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僕は異世界で美幼女姫様と刑事をする。〜異世界における科学捜査の手法について〜  作者: GOM
第6章 捜査その6:日本ドタバタ観光編

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第5話 美幼女は、日本の夏に驚く。

「暑いのじゃぁぁ! この蒸し暑さはどういうことなのじゃぁ!」


 リーヤはメガフロートの屋上に出た途端、文句を言い出す。

 今まで冷房が効いた部屋で検疫等を受けていたので、反動で大変なのだろう。


「これは、拙者死にそうになるでござるぅ」

「わたしもキツイのぉ。前に日本で過ごした時よりも暑いかもぉ」


 ウチの毛皮組(ヴェイッコ・フォル)共に暑そうだ。


 ……これから冬毛になる毛皮では暑いよねぇ。


「アタイは、この暑さ嫌いじゃないな。海風ってのかな。この匂いも良いね」

「ワタクシは、日焼け出来ないからちょっとキツイわね」


 褐色娘のギーゼラは外見どおり日本の夏を早速堪能している。

 白人種のキャロは日焼けがあまり出来ないので、日陰に逃げている。


「フェア、すっごいよ。あそこおっきなお船が通っているわ」

「うわぁぁ!」


 眼を輝かせて東京湾を航行する船を眺めるマム親子。

 日焼けが怖いけど、大丈夫だろうか?


 ……エルフ種ってメラニン色素少ないから、白人種と同じく火傷になる前になんとかしなきゃね。これがダークエルフ種なら大丈夫だろうけど。


「皆、楽しんで()るのじゃな」

「チエさん、今回は色々ありがとうございます。何かと大変でしたでしょうね。でも何故に僕達人類に、ここまで良くしてくださるのですか?」


 屋上で背伸びをしているチエ。

 彼女に僕は感謝を述べると共に疑問を聞いてみた。

 どうして何の縁もゆかりも無い魔神将(アークデーモン)が、地球や異世界帝国、アルフ等々多くの人類に対して優しくお節介やいてくれるのか、僕は以前から気になっていたのだ。


「そうじゃな。ワシら魔神(デーモン)族は精神寄生体、他の知的生命体から精神エナルギーを喰らって生きておる。大抵の魔神は負の感情、怒りや悲しみ、苦悩を好物としておるのじゃ。しかし、ワシは変わり者でのぉ。正の感情、好きとか嬉しい、美味しい、楽しいなどの気持ちが良い感情が大好物なのじゃ」


 チエは、遠い目をして海を眺める。


「ワシ、種族では居る場所が無うて(無くて)最後は裏切るように母星から逃げたのじゃ。そして地球に流れ着き、ヒトの温かさに触れ憧れたのじゃ。そしてコウタ殿達と知り合い、家族にもしてもろうたのじゃ!」


 そしてチエは、僕の顔を見てニッコリ笑った。


「じゃから、これはその恩返しじゃ。ワシはワシで一杯楽しませてもらっておるのじゃ。だからタケ殿は、気にせんで良いのじゃ!」


 そして僕の背を軽く叩いて、チエは涙をうっすらと浮かべていたのを誤魔化した。


 ……その笑顔はステキで可愛いよ、チエちゃん!

 〝ありがとうなのじゃ! タケ殿、そろそろリーヤ殿を構わぬと怒られるのじゃぞ〟


 僕の内心の呟きにも念話で返してフォローまでしてくれたチエ。

 僕はチエに一礼をした後、急いでリーヤの方へ向かった。


「リーヤさん。今は真夏ですから、この暑さは仕方が無いですよ。それに湿気が多いのも、こうやって海から湿気が来ますからですね」


 ポータムは海沿いの街ではあるが、絶えず内陸から海へと風が吹くために、そこまで湿気は感じない。

 リーヤの故郷アンティオキーアならポータムよりも内陸、やや乾燥気味の気候だ。

 更に帝国のある大陸は惑星の北半球、帝都で地球でいうところの北海道くらいの緯度、気温もそう上昇はしない。


「それでなのじゃな。ん! タケや、なんで其方(そなた)一人は涼しげな格好なのじゃ?」


 リーヤは僕が半袖になっているのを今更気がついた。


「だって、真夏の日本に帰るのが分かっているんですから、上着の下に半袖を着ておくのは当たり前ですよ。一応リーヤさんには事前に暑いと話していましたよね」


「此方、ここまで暑いとは思わなかったのじゃぁ! たまらんのじゃぁ!」


 羽を激しくジタバタさせて暴れるリーヤ。


 ……だって僕、御貴族様が着て良いような夏服に心当たり無いもん。


「では、皆の衆。一旦下に下りて、秘密ルートでワシの家に行くのじゃ。そこで昼食と着替えじゃ!」

「はーい!」


  ◆ ◇ ◆ ◇


 僕達はメガフロート内の一室に設置されていたポータルユニットを使い、一瞬でチエの家に赴いた。


「どうじゃ! メガフロートもワシの持ち物じゃから、好き勝手できるのじゃ」


 と、チエは自慢げであった。



「皆さん、遠いところを良くお越しになりました。先日はお疲れ様でしたわ。まずはシャワーを浴びてから涼しい御着物に着替えませんか? 皆さんのサイズと好みそうな服は準備済みですの」


