第17話 新米捜査官は、戦闘準備をする。
「ふむ。地球というか日本の事情は理解した。では、タケ。其方をリーダーとしてチームを組むが良い。日本の事情と帝国の魔法、双方に詳しい其方なら大丈夫であろう」
少年皇帝は、あろうことか僕に異世界組のボスをやれと言う。
「陛下! 申し訳ありませんが、僕は捜査室でも日本の警察機構でも巡査。ペーペーの下っ端でございます。そんな僕が指揮をするのは問題があるかと思います」
僕は急いで陛下の命令に拒否をする。
……陛下ぁ。無茶言わないでくださいよぉ。
「うん? 余の命令が聞けないとな? まあ、タケの事情は分かった。ではタケシ・モリベよ、其方に命ずる。皇帝の名において、タケをナイトの称号と共に帝国全土における皇帝直属の公安保安官を命ずる!」
「え――!!!!」
僕は陛下の無茶振りな任命に驚愕する。
「陛下、それはあまりに無茶なのじゃ。タケは此方の所有物なのじゃ。例え陛下にでもタケは渡さないのじゃ!」
リーヤ、僕の腕をぎゅっと抱いて「ほのかな」膨らみを押し付け、陛下に渡さないぞとポーズをする。
……リーヤさん。申し出は嬉しいけど、押し付けないで欲しいですぅ。さっき味わったリーヤさんの肌を思い出しちゃいますからぁ。
〝どんな触り心地だったのか、後で教えるのじゃ。ワシ、メモるのじゃ!〟
内心呟きに念話で突っ込むチエ。
僕達の様子をニヤニヤと見ているが、今は放置。
〝放置プレイも良いのじゃ!〟
……今は無視します。忙しいんですよ!
「何、リリーヤにも無関係ではないぞ。これでタケは正式に貴族の一員、アンティオキーア伯爵家に婿入りして何も問題が無くなる。それとエレンウェとリリーヤ以外の捜査室全員にもナイトを叙する。先日の帝都防衛戦の礼だ」
「え――――!!!!!!」
捜査室の全員、驚きの連続だ。
「これで捜査室は貴族・駐在武官扱い、治外法権が地球でも認められる。ナカムラ殿。これでよいかな?」
「陛下、見事な采配でございます。これで捜査室の方々が日本に於いて公に公安活動をすることが可能となりました。モリベ巡査は元々私共の所属ですし」
どんどん堀を埋められてゆく僕達。
……確かに僕は県警から警視庁、警察庁経由で異世界へ行っているけど。
「タケ殿。そして捜査室の皆。観念するのじゃ! これでワシも皆を地球での戦力扱いできるのじゃ!」
大きな顔でドヤをするチエ、そして彼女にウインクをする陛下。
更にうむうむという顔の中村にマユコにマム。
どうやら全員グルらしい。
「はぁ、もう僕は平穏平凡で居られないのね」
「タケよ。其方はリーヤや余と知り合った段階で、こうなる運命だったのだ。トモダチの御願いは聞けないのかな?」
最後に皇帝では無く、1人の友達、少年の顔で僕の顔を覗き込むミハイル。
「陛下、それは最終兵器ですよぉ。僕、トモダチの御願いは聞かないわけにはいかないですからね。はい、確かにナイトの叙任及び公安保安官の職を拝命致します」
僕は苦笑しながら、その場に膝を着き、陛下の「御願い」を聞いた。
「タケがナイトなのじゃ。これで此方の正式な夫になれるのじゃ。あーん、嬉しいのじゃぁ。早くお父様やお母様に連絡するのじゃ!」
リーヤは、すっかり結婚を夢見る乙女。
時間が時間なので、スマホからSNSで両親に連絡をしていた。
「では、僕がこれから指揮をします。副官にマム御願いします。補助にリーヤさん、頼みますよ。まずは、原状の戦力把握をしましょう」
……こうなったらやってやるさ。母さんやカナにまた土産話出来ちゃったよ。今度、陛下とリーヤさん達連れて行ったらびっくりするよね。
僕は内心で笑いながら、作戦を練り始めた。
◆ ◇ ◆ ◇
「つまり、今回は辺境伯コウタさんは使えないのですね」
