第6回配信「旅立ち」
「ラジオの前の皆様、こんにちは
さちです。」
「・・・・・・ノワよ。」
「本日もウィッカラジオを聴いて下さってありがとうございます
では、張り切って始めましょう。」
「今回も・・・・・・よろしく。」
「で、いきなりで申し訳ないのですが
この放送所からの配信は今回で最後となってしまいました。」
「・・・・・・詳しく。」
「はい
実のところ前回の放送の後滅茶苦茶怒られまして・・・・・・。」
「補足すると、怒られはしたけど
職権を濫用している一部憲兵の尻尾を掴めたと
感謝も、された。」
「噂は聞いてたけど確たる証拠がなくて
手を出しあぐねてたとまともな憲兵の皆様も言ってましたね。」
「見かけによらず、巧妙だった。」
「まぁそんなこともありましたが
やっぱり国の汎用通信回線に割り込む形での放送はまずいとなりまして。」
「仕方なく、配信の魔力周波数を変更することに。」
「そもそもこの国では今まで使ってた周波数が
一般的に使用されていたようですが
国によってその辺りも違うそうなので。」
「要約すると、他の国には放送が届いてなかった可能性、高い。」
「なのでその辺りの整理も込めて
ラジオ放送用の周波数を決めてしまおうってことになりました。」
「周波数帯96.4がこれからの配信用
・・・・・・次回から変わるので、間違えずに聴いて欲しい。」
「ですが、ここで問題が発生します。」
「・・・・・・何?」
「今、この放送を聞いてる人は周波数が変わるって事が分かりますが
そもそも聞けてない人たちは、ラジオの存在すら知らないことになります。」
「全世界放送には、程遠い・・・・・・。」
「なので、この周波数でこんなことやってますよって
宣伝をしないと誰も聴いてくれなくなります。」
「具体的に、どう宣伝するの?」
「この国に訪れた冒険者さんや行商さんに他の国へ情報を運んでもらうのが
一番楽じゃないかと思われます。」
「私たちは待ってるだけでいい。」
「ただ、この方法ですとどのぐらいの範囲までどれぐらいの時間で
伝わるかが分からないという弱点があります。」
「・・・・・・対策は?」
「なので、私たちが直接世界各地に出向いて
その場その場で放送をしながら宣伝をすると言う
非常に地道な方法が取られることとなりました。」
「・・・・・・と言うのが、今日まで話し合った結果。」
「ですので私たちは今回限りでこの放送所を引き払って
各地を巡りながら放送することとなります。」
「放送自体はまだまだ続くから、安心して。」
「以上。ここまでがウィッカラジオ近況報告でした。」
「で、まさかこの世界の各地を巡る冒険に出発することになってしまいましたが
色々と大丈夫なんです?」
「準備は・・・・・・してある。」
「おぉ、さすがノワさん
お仕事が早いです。」
「まず、各地への移動をしやすいように
機材の小型化、軽量化に成功。」
「これだけの機材を抱えての移動となるとやっぱり大変ですからね。」
「どんな場所に行くか分からないから
道中の安全には、万全を期したい。」
「それでも結構な分量がありますね
これに食料など必要な旅荷物を加えると重量、容量共にきつそうですが。」
「全部さちが持ち運ぶ・・・・・・。」
「いや、流石にこれ抱えて長距離の旅とか無理ですよ。」
「だと思った
だから、対策は打ってある。」
「それなら最初からそう言って下さいよ。」
「それが、これ・・・・・・。」
「ギュアァァァァッ!」
「えぇ、何ですかこの生き物は!?」
「荷運蜥蜴と呼ばれるモンスター
慣らせば人の言うことも良く聞く上に、結構な分量の荷物を載せれるから
行商人などがよく使役している。」
「よ、よくこんなの知ってましたね。」
「この街は冒険者や行商が多いから、この手の情報は入りやすい。」
「それにしても大きな蜥蜴ですね
たしかにこれなら多少荷物が多くても運べそうです。」
「雑食で飼育もしやすく、体は丈夫
重い物を持たせたり、多少の戦闘にも耐えれる
・・・・・・駄獣としてはなかなかに理想的。」
「なるほど
見かけ以上に凄い子なんですね。」
「これで、機材の輸送については解決。」
「分かりました
ところでこの子って、何て呼べばいいです?」
「・・・・・・名前? まだ考えてない
さちが付けてあげて。」
