第7回配信「市場都市」
「ラジオの前の皆様、こんにちは
さちです。」
「・・・・・・ノワよ。」
「ウィッカラジオ、本日も張り切って放送していきますので
皆様しばらくのお付き合いのほど、よろしくお願いいたします。」
「私からも・・・・・・よろしく。」
「本日は、前回に予定したとおりに
市場都市メルゲートより放送しております。」
「・・・・・・ここまでは、順調に、来れた。」
「はい。街道都市からここまでは
大きな道で繋がっていたために歩くのにも苦労しませんでしたし
道中に凶暴なモンスターが現れて大変だったとかってこともありませんでした。」
「長い旅路、無事に済むのは、悪くない。」
「そうですね
この先どんな難所があったりトラブルに見舞われるか分かりませんから
こうやって無事に次の街に辿り着けただけでも感謝ですね。」
「進める時に進んでおく・・・・・・一番安定する。」
「そう言うわけで、市場都市からの配信スタートですっ。」
「とりあえずこの街についてざっとおさらいから行きましょうか。」
「街道都市から陸路で、水運都市から水路で
両方が交わるから・・・・・・多くの物品が行き来する街。」
「そうですね
そのためにこの街に店を構えている商人さんも多いですし
行商人の方も多く訪れるそうです。」
「商売で成り立っている街、そういうイメージ。」
「また、そうやって集まった珍しい品々を求めて
冒険者さんなんかも集まるので非常に活気のある街となってます。」
「概要は、そんな感じ。」
「そこまでは事前情報で知ってはいましたが
実際に来てみると凄いとしか言いようがないですね。」
「遠目にも、あの巨大な天幕は、凄かった・・・・・・。」
「街道から街が見えた時点で驚きましたからね。」
「街の5割ほどが、天幕の下に隠れて、見えない。」
「その天幕こそが、この街の特徴でもある巨大市場でしたね。
天幕の下に街に在住の商人さんの店が並んでいて
さらに行商人さんが露店を出すための広場まで含まれています。」
「日差しを遮り、雨も防げる
・・・・・・本当に露店のための、施設。」
「市場の大きさもさることながら
冒険者、行商人と多くの人が訪れることもあって
宿が全体的に整備されているのも印象的でした。」
「街道都市も、人が多く通るだけに、大きかった
・・・・・・ここのは、それを上回る。」
「えぇ、あんみつを厩舎に入れるだけでも大変でしたね。」
「多くの人が集まる分、連れて来る駄獣も多い。」
「数もそうですが種類も多かったですね
ぱっと見ただけで馬や私たちみたいな荷運蜥蜴連れ
大型の道走鳥に、果ては小型の竜種までいましたよね。」
「なかなかに、壮観な眺め・・・・・・だった。」
「宿自体も部屋数が多いし綺麗に整備されてるしで
快適でとてもいいところだと思います。」
「一つだけ文句を言うなら、料理が、普通。」
「え、十分美味しいと思いましたけど。」
「この街は商業で成り立ってるから、農業人口が少なく
食料に関しては他国からの交易頼り
・・・・・・おかげで新鮮な物が、少ない。」
「なるほど。そんなところまで気付きませんでした。」
「料理人の腕がいいから、美味しいけど
鮮度の面では、どうしても劣りがち・・・・・・。」
「まぁ、収容人数を重視した安めのお宿でしたし
仕方ない部分はあるかもですね。」
「路銀に限りがある、仕方ない。」
「まぁ、そんなわけで昨日の日が落ちる前ぐらいに街に着いて
宿を取ったわけなのですが。」
「昨日は、そのまま宿で休んで、終わり。」
「そして今日ですが
この放送が始まるまで1日中ずっと市場を見て回ってました。」
「広すぎて、1日かけても、まだ見切れてない・・・・・・。」
「はい。私もまだまだ見足りない場所があります。」
「とにかく・・・・・・説明できないぐらい、店の数も物の量も、多すぎる。」
「露店巡りなんかは好きな方ですけど
これだけ多いとさすがに疲れますね。」
「露店エリアは、商品区分とかで、分けられてないから
欲しい物を探すだけでも、一苦労。」
「その分掘り出し物が見つかった時の嬉しさもありますが
どの露店で何を取り扱ってるか遠目に分からないのはきついですね。」
「さちは、何か掘り出し物、見つけた?」
「とりあえず、衣類を少々ですね
旅の間ずっと同じものを着ておくってわけにもいきませんし。」
「たしかに、宿に滞在してた頃は、定期的に洗えた
旅の途中だと・・・・・・その辺りも、不規則。」
「はい。ですから着替えの買い足しです。」
「それは・・・・・・俗に言う鳥籠スカート。」
「袴が手に入らないので、何か可愛かったのでこれにしました。」
「うん・・・・・・まぁいいんじゃないかしら。」
「そう言えばノワさんは服装変えたりしないんですか?
