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僕は異世界で美幼女姫様と刑事をする。〜異世界における科学捜査の手法について〜  作者: GOM
第6章 捜査その6:日本ドタバタ観光編

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第42話 新米騎士爵は、事情聴取をする。

「怪我の具合はどうですか? まあ、撃たれた相手からは言われたくは無いとは思いますけど」


 僕、マム、リーヤ、チエは、京都府警のオオムラ、ミナカミと共に連続自爆テロ事件の犯人(一応容疑者だけど、現行犯だから)が入院している警察病院に来ている。


「オマエら異教徒、異世界のバケモノに言う事なんて何も無い! 早くオレを神の身元へ送るんだ!」


 僕が撃った右手だけでなく左腕、両足をベットに固定され、一切身動きが出来ない状態の「元」爆弾男。

 今は強い眼光で僕達を睨み、英語で叫ぶ。

 事件当時はゆっくり顔を見る余裕も無かったが、どうやら三十路になったばかりくらい、最初の印象よりは若く見える。


「言ったとおりでしょ。こんな感じで一切話しにならんのですよ」


 オオムラは冷房が効いた病室の中でも大汗をかき、ハンドタオルで汗を拭う。


「そうですか。でも、まだ生きる意欲が出ている分、自爆直前よりは精神状態は良いと思いますよ。あの時は追い詰められていた表情でしたから」


 僕はオオムラに日本語で話した後、再び「元」爆弾男に英語で話してみる。


「貴方の素性は既に分かっています、トーマス・ケリー。アメリカ国籍アイルランド系、32歳。高校卒業後、陸軍に入り従軍・派兵経験あり。過酷な戦場でPTSD発症後、退役・帰還するも就職に困る。そして自分を受け入れてくれない社会に不満を持っていたところ、PTSD治療に係っていたカウンセラー経由で『福音主義同盟』のシンパとなり、今回の事件を起こす事になった」


 爆弾犯、トーマス。

 彼も社会の犠牲者の1人、仲間が突然死ぬ戦場でPTSDを発症し、帰国するも社会は彼を受け入れる事が無く、唯一受け入れてくれたカウンセラーがテログループの案内人。

 あまりに悲しすぎてたまらない。


 ……戦場からの帰還者問題は、ベトナム戦争、映画「ランボー」から長く語られる問題。特に大昔と違い、近年すぐに戦場から日常に帰る事が可能になったのが余計に不味いそうだ。今では、ゆっくり時間をかけて戦場から帰還させて精神状態を安定化させる方向にあるって言ってたっけ?


 僕も殺人の罪悪感でPTSD寸前になっていたから、トーマスの苦しみは理解出来無い訳でもない。

 守るべき、そして守ってくれるリーヤの存在が僕の心を守ってくれたから。


「ど、どうして、そこまでもう分かっている!?」

「それは、貴方達を生きて捕まえる事が出来たからです。バラバラ死体からではDNA情報しか使えませんが、生きていたら色々と個人認証は出来ますからね。あ、貴方を地獄に送りつけたカウンセラー氏は既にアメリカ本国で逮捕されていますから、御安心下さいな」


 驚くトーマスに種明かしをする僕。

 顔認証が確立された現在、空港を使用していれば必ず記録は残っている。

 そして今回4人のメンバーが確保できた事で、同時に入国した客について調査が進み、日本での自爆犯達の身柄が全員判明した。

 後は、そこから遡る事で、世界全体の敵組織を調査しているのが原状。


「そ、それでもオレは神を裏切らない。オマエら異教徒は悪魔だぁ」


 動揺を隠せないのか、狼狽してあらぬ事を言うトーマス。


「あーあ、結局言っちゃったよ。リーヤさん、チエさん。やっちゃいますか?」

此方(こなた)、やるのじゃ!」

「ワシもやるのじゃ!!」


 のじゃ幼女が、キーワードを聞いてノリノリになる。

 テログループの教えの中に、異教徒は悪魔、殺す事が功徳みたいな事があったので言ってくれるかなと思っていたが、案の定言ってしまった。


「へぇー、トーマス。貴方見る目があったのですね。その通り、このお2人は悪魔、高位な魔神様ですよ」


 僕は、挑発するように前に進み出た幼女2人を指し示す。


 ……厳密にはリーヤさんは違うけど、まあ良いよね。


「そういうことなのじゃ! ワシこそは上位魔神、魔神将(アークデーモン)チエなのじゃぁ!!」

「そして此方は、その子孫たる魔族のリリーヤなのじゃぁ!!」


 2人の幼女が魔力からなる渦に包まれた後、そこには絶世の美女となった魔神が2柱現れた。


「W、What!!」


 トーマスは、恐怖に慄き叫んだ!


  ◆ ◇ ◆ ◇


「ワシが最初言ったであろう。お主を含めて救うと。今回、お主を凶荒に追い込んだバカ共。彼らは今どうしておる? そして同じく自爆を行った彼らの行いは、世界にどう見られておる?」


 チエは3眼の金色(こんじき)の眼を慈愛に満たしてトーマスを見、話す。


「此方、お主がかわいそうでならぬのじゃ! 組織はお主を道具以下の扱いをして使い捨てた。そして、今やお主は世界に戦争犯罪者、テロリストとして見られておる」


 リーヤ、少し悲しげな表情を成長した美しい顔に乗せ、説く。


「そ、それは神の望みなのだ。オレは神の望むように……」


 トーマス、恐怖の対象のはずの悪魔が優しく問う事に混乱しつつも、震えながら神への「信仰」を盾に自らの行いを正当化する。


「本当に、その望みは神が話したのかや? お主が神から直接聞いたのかや?」


 チエは、なおもトーマスに問う。


「その望み、お主達をそそのかしたカウンセラーや指導者が言ったのではないかや? これが神の望みだなどと」


 リーヤも問い詰める。


「そ、ソレは……」


 トーマス、2人の美しい魔神に問われ、今までの考えに破綻がある事に薄々気が突き出した様だ。


「ヒトや悪魔、異世界人。皆違うのじゃ。しかし、お互いに意思疎通が出来、こうやって話せれば、違いなんて些細な事なのじゃ!」


 チエは大きな胸を張り上げて、必殺ドヤ顔をした。

 誰にも信仰、信条の自由があります。

 しかし、それは他者を傷つけても良い理由にはなりません。

 違いを認め合い、お互いに歩み寄る事をやめてはならないと私は思います。


「今日はシリアスなのじゃな?」


 だって、チエちゃんが真面目なんだもの。

 作者もマジになります。

 では、明日の更新をお楽しみに。


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