第15話 新米捜査官は、美幼女に迫られる。
「ふー。満腹なのじゃぁ」
宴会が終って、今は宛がわれた2人部屋に帰って一休み中。
リーヤは畳の上に敷かれた布団の上に大の字で寝ている。
「リーヤさん、ここは男部屋なんですけど。それにそんなに足開いたら中見えちゃいますって」
僕は、浴衣姿のリーヤの輝く様に真っ白い素足から眼を逸らしながら話す。
……それじゃあ、下着が見えちゃうよ。
〝タケになら見えても良い、いや見せているのじゃ〟
……ん! 今の念話は!?
僕は周囲を見る。
部屋の中には既にいびきをかきながら眠りに入っているヴェイッコ、そしてリーヤに僕しか居ない。
「チエさん、まさか今の念話って?」
〝ワシじゃないのじゃ。まあ、『そう言う事』なのじゃ。タケ殿、リーヤ殿を襲っちゃダメなのじゃぞ! その代わり、見るだけなら構わぬのじゃ!!〟
僕の呟きにすかさず念話を返してくれたチエ。
確かに先ほどの念話とは『声』が違う。
つまり……!
「リーヤさん、もうそんな事! 僕はリーヤさんを大事にしたいんですから! 自分を安く売らないで下さいね」
「いつも、堅苦しいのじゃ、タケや」
起きだして、大きく脚を広げながら布団に座るリーヤ。
「リーヤさんってば! 一体、どうしたんですか? 今まで使わなかった念話もそうですが、無防備というか自分から迫る様な事をするなんて……」
僕は、リーヤの急な心変わりが不思議でならない。
確かに、これまでもふざけてボディタッチや軽いキスとかはあったけれども、今回は自分から僕に身を差し出した形だ。
そしてわざわざ念話を使ってまで僕を誘うなんて……。
「此方、今回の旅行でヒト族の恋愛について沢山学んだのじゃ。魔族種と違ってヒト種の寿命は短い。その分、此方達から見れば凝縮された熱い人生をおくって居るのじゃ。なれば、ヒトのタケは此方と此方のペースで付き合えば、あっという間に人生が終ってしまうのじゃ」
リーヤは頬を紅く染め、目に涙を浮かべて僕の顔を見る。
どうやら今日のお姉さま方や子供達同士での会話で何か思うところがあった様だ。
それに良く見るとリーヤの横にチューハイの空き缶がある。
……リーヤさん、呑んじゃったんだ。
「此方はそれで幸せなのじゃが、タケは不幸せになってしまうのじゃ、此方はタケと一緒に幸せになりたいのじゃ! もちろん今の姿ではタケを慰めるのが難しいのは十分分かってはおるのじゃ。じゃからこそ、つい焦ってしまったのじゃ」
今にも眼から涙がこぼれそうなリーヤ、髪を解いた姿はとても綺麗だ。
「もう、この慌てんぼうさん。僕はいつまでもリーヤさんと一緒に居るって言いましたよね。だから無理に背伸びしなくても良いんですよ。今はこれくらいで十分」
僕は微笑みながらリーヤに話して、彼女をそっと抱きしめた。
「タケ!」
「あまり動かないで下さいね。如何なお子様でも綺麗なリーヤさんだから僕、我慢できなくなっちゃうかもしれませんから」
僕は苦笑いしながら、そっと胸に抱いたリーヤの温かさと香りを楽しむ。
「なれば、此方もぎゅーじゃ!」
そう言って僕の背に手をまわし更に足まで使って、ぎゅーと抱き付いてくるリーヤ。
ますます彼女の熱と香りが僕に迫る。
飲酒の為か、いつもより体温が高く感じられ、甘い匂いも強く薫る。
「あー、良い匂いじゃ。なるほど、マムが気に入るはずなのじゃ!」
僕の胸に顔を押し付けてくるリーヤ。
そして、僕のお腹に押し付けられた「ほのかな膨らみ」とその先端にある2つの突起が動くのを感じた。
……これは! ちょ、不味いって。僕、我慢出来なくなっちゃうよぉ!
〝我慢しなくても良いのじゃ! 此方、ワザとタケに押し付けておるのじゃ!〟
リーヤ、どうも酔っ払って発情してしまったらしい。
ここは大人の僕が我慢して、行為を終らせなければいけない。
「リーヤさん、顔を上へ」
僕はリーヤにそう言い、顔を上げて何か言いたそうな彼女の唇を僕の唇で塞いだ。
「ん!」
一瞬びっくりした顔をしたリーヤ、そのまま眼をつむり、僕を抱く力をより強くした。
……あー、これで僕はザハール様に殺されちゃうかも。どこが我慢だよ。前言撤回、もー最後までいっちゃおうか?!
