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第14話 新人捜査官は、狙撃する!

「アテンション! これからマナレーゼ一家(ファミリー)残党の逮捕、掃討作戦を行います」


 今は夜の21時、マムから作戦のブリーフィングが行われている。

 各員、都市迷彩のジャケットと金属プレート付き防弾防刃ベスト、ライト・インフォメーションイルミネーター(情報統合端末)付きヘルメットを着用している。

 そこには僕ら捜査室の他、別部隊になる治安維持警察隊もいる。

 彼らは、銃を持たない代わりに雷撃を魔力付与されたスタンバトンと透明プラスチック(ABS樹脂)製盾を装備していた。


「今回のメインターゲットは、トニーというヒト種の男。他にはオーク種、トロール種、オーガ種が数名ずつ。各自、刀剣での武装はしているものの、銃器の所持は確認されていません。捜査室の方は、一方的に遠距離から叩いてください。他者を傷つけそうな場合は、射殺もかまいません。市民には一切被害を出さず、殲滅します」


 ポータムにはマナレーゼ以外にもヤクザ的なモノは存在する。

 しかし表立って警察や帝国軍に喧嘩を売る組織は存在せず、どこも大人しく店の用心棒とか、それほど「アコギ」では無い風俗店や酒場で稼いでいる。

 一般人に迷惑をかけず、女の子達を過度に虐めず、大きな盗みや人殺しに係らず、違法薬物に手を出さない限り見逃すという、暗黙の了解というものが街には存在している訳だ。

 しかし、マナレーゼはアコギに、そして派手にやり過ぎた。

 だから、身内のファミリーから情報を警察や帝国に売られて逮捕された訳だ。


「今回は、治安維持警察隊の方々も一緒に捕り物に参加します。遠距離攻撃が出来るわたくし達捜査室は、前衛の皆さんの援護をしつつ誰も逃さないようにしてくださいね」

「イェス、アイ、マム!」


 僕にとっては、初の大捕り物。

 腕の中のライフル(HK-M110A1)が重く感じる。

 そして腕や脚の振るえで、銃のスリング金具がカチャカチャ鳴ってしまう。


「大丈夫でござるか、タケ殿? タケ殿のポジションは、やや後方で撃つ仕事でござる。前衛は拙者たちがおるし、後にはリーヤ姉さんもおるでござるよ」


 ヴェイッコが僕を心配して覗き込んでくれる。

 彼は腰に日本刀、腕に軽機関銃(M27_IAR)、更に拳銃として50口径のデザートイーグルまで装備している。


「そうそう。アタイ達が大暴れするから、その後からパーンってしてくれたらいいんだよ、タケっち!」


 ギーゼラも、僕を心配してバンバン肩を叩いてくれる。

 彼女、いつもの変態(Kel-Tex)ショットガン(KSG)に手斧を抱えている。


「タケよ。何かあれば此方(こなた)が全て薙ぎ払うで安心するのじゃ!」

「リーヤさんってば! それは逆に安心できないってぇ」


 リーヤはニヤニヤ顔で僕をからかう。


「モリベ巡査。いえ、タケ。大丈夫、(みんな)貴方の腕と心意気を信じていますよ。終わったら、また皆で美味しいご飯たべましょうね」

「はい、マム!」


 その美しい顔をお母さんの表情で満たすマム。

 ここまで皆に大事に思われているんだ、頑張らないといけない。


「はい、皆さん。背中は僕に任せてください!」


 ここは僕の戦場、望んで立った場所。

 1人でも多くの人を救う為の戦いだ。


  ◆ ◇ ◆ ◇


「おい、寝ぼけるんじゃねーぞ。もうボスは居ねぇが、この(シマ)は俺達の縄張りさ。別のファミリーに大きな顔させるんじゃねぇ」


 寝ぼけ顔のオークを、強面のトロールが叱る。

 ここ、スラム街の入り口で出入りの制限をしている門番だ。


「あい、兄貴」


 そうオークが話した時、プ、パシっという音が2回したのと同時にトロールが白目を剥き、くず折れた。


「あ、兄貴ぃ!」


 次の瞬間、オークも右脛に熱い衝撃を感じて倒れた。


「あ、い、ぎゃぁぁ!」


 オークは一瞬叫ぶも、声が周囲になぜか聞こえない。

 そしてオークは、手斧の後ろ側で後頭部を殴られ昏倒した。


「クリアー!」


 こげ茶色の髪をした小柄なドワーフ娘が「影」から姿を現して手を振った。


  ◆ ◇ ◆ ◇


「ふぅぅ、うまく急所外して当ったよぉ。殺すのは楽だけど、出来るだけ殺したくないからねぇ」