「ごめんなさい。ウチのバカ亭主、久しぶりに友達に会えたので、呑めないお酒呑んじゃったの。多分明日もダメだわ。ボク、明日もイチャコラしたかったのにぃ!」
ナナはコウタの不備を怒る。
……アレ、作戦に参加できない事よりも自分がエッチ出来ない事に対する怒りだよね。くわばらくわばら。
「でもボクとリタちゃんは、タケシさんの指揮下に入るよ。ボクらは元々警察機構外からの協力だったし、遠距離攻撃と防御ならまかせてね」
「うん、タケお兄ちゃん。よろしく御願いします」
ここで異種族姉妹の参戦はありがたい。
たとえ、古代竜相手でも撃ち負ける気がしない。
「捜査室からだけれども、ウチの旦那もダメね。こっちも泥酔なのよ」
アヤメは旦那のタクトについて愚痴る。
日本最高の火炎神「ホノカグツチノミコト」と契約するタクトの不在は、少し困る。
「その代わりアタシと妹、後はルナちゃんで参戦するね」
タクトの姉妹、少女体型のカズミと長身のマヤ、凸凹姉妹だが、その火力は見事。
火炎蜥蜴と不死鳥と契約している彼女達が居れば安心だ。
そして蜘蛛美女に変身できるルナ。
その糸や巣網がトラップに使えるかもしれない。
「後は僧侶組じゃな。カレン殿、シンミョウ殿頼むのじゃ!」
「はい、チエ様」
「チエお姉様、任せて下さいね」
マユコの後輩にして真言密教秘術の使い手お姉様2人、スポーティなカレンにお嬢様風なシンミョウ。
その実力は、マユコが太鼓判を押すほどすごいと聞いてる。
「これで大丈夫じゃな。ワシと母様は、ワシの家にあるC4I指揮システムで待機じゃ。緊急時には追加投入するのじゃ! 朧よ、タケ殿達のサポートを頼むのじゃ。マサト殿、フォル殿、システム運用御願いなのじゃ!」
「はい、お母さんは留守居してますね」
「御意!」
「うん、分かったよ、チエちゃん」
「はいですぅ!」
チエは、自分とマユコを温存した。
この2人なら、例え急に邪神クラスが来ても怖くは無いし、別働隊が居ても問題なしだ。
最強の手札として、隠し持って置ける訳だ。
そして優秀なシステムオペレーターが居ると非常に助かる。
「タケ殿、以上の戦力がこちらから出せるのじゃ」
「ありがとうございます。これだけの戦力なら飛竜どころか竜数匹でも怖く無いです」
「そうじゃろ、そうじゃろ!」
ドヤ顔のチエは、出し惜しみ無く僕の指揮下に戦力を送ってくれた。
「では、こちらからはマム、リーヤさん、ヴェイッコさん、ギーゼラさん御願いします。」
「はいですわ」
「りょーかいなのじゃ」
「拙者、頑張るでござる!」
「アイよ、タケッち」
総勢13名、これだけの戦力なら一切怖いものは無い。
……あれ? 僕とヴェイッコさん、朧さん以外全員女性だよぉ! これは別の意味で困ったかもぉ!
〝うふふ、女の子達を上手く使ってオトコの株は上がるのじゃ。がんばるのじゃぞ!〟
僕の内心の心配に、またもや念話で介入するチエ。
お節介魔神様には困ったものだ。
「あ! そういえば僕やヴェイッコさんは武器が無いと戦えません。日本警察か自衛隊に借りましょうか?」
「それは安心するのじゃ! ワシがポータムからお主達の武器をアポートするのじゃ!」
チエはニヤリと笑い、空間に空いた穴に無造作に手を突っ込み、漆黒の穴の中から僕達の愛用武器をどんどん取り出した。
「何処でもどあー!」
もはや隠す気が一切無いドラ声のチエ。
「あ、ありがとうございますぅ」
僕は冷や汗をかきながら、銀河の反対側から旅をしてきた対物ライフルをよいしょと持ち上げた。
とうとうタケ君は、引けない「ルビコン川」を渡ってしまいました。
もう後には戻れませんが、リーヤちゃんと仲良く頑張ってくださいね。
さあ、日本での初戦闘、お楽しみ下さい。
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