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僕は異世界で美幼女姫様と刑事をする。〜異世界における科学捜査の手法について〜  作者: GOM
第6章 捜査その6:日本ドタバタ観光編

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第10話 新米捜査官は、宴会で久しぶりの魚を味わう

 今、僕達は宴会場に来ている。

 異世界組の事もあり、円形テーブルと椅子のスタイル。

 僕達は異世界組で隣接した2テーブル。

 僕のテーブルは陛下、アレク、マム、フェア、リーヤの6人だ。

 どうやら保安官の僕は貴賓扱いらしい。

 なお、全員湯上りで浴衣姿だ。


 他のテーブルにも沢山の人々が集まっている。

 これら全員がコウタ達の仲間らしい。

 浴場で見た顔もチラホラある。

 後から聞いたのでは、今日明日は保養所を僕達が借り切った形になっているそうな。


「今回は皆忙しい中、ワシの急な召集に集まってもらってすまんかったのじゃ! 今日、集まってもらったのは、最近話題の異世界帝国から日本へ皇帝陛下自らお忍びで来られたのじゃ。そして陛下の護衛として異界技術捜査室の面々もご一緒じゃ。で、皆の歓迎パーティを行いたいと思ったのじゃ!!」


 チエは器用な事に日本語、英語、異世界共通語で同時に司会をこなす。

 もちろん1人でそんな事は不可能なので3身分身をしての挨拶だ。


 ……なるほど、主賓を陛下という形にしているのね。その方が大義名分つきやすいし。


「では、陛下より一言御挨拶を頂きたいのじゃ!」


「ああ、チエ殿分かった。余は帝国オルロフ朝皇帝ミハイル・ウラジーミロヴィッチ・オルロフである。今回は、余の我侭で急に地球へ赴く事となった。あくまで非公式、お忍びではあるが進んだ地球、日本の科学技術を学んで帝国臣民の為に活用したい。皆、是非とも余と帝国に協力を御願いしたい」


 少年皇帝はマイクまで移動し、いつもよりも謙虚に挨拶をする。

 多分、地球文化を目の当たりにして、自分が威張り散らしては情報や知識が得られないと言う事、そしてコウタの友人達という事から安心して助力を頼んでいるのであろう。

 なお、通訳は湯当りから復活したナナが行っている。


 ……ここに集まるコウタさんの友人達なら、全員善人お人よしに決まっている。だったら素直に頼むほうが快く手伝ってくれるだろうしね。後、可愛い少年皇帝からの願いならお姉様方は喜んで飛びつくと思うよ。


 会場内にはナナと同年代のお姉様方が沢山いる。

 そして彼女達の視線は少年皇帝の顔に集中している。

 陛下の挨拶が終るとパチパチと手を叩く音と「陛下、かわいー」という不敬っぽい声援も聞こえた。


「では、次は異界技術捜査室、室長のマム、エレンウェ殿よろしくなのじゃ!」


「はい。ご紹介頂きました、わたくしエレンウェ・ルーシエンと申します。皆さん、今回は急に来てしまいましたわたくし達の為に、このような盛大な宴席を準備していただき、誠にありがとう存じます。この国、日本はわたくし達にとっても縁深い国です。今後ともご協力の程、宜しくお願い存じます」


 マム、日本語で丁寧な挨拶をする。

 その様子に宴席に並ぶ日本の皆は、ほーっという顔をした。

 そして、陛下の時と同じくらい拍手が聞こえた。


「そうそう。陛下と御付の方には通訳が必要じゃが、捜査室の面々は全員日本語がペラペラじゃ。なので安心して話しかけるが良いのじゃ。では、乾杯の挨拶を日本側から、この保養所を所有する宗教団体『光輝宗』代表、黒田光道(こうどう)殿から御願いなのじゃ」


