第15話 新人捜査官は、味方の援護に行く!
「建物Aクリアー! 1人確保」
「建物B、戦闘中。残り2人」
「建物C、もうカラっぽだ!」
刻々とマムの元にイルミネーターを通して情報が入る。
多くの建物が迷路のように入り組むスラム街。
そこの中にあるマフィアの隠れ家のみを確実に無力化していく。
これは、事前に調査をしていたギーゼラ、ヴェイッコの仕事のおかげ、お手柄だ。
「マム、僕の次の出番は何時ですか? こう建物内の戦闘だと、遠距離戦用の僕の出番は無いのですが」
「あら、もうタケは十分仕事をしたわよ。ほぼ無音で歩哨2人を殺さずに無力化したんだもの。後は、大物とか立てこもりにならないかぎり大丈夫。魔法防御も無いタケに前衛はお願いしないわよ」
僕は、仕方なくマムの居る前線指揮所に待機中。
なお、リーヤも出番が無いので僕と一緒にお留守番中だ。
「タケや、しかしなんで其方の銃は大きな音をせぬのじゃ? 普通、銃はパーンって大きな音をするじゃろ?」
リーヤは、僕の愛銃を不思議そうに見る。
小さい角がすこし邪魔になるのか、ちょっこりとヘルメットを被った姿が可愛い。
「今まで銃をあまり見たことが無いはずのリーヤさんにしては、良く気が付かれましたね。これは銃に仕掛けがあるんですよ」
僕は愛銃を机の上に置いた。
「この銃口、弾が飛び出す前の途中にサプレッサー、消音機と言って火薬が破裂する時の音を和らげてくれる仕掛けがあるんです。まあ弾の速さが音よりかは随分と早いので、衝撃波、空気を掻き分ける音は出ちゃうんですが」
「そういえば、早い弾は音よりも早く飛ぶから、当った後から音が聞こえると聞いた事があるのじゃ! まあ、此方の魔法でも音よりも早い稲妻があるのじゃがな」
音速を越えるものが空気中を飛ぶと衝撃波、俗に言うソニックブームが発生する。
「モノが音よりも早く空中を飛ぶと空気を掻き分けて衝撃波、大きな音が響くんです。中にはワザと音よりも遅い重い弾を使って静かに暗殺する銃とかもあるんですけどね」
「ふむふむじゃ。此方にも衝撃波で敵を吹っ飛ばす魔法もあるのじゃ! 仕組みは分かるのじゃ!」
納得して満足したリーヤは、ドヤ顔で羽をぴこぴこ、得意満面。
その姿は可愛くて仕方が無い。
……僕、注意しないとロリ疑惑掛けられるよね。ウチの女性ってマム以外は外見可愛いロリっ子ばっかりだもの。
そんな感じでリーヤと談笑していた時、マム宛に緊急連絡が入る。
「こちら、ヴェイっちでござる。トニーの野郎、秘蔵してやがったアイアンゴーレムを起動してトンズラかましたでござる。今、拙者が食い止めておるが、倒せそうにないし、あまり時間を稼げないでござる。既に警察隊には怪我人続出。トニーはギーゼラ殿が追跡中でござる」
「聞いての通りよ、リーヤ、タケ。貴方達の出番。相手は機械。周囲に被害でなきゃナニやってもいいわよ」
「はい、マム!」
僕達は、再び戦場へ向かった。
◆ ◇ ◆ ◇
「くっそー。硬いでござる。こんな事ならグレネード持ってきておいたら良かったでござる」
拙者は、一箇所に立ち止まらないよう、かつ味方が倒れている場所にゴーレムが攻撃をしないように、軽機関銃で弾をゴーレムに指きりバーストで撃ち込む。
「こんな弾ではゴーレムの装甲に弾かれてしまうでござるぅ」
拙者の軽機関銃から高速で吐き出される弾、人間なら鎧を着ていてもずたぼろ、魔法による矢避けでも完全には防ぎきれない程の弾幕を放っている。
しかし、ゴーレムには一向に効いた気配が無い。
でも、ここで拙者が攻撃を止めヘイト役から降りたら、周囲で倒れている仲間たちが危ない。
ここはスラム街では珍しい広場。
こんな場所だからこそ、なんとかまだ拙者1人でも戦えるのだ。
「しかし、切りかかって切れる相手でもないでござる。魔剣が使えない以上、斬鉄剣が欲しいでござるよぉ」
拙者は、空になった30発弾倉を入れ替える。
