第1話 新人捜査官は、銃撃戦の真っ最中!
これより新たな物語が始まります。
異世界と科学の融合。
異世界CSIをどうぞ、ごらんあれ!
パパパパ!
づーん!
周囲で銃声と怒号、爆裂音が響く。
「のう、『坊や』や。何で、此方人等(私達)は、こんな荒事に巻き込まれておるのじゃ?」
……うん、それは僕も知りたいよ。何で異世界に来て銃撃戦に巻き込まれているのやら
今、僕らの周囲では現地マフィア(というのかな)とジャパニーズ・ヤクザが抗争をしている。
マフィア側は魔法使いもいるのか、時々魔術矢が飛んでいる。
また、強面のトロールさんとかオーガさんが銃弾を弾きながらバトルアックスでヤクザと殴りあいを始めている。
方や、ジャパニーズ・ヤクザ。
明らかに皮膚下に装甲を仕込んだサイボーグが、手にバルカン砲、いや、この場合はライフル弾仕様だから無痛ガンを振り回している。
……シュワちゃんじゃ無いんだから、もうやめて下さいよぉ。
他の組員の方々もアサルトカービンやら拳銃やらでバンバン撃ち返し、金属製の義手のオニーサンが、日本刀片手にオーガさん達に切りかかる。
そんな最中に、僕、守部 武士とリーヤがいる。
「僕もどーにかしたいけど、これはムリかもです。それとペトロフスカヤ警部補殿、僕の事を『坊や』というのを、いい加減やめて頂けませんか?」
……そりゃ僕は童顔で、最近まで日本でも高校生? って言われていたけど。
僕、守部武士は、地球は日本出身の新人警察官、職名は巡査だ。
今年25歳になる成人男性だけれども、いつまでも坊や扱いされてしまうのには困っている。
「どうしてじゃ、此方(私)から見れば、『坊や』は坊やじゃ。それより此方の事をどうして警部補殿と呼ぶのじゃ? リーヤちゃんと呼べと言ったじゃろ? ちゃんで呼ばぬ限り、此方も其方(貴方)の事は『坊や』と呼ぶのじゃ!」
こう言っているペトロフスカヤ警部補。
正式には、Лилия・Захаровна・Петровская。
ここ地球と異世界の玄関門の街、ポータムがあるモエシア辺境伯領のお隣、アンティオキーアの領主様の次女である。
僕の事を子供扱いする彼女、外見は地球人で言ったら10歳くらいの幼女から少女の境目。
身長135cmくらいの細身、真っ白な肌に、黒髪セミロングを後頭部でシニョン(お団子)に結う。
眼は、やや釣り目で縦割れ瞳孔の金色、頭部には言われないとアクセサリーにしか見えない小さな巻き角に、鼻は小さく、耳はちょっとトンガリ、唇は小さめでほんのりピンク。
お胸やお尻は……、まあ外見相応。
感情でパタパタ動く小さなコウモリの羽と細いしっぽ持ち。
ゴスロリっぽい真紅のお嬢様衣装が実に良く似合う。
俗に言う「魔族種」の美幼女お嬢様、小悪魔っ娘な訳だ。
リーヤ、僕には正確な歳は言わないけど、100歳は確実に越えているらしい。
「だって、警部補は警部補でしょう。それに歳上かつ階級が上の女性に『ちゃん』は言い辛いのですが」
僕だって、礼儀くらいは身に付けている。
僕は巡査だし、リーヤよりも随分と歳下だ。
確かにリーヤは飛び切りの美幼女だよ、でもそれはそれだ。
……上司かつ現地お貴族様のお嬢様に対して「ちゃん」というのは言えないよぉ。
「なんでじゃ! これでも此方は魔族の中では未成年じゃし、この外見では威厳もへったくれも無いのじゃ! 日本のアニメでもおるじゃろ、ロリババァという枠なのが。此方もその分類なのじゃ!」
因みに、現在の2人の会話は日本語。
僕の所属する部署では、現在日本ブームが絶好調。
そこに日本人の僕が加入したものだから、部署内での基本会話が現地「異世界共通語」ではなく日本語になりつつある。
部署で扱う事案には高度な科学的案件が多いので、学術的な文献が多い英語とか日本語を使う事が多いのだけど、オタク系の人が部署に多いのでオタク文化バンザイな日本語が使われている訳だ。
……まあ、現地の方にナイショ話をするのには、日本語を使うのが僕にとって一番楽なんだけどね。
「うー。警部補が宜しいのなら変えますよ。ただ、『ちゃん』は外聞もありますので、リーヤさんでイイですか?」
「うみゅぅ、まあ今日の処はソレで勘弁してやるのじゃ、タケよ」
……坊やって言われないだけマシかな。
可愛い顔でふくれ面をするリーヤ。
これで100歳越えとは、ロリババア好き業界のエルフ萌えとか魔族萌えを理解しそうになる自分が怖いです。
「じゃあ、一応警告はしますね。リーヤさんフォローお願いします」
「了解じゃ、タケ!」
僕は遮蔽物にしていた長椅子の影から、20分近く前に応援を呼んだ多機能スマートフォンを差し上げ、大音量スピーカーモードにして話した。
「皆さん、ちゅうーもーく!」
多機能スマホから大きな声で日本語と共通語が同時に聞こえる。
これ便利!
