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僕は異世界で美幼女姫様と刑事をする。〜異世界における科学捜査の手法について〜  作者: GOM
第6章 捜査その6:日本ドタバタ観光編

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第16話 新米捜査官は、被害状況を聞く。

「すいません。本来無関係な皆様まで起こしてしまいまして」


 深夜、宴会場に再び集まった僕達に向けて謝るアヤメ。


「いえ、ここに居るのも何かのご縁。僕達に何かお手伝い出来る事は無いですか?」


 僕はアヤメに手伝いを願う。


 ……だって、バツ悪いんだもの。皆が困っている時に、僕はリーヤさんとエッチ寸前までやっていたんだもん。


 マムに、こってりと絞られた僕とリーヤ。

 R18寸前まで行っていたのだから、しょうがない。


 ……リーヤさん、外見は小学生だけれども実年齢は100歳越え。この場合、本人の了解があっても、日本の法律では青少年保護条例や強制性行罪に該当するんだろうか? 日本では性的同意年齢は13歳とされているけれども、今回は該当させるのは難しいよね。こんな法的事例の第一号にならなくて良かったよぉ。


 警察入試時に勉強した刑法が頭の中でぐるぐるする僕。

 僕は頬が熱いのを感じながら、真面目に話を聞いているリーヤの横顔を上から見た。


「なんじゃ? 今は真面目な話の途中じゃ。浮かれるのは、そのくらいにしておくのじゃ! まあ、此方(こなた)も嬉しかったのは確かなのじゃが……」


 僕の視線に気がついたリーヤ、彼女も僕の考えに気がついたのか耳まで真っ赤になって(うつむ)く。


「はい、そこの初々しいカップル! 今はお仕事の話中よ。いちゃつくのは仕事後にしてくださいね」


 アヤメと一緒に前に立っているマムから僕達に、苦笑しながらの叱責が飛んできた。


「ごめんなのじゃ!」

「ごめんなさい!」


 僕達は半分ハモリながら同時に謝った。

 皆の笑い声と温かくてくすぐったい視線が僕達へと集まる。


「リーヤちゃん、後からわたしに話聞かせてね」

「うん、ボクにもね」

「余にも報告するのだ。内容次第ではザハールに言わねばならぬからな」


 異種族姉妹(ナナ・リタ)に少年皇帝はワクテカ状態だ。


 ……ちょ、陛下。ザハール様にお知らせするのは、ご勘弁をぉ!


「すいません、陛下。話を続けさせて頂けませんでしょうか?」


 アヤメが、すまなそうに話す。


「すまぬな。つい面白いネタだったからな」

「しょうがないのじゃ! ワシらの間では、作戦会議は脱線するのが毎度なのじゃからな」


 陛下は笑いながらアヤメに謝罪をするが、チエは尚も面白がりながら僕達の様子をハイビジョンカメラで撮影している。


 ……チエさん! 例え悪意無くても、勝手に映像残すのは犯罪とは思いませんか?

 〝えー、コウタ殿とナナ殿は許してくれていたのじゃ! もちろん、R15の範疇でじゃがな。言うまでもなく、タケ殿とリーヤ殿の先ほどの室内での『行為』も撮影済みなのじゃぁ!〟


 僕の内心突っ込みに驚愕の答えを念話(テレパス)で返すチエ。

 僕の横のリーヤもビクっとしているから、彼女にも念話が伝わっていると思う。


 〝大丈夫、これはワシ個人の秘蔵ライブラリーにするのじゃ。ザハール殿や陛下には内緒じゃ。まあ、ナナ殿やリタ殿には見せるかもなのじゃ!〟


 安心して良いのかどうか、判断に困る念話で誤魔化すチエ。


「おほん、良いですか! 話を続けますよ!」

「はい!」


 アヤメから説明が続けられた。


  ◆ ◇ ◆ ◇


 本日午後8時過ぎ、都内某所に巨大な「鳥」らしきものが現れた。

 しばらくはビル街の上空を飛翔していたので、その姿をSNSに上げるものが続出した。

 そして上空にいた怪鳥は、急に地上へ舞い降り人々を襲いだした。

 怪鳥が人々を襲う動画もSNSで急に広まり、通報で警察も動いた。

 どうやら数人が犠牲となったらしい。


「警察も頑張ったのですが、火力不足で追い払うのが精一杯。奥多摩方向へ逃げていったとの報告があがっています」


 僕達の前に「怪鳥」が人々を襲う映像が提示される。


「マム、これって……!」

「ええ、間違いないわ。飛竜(ワイバーン)よね」

「困った敵なのじゃ。此方でも苦戦するのじゃ!」


 飛竜、(ドラゴン)の亜種。

 飛行能力に長け、竜の頭部、蝙蝠(コウモリ)の羽、ワシの脚、蛇の尾で先に(やじり)状の毒針を持つ。

 地球では想像上の動物、イギリス等で王家が使う竜の代用紋章として見られる。


 ……空中機動性が高いから、リーヤさんの魔法攻撃も当りにくいよね。


「地球では想像上の動物なのですが、帝国のある異世界(惑星)では竜共々生息しています。確か、帝国北東部の荒野にある沼地にいたはずですよね、陛下」

「うむ、余もそう聞いておる」


 僕は、皆に説明をする。

 確かフランスではヴィーヴルと呼ばれていて、どちらも眼がとても良く上空から獲物を見つけては逃さないという伝説を僕は聞いている。


「日本の警察の火力では対応は厳しいですね。確か僕が何処かで見た論文では、飛竜の(ウロコ)は装甲として優秀で、対応するには.50口径(12.6mm)ライフル弾以上の火力が必要と聞いています」


