第2話 新米捜査官は、更に振り回される。
「では、妹を宜しく御願いしますね。リーヤちゃん、皆様にワガママ言っちゃダメよ」
「レーシャお姉様、もう此方は子供では無いのじゃ、とっても恥ずかしいのじゃ!」
オレーシャはクラーラを胸に抱き、神殿を去った。
「おねえちゃん、またねぇ!」
「ラーラや、次に会う時は負けぬぞぉ!」
手を振るクラーラに対して次回の勝利宣言をするリーヤ。
とても100歳越えとは思えない幼女っプリである。
……こういうところが可愛いんですけどね、リーヤさん。
「さあ、今日の夕食の準備しなきゃね。マム、今日も陛下来られるんですよね」
「ええ、リタ姫達は先に帰られましたけど、チエ様はまだこちらにいらっしゃるから、彼女の分も御願いね」
「はいです!」
あれから機会がある度に神殿に晩御飯をたかりにくる欠食少年皇帝。
もうすっかり僕の料理ファンである。
◆ ◇ ◆ ◇
ナナは事件後コウタを捕まえると、すぐに帰宅したい旨を宣言。
リタ姫もついでに一緒に帰るということになった。
なお、ナナの母と妹は、チエの弟によって一足先に帰っている。
……新婚の奥様を放置したコウタさんが悪いよね。存分に精気吸われるが良いです。ベビーを楽しみにしていますね。
しかし、僕達は残務が多くてポータムへはすぐに帰れない。
そこで、魔神将チエは、妙案を出したのだ。
「どこでも○アぁ!」
129.3cm、129.3kgの青ダヌキ旧アニメ版の声を真似て叫ぶチエ。
……あんまり詳しくない僕でも青ダヌキ旧CVの声くらいは知っているぞ。
チエがシャツの胸元に手を突っ込み、取り出したのは直径30cm高さ5cmくらいのドーナッツ状機械。
……どこに仕舞っているんでしょうかねぇ? あの平らな胸に隠す場所なんて無いし。
つい、チエの胸元を覗きこんでしまった僕である。
「そんなの乙女のヒミツな場所じゃ! 平らで悪かったな!」
僕の思考を読んで、胸を両手で隠して少しお怒りのチエ。
「あ、すいません。女性に失礼な発言や行動をしてしまいました」
僕は即時平謝りをする。
……魔神将の前では考え事も危険だぁ。
「そうじゃ、ワシの前では全て筒抜けじゃぞ。まあ、タケ殿の思考はコウタ殿同様澄んでおるし、邪な考えも平均男性の範疇。ワシが魅力的なのが全部悪いのじゃ!」
チエは「しな」を作り、色気のある表情をする。
「タケや、此方で我慢出来ないのかや! 他所の女子に現を抜かすでないのじゃぁ!」
リーヤも僕の所業にお怒りモード。
僕はヒト外幼女2人に翻弄されっぱなしである。
……誰か助けてぇぇ。
横目に見えるところにいるヴェイッコ、黙祷を僕相手にしている。
ギーゼラやキャロリン、フォルは苦笑モードだ。
「なんまんだぶ、なんまんだぶ。成仏するでござるぅ」
……僕、死んじゃうのぉぉ!!
「観念しなさいね、骨は拾ってあげるから」
「まむぅぅ!」
この後、幼女2人を納得させる為に、僕は新作スイーツの開発を命じられましたとさ。
◆ ◇ ◆ ◇
「これは、『どこでも○ア』。次元ポータルじゃ。多機能版じゃと、地球にある親局の設定で何処にでも繋げられるのじゃが、今回のは機能限定・移動場所固定型じゃ。これをココに設置するのじゃ」
チエは僕達の前で、神殿内の食堂に設置したポータルについて説明する。
今は夕食後、そこにはナナ達だけでなく少年皇帝も同席している。
「ほう、これがポータルか。余も一個欲しいぞ」
「陛下には多機能型を近日中に渡すのじゃ。親局の設定次第で、どこでも飛べるのじゃ!」
チエは陛下と仲良さそうに話す。
……この2人もお似合いなんだよね。どっちも幼げな美形だもの。
「タケ殿、褒めてくれてありがとうなのじゃ!」
……あ、まだ考え事読まれているのね。
〝タケ殿、精神ブロックは覚えておくと便利じゃぞ〟
チエはウインクをしながら念話で僕に話しかける。
……はい。リーヤさんに、やり方聞いて覚えておきます。
〝うむ、頑張るのじゃぞ。まだまだ、お主には苦難が迫るのじゃ。ただ、頑張ればリーヤ殿と必ず幸せになれるのじゃ。『第四の壁』の向こうが見えるワシが保障するのじゃぁ!〟
チエは慈愛溢れた眼差しで僕を見ながら、念話で話しかけた。
よく分からない内容であるが、僕の将来が明るいと保障してくれたのは嬉しい事だ。
「では、ワシはポータムへ飛んでくるのじゃ。ちょいと待つのじゃ!」
そう言ってチエは虚空へ跳躍した。
りーん!
ナナの持つスマホに、電話が掛かる。
「はい、チエ姉ぇ。今、どこ? ポータムの捜査室? そこなら大丈夫だよね。え、もう繋げるって?」
ナナはチエと電話をしているようだが、チエはポータムの捜査室にいるらしい。
しかし、一瞬でそんなピンポイント跳躍が出来るのだとしたら、凄い話だ。
ポータルから、ぴーんと電子音が鳴り、空中にドアが突如出現した。
「はーいなのじゃ!」
ドアがどーんと開き、そこから顔を出すチエ。
チエの後方には、見慣れた事務机が並ぶ。
「そこはポータムの捜査室の事務所では無いですか!?」
「マム殿、そうなのじゃ!」
マムや僕らは眼を白黒して、チエの居る場所を凝視する。
「これで、すぐに帰られるのじゃ。そうそうマム殿、お世話になった礼じゃ。このポータルは置いて帰るから、毎日お子様に会うのが良いのじゃ!」
チエは開いたドアから飛び出してきて、マムに笑いかけた。
「え! じゃあ、わたくし毎日フェアと会えますのぉ!」
「そうじゃ。フェア殿にいってきます、ただいまと毎日言えるのじゃ!」
「あー! 夢の様だわぁぁぁぁぁ!!」
マムは、嬉しさ爆発して気絶寸前だ。
「おかあたま、どうしたのぉ?」
フェアは母の浮かれすぎた様子を見て首を捻っていた。
「作者殿、くれぐれもタケ殿とリーヤ殿を幸せにしてやるのだぞ!」
はいはい、そこは大丈夫。
作者は基本ハッピーエンド至上主義ですから安心してね。
「なら、良いのじゃ。しかし、お主ワシに頼りきりでは無いか? もう少し他のキャラを育てるのじゃ。リーヤ殿は、まだまだ弄りがいがあるのじゃ! ワシも貰った事がない挿絵を貰って居るのは羨ましいのじゃ!」
とまあ、今日も煩いチエちゃんでした。
では、明日の更新をお楽しみに!




