第14話 美幼女は、子供達と談笑する。
「ふむふむ。こっちではそうなのかや? 学校とやらは面白いのじゃ!」
「でも、学校は勉強とか大変だよ。フォルお姉ちゃんはコッチの大学だったから知っているよね」
「うん、アンズちゃん。わたし本格的に勉強し始めたのは、ずいぶん遅かったから大変だったよ。それに言葉から覚えなきゃダメだったし」
わたくしは、美女たちから開放されて、今は子供達と一緒にいる。
何処の世界でも子供達は同じ、世界や種族の垣根を簡単に越えてくる。
「学校って集団生活だから目立つと大変なの。だからわたしも魔法使えることなんて誰にも内緒だよ」
マユコの娘、アンズは学校で目立たない様にしていると話す。
……しかし、その可憐な容姿では集団の中で目立たないのは無理では無いかと思うのじゃ。
ぴょこぴょこと元気に揺れる短めのポニーテールに母親譲りの美貌、わたくしが男の子なら注目せずにはいられまい。
「そういう意味では、わたしも大変。魔力持ちの上にハーフで金髪なんだもの。日本の中学じゃ目立って仕方が無いよ。お父さんは心配症だけど、アンズちゃんの言う通りかもね。リタお姉ちゃんは、良く困らなかったと思うの」
アンズを背中から抱っこしている金髪美少女アリサ、顔立ちはタケ達日本人同様の上に父親がどう見ても日本人なだけにどうやら混血らしい。
自分と同じく日本人とは完全に容姿が異なるリタの状況と比べてしまうのだろう。
「目立つと、どう困るのじゃ? 優れているのは良い事では無いのかや?」
「日本では、目立つと叩かれちゃうよぉ。こっちの諺に『出る杭は打たれる』というのがあるのぉ。確かに日本では身分差とか貴族はもう無いから誰も平等なんだけれどもぉ、その分平等、同じというところから良くも悪くも離れたら……ね」
フォルが、わたくしに補足説明をしてくれる。
フォル自身も地球人とは違う容貌と、その優秀な頭脳で目立ったことだろう。
タケによると、過去テレビで天才猫美少女としてフォルが紹介された事があったらしい。
「その点、アメリカでは表向きには『そういう事』は無いな。まあ、それでもスポーツ系が出来る人の方がオタク系よりもスクールカースト高いけれどね」
綺麗な日本語を話す金髪少年、アメリカとやらに在住で母国語は英語らしいが母親が重度の日本アニメオタクだったそうで、その影響で日本語を覚えたんだとか。
……此方と同じじゃな。好きなものを知るには、それを語る言語から知るのが一番じゃ!
「わたし達って日本社会、というか地球文明社会からしたら異質だもんね。まあ、わたし達ならお母さんのところに就職したり、コウタお兄ちゃんやリタお姉ちゃんのお手伝いできるから将来は楽だよね」
黒いおかっぱ髪で公安代表の娘、カナミはさっぱりと話す。
彼女の周囲には小さな炎の精霊が周囲を舞っていて、きらきらとしている。
火炎精霊使いの血族らしい。
「あー、フェア君かわいー。エルフって妖精さんみたいぃ」
わたくしよりも小さな女の子、チナツがフェアを抱っこしている。
こちらは、外見は到って普通の可愛い日本人幼女だ。
なかなかの魔力持ちではあるのだが。
「何処も一長一短があると言う事じゃな。しかし、教育が大事なのは確かなのじゃ。此方も捜査室に来てからの半年の方が、これまでの100年以上の人生よりも濃いのじゃ! 学ぶ事が一杯で楽しいのじゃ!」
……特にタケと出会ってから、日常すらも楽しいのじゃ。
「リーヤちゃんってば、タケお兄さんに惚れているものね。ナナお姉ちゃんに聞いたよ」
アンズは、ニヤリとわたくしの顔を見る。
女というものは、幼くても恋愛話に興味があるものなのだ。
……ナナ殿、其方には守秘義務というモノは無いのかや?
「お姉ちゃん達に口止めしても無駄だよ。リーヤちゃん、ずっとタケお兄さん見ているんだもん。それに心の中で好き好きって大声出しすぎ。分かり易過ぎるよ!」
どうやらアンズには念話能力があって、わたくしの考えが読めているらしい。
〝だって、リーヤちゃんかわいーんだもん。恋の行方を応援したいよ〟
〝そうだよね、アンズちゃん。わたしもステキな王子様に出会えないかな? あ、陛下って彼女居ないのかな? リーヤちゃん、知っていたら教えてくれないかしら?〟
〝まあ、わたしも恋愛に興味が無い訳じゃないし。自分には早いとは思うけど〟
〝男としては、女の子から惚れられるのは悪い気はしないしな〟
アンズとアリサ、カンナ、そしてジョナサンから立体念話が飛んでくる非常識な状況。
「ふみゅ?」
〝フェア君、こっちだよ〟
先程からフェアに対して通訳をしていないのに話が通じている事に気が付かなかったのだが、良く『聞けば』チナツは念話でフェアと会話をしている。
「何! 全員念話が出来るのかや? もしかして満足に念話が出来ないのは此方だけなのかや!?」
わたくしは、恐ろしいことに気が付いた。
外見がわたくしとそう大きく変わらない地球人の子供達が、わたくし以上に魔法に習熟している事を。
……人生10年程のお子ちゃま達に、100歳越えた此方負けたのかやぁぁぁぁ! これが学習の差なのかやぁ!?