 チエは僕達の事を簡単に説明した後、五十路くらいに見える小太りで黒髪が豊富な男性を指名する。


「私は、我が教団ご神体たるチエ様から紹介に預かりました黒田と申します。もう10年程前になりますが、私はチエ様とコウタ様達により身も心も救って頂きました。それ以降我が教団はチエ様をご神体とし、世界の平穏を祈ってまいり時として平和を守るべく力をチエ様達にお貸し致しました」


 後から聞いたところによると、過去悪徳インチキ教団であった光輝宗。

 そこから信者を救うべくコウタ達が活躍し、その際主犯であった教祖も救ったそうだ。


 ……ここからしてコウタさん達の懐の大きさが分かるよ。敵をも許し救い、そして味方にして次の敵と戦う。こんな素晴らしい仲間達に僕たちも入れてもらえるのは光栄な事だよ。


 なお、ご神体扱いされているチエは、顔を真っ赤にしてとても恥かしそうにしている。


「今回もチエ様のご指名で当施設の利用を提案いただき、感謝感激でございます。帝国には及ばないかもしれませんが、我が施設料理長が腕を振るいました料理、そして皆様のお疲れを癒す温泉等をごゆっくり堪能頂けたら幸いです」


 謙遜をしている教祖だが、僕達の前に並ぶ料理。

 僕が作るものをはるかに越えたプロの仕事。

 是非ともノウハウの一部でも持ち帰りたい品々だ。

 お預け状態のリーヤ、今回は陛下や日本の方々の目があるので大人しいが、涎がこぼれそうになっているのは可笑しい。


 僕への「大好き宣言」。

 リーヤが起きた時にそれとなく聞いてみたが、反応無し。

 今思えば、半分寝ぼけた状態での本音に近い言葉だったのでは無いか。


 ……本音だからこそ、恥ずかしいんだけどねぇ


「では、皆様。杯の準備をお願い致します。未青年の方には申し訳ありませんが、ソフトドリンクをお願い致します」


「タケよ、其方(そなた)は呑むのじゃろ。此方(こなた)が注ぐのじゃ!」


 リーヤは待ち遠しさをはぐらかすのか、僕のグラスにビールを綺麗に注いでくれた。


「では、僕からも返杯を。リーヤさんは何を飲まれますか。ジュースも複数種類がありますが?」

「此方があまり飲んだ事が無くて甘すぎないのが良いのじゃ!」


 僕は並ぶソフトドリンクの中から、変わった一品を見つけ出した。


「では、これをどうぞです」

「何、妙に白いのじゃ。それに泡だっておるぞ」


 僕が注いだリーヤのグラスは白濁し炭酸で泡が出る飲料で満たされていく。


「それでは、皆様宜しいですか。では、皆様の御健勝、ご多幸、そして地球と異世界帝国それぞれの友好と繁栄を祈願して、乾杯!」

「乾杯!」「チアーズ!」


「ん? タケやどうするのじゃ!?」

「グラスを近所の人と軽く当てるんですよ、こんな風にね」


 僕はコチンとリーヤのグラスと僕のグラスを当てた。

 そして、一気にグラスの中のビールを1/3程飲み干す。


「ぷはぁー。やっぱり日本のビール、ピルスナーはキレが違うなぁ!」


 麦酒(ビール)にも様々な種類がある。

 異世界帝国でも呑まれているコクが強くて常温で飲む上面発酵のエール、そして下面発酵で冷やした飲み方にあうラガー、その中でもすっきりとしたキレがあるピルスナーが日本では主流だ。


 ぱちぱちと拍手の後、皆が料理を食べだした。


「タケ、何なのじゃ! このジュース、すっぱいしプチプチするし甘いし美味しいのじゃ!」


 どうやら甘すぎない味がリーヤには合った様子。


「これは乳酸発酵飲料、ヨーグルトやチーズを作る時に出来る上澄み、乳清(にゅうせい)を集めて、それを炭酸で割って少し砂糖を加えたものです。乳清の酸味と炭酸のすっきり感を甘さ抑え目にした日本の有名飲料ですね」