 僕達はチエ、ナナ、リタの母、マユコに迎えられた。


「この度はありがとう存じます。わたくし達、地球には詳しくは有りませんので宜しくお願い致します」


 マムが日本語でマユコに丁寧に挨拶する。


「いえいえ。可愛い子達が多いから、わたしは大歓迎ですのよ」


 とても数年内に孫が生まれるだろうとは思えない若々しい美貌を誇るマユコ。

 どう見ても三十路半ばくらいにしか思えない笑顔だが、娘のナナの年齢を考えれば……。


 ……チエさんも言っていたし、絶対年齢ネタは言わないほうが良いよね。

 〝そうじゃぞ。気をつけるのじゃ!〟

 〝チエちゃん、何の事かなぁ? あら、タケ君。どうしたのぉ?〟


 僕の内心にまで念話(テレパス)で干渉してくるチエにマユコ。

 もはや、ここは人外魔境なのか。


 〝大丈夫よ。わたしは若いコの失言は、それほど気にしないから〟

 ……はい、ごめんなさい。もう何も思いませんですぅ。


 僕はナナ達の強さの一端を垣間見たのだった。


 ……こわー!!


  ◆ ◇ ◆ ◇


「美味しいのじゃぁ! タケのご飯よりも、もっとすごいのじゃぁ!」

「ええ、これは凄いですの。マユコ様、わたくしにコツを教えてくださいませ。フェア、美味しい?」

「はい、おかーたまぁ」


 皆、シャワーを浴びてラフな格好に着替えての昼食、これがお見事であった。

 夏らしく素麺、ただし麺つゆのレベルが違う。


「すいません、この麺つゆ出汁(だし)アゴ(トビウオ)ですか?」

「あら、タケ君お見事ね。メインはアゴの煮出しね。干物から頭とハラワタを取り除いて半日水出汁してから、ちょっと加熱したの」


 トビウオを煮干したものがアゴ。

 瀬戸内のイリコ(カタクチイワシ煮干)、鰹節等と並ぶ出汁を取れる魚だ。


「うどん系ならイリコなんだろうし、カツオも悪くないけど、タケ君料理上手、それも西日本出身と聞いていたからアゴで勝負してみたの。後は醤油(しょうゆ)味醂(みりん)も贅沢しちゃったわ」


 マユコ、なんと言う事も無いように話すが、事前に相手の事を調査しての料理。

 完全に僕の敗北だ。


「マユコさん、降参です。宜しければご教授御願いします」

「あら、タケ君。貴方は料理もだけど射撃と魔法関係を伸ばしたら良いわ。ずっとリーヤちゃんを守りたいのでしょ。頑張ってね」


 マユコ、ナナよりも更に咲き誇った「ひまわり」の笑顔で僕に笑いかける。


 ……完全に僕達の事をお見通しですね。


「はい、分かりました」


 僕は素直に頭を下げた。

 そして周囲を見るに、全員モクモクと食べている。


「沢山の人とご飯食べるの楽しいね、お姉ちゃん」

「うん、リタちゃん。ボクも今朝から頑張ってたから、お腹ぺっこぺこだもん。コウタさんすぐに逃げようとするしぃ」

「えー、ナナ。もう俺『弾切れ』だよぉ。もう勘弁してよぉ」

「姫様、ナナ様。頼みますから食事中に下品な話は、ご勘弁を」


 ナナとコウタ、リタも仲良くご飯を食べている。

 しかし、ナナとコウタ、ナニ励んでいたのやら。

 ルーペットは恥ずかしそうに長い耳を塞いでいる。


「おにいちゃん、『弾』って何ぃ?」

「アンズ殿は何も気にせんで良いのじゃ。コウタ殿、お子ちゃまがいる席で妙な事を言うで無いわい! ナナ殿も攻めすぎじゃ。ヤリ過ぎても『的』に当らぬぞ!」


 小学3年生のアンズは不思議そうにコウタに聞くのを、チエが誤魔化す。


 ……新婚の嫁さんを放置したコウタさんが悪いね。


「この唐揚げは、無茶苦茶美味しいよ。ハシが止まらないや。マユコさん、どうやったの?」

「そうでござるぅ。拙者、ビールでも欲しくなったのでござるぅ!」


 ギーゼラ、ヴェイッコ、共に箸が止まらないように唐揚げをモクモク食べる。


「下味がうまくいったのかしら。タケ君も知っているわよね、ニンニクとショウガ、お酒、醤油に隠し味でゴマ油に漬けこんだ後、中温、高温で二度揚げたのよ」


 ……ゴマ油に二度揚げね。よし勉強だ。


「マユコさん、このドレッシングも市販品では無いですわよね」

「うん、ちょっと変わったピリっとした味するもん」


 少し茹でた花野菜と水菜のサラダにかかっているドレシングに興味深々のキャロリンにフォル。


 ……猫系だから油類に興味あるのかな、フォルちゃん。


 僕も気になり、サラダを味わう。


「これはオリーブオイルベースに、お酢は米酢、醤油に……!? 柚子胡椒ですね」

「はい、正解ね。さすがタケ君。わたしのレシピどんどん盗まれそう」


 マユコは笑いながら答え合せしてくれた。


 ……こんなステキな食卓。僕も作ってみたいなぁ。


 と、旅行初日の昼食は楽しく終った。

「母様はすごいじゃろ。今でもワシ、母様には勝てぬのじゃ」


 マユ姉ぇさん、今なお美貌と能力は絶世期でございます。


「幸い、母様は第四の壁の外側には予言以外は関与せぬので、ワシは時々こうやって逃げて居るのじゃ。さもないと、掃除や片付け頼まれるのじゃ。ワシ、頼まれたらイヤとは言えぬのじゃぁ!!」


 と、まあ今日も作者の横で煩いチエちゃんでした。

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