第13話 新米捜査官は、懐かしい人に出会う。
「この度は、日本に起こし頂きありがとうございます。ご滞在中は公安一同で御身をお守りいたしますわ」
今、僕と少年皇帝は警察関係者の席へと来ている。
「日本の警察機構は優秀と聞いておる。このタケも日本の警察出身と聞く。よろしく頼むぞ」
「はい」
アラフォーくらいの和風美人さんがお話ししてくださる。
彼女の横にはアンズと同じくらいの年頃の清楚な女の子がいる。
彼女が日本の異界技術担当の総元締め、超常犯罪対策室 室長の遠藤あやめ。
「かなみ、陛下にご挨拶しないと」
「お父さんこそ、先でしょ。陛下、母や父がお世話になっております」
娘に弄られている男性、彼がアヤメの旦那にして対策室のエース、タクト。
その身に日本神話の火炎神「ホノカグツチノミコト」を宿している。
僕の感知レベルでも、その霊気に圧倒されてしまう程だ。
「タクや、娘にあしらわれていたらしょーがねーぞ」
「姉ちゃんこそ、陛下にご挨拶したのかよぉ」
タクトの姉、カズミは堂々と焼酎を呑む。
とても小柄で一見二十歳そこそこに見えるのだが、アラサー年齢で既に結婚して子持ちだとか。
今日は、旦那にまだ幼い子供を預けてきたそうだ。
彼女の背後にも火炎竜が見える。
タクト達の家系はギーゼラと同じく精霊使い、火炎系に特化した血筋だとか。
「皆さん、まずはちゃんとご挨拶しましょう。陛下、わたしはナナさんの同級生で今は対策室で働いています、松本るなと申します」
長い髪が綺麗なスレンダー系美女。
彼女の胸元には凄い魔力を秘めた宝石らしきペンダントがある。
後から聞いた話では事件を起こした際にナナ達に助けられ、その後は蜘蛛美女に変身できる能力を使って捜査活動をしているそうだ。
「陛下、すいませんです。皆、どうも礼儀に疎い者達で」
頭髪が薄くなった初老の男性が頭の汗を拭き拭きペコペコしている。
過去、捜査室創立時代の室長をしていた寺尾という人で、現在は定年後再雇用で事務処理をしているんだそうな。
「もう皆、コウタ先輩の影響を受けすぎなの。ね、貴方」
「そうだよね、コトミさん。チナツ眠くない?」
「おとーさん。ここはにぎやかだから、わたしねむくないの」
公安関係の中でもう一組の家族枠でいる人達。
僕は男性にどこかで見覚えがある。
「あ、もしかしてキミは守部君? 一度関東地域の研修会で会ったよね?」
「え! ではやっぱり。確か伊藤さんでしたよね」
「うん、そうだよ。そうか、科捜研から異世界に出向した人がいるとは聞いていたけど、キミだったんだ」
三十路そこそこに見える優男の彼、伊藤 雅人。
自分が所属していた県警とは隣県の科捜研に所属する若手エース研究者。
僕が研修会で会った時に色々と指導をしてもらった覚えがある。
「何故、伊藤さんがここに?」
「だって僕はコウの昔からの友人で、マユコさん達とは昔から家族ぐるみで仲良くしているもの。リタちゃんのステッキは僕が作ったし」
「ええ、わたし達が出会ったのも、コウタ先輩の事件がらみだったものね」
可愛い眼鏡っ子という雰囲気を今だ残す妙齢婦人。
彼女こそ、コウタのある意味天敵(?)、コトミ。
後から聞いた話では、コウタが勝てない女性トップ3(マユコ、ナナ)の1人だそうな。
彼女は情報収集能力と魔力コントロールに長け、その情報力で学生時代にはコウタを先輩と慕いつつも遊んでいたとか。
そして夫婦2人仲睦ましく、間に座っている幼稚園女児を温かい目で見守っている。
……どれだけ、世間は狭いのかなぁ。なんか最近会う地球の人ってチエさんの関係者ばかりだよ。
〝そんなのは『第四の壁』の向こう側の都合じゃ!〟
何か意味不明のツッコミがチエから念話で来たが、今は無視だ。
「タケよ、余に通訳をしてくれぬか。先ほどから話が分からん。どうやらコウタの同類達ばかりで上のものが困っているのまでは分かるのだが」
「あ、すいませんです、陛下」
僕は対策室の方々について陛下に、彼らには悪意が無い事を説明した。
「まあ、コウタに毒されたらそうなるのは分かるぞ。こんなフリーダムな者達を扱うのは大変だな」
「陛下、申し訳ありません。わたくしの力不足でございます。」
「いや、アヤメ殿。彼らが優秀なのは、連れておる精霊や本人の魔力量で十分分かるぞ。帝国でもこれだけの術師を纏めて戦力運用している組織は、そう多くは無いからな」
僕の眼から見ても、公安関係席で魔力が無いのは伊藤と寺尾の2人だけ。
伊藤の妻ですら、僕をはるかに越える魔力持ちだ。
……チエさん、どんだけ非常識したんだろうかなぁ。この会場内の人達だけで帝都どころか帝国全土制圧できそうなんだもの。あ、そうか9年前の騒動の時に、この人達が活躍したから地球や異世界は無事だったんだ。
僕は、次元融合大災害時の裏事情を今更知った。
〝えっへん! ワシ、偉いじゃろ。〟
チエからの突っ込み念話。
今更気にしないが、彼女の方を見るとリーヤが囲まれすぎないようにフォローしてくれている。
……チエさん、リーヤさんを御願いしますね。
〝了解なのじゃ!〟
◆ ◇ ◆ ◇
その後も色々陛下のお供で全席を回ったが、キャロリンさんの過去を知る軍人さんとか、さっきまでダウンしていた残念美女と若い旦那に金髪の小学生くらいの男の子。
そし濃い金髪と茶色の眼をした中学生くらいのすっごい美少女と、彼女をハラハラしながら見ている日本人の父親。
実に国際色豊かな面子が勢ぞろいしていた。。
「ふぅ、これで全員に顔を合わしたな。では、席に帰るぞ。残りを食べなくてはな。もったいないぞ」
「御意にございます」
全席をまわった少年皇帝と僕は席に帰った。
「お疲れ様でした」
席に帰った僕たちをマムが1人で迎えてくれた。
「あれ、フェア君は? それにフォルちゃんは?」
「2人は、あそこよ」
マムが指差した先、そこには子供達が集まって遊んでいた。
僕が先程会った子供達もそこに行っている。
その中心にはフェアとリーヤが居て、皆と仲良くしている。
……良かった、リーヤさん。女性達から開放してもらったのね。
〝ワシ、頑張ったのじゃ!〟
チエの方を見ると、お姉さん方を集めて酒盛りをしていた。
どうやら未婚女性の結婚相談室をやっているらしい。
……アフターフォロー大変ですね。お疲れ様です、チエさん。
今回は、前作「功刀康太の遺跡探訪」終了後、エピローグから7年後の同窓会という感じになりました。
今になれば、どれだけキャラを産み出したのか整理が大変でした。
では、明日の更新をお楽しみに




