第25話 新米騎士爵は、仲間と海へ向かう。
「これが地球の海なのかや。異世界門でも見たのじゃが、ポータムよりも潮風が強いのじゃ!」
早朝、移動中の車中から、顔を半分出して海を見て喜ぶリーヤ。
今日は、デザインが昨日とは違うオフショルダーの白いワンピース。
リーヤ、いつもは真紅のお嬢様服だけれども、こういった清楚な地球のお嬢様スタイルも良く似合う。
ポニーテールに白いリボン、とんがり耳にハートのイヤリング、そして同じくハートのブレスレッドも可愛い。
……リーヤさん、今日はとびきり可愛いよ! 黒髪に純白って似合うんだね。
〝リーヤ殿の今日のコーディネートは、母様じゃ! 可愛いかろ? ここで更に惚れ直すのじゃ!! 水着姿にも期待するのじゃ!〟
後の自動車にいるはずのチエから、僕の内心呟きに毎度の念話ツッコミ。
もう慣れたとはいえ、どこまで暇なのか、エンターテイナーなのか?
〝ワシ、基本はエンターテイナーなのじゃ! 皆が喜ぶ顔が大好きなのじゃ!〟
もうこちらから突っ込み返す余力も無いので、一言だけ返す。
「チエさん、ありがとうね」
〝どう致しましてなのじゃ!〟
「うみゅ、タケやどうしたのかや? チエ殿は後ろの車じゃぞ?」
僕の呟きにリーヤが反応して、隣に座る僕の方へ顔を向き返す。
「いえ、今回はチエさんにお世話になりっぱなしだなって」
「確かに何から何までなのじゃ。此方、いつかはチエ殿にこの借りを返さねばならぬのじゃ!」
〝そんなの、ワシに返す必要は無いのじゃ。世界のどこかで困っておる人を助けてくれれば良いのじゃ!〟
2人の話にまで介入してくるチエ。
「リーヤさん、今の聞こえましたか?」
「うむ。どこまで聞こえておられるのか。これが魔神の力かや?」
〝ただ地獄耳なだけなのじゃ! 魔神の住まいは本来地獄らしいからのぉ〟
更に地獄ギャグまで、車内にいる全員に念話してくるチエ。
もう、どこまでも出番を求めてくるのか。
その貪欲さは見習うべきなのだろうか?
◆ ◇ ◆ ◇
そうこうしている内に自動車は目的地へ到着した。
今日の舞台は、千葉県いずみ市の太東海水浴場。
太平洋に面した眺めの良いビーチ。
無料の駐車場、そしてトイレ、シャワー、3件の海の家と至れり尽くせりなのだ。
「あれはナニなのじゃ!」
リーヤが、海に居る人達を指差す。
「ああ、サーフィン、波乗りを楽しむ方々ですね。あの板の上に乗って、海の波に流されて楽しむんです」
「ほう、簡単そうに乗っておるが、どうなのか?」
少年皇帝、朝ながら強い日差しをまぶしそうに見ながら、僕に問う。
「いえ、多分難しいかと。水の上に浮かぶ板の上に立つだけでも、かなりの平衡感覚と運動神経が必要です。夏の国際スポーツ大会、オリンピックでも競技として認められていますから」
「なるほどな。そういえばタケよ。其方は泳げるのか? 正直なところ、余、いや僕は泳げないんだ」
陛下、少し恥ずかしそうに少年の顔で僕に話す。
「僕は、学校時代に授業で習ったので、得意とは言えませんが少々なら泳げます」
「日本では学校で泳ぎを学ぶのか?」
「それはすごいのじゃ! 此方も泳ぎ方は知らぬのじゃ! タケや教えて欲しいのじゃ!」
陛下、リーヤ共に日本の学校教育で水泳が教えられているのに驚いている。
また、マム、ヴェイッコ、ギーゼラ、フォル、そしてマムに抱かれたフェアは海で泳ぐ人達の多さにびっくりしている。
マム、本日のファッションは、半袖白のシャツと細身のジーンズ。
ギーゼラは、昨日とは色違いのTシャツにジーンズ生地のショートパンツ。
フォル、女の子用アロハシャツにデニムの7部パンツ。
皆、可愛く美しく着飾っている。
フェア君、ヴェイッコとおそろいのアロハでとっても可愛い。
「アメリカでも普通の小学校では泳ぎは学びませんですわ。ワタクシも、日本の沖縄で少し泳ぎを勉強しましたの」
キャロ、大き目のサングラス越しに僕達の会話に参加する。
今日は薄青色のシャツにパンツスタイルだ。
「日本の場合は、全部の小学校にプール、泳げる池を作れるだけの財力と豊富な水資源があったのもありますが、過去に起こった水難事故から犠牲者を少しでも減らす為だったと聞いています」
昭和30年6月の瀬戸内海での紫雲丸海難事故、同年7月の三重県津市中かわら海岸での橋北中学校水難事故。