 僕は、ライフルの8(PMII1)(ShortDot)スコープ(DualCC)から眼を離した。


「流石は射撃の名手じゃのぉ、タケや。其方(そなた)斯様(さよう)な特技があろうとは」

「はい、僕自身最近まで知らなかった特技ですしね」


 僕には、昔からなぜか射撃の才能があった。

 小さい頃から縁日の射的では100発100中だった。

 ゲームセンターでの射撃ゲームでも、大抵クリアーしていた。

 この辺りまでは、遊びの銃なら出来るくらいで実銃には関係ないよね、と僕自身思っていた。


 しかし異世界へ出向する事になり、僕は訓練の一環でしばらく警察学校で訓練をした。

 そして、S&W_ M360J SAKURA(拳銃)での射撃訓練で、撃った僕自身びっくりしたのだ。

 撃つ弾、全てが的のど真ん中に当る。

 まさかということで、ニューナンブM60やら、SIG-P230Jやらそこいらにある拳銃を全部撃たされても100発的中。

 もしやと自衛隊から借りてきて64式自動小銃で200m狙撃もやらされた。


 結果、ナニをやっても必中。

 そして、こいつなら何処に出しても大丈夫と太鼓判を押された上でマークスマン(選抜射手)に選ばれたという経緯があった訳だ。


 ……僕なぜか、弾がどう飛ぶのかイメージできるんだよね。


 因みにマークスマンとスナイパーは運用形態が違うらしい。

 チームの中で遠距離攻撃を得意とするのがマークスマン、少人数で対象を遠距離攻撃をするのがスナイパー。

 僕は、まだせいぜい300mくらいの射撃しかやってはいないけど、一流スナイパーだと1km以上向こうのターゲットを簡単に射抜くらしい。


 ……僕、ゴルゴさんにもなるつもりは無いぞ。タダでさえ、最近自分の専門分野がナニなにか自分でも分からなくなっているんだもの。


「で、オークの脚を吹っ飛ばしたのまでは分かるのじゃ。トロールはどう始末したのじゃ? 殺した風にも見えぬが」


 リーヤは、僕にスポーツドリンクの入った容器を渡しながら話す。


「ふぅ。アレは、トロールの頭蓋骨をギリギリ掠めて弾く角度でライフル(7.62mmNATO)弾を2発当てたんです。貫通はもちろんしないけど、衝撃、弾の勢いはそのまま中に伝わるから、それでトロールさんは脳震盪でノビたはずです」


 スポーツドリンクを飲みながら双眼鏡で僕が撃った後を確認すると、撃たれた2人とも手当てされた上で警察隊の隊員達に拘束されている。

 つまり、2人ともまだ生きているという訳だ。

 それなりに音を立ててしまったけど、ギーゼラの静寂(サイレンス)で周囲には気が付かれてはいない。


「うん、大丈夫。2人とも生かして無力化に成功だね。じゃあ、僕達も奥に進みましょうか」

「そうじゃな。まだ夜は長いのじゃ。更に倒してとっ捕まえていくのじゃ!」

 ここから捕り物、戦闘開始です。

 異世界と現代科学の戦い、どうぞご覧下さいませ。


 ブックマーク、評価、感想等頂けたら、私舞い上がってしまいます。

 どうぞ宜しくです。


(追記)

 今回は、タケ君たちの装備について説明します。


1)インフォメーションイルミネーター


 これはまだ現実では、実用化はされていない技術です。

 バイザー型の総合情報端末、映像は網膜投射、音声は骨伝道、可視光・赤外線カメラ付き、ALS(特定波長)ライト付き、遮光変色機能あり。

 AR(拡張現実的)にさまざまな情報を提示する便利アイテムです。

 通信機構は、異世界スマホ同様微小異次元ゲート経由の超空間通信。


 とまあ、便利すぎて困る未来のアイテムです。

 現実では、超空間通信じゃなくてG5回線でならある程度同様なアイテムは米軍でも歩兵用に開発中。

 総合指揮所C4システムに繋いで高度な指揮からの作戦行動が可能になります。


 なお、開発者は、おやくそく便利魔神将(アークデーモン)チエ。

 前作「功刀康太の遺跡探訪」のキャラです。

 同名のシステムは、芝村裕史先生の小説「マージナル・オペレーション」にあり、参考にさせて頂いています。


「ワシ、偉いじゃろ?」


 すいません、チエちゃんは第5章からの出番ですよ。

 まだ登場は早いです。


「作者のいけずぅ!」


 とまあ、ボケてまで出番を要求する魔神さまは放置しましょうね。(苦笑)


