第36話 新米騎士爵は、京の都でテロに立ち向かう!
「SNS情報じゃと、すでに3箇所で爆破事件が発生しておるらしい。これは一大事じゃ!」
チエは、異空間から全員分のイルミネーターを出して僕達に配っている。
画面上には、刻々と被害状況が報告されていて、警察や消防・救急も動き出している。
「チエさん、ここから脱出後はどうしますか?」
マムは、特殊警棒を片手にチエに指揮を仰ぐ。
僕達は防御結界を小さめにして、騒然としている群集の中を逃げる。
「そうじゃな。一旦、東山警察署まで避難するのじゃ。ここから歩いてなら15分、一旦ワシの異空間に入ってもらって飛べばすぐじゃ!」
チエの指示を聞き、僕達が寺の本堂前に出たとき、銃声が響いた。
「Freese!」
そこには爆発物らしきものをベストに仕込み、AKシリーズのライフルを持つ男、そして周囲にも3人程アサルトライフルで武装した男達がいた。
「ワレワレは、メシアによる福音主義同盟である。偉大なる神を信じず、メシアのよる救済を受けぬモノ達よ。オマエ達は、その行いから地獄へと行くのだ!」
英語で男たちが勝手な宣言をする。
爆弾ジャケットを着けた男は、右手にAK、左手におそらく爆発物のスイッチを持って、その銃を足元へ転がる幼い女の子に向けている。
また周囲の男共も下品な笑いをしながら、周囲の女子供達を庇う男性を殴る。
……許せない!
僕は、男たちの勝手な言い分とその所業に怒りがこみ上げる。
〝落ち着くのじゃ! タケ殿〟
僕は、チエの念話にハッとする。
僕は、無謀にもどうやら拳銃片手に飛び出しそうになっていたらしい。
〝この所業を許せないのは皆同じじゃ! ワシも許さぬ。このような愚か者は、生き地獄を味合わせるに限るのじゃ!〟
〝此方も同意じゃ! チエ殿、良い手は無いのかや!〟
のじゃ幼女2人からの怒りを持ちつつも可愛い念話で僕は落ち着く。
……問題は、あの爆発物ですね。多分、握っているスイッチ離したら爆発です。後は、3人。殺しても良いのなら、僕が拳銃で全員殺ります!
僕は、今なら冷酷に犯人達の頭蓋に9mm弾を撃ち込める自信がある。
〝タケは、そこまで思い込まなくても良いわよ。マム達にもお仕事させてね〟
〝タケ、余を甘く見ては居らぬか? 僕にも仕事させてよ〟
マムと陛下からも念話が飛んでくる。
そしてヴェイッコ、ギーゼラも僕に、緊張しつつも笑顔を向けてくれた。
フェアをマムから貰ったフォル、そして彼女を庇うキャロリンも僕に微笑む。
……なら、この策がいけるかな?
〝それは面白いのじゃ! ワシ、乗ったのじゃ〟
〝此方、やるのじゃ!〟
〝余をエサとするか。面白いぞ!〟
〝陛下、あまり御戯れをなさりすぎぬように。まあ、あのような下郎に負ける陛下ではございませんが〟
なぜかアレクまでノリノリなのが、少し面白い。
僕は皆にチエの念話経由で作戦を伝えた。
◆ ◇ ◆ ◇
「おい、そこの卑怯なバカ。何故にこうも愚かな行いをするのじゃ!」
チエは前に歩み出し、4人の犯人達を英語で挑発した。
「なんだ、このガキは?」
爆弾を持つ男は、AKを足元の幼女からチエに向ける。
「ワシか? ワシはただの通りすがりのお節介焼きじゃ。お主ら、過激思考の狂信者か? 日本くんだりまで来て自爆テロとは情けないのぉ」
チエは、いつもの「無い胸」を張るドヤ顔で男たちを挑発する。
「ガキに何が分かる! この世界は破綻をしている。我らが神を信じず、偶像崇拝をし、更には異世界なぞという悪魔と繋がり、異形になっている。今こそメシアの手により救われ、千年王国を作るのだ。我らは、その尖兵として先に天国へと行くのだ!」
如何にも狂信者という台詞を言う男。
しかし、そのAKの銃口は震え乱れており、チエを捉えられていない。
よく見ると、他の男達もその下品な笑いは引きつっており、とても殉教者には見えない。