「自分達はポータム治安維持警察隊、異界技術捜査室の者です。直ちに銃撃を停止して大人しくしてくださーい!」
……コレで言う事を聞いてくれたら警察は要らないよね。あ、僕も警察官だったよ。
「なんじゃオラ! 警察がこわーて極道なんてやっておらんのじゃぁ!」
……なんでヤクザの方々は、広島弁風な話し言葉使うんだろうか?
「地球の狗が何言ってるんじゃい! ここはワシらの縄張りじゃ! それにどうしてオマエらがウチに入ってきたんじゃぁ!」
……だって、家の奥から銃撃戦の音が聞こえてきたら、警察官なら中に入るでしょ?
「ですから、まずは銃撃や戦闘をやめて下さい。そうしたらお話も聞きますし、話が終わったら自分達は帰りますから」
……銃撃があったことを無視するとは言わないけどね。後から逮捕するに決まっているでしょ。
「なんじゃ、このガキ共がぁ! ナニが話を聞くじゃぁ!」
「そうだ! こんなガキ共、放り出してハナシアイの続きじゃぁ!」
……なんで、こういう事になると銃撃戦をしている敵同士が仲良くコッチに来るの? こういうのも呉越同舟なのぉ!
「おうおう、黙って聞いておれば、悪口雑言の数々。この『坊や』が黙っておっても、この此方が黙ってはおらぬのじゃ!」
そこに飛び出すリーヤ。
遮蔽物にしていた長椅子の上に飛び乗り、あまり無い「胸」を張って大声で叫ぶ。
……また、坊やって言ったぁ!
「此方、アンティオキーア領主、ロード・ザハール・アレクサンドロヴィチ・ペトロフスキーの次女にして、ポータム治安維持警察隊、異界技術捜査室、警部補のリリーヤ・ザハーロヴナ・ペトロフスカヤじゃ! 全員、大人しゅう縛に付くのじゃ!!」
新たな物語、どうでしたかでしょうか?
この後、昼から続きを公開しますので、お待ちくださいませ。
お待ちの間、ブックマーク、評価頂けますと感謝感激です。
ヒロインイラスト:池原阿修羅さま
(追記)
銃器等特殊用語について説明が欲しいとの感想がありましたので、随時説明をします。
今回は、ヤクザさんが使っている銃器について。
1:M61バルカン
20mm×102mm機関砲弾を撃つガトリング砲(沢山の銃身、弾が出る筒が多い)。
F-15等のアメリカ軍用機に積まれていることが多いです。
毎分6000発の弾をばら撒く。
船舶の防衛用のCIWSにも「ファランクス」として採用されています。
因みに、ガンダムでは機関砲は何でもバルカン砲と言っていますけれど、バルカンはM61の商標名です。
2:M134ミニガン
7.62mm×51mmNATO弾(北大西洋条約機構標準規格弾)を使ったM61のスケールダウン型。
主にヘリコプターからの地上攻撃用に用いられます。
シュワちゃんがターミネーター2とかで撃っていますけど、本来は銃の反動と重量で人間が構えて撃つのは不可能。
サイボーグとか強化外骨格でも無いと使えません。
3:M-4
5.56mm×45mmNATO弾を使用するアサルトカービン銃。
ベトナム戦争以降使われたアサルトライフルM-16(ゴルゴさんの愛銃)を縮めて(カービン)取り回しを良くしたタイプで、今のアメリカ軍の主流小火器。
色んなアクセサリーが付くので、サバゲーでも良く見ますね。
因みに、アサルトライフルとは、5.56mm×45mmNATO弾のような反動が少なめな弾薬を使った全自動射撃可能なライフル銃のこと。
最近では、これよりも大型の7.62mm×51mmNATO弾を使うタイプをバトルライフルと言います。
4:トカレフ
正式にはトカレフTT-33。
7.62mm×25mmトカレフ弾使用。
ソ連軍が1933年に採用した自動拳銃。
一時期、ヤクザが持っている銃として有名になりました。
弾が普通の鉛合金では無く鋼な上に火薬量も多いので、貫通力が高いです。
SAOでシノンのトラウマになった銃ですね。
以上、第一話、銃器講座でした。