「日本恐るべしなのじゃ。タケや、これはポータムでも買えるのかや?」

「はい、メジャー製品ですので買えますね。他にも今日並んでいる製品はメジャー企業の製品ですから全部地球人向けスーパーで買えますよ」


 全部また飲めると聞いたリーヤはワクワク顔だ。


「フォル、フェアや。今日のジュース、全部ポータムでも飲めるそうなのじゃ! 色々飲み比べて、今度向こうでも買うのじゃ!」

「えー、わたしはもう決めているよ。日本の学校時代に色々飲んだもの」


 そういうフォルは、ノンカフェイン茶を飲んでいる。


「今日の料理を楽しむのに、甘い飲み物はダメだもん。あー、久しぶりのお魚だぁ。お刺身楽しみだよぉ」


 フォルは手馴れた様子で小皿に入った醤油の横に山葵(わさび)をちょっぴり盛り、マグロの赤身を箸でつまみ山葵と一緒に醤油を付け、口に頬張る。


「あーん、生魚の甘みが良いのぉ!」


 うっとりとしたフォルの様子を見た異世界組は、ざわざわとし始める。

 まだ衛生環境に問題がある帝国では、生魚は殆ど食べられていない。

 川魚には寄生虫が居るし、海岸沿いの港町では一部生に近い形では食べられてはいるものの、帝都では塩付けや干物の魚が時々流通に乗るくらいだ。


「タケ、この生の魚とやら。余が食べても問題は無いのだろうな?」

「此方も食べて良いのかや?」


 少年皇帝やリーヤ、フォルが美味しく食べている様子を見て害があるものでは無いとは思うものの、初めて食べるものなので怖々としている。


「大丈夫ですよ。フォルちゃんが食べているのを真似てくださいな。醤油(しょうゆ)は僕が調味料として使っていますから分かりますよね。この緑のモノは山葵。確か帝国でも香辛料のホースラディッシュが栽培されている地域があったはずです。山葵はホースラディッシュの同類、たぶんそれより風味がキツイですね」


 僕は皿に盛られた山葵を皆の前に見せる。


「これを少しだけ生魚の切り身、『お刺身』といいますが、この上に乗せ醤油に少しお刺身を浸し、そして食します」


 僕は白魚、たぶん(タイ)を食べる。


 ……うーん、この食感がたまりませんですぅ。


「あー、美味しい! とまあこんな感じです。こちらの(カツオ)はタタキ、表面を藁を燃やした火で(あぶ)っています。こちらは生姜(ショウガ)大蒜(ニンニク)と共にポン酢、柑橘(かんきつ)酢と醤油を混ぜた調味料で頂きます。うーん、これも美味しい。あー、日本人で良かったぁ。!!」


 僕は久しぶりの日本の魚を堪能し、喉をビールで潤した。


 ……ポータムでは(イキ)の良い魚を入手するのは難しいからねぇ。ああ、瀬戸内の魚が恋しくなっちゃった。


 その後、リーヤや陛下が怖がりながら食べた後、異世界組が全員で競って刺身を追加注文し始めたのは面白かった。


「美味しいのじゃ! この甘みがすごいのじゃ。こっちの白いのはコリコリなのじゃぁ!!」


 ……コリコリはイカかな?


 なお、また興味本位で山葵を多めに摘んだヴェイッコ、大変な目にあったのはお約束なのだろうか?


「拙者の口が、鼻が痛いのでござるぅぅぅ。美味しいのに痛いのでござるぅぅ」

 最近、オチ担当のヴェイッコ君。

 犬系ならワサビのパワーは洒落にならんでしょうねぇ。


「ワシ、今日は上品にルイボス茶で、料理を堪能じゃ! まあ、日本料理には日本酒が合うので、こっそりと冷酒のボトル確保はしておるのじゃがな」


 実は、冷酒党のチエちゃんでした。

 では、まだまだ続く宴会をお楽しみに。

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