第46回配信「知識とオシャレ」
「ラジオの前の皆様、こんにちは
さちです。」
「……ノワよ。」
「ウィッカラジオ、学書都市リブリア編第2回をお届けしますよ。」
「本当は、もう少し早く、次の街へ向かう、予定だったんだけど……。」
「見事に悪天候に足止め食らいましたからね。」
「その割には、さち、やたら嬉しそうね。」
「えぇ、その分だけたくさん本を読めましたからね。ラッキーですよ。」
「まぁ、そんな事だろうとは、思った……。」
「何なら後一週間ぐらい雨が降ってくれてもいいぐらいですよ。」
「はぁ……これだから、本の虫は、困る。」
「ふっふっふ、それぐらい誉め言葉ですよノワさん。」
「とりあえず、文句を言っても、仕方がない……早く始めましょう。」
「分かりました
それでは学書都市よりウィッカラジオ、スタートですっ。」
「改めてましてこんにちは
学書都市よりお送り中のウィッカラジオです。」
「今回は……現地紹介がないから、しっかりトークして行かないと、尺が稼げないよ。」
「とは言っても何を喋って行きましょうか?」
「まぁ、当然、ここに滞在している間に、読んだ、本の話……でしょうね。」
「やっぱりそうなりますよね。それで、何から話して行きましょう?」
「さちは、この一週間ほどで、何を読んだ?」
「いきなりかなりざっくり来ますね
色々読んだので話せなくはないですけど。」
「例えば、どんなのを、読んだ?」
「大体は物語の本ですね、恋愛にミステリー、冒険もの、ジャンルはもうあるだけ読んだ感じですが。」
「ふむ、何か気になった点は?」
「まず、やっぱりこの世界の本は文章が主体ですね
漫画みたいに絵を前面に押し出したものは非常に少ないと言う事です。」
「文章が多くても、挿絵みたいなのは、入ると思うけど。」
「実はその辺りも少ないですし、表紙も装丁に凝っているものは多くても
タイトルとそれを飾る模様だけで表紙絵が付いてたりすることも少ないんですよね。」
「なるほど、その辺りの、文化の違いは、意外と大きいのね。」
「えぇ、この世界では文章と絵は完全に別ジャンルなんでしょうね
図解が必要な技術書とかはまた違うのでしょうけど。」
「そうね、とは言え図鑑等の本も、絵よりも、注釈となる、文章の方が、力を入れてあった気がしたわね。」
「前の世界だと写真とかあったので図も入れやすかったのでしょうけど
こっちの世界はそう言った道具もなさそうですからねぇ。」
「前の世界でも、カメラは、かなり貴重品だったと、思うけれど
大体は、専門の絵師が、書いた、ものだったと……記憶してる。」
「それもそうですね。特に魔物絵師の人は凄かったようですからね
ダンジョン奥地まで危険な魔物を描きに潜るのが日常だったとか。」
「その辺りに関しての、知識は、私はないわね。」
「魔物を題材とした作品を作る芸術家さんのために
それ専門の冒険者さんが実際の魔物を見てスケッチを取ってたらしいですよ。」
「実際の、魔物を、スケッチって……襲われたりとか、しないの?」
「勿論攻撃的な魔物なら気付かれた瞬間その場で戦闘です
なので高レベルのダンジョンも単独で潜れる実力のある冒険者さんが絵師を兼任してたようですよ。」
「それは……思った以上に、壮絶な仕事、だったのね。」
「だから誰でも簡単に使えるカメラは重宝されてたようですよ
絵心はないけど魔物に気付かれずにこっそり写真を撮るだけなら暗殺者さんとかでも出来たので。」
「それはそれで……暗殺者の潜入技術の、無駄使いな、気もするけど。」
「まぁ、本に挟まれる絵一つ取っても苦労はあったようですね。」
「そう思うと、本に絵を入れる、習慣が、付いていないのも、納得できるわね。」
「絵のモデルが危険な魔物とかじゃないならそこまで苦労する事ないと思うんですけどね。」
「その辺りは、文化の違いと思って、諦めるしか……。」
「でも新しい漫画が読みたいんです。小説も当然面白いですけど面白さの方向性が違うと言うか何と言うか。」
「諦めるか、自分で書くしか、無いわね。」
「えぇ、悲しいけど諦めます……。」
「で……読んだ小説に、何か面白いものは、あったの?」
「そうですね、これはちょっと驚いた点なんですが。」
「ふむ……何かしら?」
「この世界の魔物って基本的に意思疎通が出来ないじゃないですか?
