第8回配信「河川盗賊」
「ラジオの前の皆様、こんにちは
さちです。」
「・・・・・・ノワよ。」
「本日もウィッカラジオを視聴していただきありがとうございます
早速始めていきましょう。」
「おい、ちょっと待て
これは何の茶番だ!?」
「黙って・・・・・・まだ、出番じゃない。」
「えー、今回は予定と少々変わりまして
ちょっと変わった場所から放送しています。」
「具体的には、河川盗賊の隠れ里。」
「はい。どうしてこうなったかとりあえず説明いたしますね。」
「市場都市メルゲートを出た私たちは
近くの川の、船着場に向かった。」
「船着場からは目指す水運都市セイリアと行き来している
商船が沢山出ています。」
「そこから、私たちも・・・・・・小型の商船で、セイリアに向かった。」
「大きな船を持ってるような方々は自前で護衛とか雇ったりしてますが
規模が小さい商人さんとかは、冒険者を無料で乗せる代わりに
荷運びや護衛をやってもらっているようです。」
「だから、私たちも、そうやって船に乗ろうとした
ただ・・・・・・なかなか乗せてくれる船が、なかった。」
「若い女性の二人旅ですからね
護衛として役に立たないと思われたんでしょうね
おかげで多くの船に断られました。」
「人を見かけで判断・・・・・・良くない。」
「仕方がないことだと思いますが
ともあれ、どうにか乗せてくれる商人さんを見つけることが出来ました。」
「後は、河を下るだけ。」
「と、思ったのですが
そこで登場するのが河川盗賊です。」
「河川盗賊は・・・・・・名前の通り、河に出没して
商船の荷物を狙うのを、専門的にした盗賊。」
「そんな盗賊さんに私たちが乗ってる船が見つかってしまい
襲われそうになったんです。」
「そりゃそうだ。生っちょろそうな若造に
小娘2人しか乗ってない船なんて見かけたらカモとしか思わねぇぜ。」
「だから・・・・・・油断して、小細工もなしに、一直線に向かって来た。」
「そこで、乗せてもらったお礼とばかりに
ノワさんが盗賊さんの船に2、3発魔法を撃ち込んだのです。」
「むしろカモは、あなたたちだった・・・・・・。」
「うるせぇ、見晴らしのいい河で撃ち合いになってもいいように
魔法障壁を使える魔法使いの一人や二人乗せてたわ。」
「あっ、そうだったんですね
見ている分にはまったく分かりませんでしたが。」
「いくら魔法障壁を張れても、あれだけ薄ければ・・・・・・無意味。」
「可哀想なことに、普通の魔法使いさんだったんでしょうね
ノワさんの規格外の魔力に対抗するのは難しい話です。」
「くそっ、化け物めっ。」
「そんなこともありまして、何とか盗賊を撃退したのはよかったのですが
そこからノワさんが盗賊の船に乗り込みまして。」
「盗賊の、生活とか・・・・・・インタビューできたら、面白そうだと思った。」
「よくそんなこと思いつきましたね・・・・・・。」
「聞いてみたら、あなぐらとかで生活してるのじゃなく
小さい集落を作って、普通に暮らしてるらしいから
気になって、案内してもらった。」
「ちなみに集落の場所は企業秘密です
盗賊業をやってる方以外も住んでますので
迷惑がかからないように配慮です。」
「こうして、盗賊の隠れ里で、放送する事になった。」
「さて、前置きが長くなってしまいましたが
今週もウィッカラジオ、スタートです!」
「あらためまして皆様こんにちは
本日は盗賊の隠れ里よりお送りしております。」
「そして、今回は、特別ゲスト・・・・・・いる。」
「と言うわけで自己紹介の方お願いします。」
「あぁん、何でそんなことやらないといけねぇんだ。」
「・・・・・・以上、盗賊Aでした。」
「では、早速仮称Aさんにインタビューしていきましょうか。」
「おいこらっ、俺はこんな茶番に付き合う気はねぇぞ。」
「この里に案内する、放送に協力する
・・・・・・どっちも、約束した。」
「知るかっ、こんなくだらんことさせられるとは思ってなかったわ。」
「約束は約束。反故するなら・・・・・・
この里に停泊してる船が全て沈むぐらい、大魔法を撃ち込む。」
「既に分かってると思いますが、ノワさんの魔力は並大抵じゃありませんので
本当にやりかねませんよ。」
「くっ、仕方ねぇ・・・・・・。」
「分かってくれたなら、無駄な実力行使は・・・・・・したくない。」
「では最初の質問です
何で盗賊なんてやってるんですか?」
「この辺りは土地が痩せててろくにものが取れねぇ
必要な物はある程度奪ってでも手に入れる必要があるんだよ。」
「それって、そもそも、こんな土地に、住まなければいいだけでは?」
「はい。川沿いには街がいくつかありますし
無理にこんな場所に隠れて住む必要はないのでしょうか?」
「さぁな、何で最初にここに住み出したのかは俺も知らねぇ
だが、何代も盗賊をやってる連中もいる。」
「ここから、出て行こうとは・・・・・・思わなかった?」
「あぁ、生まれた時からここ以外の暮らしは知らねぇ
だから俺たちにとってはこれが当たり前だ。」
「なるほど。純然と稼業を継いでる感じなんですね。」