2)防弾装備ボディアーマー


 銃弾及び爆弾からの破片等から身を守る装備です。

 たいてい、胴体部を守るベスト状の形をしています。

 防弾性能によりグレードが決められていて、9mm拳銃弾を止めるクラス(NIJ規格II)から7.62mmライフル弾ですら止めるもの(規格III、IV)までさまざまな種類があります。

 素材としてはアラミド繊維、セラミックプレート、ポリマープレート、開発中の液体装甲(ダイラタンシーを利用)などが考えられます。


 なお、防弾装備は装備の上から撃たれても、弾丸が「貫通しない」だけで、着弾時の衝撃で打撲、骨折はあり得ます。

 内藤泰弘先生の漫画「トライガン」中でも主人公のヴァッシュが作中で防弾着越しに多数射撃を受け、「鉄球でタコ殴り」されたと文句言ってます。


 因みに日本のおまわりさんが良く装備しているのは、防刃ベスト。

 日本では拳銃よりも刃物が怖いからですね。


3)HK M-110A1

  M-27 IAR


 タケ君が使う狙撃銃、及びヴェイッコ君が使う軽機関銃です。

 この2機種は、イトコくらいの関係になりますので、同時に説明します。


 まずは双方の親?のHK416から。

 5.56×45mmNATO弾を使用するアサルトカービンです。


 アメリカ陸軍は歩兵部隊の主要火器、M4カービンの近代化改修を2000年頃にドイツの銃器メーカーヘッケラー&コッホ社(H&K社)に依頼しました。

 M4は、親たるM16の特性を引き継ぎ優秀ではあったものの、オプション装備を付けるピカティニー・レールシステム(ギザギザの固定台)を標準装備で持たず、内部が汚れやすいなど信頼性にやや問題点がありました。

 H&K社はイギリスの「ジャム(弾詰まり)おじさん(笑)」ことL85A1を改修した実績をアメリカ陸軍に買われたとの事です。


 そこで生まれたのがHK416 エンハンスド・カービン。

 レールシステムの標準装備、自動装填ガス圧方式の変更(リュングマン式からショートストロークピストン式へ)などが改良点です。


 ちなみに、このHK416のライバルが、同じくH&K社のXM8とベルギーのFNハースタル社のFN SCAR。

 XM8は高橋慶太郎先生の漫画「ヨルムンガンド」で主人公ココの私兵達が使っていますが、現実にはどこも採用しなかった様です。

 SCARは416同様、5.56mm(L)と7.62mm(H)の2モデルがあり、アメリカ特殊作戦群SOCOM等が使っています。

 SCARも「ヨルムンガンド」で登場していますね。


 さて、このHK416のバレル(銃身)を肉厚、長いもの(14.5インチから16.5インチ)に変更して、軽機関銃的な連続射撃運用(弾幕による火力支援)をしやすくしたものが、M-27 IARです。

 分類としては、分隊支援火器型で取り回しの楽な歩兵自動火器です。


 ヴェイッコ君が扱うには軽め(銃本体3.6kg)ですが、いままでの軽機関銃M249よりも軽さ、射撃精度に優れ、それまでのばらまく弾幕から、集中して狙う弾幕へと運用方法が変わっています。


 弱点として給弾方式がM4系と同じSTANAGマガジンなので、それまでのベルトリンク方式よりも装弾数が少なく射撃制圧時間が短い点。

 そして加熱劣化したバレルを簡単に交換できない点です。

 これらは運用方式の違いもあるので、照準器としてACOGなどを使用して狙って撃てば良いというのが、運用しているアメリカ海兵隊現場の評価だそうです。


 次に、このHK416をバトルライフル化、7.62×51mmNATO弾を使用するようにしたモデルがHK417です。

 アフガニスタンなどで大口径のパワーを欲しがった米軍は、これに飛びつきました。


 大口径弾を使用するということで、417を半自動狙撃銃としてバレルの変更、セミオート化など仕様変更をしたのがHK G28。

 マガジンは10連と20連の2タイプ。

 部隊内選抜射撃手(部隊内で800m以内の狙撃を行う兵士。一般歩兵と狙撃手の間)用にドイツ軍が採用しました。

 しかし、やや精度に劣る、重い(銃本体のみ5.8kg)とのことでした。


 これに目を付けたアメリカ陸軍は現在使用中の狙撃銃M110の後継機として改良を依頼、軽量化、パイポッド、一体型サプレッサーなどを装備したモデルを採用しました。

 これが、タケ君の愛用銃、HK M110A1です。


 なお、後にCQB用にHK417もタケ君とギーゼラちゃんは使います。


 以上、解説講座でした。


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