 日本の警察では、僕も使用している.38口径(7.62mm)のライフル弾が精一杯。

 徹甲弾を使用しても飛竜相手では厳しい。

 なお、竜になると相手をするのに戦車砲クラスが必要なんだとか。


「なるほどね。わたし達も映像を見た瞬間、ファンタジー怪物(モンスター)なのは分かったので所轄や警視庁にはその旨説明連絡をしたの」


 アヤメさんは苦しそうな顔。

 多分、対策室を緊急展開していたら火炎精霊を要する彼らで飛竜を倒せていた可能性があるからだろう。

 しかし、あまりに急な事件かつ宴会中だったので初動が遅れてしまったのだ。


「そこで、すまないのですが陛下に御願いがございます」


 今まで黙っていた優男の壮年男性が話し出す。

 中村 守一(なかむら もりかず)警視長、警察庁警備局公安課長。

 アヤメの上司に当る。

 マユコの同級生、その関係で様々な怪奇現象と関係し、警視庁から警察庁へと出向したエリート、キャリア組らしい。


 ……あのお母さん(マユコ)に関係したら無事じゃすまないよね。ある意味、厄介事のもみ消し役に回されたのかな?


「何だ? マム達を貸してくれとでも言うのか?」

「はい、流石は陛下。お察しの通りです。残念ながら日本の警察機構では対処できる事件でございません。しかし、軍、自衛隊の投入となりますと今度は世論が黙っていません」


 飛竜を確実に倒すには、自衛隊、戦闘ヘリか戦闘機の投入が必要になるだろう。

 コブラ(AH-1)や虎の子のアパッチ・(AH)ロングボウ(-64D)を使うことになる。

 確か納入時点でのゴタゴタで、アパッチは日本には10機くらいしか導入されていないと聞く。

 コブラにしても、関東周辺での配備数はそう多くは無い。

 そんな目立つ機体が夜間とはいえ、戦闘行為をしたら大事だ。


 航空機となると、やっと運用が安定してきたライトニング2(F-35A)か「対艦番長」のF2になるが、飛行速度が大きく違いレーダにも写りにくい飛竜相手では、レーダーロックオンも厳しく熱追尾ミサイル(サイドワインダー)も高熱源が無い為に当てられない。


「どうして軍を動かすと民衆が黙っておらぬのだ? 自分達を守る戦力であるに?」

「陛下。日本は先の大戦以降軍事アレルギーで、国民は軍に対して拒否反応を示すのです」


 僕は陛下に事情を説明する。


「90年程前に行われた第二次世界大戦、その際旧日本軍は世界を相手にして戦いました。アメリカと世界初の航空母艦による空と海との機動艦隊戦、数々の空中戦、そして島嶼部の陸戦を戦い、物量に押しつぶされました。そして制空権を失い、敵飛行機からの攻撃を防げなくなり、街は空から雨の様に降る爆弾で焼く尽くされ、300万人以上の犠牲者を出して敗北しました」


「300万とな! その時の日本の総人口はいくらだ?」

「えーっと、今調べますね。はい、分かりました。7200万人ほどです。人口の約5%、だいたい20人に1人が戦争で亡くなっている計算になります。内訳は戦没者が230万人、残りは空襲等で亡くなった市民達になります」


 僕はスマホで大戦時の人口、戦争被害者について調べた。


「うむ。大きな戦だったのだな」

「それは恐ろしいのじゃ。帝国での戦乱、先の大災害以上の被害なのじゃ」


 僕の回答に驚く陛下にリーヤ。


「戦乱は、何処に行っても悲劇ばかりよね。わたくし、フェアには戦乱に係って欲しくないわ」

「おっかないでござるよ。今の日本からでは想像も出来ないでござる」

「アタイ、びっくりしか言えないよ」

「わたしも日本の学校で勉強して驚いたのぉ」

「今になれば悲劇よね。ワタクシも母国(アメリカ)では原爆や東京大空襲の被害なんて詳しく教えてもらわなかったですし」


 捜査室組も、その被害の大きさに驚いている。


「ボクもゲームとかで知ってびっくりしたの。日本のお船って大抵潜水艦とかに沈められたんだよね」

「わたし、戦うのは本当は嫌いなの。お話し合い出来たら良いよね」

「ええ、わたしもそう思うわ。まずは話し合ってからよね」

「あーん、眠いよぉ」


 マユコ母娘(おやこ)は、お眠状態のアンズ以外はもちろん既に事実を知っている。

 ナナは、どうやらお船を女の子(艦娘)と見るゲームファンらしい。


「市民を巻き込む戦争は、確か『孫子』では悪だったよな。それが行われた訳か」

「はい、そういう理由で戦後日本では軍事に対しては拒否感があります。戦後教育の影響もあるとは聞いていますが」


 考え込む少年皇帝。


「何処にも事情があるが、この地球も楽園では無いのだな?」

「はい、地球も過去の帝国以上に血塗られた歴史の上に、今の平穏があるわけです」


 僕は、つくづくヒトの(ごう)を呪った。

 前半部はエッチなおちゃらけ、後半はシリアスに戦争について語ってみました。

 「孫子」では市民は戦争に巻き込むものでは無いとしていますが、現在の戦争では何処までが後方なのか区別が付きにくくなっており、第二次大戦での空襲は悲劇としか言えません。

 執筆中の今、アジアを中心に世界は「きな臭く」なってきています。

 是非とも悲劇がこれ以上起きない事を祈るばかりです。

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