「えぇ、いきなり言われましても。」
「じゃあ、放送終了までに、考えておいて。」
「ぜ、善処します・・・・・・。」
「他に、準備したものだけど・・・・・・。」
「まだ何かあるんですか?」
「職人に依頼して、ラジオの宣伝ポスター、作ってもらった。」
「そんな物まであるんですか!?」
「ほら・・・・・・これ。」
「ちょっと待って下さい
私とノワさんの似顔絵が描いてあるのはいいんですけど
いつこんなの描いたんですか!?」
「数日前、だったかしら?」
「いや、それはいいんですけど
私本人がいないのにどうやって似顔絵とか描いたんですか!?」
「囮作製って魔法知ってる?」
「自分にそっくりな姿の分身を作って敵の注意を惹く魔法ですよね?」
「応用して、さちの姿で作って、モデルにした。」
「えぇ、あれって自分の姿だけじゃないんです?」
「その辺りが、応用
ただ・・・・・・私の記憶を基にしてるから
細部まで再現できたかは、微妙。」
「誰か分かる程度にできてるだけで十分すぎますから。」
「何にせよ、これを配れば、直接伝えなくても目に付く。」
「そうですね
他の街に移動した後でもこれが残っててくれれば宣伝効果も残ります。」
「とりあえずこれぐらい、かな?」
「私は自分の手荷物ぐらいしか準備してないのに・・・・・・。」
「とりあえずそんな感じで近日中には出発の予定です。」
「次の街に着くまで、放送はお休み。」
「ところでその次の街ですが
何処に向かうか決まってるんですか?」
「この街は、大きな街道が三本交わってる場所にある、交通の要所
だから、どれを通っても比較的大きい街に出れる・・・・・・。」
「どっちから回ると動きやすいんでしょうか?」
「正直、移動距離が長すぎて、予測が立てられない
だから、臨機応変に行き先は、決める。」
「効率よく世界中を回れるルートとかあればいいですけど
地図を見るだけじゃ正直想定できませんね。」
「あまり予定を詰めすぎても、何かあった時に・・・・・・対応できない。」
「まぁ、最短距離で回らないといけない旅でもないですし
適当に行きましょう。」
「・・・・・・じゃあ、最初に向かう方向だけ、決めて。」
「分かりました
では、最初は市場都市メルゲートへ向かいましょう。」
「分かった。
・・・・・・一応、理由は?」
「ここよりも色々と物品が行き交う街らしいですので
宣伝にはちょうどいいかと思いました。」
「なるほど
巨大な市場が街の名物で、全国から商人が集まる街
たしかに・・・・・・情報を流通させてくれるなら、ありがたい。」
「では、そう言う予定で行きましょう。」
「分かったわ・・・・・・
では次回はメルゲートに到着してから放送、と言う形で。」
「道中あったこととか、街の様子とか
トークの内容も色々と増えそうですね。」
「とりあえず、旅の様子がメインのコーナー
でも、返信用の魔力波からの感想機能で
感想、要望、意見なども待ってる。」
「皆様お気軽に送って下さいね。」
「さて、次回の予定も決まったところで
そろそろ締めてもいいけれど・・・・・・名前、決まった?」
「あ、そうでした。」
「もしかして、トークに集中して、忘れてた?」
「大丈夫です
え、えーっと。あんみつで。」
「その心は?」
「何となく鱗が抹茶色だったので和菓子っぽい名前にしたかっただけです。」
「分かった・・・・・・今日からお前は、あんみつね。」
「ギュアァ!」
「本人もまんざらではなさそうね。」
「とりあえず気に入ってもらえたならよかったです。」
「じゃあ、出発は明日
次回の放送は次の街に着き次第・・・・・・いいわね?」
「はい、大丈夫です
リスナーの皆様も私たちが移動中の間はしばらくお待ち下さい。」
「それと、次回から放送の周波数が96.4に変わるから
間違えないように・・・・・・してね。」
「魔力の周波数についてはよく分かりませんが
これ、ちゃんと別の世界にも届いているか心配になってきますね。」
「とりあえず、今はこの世界のことから解決・・・・・・しよう。」
「そうですね、地道に一つずつやりましょうか。」
「それじゃあ、今日はこの辺りで・・・・・・。」
「今回も聞いて下さってありがとうございます
お相手はさちと。」
「・・・・・・ノワでした。」
「では次の放送もお楽しみ下さい。」
「・・・・・・またね。」