第35話 新米騎士爵は、京の都で事件に遭遇する!
「ここが清水寺じゃ!」
「凄い眺めなのじゃ!!」
のじゃ幼女のステレオを聞く僕達である。
今日は旅行5日目、午前中は京都観光、すでに何箇所もの寺院・仏閣・神社を回っている。
「タケ、余には寺院と神社の区別が分からぬぞ」
「ええ、わたくしも、分かりませんの。宗教施設というのは理解できるのですが」
少年皇帝とマムが、僕に聞いてくる。
マムは宗教関係者だけに、何かの宗教施設とまでは分かったらしいが。
「それは、アメリカ人のワタクシでも最初は分かりませんでしたもの」
「わたしも、学校の友達に教えてもらって、やっと分かったのぉ」
アメリカ人のキャロリン、一神教の考え方から多神教への理解は難しいし、別の宗教同士が合体なんていうのはもっと理解できないだろう。
フォルに到れば「神」と呼ばれる存在が実際にある異世界人、実際には存在しないであろう神の教えを守るというのはピンとこないはずだ。
「拙者は時代劇で知っているでござる。仏の教えが仏教でお寺、神々の教えが神道で神社でござったかな?」
「神々と仏とは違うのかや?」
ヴェイッコは完全には分からないまでも、時代劇で知った知識を語ったのだが、リーヤは、ますます分からない。
「うーん、この辺り日本人の僕でも説明が難しいですね。日本は、その土地の関係から、多くの文化が最後にたどり着く場所だったんです。なので、色んなものが混ざってくることも多かったですし、途中で元のものから変化していったのも多いです」
僕は皆に共通語で説明をする。
今回、陛下達もいらっしゃるからこっちの方が都合良い。
「元々、日本には帝国で言うところの精霊信仰的なものがありました。全てのものにはカミが宿っていて、それぞれには大事な役目があり世界を構成していると。例えばトイレにも神様がいらしゃって、綺麗に使ってくださった方に感謝をしてくださるとか」
「アタイには、なんか分かるね。この世界には力が満ちていて、それが意思を持った時に精霊になるって習ったし。確かに日本でも、そこいらで力のある存在を感じたよ」
ギーゼラは、精霊術師だけに実感できるのであろう。
「そして他所から来た神様、この場合インドという国から来た仏という存在も、神様の一柱、世界を構成するひとつとして一緒に崇拝し、その教え仏教も取り入れました。これは最近でも同じで、キリスト教という本来は絶対唯一神しか居ない宗教すらも、お隣のカミサマとして認めてます」
この宗教ごった混ぜが、日本の強み。
郷にいれば郷に従え、これに従った宗教はイベント毎としても取り入れてきた。
なので、排他的宗教とは相性がお互いに悪いのだが。
「そういえば、此方聞いた事があるのじゃ! クリスマスはキリストの誕生日祭じゃと」
お祭りイベント好きなリーヤが叫ぶ。
「ええ、基本お祭り好きな民族なので、他所の宗教的イベントも祭りにしちゃってますね。最近ではハロウインも本来の意味から変わって、コスプレイベントになっちゃいました」
「そういう訳じゃから、本来悪魔に分類されるワシもカミサマ扱いなのじゃ! 怖がられるよりは良いじゃが、崇敬・信仰は重いのじゃぁ――!」
チエは、日本語で叫ぶ。
……まあ、その気持ちは分からんでも無いけど。でも、美人で温厚でお節介焼きのチエさんだからしょうがないよ。僕も、どっちかというとチエさんの信徒だし。
〝タケ殿まで、ワシをからかうんじゃないのじゃー!〟
僕の内心呟きにまで、大声念話で文句を言うチエであった。
「うむぅ、分かったような分からないような」
少年皇帝は尚も首を捻る。
「分からないでいいんじゃないですか? 帝国では、どの神様を信仰していても自由でしょう。日本では全部の神様が信仰対象なだけです」
僕は陛下に無理に答えを出さなくても良いと伝える。
「邪神を信仰されて悪行をされては困るが、信じるだけなら自由だな。公認された邪神神殿も帝国内には存在するが」
「日本でも暴れ神、祟り神を荒神として信仰し、被害を起さぬように願っています。大抵は自然災害や疫病をカミとみたのでしょうが」
陛下が言うよう様に、とある地域では「汝が行いたい事を望むように成せ」をお題目にした「邪神」教団が存在する。
しかし、そこの住民は善良な者が多かったので、「行いたい事」=「善行」となっており、周囲とも大きな問題には到っていない。
「タケに聞いただけでも、災害ばかりの日本だ。被害低減を願うのは当たり前だな」
そんなこんなで、僕達は清水の舞台の上で目立ちながら観光をしていた。
……僕意外は目立つ美人・美男さんばかりだもの、しょうがないよね。
僕達が京の町の遠景を楽しんでいた時、街中から閃光が僕の目に飛び込んできた。
そして次の瞬間、そこから業火と爆煙が見え、数秒後には衝撃波と轟音が僕達に届いた。
「皆、陛下を警護! 周辺警戒!!」
マムの掛け声で、僕達は急いで少年皇帝の回りにあつまり、周囲に注意を払っう。
術を使えるものは、術の準備。
僕は、懐に秘めていた拳銃を握り締めた。
……新幹線だから持ち込めたけど、まさか銃が役に立つ時がくるなんて。
「今の場所は、確か重要文化財のあった寺じゃ!」
チエは僕達の周囲に防御結界を貼りながら、ネットで情報を集める。
「一体、何があったのでしょうか? 事故、それとも……!」
僕が疑問を挟んだ時、再び閃光、そして遅れて轟音が響く。
「これはテロじゃ! 何処のどいつじゃ! 京の都を汚すヤツラは!!」
チエは大声で叫ぶ。
一体、何が起こったのか、この時の僕達には知りえる事が出来なかった。
京の街を襲う連続爆破事件!
タケ達は、どう立ち向かうのか。
明日の更新をお楽しみに!