いつもその黒ドレス着てる気がしますが。」
「特に変える必要性が、感じられない。」
「えぇ、毎日同じの着てたら汚いですよ。」
「大丈夫、毎日洗浄は、してる。」
「そう言う問題じゃないと思います。」
「じゃあ・・・・・・何が、問題?」
「ほら、あれですよ、女子力的な意味で問題です。」
「女子力・・・・・・よく、分からない。」
「せっかく可愛いんですから色々お洒落とかしましょうよ。」
「可愛い、私が?」
「えぇ、外見は人間の女の子と大差ないんですから
むしろ人間の中でも可愛い部類に入ると思いますよ。」
「・・・・・・?」
「よしっ、こうなりましたら明日にでもノワさんに似合う服を探しましょう。」
「いい・・・・・・路銀の、無駄。」
「そんなことないですっ
せっかくだからこの機にお洒落とかしてみましょうよ。」
「遠慮しとく。」
「むぅ、いいじゃないですかちょっとぐらい。」
「それよりさちは、服だけ?」
「え、そうですけど?」
「てっきり本でも探してるのかと、思った。」
「あぁ、本を売ってる商人さんもいることはいましたし
面白そうな本も沢山見つかったのですが・・・・・・。」
「その割には、買ってない?」
「買いたくはあったんですが、やっぱり本は場所を取りますから
これから長旅に行くのに余計な荷物は増やすべきじゃないかと
あんみつに載せるにも私物は出来る限り減らそうかと思って。」
「なるほど
それなら・・・・・・余計に、私の服も、必要ない。」
「そこはあれです
魔法で何とか出来るとしてもやっぱり体面的なものがありますし。」
「むぅ・・・・・・しつこい。」
「まぁ、ここで言ってても仕方ないので
明日実際に市場に行った時に考えるとしまして
ノワさんは何か買ったりしたんですか?」
「とりあえず、機材の整備に使えそうな素材。」
「放送機材が壊れたらおしまいですからね
それは非常に助かります。」
「後は、乾燥ハーブの類ね。」
「それは何に使うんですか?」
「紅茶に入れる
・・・・・・後は、保存が利くから、一部は遠くの街で、売ろうと思う。」
「ハーブティーですか、相変わらず紅茶が好きですね。」
「勿論、毎日の紅茶は、欠かせない。」
「私の本に突っ込んでおきながら
ノワさんもしっかり自分の趣味の物買ってるじゃないですか。」
「そこは、お互い様ね。」
「さて、近況はこんな感じですかね?」
「そうね。」
「さて、それじゃあこの先どうするかを決めていきましょうか?」
「その前に、さちに朗報。」
「えっ、何でしょうか?」
「なんと、返信用の魔力波に反応が・・・・・・。」
「おぉ。来たんですね!?」
「ふたりのやりとりが可愛い、これからも応援してる。って。」
「わぁ、実際応援して貰えるととても嬉しいですね。」
「これで、ちゃんと他の世界にも、配信されてることが、確認できた
ついでに、感想の受付も、機能してることが分かった。」
「その辺りはノワさんに任せっきりですからね
何にせよちゃんと配信できてるようでよかったですが。」
「うん。私も、一安心。」
「ですが、これでますます私たちも頑張らないといけなくなりましたね。」
「そうね・・・・・・リスナーのためにも、しっかり配信しないと。」
「はいっ、聞いてる皆様が楽しめるようにしっかりやっていきましょう。」
「これからも、感想とか、要望は、待ってる
気軽に・・・・・・送って欲しい。」
「はい。お待ちしております。」
「それで、この先の予定ね。」
「はい。次はどこに向かいましょうか?」
「近くに大きな川があって、水運都市セイリスと船で行き来できるらしいから
それに乗って進む・・・・・・で、どうかな?」
「了解です
その水運都市に関しての情報とかってありますか?」
「セイリスは・・・・・・川で内陸部へ、海で色々な街へと繋がってる
他の都市との交流が盛んな、港町らしい。」
「おぉ、また人も多そうで期待できる街ですね。」
「この市場都市にも毎日、大量の荷物を川から運んでるらしいから
人も物資も、多そうね。」
「そこからだと他の街にも移動しやすそうですし
ひとまずそこを目指してみましょう。」
「うん。この街で荷物を整え次第、出発。」
「はい。何としてもノワさんの服を調達してから出発したいです。」
「まだ・・・・・・こだわってるの?」
「今回は譲れませんっ。」
「そう言うわけで、次回は水運都市セイリス方面
途中に街などがあったら、そこに付き次第、放送する。」
「本当は露店を出す方にも興味があったので
時間があればそっちもここでやってみたかったのですが。」
「すぐに出るわけじゃないし、1日ぐらいなら、やっても。」
「それが、売る物が手元にないんです。」
「・・・・・・たしかに、さちの荷物は、本ぐらい?」
「はい。大切な本は手放せませんし。」
「私も、売れそうな物は、魔道器ぐらい。」
「珍しいから売れはするでしょうけど
手放せないような物ばかりじゃないです?」
「うん・・・・・・売ると困るもの、ばっかり。」
「じゃあ、今回は縁がなかったということで
売り子をするのは諦めましょう。」
「そうね。これから先、旅の途中に取引ならするだろうから
そう言う時は、さちに任せる。」
「ぜ、善処します・・・・・・。」
「私も、交渉とかは苦手だから、大丈夫。」
「では、話もなかなか尽きませんが
そろそろお時間もいいようですし
今回の放送はここらで締めましょうか。」
「分かった・・・・・・今回も聞いてくれて、ありがとう。」
「よろしければ次回もまた聞いて下さい
お相手はさちと。」
「・・・・・・ノワでした。」
「次の放送でまた会いましょう。」
「・・・・・・またね。」
初めての感想を頂きました
書いてくださった方、作中の二人に代わってお礼を申し上げます
また、評価、ブックマークをして下さっている皆様も本当にありがとうございます