「これ以上、他人の生き方に、深入りしても仕方ない
・・・・・・次にいこう。」
「では、盗賊業のやりがいって何ですか?」
「そりゃぁ勿論、極上の獲物を奪った時よ。」
「でも、そう言ういい品を積んでる船って
やっぱり護衛の人とかも沢山乗ってるのではないでしょうか?」
「そのリスクをかいくぐった上で盗るからいいんだよ
何も護衛は全員倒す必要はねぇ
上手いこと出し抜いて荷物だけ奪ってしまえばこっちの勝ちだ。」
「ただ・・・・・・大した荷物を積んでなさそうな船でも、私たちみたいなのに当たる
リスクの方が、高いのでは?」
「普通はてめぇみたいな化け物が乗ってるなんてことはねぇよ
それに、ある程度実力のある冒険者とかなら遠目でも判別できる。」
「ってことは、私たちは実力のない冒険者と思われたのでしょうか?」
「そもそも小娘二人だけで冒険者だなんて見たこともねぇよ。」
「世間には、若い冒険者だって・・・・・・いくらでもいる
それを知らなかった、自業自得。」
「まぁ、魔力だけが突出して高いノワさんみたいなタイプは
見かけで判断しにくいでしょうし、仕方ないですよ。」
「次・・・・・・盗賊業をしてる時にあった、面白いエピソードなどがあったら、聞きたい。」
「そうだな、自分は盗賊に狙われないと思って
ろくに護衛すら雇ってなかった成り上がり臭い奴を襲った時の慌てぶりは面白かったなぁ。」
「リスナーの皆様も、陸にせよ川にせよ
盗賊の出そうな場所ではそうならないように事前に準備を整えておきましょう。」
「他に、盗んだ積荷で、面白い物とかは・・・・・・ないの?」
「そうだなぁ
良く分からないガラクタとか落書きとかを大事そうに運んでる奴は多いが。」
「それは、あなたが、価値を分かってないだけでは?」
「いや、どう考えてもあんなものに価値はねぇだろ。」
「分かりませんよ、正直私から見たら何かも分からないこの放送機材だって
凄い技術の詰まった魔道器だったりするんですから。」
「あ? この黒い箱みたいなのがか?」
「それ、普通の人じゃ再現できないような貴重な機材ですよ。」
「・・・・・・。」
「まぁいいわ、そろそろ聞くこともなくなって来たから、帰っていいわ。」
「あぁそうかい
だったらお前らに付き合ってやる義理はねぇ、じゃあな。」
「行ってしまいましたね。」
「思ったより、大した話が出なかった
もっと、上の人間に話をつけるべきだった。」
「まぁ、普段聞けないような相手から話を聞けただけよしとしましょう。」
「下っ端盗賊の、知識や教養が、あの程度だと分かっただけ、収穫。」
「今日は随分厳しいですね・・・・・・。」
「一応、襲われたからね。」
「それにしても、ノワさんみたいな特殊な相手はまだしも
少人数しか乗れない小船での盗賊業って非常に危なそうに見えましたね。」
「たしかに、少しでも腕の立つ護衛がいたら、手を出せないわね。」
「護衛が乗ってるのは遠目で分かると言ってましたけど
実力まで測るのは難しそうですし
どう考えてもリスクの方が高そうです。」
「商船も大小様々だったから、小船だけを狙えば、リスクは軽減できるのじゃないかしら?」
「それはそれで戦利品も少なそうですし
結局盗賊さんの生活はよく分かりません。」
「まぁ、普通に稼ぐ方が、よっぽど楽ね。」
「そうですね
事情はそれぞれでしょうけど、堅実に生きるのが一番だと思いました。」
「じゃあ、そろそろ次の行程を、考える。」
「予定のルートを外れてしまいましたからね
ここからどうやって戻ります?」
「あの盗賊に、最寄の街まで、送らせる。」
「えぇ、ノワさんに迂闊に絡んだばかりに可哀想に・・・・・・。」
「そもそも・・・・・・盗賊行為は、違法
返り討ちに遭っても、文句は言えない。」
「そう言う意味ではここの里に住む皆さんは
盗賊業をやめて普通のことをして欲しいですね。」
「そうね、その辺りは部外者の私たちには・・・・・・どうしようもないけど。」
「これを聴いてる皆様は悪事などに手を染めたりせず
まっとうに生活してくださいね
そうしないとさっきの盗賊さんみたいにいずれ酷い目に遭いますよ。」
「次こそは、水運都市セイリアへ、向かう。」
「まさかこんな寄り道をするとは思っていませんでしたからね。」
「この里は、娯楽もなさそう
だから、宣伝しておくには、ちょうどいいとも言えなくもない。」
「盗賊ってラジオを聞くのでしょうか?」
「そこまでは、知らない。」
「では、次はとりあえずセイリアに向かいつつ
折を見て放送と言うことでよろしいでしょうか?」
「いいわ。それまでに番組に対する感想、要望などがあったら
いつも通り感想機能に送ってもらえるのを、待ってる。」
「次の街でこういうことをして欲しい
こう言う場所をレポートして欲しいみたいなのがありましたら
そう言うのもどんどん送って下さいね。」
「それじゃあ・・・・・・今回はこの辺りで。」
「ここまで聴いて下さってありがとうございます
お相手はさちと。」
「・・・・・・ノワでした。」
「次回もまた聴いて下さいね。」
「・・・・・・またね。」