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第25話 新米捜査員は、姫様に戦慄した!

「本当に良いのだな。其方(そなた)から戦いを申したのだからな」

「ええ、宜しくてよ」


 ここは、闘技場。

 過去、ここでは奴隷と魔獣を戦わせた事があったらしい。

 もちろん、今の少年皇帝がそんな事をさせる筈も無く、現在では各種運動競技大会を行う場となっている。


 闘技場の中央に10m程離れて立つエルフ乙女と壮年魔族。


「対戦者及び観衆に再度説明をする。これは決闘の形をした試合である。命のやり取りでは無く、お互いに技を競い合うものだ。アルフが帝国に対して脆弱な存在と思われているのが、事の発端である。これにて、アルフがそのような国であるのか、姫の実力で推し量る事が可能であろう。2人とも、良いな」

「はい!」


 僕は闘技場外周部、一番高い処に陣取り、何処からの攻撃にも対応できるように狙撃準備をしている。

 ヴェイッコは、闘技場入場口近くに立つナナの横に立ち、彼女をガードしている。

 ギーゼラ、彼女には影に潜んでもらい、皇帝陛下の近くで警護をしてもらっている。

 少年皇帝の近くにはマムも待機し、会場全体を見回している。

 なお、上位魔神(グレーターデーモン)(おぼろ)さんは、リタ姫の横に見えない形で待機、緊急時には姫を回収後消えてもらう算段だ。


「では、試合開始!」


 少年皇帝の宣言で「決闘」が開始された。


「うぉぉぉ!!」


 クレモナ伯グリゴリー、重装甲に身を纏い、魔力による高速ダッシュでリタ姫に迫る。

 そして左手に持つ盾を前に突き出してシールドバッシュの一撃で勝負をつけようとした。


 ……女の子相手に音速で体当たりはエゲツナイなぁ。まあ武器で殴りかかるよりはマシだけど。


「甘いですわ」


 僕は、リタ姫が日本語でぼそっと呟くのをイルミネーター越しに聞いた。


「おー! お?」


 グリゴリーが衝撃波と共に突き出した盾は姫が居た空間を薙いだ……はずだった。

 しかし、そこには何も無い。


何処(どこ)だ!」


 グリゴリーは兜の面貌を上げ、周囲を見回した。


「これでおしまい」


 グリゴリーから10mは離れた場所に素早く移動(瞬動法)した姫の呟きは、続いて起こった激しい轟音にかき消された。


「うわぁぁ!!」


 グリゴリーの立っていた地面が半径5m程、轟音と共に上空へと打ち上がったのだ。

 そう、地面に立っていたグリゴリーも一緒に。


 あっという間に上空高く50m程打ち上がったグリゴリー、飛行呪文を駆使できなければ後は重力のままに落ちるだけ。


「落ちるぅ!」


 観客が眼を蔽い、誰もがグリゴリーが地面に激突し潰れると思った。


「落さないよ。だって、怪我させたらかわいそうなんだもん」


 僕がリタ姫の呟きを再び聞いた時、グリゴリーが激突するはずの地面が吹き上がった。


「たまやー!」


「ひぇぇぇ!」


 再び上空へ打ち上げられるグリゴリー。


「かぎやー!」


 その後も地面に落ちそうになると、再び上空へと舞うグリゴリー。


「も一つ、たまやー!」


 ご機嫌っぽく花火打上の定番台詞を言うリタ姫。

 そして、その掛声の度に何回も上空と地面の間を往復するグリゴリー。

 最初は大声で「卑怯だ」などと文句を言っていたが、どんどん悲鳴しか上げなくなり、数分繰り返された後では悲鳴すら聞こえなくなった。


 ……お、恐ろしい。今のところクレモナ伯に大きな怪我は無いけど、三半規管がボロボロのはず。アレ、殺傷する気なら初手で終わりだよね。明らかに手加減技だけれども、僕あれ喰らったら手加減でも死ぬ自信あるよぉ。


「おじちゃん、まだやるの? わたしは、まだまだ頑張れるよ。はやくギブアップしないと本当に死んじゃうよ」


 リタ姫は右手に持ったステッキを前に突き出し、そこから茶色の魔力弾を時々撃ちだしながら、グリゴリーに降伏勧告をした。

 魔法少女アニメ風のステッキを握り、にっこりと笑いながら敵を虐める美しいエルフ乙女。

 彼女の圧倒的な魔力と慈悲深いながらもエゲつない攻撃に、観衆はポカンと口を開け一言も言葉が出ない。


「こ、怖いぞ。エレンウェ、姫はあんなに強かったのか。余はコウタの妹分だから『それなり』とは思っておったが、ここまでとは。手加減してアレだよな」

「え、ええ。わ、わたくしも正直ここまでとは思っていませんでしたの。あら、ナナさんから連絡ですわ」


 少年皇帝は、椅子からずり落ちそうになりながら、横に立つマムへ尋ねた。

 聞かれたマムも恐怖に(おのの)いている。


「陛下、リタちゃんは純粋な攻撃力ならボク達の中では最強なの。たぶん最大攻撃を撃ち合っても、ウチの旦那が負けるんだから」

「だ、だそうです」

「そ、そうか。これは怖いというより、味方になってくれて頼もしいというべきなのだろうよ……」


 ナナからの補足説明を聞いて、驚愕し恐怖する少年皇帝。

 僕も、それを横から聞いて声も出ない。


 ……あの可愛くて華奢な外見で、邪神を倒した英雄よりも強いってどういう事!? ああ、女性は見た目で判断してはダメなんですね。


「因みに、ボクもダンナとの夫婦喧嘩は禁止されているの。周囲が吹っ飛ぶって言われているから」


 ……はい、怖い追加情報ありがとうございました。邪神が怖がる夫婦(コウタ・ナナ)喧嘩、そしてそれを横から邪魔して吹っ飛ばす小姑(リタ)。はい、もう神話級の話でございますぅ。


 その後、グリゴリーは10分までは頑張ったが、辛抱ならずに気絶し戦意消失。

 ノックダウンを確認されて、決闘はリタ姫の圧勝で終了した。

 勝負はリタちゃん、お得意の地魔法、地面毎打ち上げで決まりでした。

 某ドラまた魔法少女が同系の技を手加減して人質ごとふっ飛ばしていましたね。


 しかし、神話級の夫婦喧嘩、更にもっと怖い姑がいらっしゃるんですよね。

 では、明日の更新をお楽しみに。


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