「ほほう。口ではそう言いつつも死ぬのが怖いか。他のチームは既に自爆ずみなのにお主たちだけが生き残っているのが、その答えなのじゃ。それが当たり前なのじゃ。死ぬのが怖い、何が悪い? じゃから、早く銃を下ろすのじゃ。そうすれば、ワシ達はお主達を救うのじゃ!」
チエは、犯人達の心理を読み、説得に入る。
「そ、そんな事ができるか! もう爆弾のスイッチは入ったんだ! それに今更、先に天国に行った仲間達に顔を合わせられるかよぉ!」
爆弾を持つ男は狼狽しだす。
「それが出来るのじゃよ。見るが良い。こちらの坊や、お主達が嫌う異世界の皇帝陛下じゃ!」
チエは少年皇帝をアゴで指し示す。
「余は帝国皇帝、ニコライ2世である。其方らが、余と帝国に何を思うかは自由である。しかし、それに無辜な民草を巻き込むのは、決して同意できぬ! 恨むのなら余1人を恨むのだ!」
少年皇帝は、その魔力を全力で展開し、そのオーラーで犯人達を圧倒した。
もちろん陛下の後方ではちゃんと魔力シールドを陛下に被せるアレクがいる。
「う、うわぁ!」
爆弾男は、言葉が分からないにも係らず、陛下のパワーに圧倒され、思わずAKを陛下に向けた。
……今だ!
僕達は、行動する。
僕は、クイックドローした拳銃でAKのアンダーバレルと銃把を爆弾男の手ごと撃ち抜いた。
そしてチエはショートテレポートで爆弾男に接敵、彼の爆弾ジャケットに手を触れて、テレポートをさせる。
そう、爆弾男が身に着けているモノ「すべて」を自身の持つ異空間へと。
僕の射撃と同時に、マム、ヴェイッコ、ギーゼラが飛び出した。
カンナを纏ったギーゼラが一番早く犯人に取り付き、一瞬でライフルを取り上げて、衝撃波を纏った回し蹴りで撃破した。
……音速近い蹴り喰らったら犯人死なないかな? まあ知ったことじゃないや。
続いてマム、残像を作る程の速度で犯人に踏む込み、あっという間にライフルを押さえ込み、手に持った特殊警棒で犯人の手足を容赦なく叩き折った。
……子供に手を出したからマム、お怒りね。
一番遅いヴェイッコ、それでも犯人が反応するよりも圧倒的に早い。
僕の支援射撃で自分に向いていたライフルが飛ばされたのを確認した後、ヴェイッコは魔力を纏った拳を犯人のアゴにフック気味に叩き込んだ。
……ありゃ! 可哀想に、当分流動食だね。
そして異空間ごしにドカンと爆発音がする。
爆弾男、いやチエに全裸にされた男は、僕に撃たれた腕を押さえて呻き呟く。
「オマエ達は一体? 何故異世界のバケモノ共がこんなところに……」
「いらん事言わずに、全員眠るのじゃ! 『昏睡雲』!!
ダメ押しのリーヤによる昏睡呪文を喰らい、倒れ伏す犯人達。
「此方たちの前で、誰にも涙は流させないのじゃ!!」
リーヤの日本語による叫びが清水寺に響いた。
リーヤちゃん、カッコいいです!
捜査室の皆の大活躍で、清水寺の事件は一応の終焉を迎えました。
しかし、狂信団体の存在は不気味です。
今後のタケくんたちの日本観光はどうなるのか?
本来であれば、このままお待たせせずに毎日更新するのですが、作者7月末に急病(左耳突発性難聴)発病にてストックが切れてしまいました。
幸い病気の方は、比較的順調に回復中で今話公開時点では、聴力は殆ど問題ないレベルまで回復しましたので、8月29日より毎日更新再開したいとおもっています。
では、今後とも宜しく御願い致しますね。
それでは、29日の更新まで、しばしの別れです。
「早く復活するのじゃー! ワシ、回復祈願しておくのじゃ!」
はいはい、チエちゃんありがとうね。
「以下、リーヤ殿からもお見舞い頂いているのじゃ!」
出来ましたら、ブックマーク、評価、感想、レビュー等頂きましたら、作者更に頑張って執筆に復活できそうなので、そちらも宜しく御願い致します。
後もうちょいでブックマーク100人ですぅ。




