよね。こっそり魔神姿の写真も送ってもらったことあるの。美人さんだよね?」
昔から霊的なものに興味があり、怖いものなしだったカナ。
その勢いは今も変わらない様だ。
「あ、おにーちゃん! ワタシの事ヘンだって思ったでしょ? もー、おにーちゃんだって十分ヘンだよ。武器マニア、科学オタク、そしてオカルトマニアでもでしょ?」
カナは僕の顔色から考えが読めるのか、念話が出来るのか?
いまひとつ謎だが、以前から僕は妹の前では一切隠し事が出来なかった。
……母さんの前でも隠し事できなかったけどね。頼むからベットの下の本は本棚に入れて欲しくなかったよぉ。
地元に帰って、さっそく妹のパワーに圧倒された僕だった。
「カナ殿、なかなかのパワフルギャルなのじゃ! 実は魔法的な才能もタケ殿と同じくらいあるのじゃ! ワシ、こっそり魔法講習をカナ殿にしておるのじゃ!」
暗躍(笑)しているチエちゃん、実に恐るべし。
「作者のご都合主義をフォローするのもワシの仕事なのじゃ。しかし、早くワシから独立するのじゃぞ!」
はい、そこは分かっておりますです。
さあ、では明日の更新をお楽しみに。
(追記)
今回、サンボン様の作品
「戦隊ヒロインのこよみさんは、いつもごはんを邪魔される! ~君の想いが、料理が、ウチを強くする~」
と「異世界CSI」がコラボをする事になりました。
サンボン様の作品は以下
https://ncode.syosetu.com/n0206gj/
舞台は京都、時間軸はIF、外伝なので細かい事はお気になさらずに。
いつもよりも、イチャコラ成分増量でお送り致しております。
今晩18時過ぎに公開しますので、宜しくお願い致します