これらの悲劇を受けて、全国の小中学校に学校プールの設置指導が進められたと、後に調べて僕は知った。
「全てを海に囲まれた日本ならではの考えだな。しかし、全部の学校にプールとな。実に立派な考え、やはり日本の教育を一部でも帝国に取り入れたいものだ」
「はい、私めにも素晴らしいものに見えます。昨日お会いしたお子様達も、同年齢の帝国の民よりも高度な会話をしておりましたし」
陛下は、お付きのアレクと話し合う。
因みに陛下の今日のファッションは、青緑色のポロシャツにハーフパンツ。
アレクも一昨日の僕の助言を受けて、地味めのアロハシャツにサマーパンツだ。
「あ、リーヤちゃん。危ないよぉ。アンズちゃん、リーヤちゃんを御願いなの!」
「うん、リタお姉ちゃん! リーヤちゃん、砂が熱いし、波打ち際は波が荒いから引き込まれるよ。海に入るのなら、水着に着替えなきゃ!」
すぐにでも海に飛び込みたいリーヤ、リタとアンズに止められている。
アンズは小学生らしく、Tシャツに短めのキュロット。
リタは、昨日とは柄違いの白地に青のワンピース。
「可愛いですよね、リーヤちゃん。タケシさん、リーヤちゃんを大事にしてあげてね」
「ああ、俺から見ても良いコだと思うよ。種族の違いなんて、お互いに心が通じ合えるのなら些細な事さ。頑張れ、若者!」
コウタ・ナナ夫妻は、べったりくっついて日よけ傘で相合傘。
2人して、僕に助言をくれる。
ちなみにナナは、白いサマーカーディガンに薄桃色のワンピース、そして素足にサンダルとおしゃれな若妻さん。
「そうね、リーヤちゃんには話したけど、タケシ君。この先2人には大変な事も多いけど、愛し合っていれば必ず幸せになれるわ。だから、頑張るのよ!」
「母様の予言は確実に当るのじゃ。だから精進するのじゃ!」
マユコにチエ、2人も僕に声援を送ってくれた。
マユコ、フェミニンなオフホワイトのスキッパーブラウスに黒字にホワイトラインが入ったフレアスカート。
チエは、毎度のアニメTシャツにショートパンツ、今日は珍しくツインテールに長い髪を結っている。
「皆さん、ありがとうございます。僕頑張ってみます!」
僕は、ちゃんと姿勢を正して皆に礼をした。
「ま、まあ僕が言うのもなんだけど、普通じゃない家庭維持するのは、それなりに覚悟いるから、無理しない程度に頑張ってくださいね」
マユコの夫、マサアキが沢山の荷物を朧、ルーペットと一緒に運びながら、僕に助言をくれる。
マサアキ、この異次元家族の中で唯一の一般人、その苦労からでる発言は実に重さを感じた。
「は、はいです」
「タケや、あの赤い文字はナニを書いてあるのじゃ? 此方には『氷』と読めるのじゃが?」
アンズとリタに引きずられてきたリーヤ、海の家の宣伝用旗を見て、僕に聞く。
「はい、その通りです。リーヤさん、よく漢字が読めましたね。アレはカキ氷を売っていますという看板ですね」
「なに! カキ氷とはナニなのじゃ! 食べるものかや!? 早く此方をあの店に連れて行くのじゃ!!」
僕はリーヤのワクワクした様子を思わず笑ってしまいながら、返答した。
「はい、では姫様。海の家に早速ご案内しますね!」
シリアスが長期間似あわない作風の作者でございます。
そうそう紫雲丸事故ですが、母方の祖父が現場に偶然立ち会っていたそうです。
その頃母は小学生、祖父は海から上がってくる修学旅行の小学生のご遺体を見るのがとても辛かったと伝え聞いています。
さあ、ここからはギャグ空間。
これからしばらくは、女の子達のファッションに注目。
ええ、作者は大分苦労しましたよ。
元々、女性ファッションにそこまで詳しく無いですものね。
明日の水着シーンともども資料片手に書いてます。
あ、オトコ共の描写が適当なのは仕様です。
フェアくんくらい可愛くないと書いてて楽しくないもん(笑)。
なお、リーヤちゃんは、以下の池原阿修羅さまの可愛いイラストで助かっています。
あと、海水浴場については、ネットで調べました。
今回も作者の住む四国からは遠いですからね。
では、明日のリーヤちゃんの可愛い様子をお楽しみに。
リーヤちゃんの水着も見えるぞ!
「ワシ、池原さまに感謝なのじゃ!」
チエちゃんも感謝だそうですよ!
(追記)
紫雲丸事件の年代(昭和30年)が間違っていたので修正しました。
祖父の話とのつじつま考えたら、こっちが正解。
すいませんでした。