〝そうじゃ、そうじゃ!〟
アルコールの勢いにまかせて、僕が唇を開いて舌を伸ばし、そっとリーヤの浴衣の中に手を入れた時、突如大音量の警報音が保養所内に鳴り響いた。
「え!」
「一体何じゃ!」
僕達は、跳ね飛ばされたように身を離した。
「お休み中のところ、申し訳ありません。警察庁の中村様、神楽坂様。緊急連絡が入っております。支給、お電話をお取りくださいませ」
館内放送は、警察関係者へのものだった。
という事は何か大きな事件、それも超常犯罪対策室を呼ぶのだから普通の警察では手に負えない事件に違いない。
「リーヤさん、これは事件ですね。僕達もマムのところへ行きましょう」
「そうじゃな。よし、これで浴衣の乱れは無いのじゃ。では行くのじゃ! ヴェイッコは後からでも間に合うのじゃ」
そしてリーヤは衣服の乱れを直して僕の手を握り、前を進む。
……はー、危なかったよぉ。もう一歩でリーヤさんとエッチしてたよ。
「此方は、それで良かったのじゃがな。まあ、これ以上タケを困らせるのもダメじゃな。次は、此方がもう少し心身ともに成長してからじゃ。それまで待てるよな、タケや?」
「はい、喜んで!」
僕達は事件に向かうというのに不謹慎にも笑いながら走った。
……次か。だいぶ未来になるだろうけど、楽しみに待ってましょ。
◆ ◇ ◆ ◇
「どうやら都内で不可思議な事件が起きたらしいなの。なんでも全長数メートルもの大きな鳥らしいのが現れて人や街を襲ったそうなのよ。こっちではそんな鳥はいないそうなので、バケモノじゃないかって話」
寝起きながら綺麗に身を整えたマム、対照的に眠そうなギーゼラ。
そして妙に張り切っているフォル、いまだ泥酔状態のキャロリン。
皆、それぞれな状況だ。
「で、リーヤは今まで何処にいたの? タケと一緒って……!? まさか!」
「いえ、『そういう事』には到っておりませんです!」
「そうじゃ、まだ未遂なのじゃ!」
僕は、マムの指摘に対して真実を語った。
リーヤに関しては「真実」を語りすぎでは無いかと思うが。
「未遂ですって!! リーヤ、まさか襲われたの?」
「いや、此方から誘ったのじゃ。タケは我慢辛抱して此方を襲わなかったのじゃ。実に残念なのじゃ」
リーヤ、真実しか語っていないのだが、あきらかに本音を漏らしすぎ。
襲われなくて残念、とは幼女が言う台詞では決して無い。
いや、あってはならないのだ。
「リーヤさん、今回の事はお父様には話しませんが、後からゆっくりとお説教よ! タケ、今回はよく我慢しましたわね。でもアナタにも隙があるから迫られたのです。もっと身持ちを硬くしなさい。貴方達が愛し合っているのは分かっていますし、わたくしも応援しています。ですが、まだ行為には早すぎます! 綱紀粛正です!!」
「はいなのじゃぁ」
「はい、気をつけます」
僕達は、マムにこってりと絞られた。
……でも、これも良い旅の思い出になりそう。
僕は、指先で触れたリーヤの肌の暖かさと柔らかさ、滑らかさを記憶にとどめた。
今回は、作者初の主人公とヒロインのキス以上のラブシーン、後一歩でR18送りの内容になりそうでした。
リーヤちゃん、大胆に自分の魅力でタケ君を襲いすぎです。
「ワシ、今回も録画に成功したのじゃ。これをナナ殿や母様に売るのじゃ。マム殿とは交渉次第じゃな。ザハール殿や陛下にバレたら大変じゃからな。これでもワシはタケ殿とリーヤ殿の恋愛を応援しておるのじゃ!」
デバガメ魔神、チエちゃん。
今回もHDカメラで盗み撮りをした様です。
まったく困ったモノです。
「ワシ、ナナ殿とコウタ殿のラブシーンは遠慮しておるのじゃぞ。じゃってバレたらワシ、存在を消し飛ばされるのじゃ。キスシーン以上、R18シーンは撮影しないのじゃ!」
どうやらチエちゃん、この作品がR18になるのは阻止してくれているようです。(苦笑)
では、明日の更新をお楽しみに。
(追記)
リーヤちゃんのアダルティなイラストを、池原阿修羅さまから再び頂きました。
感謝感激ですぅ。
挿絵にも使っていますが、以下どうぞご覧下さいませ。
イラスト:池原阿修羅さま