これがチエ関係者の恐ろしさ、侮りがたし地球人。
「だって、割と基本的な魔法だもん。リーヤちゃんも覚えておくとタケお兄ちゃんの思っている事分かって面白いよ。わたしがさっき覗いたら、タケお兄さんってコウタお兄ちゃんと同じくらい心が綺麗で、リーヤちゃんの事好き好きで一杯だったよ。まあリーヤちゃんもおんなじくらいタケお兄さんの事好きみたいだし、相思相愛だね」
……えぇぇぇー!! それはどういうことなのかやぁぁぁぁ!!!!
わたくしは、カンナに自分の気持ちとタケの気持ちを教えられてしまった。
すっかり熱を持ってしまったかのような頬を思わず押さえてしまったわたくし。
多分、わたくしの姿を外から見たら夕方露天風呂で茹で上がった時の様になっているのだろう。
「いいじゃん。種族や世界を超えたラブロマンス。あーん、良いなぁ」
「でしたら、わたしも陛下と……。リーヤちゃん、どうかしら?」
「お母さん辺りに知られたら、延々と情報抜かれてチエちゃんが分身でストーキングしちゃいそう」
「はー、なるほど。父さんと母さんが歳の差で入り婿結婚した理由がなんとなく分かったよ。こうやって盛り上げる周囲がいたんだな」
「あー! フェア君ってば、かわいー」
わたくしを囲ってすっかりピンクな雰囲気になった子供達。
これをオマセというべきなのか、人生が魔族種と違い短い分凝縮した人生を送っているヒト種だからなのか。
時間を無駄にのんびりしている魔族種の時間から、最近ヒト種のペースに巻き込まれているわたくし。
わたくしは、種族間の時間感覚差を今回の旅行で、イヤという程実感した。
「此方、ゆっくりしてはおれぬのか」
「リーヤちゃんにはリーヤちゃんの都合もあるんでしょ。だから、今は今の関係を大事にしたら良いとわたしは思うよ。と、ナナお姉ちゃんとかお母さんなら言いそう」
にっこりと「ひまわり」をイメージさせる笑顔のアンズ。
「そうじゃな。アンズ殿ありがとうなのじゃ!」
「そうそう。その笑顔で落とせないオトコノコなんていないぞ!」
まるで姉のようにわたくしに語りかけるアンズ。
何故か、その背後にエルフらしい成人女性姿をわたくしは感じた。
「リーヤさん! それに皆、デザートの果物とアイスが来るよ。早く席に戻って食べなきゃ!」
タケがわたくし達にデザートの到着を知らせてくれた。
「さあ、行ってタケお兄さんに甘えなきゃ!」
イタズラっぽい顔でわたくしの背を軽く押すアンズ。
「ありがとうなのじゃ。フェア殿、アイスじゃ。美味しいのじゃぞ!」
わたくしは、フェアの手を取り愛するタケの元へ戻った。
「タケや、此方のアイスは何処なのじゃぁ!」
案外、深いことを語るアンズちゃん。
前作「功刀康太の遺跡探訪」最終部に登場した彼女ですが、実はリタちゃんの守護女性騎士アンゲリカちゃんの生まれ変わり、転生体です。
その為に、年齢に見合わぬ魔力を持っていたり、高度な話をしたりします。
しかし、まだ前世記憶が蘇った訳でも無いですし、外部も本人にはまだ転生の事実を知らせる気は無いのですがね。
それと一時期アンゲリカちゃんの霊体がアリサちゃんに憑依していた関係で、お互いにその事を知らぬも、今でも2人とっても仲良しです。
しかし、やっとタケくんへの気持ちが「好き・恋愛」というものである事を自覚したリーヤちゃん。
相思相愛にも気がつけてよかったですね。
まだまだ大変な事が多いですが、頑張ってね。
作者も応援してますよ。
「そうなのじゃ、絶対幸せにしてやるんじゃぞ。ワシ、一杯頑張ってカップルつくったのじゃから」
はいはい、チエちゃんには適いませんから。
では、明日の更新をお楽しみに。