残りマガジンが5と少し心もとない。
古代より獣人と吸血鬼を殺すのは銀の武具というのが定番だ。
最近、地球の科学が導入されて、この弱点がアレルギーという過剰反応によって起こるという事が分かった。
もちろん、獣人族の拙者にも銀アレルギーがある。
で、拙者には更に弱点があったりする。
拙者には魔法アレルギーがあって、魔法剣が使えない。
魔法と名のつくものには触れることが出来ないのだ。
蕁麻疹が出る、唇がはれ上がる。
最悪、息が出来なくなって死にそうになる。
このおかげで、魔剣を多数保有・使用する騎士団に拙者は入団できなかったのだ。
……そういえば、地球の魔法瓶は大丈夫でござるな。今度、タケ殿に聞くでござる。
「さて、タケ殿に魔法瓶の事を聞かねばならぬし、あの美味しい魚の煮付けを、もう一度食べるでござるよ」
拙者は弾が切れた軽機関銃を捨て、腰の刀を抜いた。
軽機関銃には銃剣を付けているけれど、こんなナイフレベルじゃあ刀の方がマシだ。
「五右衛門殿に極意を習うべきであったでござるかな?」
拙者の脳裏に、斬鉄剣で何でも切るたびに「つまらぬものを切ってしまった」と呟く着流しのサムライの姿が浮かぶ。
「さあ、この鉄くず! 拙者、ポータムのサムライ、ヴェイッコが相手をするでござる!」
ゴーレムが拙者に向かって踏み込んでくる。
これは受け止められない。
切り流せるか、そう拙者は思ったとき、ゴーレムの頭部が爆発した。
「『火炎球』じゃぁ!」
「ヴェイッコさん、助けに来たましたよ!」
「ヴェイッコ、良く頑張りましたね!」
「マム、リーヤ姉さん、タケ殿! かたじけないでござる!」
(追記)
第14話で説明できなかった銃について説明を致します。
1)デザートイーグル
大口径自動拳銃の代名詞になってしまったIWIの製品。
.357Mag、.41Mag、.41AE、.44Mag、.50AE弾を使用。
9発から7発装弾、シングルアクション、ガス圧作動式。
.50AEバージョン重量2.05kg。
その非常識な大火力と見栄えから、映像作品で大人気です。
映画「マトリックス」でエージェント達が使用していますね。
大柄でパワフルなヴェイッコ君にはぴったりのアイテムです。
2)S&W M360J
アメリカS&W社製のリボルバー型拳銃。
.38Spl5連発、重量420g。
小型ながら.38Spl及び.357Magを撃てるJフレームを採用、日本独自の仕様で.357Magを撃たないことからシリンダーをチタンからステンレスを使用している。
日本の制服警察官は2006年以降、順次ニューナンブM60から機種変更を行っている。
3) ニューナンブM60
日本の銃器メーカー、ミネベアミツミにより製作された日本警察用のリボルバー型拳銃。
.38Spl5連発、重量670g。
1960年頃から1990年くらいまで、日本の平和を守ってきた拳銃である。
なお、ニューナンブからM360Jの間に、警察にはS&W M37が一部採用されている。
4)SIG P230
スイスのSiG SAUER社が製造している自動拳銃。
.380ACP、.32ACP弾、7ないし8発装弾、重量500g。
1977年、警察用拳銃として開発、日本の警察の一部、SPや私服警官などが.32ACPバージョン(JP)を使用。
5)64式自動小銃
1964年採用、7.62mmNATO弾使用のバトルライフル。
装弾20発、重量4.3kg。
戦後初の国産小銃、7.62mm弾が反動が大きく日本人では連射が難しいので、弱装弾を使用。
(通常弾も使用可能)
M1ガーランドの後を継ぎ、誰も殺す事も無く引退中。
部品が落ちやすくてテープで固定しているとか。
後継機は5.56mmNATO弾を使用する89式自動小銃、及びHK416と争った20式自動小銃。
以上で解説を終わります。