この前の言の葉の森の主さんが例外的だったように。」
「そうね、攻撃的も、非攻撃的も関わらず、魔物との、意思疎通は、基本無理ね。」
「ついでに言えば私達みたいな人間そっくりの人外も少ないじゃないですか。」
「少なくとも、この旅の途中で、会った事は、ないわね。」
「その割に亜人を含め人外を題材とした作品が意外と多いんです。」
「なるほど、私達みたいな、人外への、偏見が少ないのは、その辺りが、あるのかもね。」
「たしかに神聖都市で立ち入り禁止を食らった以外は
珍しいものを見るような顔はされましたけど、嫌な顔はされませんでしたからね。」
「そう……私達が、未知の存在なら、もっと警戒されても、しかるべきなのに。」
「ふむふむ。」
「だから……私達が、思う以上に、伝承や、想像上では、人に近い存在って、身近なのでは、ないかと。」
「おかげで今のところ不自由なく旅が出来てますしね。」
「そう言う下地が、あったとしたら、不思議では、ないかと。」
「面白いし素敵な説ですね。そうやって人じゃない人が混じってても仲良く出来るのが一番だと思います。」
「真相は、分からないけれどね。」
「とりあえず順調に旅が出来てるって結果だけで十分だと思います。」
「そうね……じゃあ、これぐらいで、この話は終わりましょう。」
「はい
ところでノワさんはどんな本を読んだんですか?」
「とりあえず、放送機材に使えるものがないか、魔道器技術に、関する本と
後は、この世界の、神話、伝承の類を中心に……。」
「おぉ、流石ノワさんです。何か実用的そうなのばっかり。」
「そう言う、さちは、何か、実際に使えるものは、読んだの?
……ちゃんと、趣味以外のも、読むようにって、前回、言ったよね?」
「大丈夫です。その辺りはぬかりありませんよ。」
「……例えば?」
「まずは野外活動関連の本
元々こう見えても私は家事は出来る方ですから、旅の途中でももっと身の回りの事を出来るようにスキルアップです。」
「ふむ……。」
「後は、女性冒険者のためのオシャレの本ですっ!」
「……。」
「あれ、どうしました?」
「それ、実用的でもないし、完全に、趣味だよね?」
「いえ、このラジオの発展のための知識です。」
「一応聞いておく……どの辺りが?」
「ノワさんの女子力アップはこのラジオの命題の一つです。」
「……。」
「と言うわけで冒険者たるもの装備は性能一辺倒ではなくもっと見た目とかその辺りも気を使えるように。」
「……そう。」
「ほらノワさん、例えばですよ
同じ実力の冒険者として可愛い女の子とむさくるしいおっさんが並んでたらどっちと一行組みたいです?」
「まぁ……同性の方が、やりやすいとは、思うね。」
「じゃあ可愛い女の子と、何かダサい女の子なら?」
「実力や、性格に、大差がないなら……どちらでも、構わない。」
「……。」
「意思疎通が取れないとか、実力不足ならともかく、他人の見た目を、そこまで気にする理由が、分からない。」
「えー、本気で全国のオシャレ職人の皆様からの意見を募りたくなりました。」
「そもそも……その、オシャレ職人って、何よ?」
「ノワさん知らないんですか!?
前の世界に普通に存在してた職業でして、オシャレ装備のエキスパートなんです。」
「……知らないわ。」
「極めた人は装備品の見た目を実用性そのままに、好きな物とそっくりに出来たとか。」
「それは……たしかに、凄い技術ね。」
「そもそもあの人もその技術で自分の主力装備を一式自分の好みの見た目に統一してたぐらいですよ。」
「そう……知らなかったわ。」
「それぐらい装備の性能と見た目の兼ね合いは多くの冒険者にとって重要なんですよ。」
「さて、さちが、熱くなってきたけど、ちょっと放送時間が、延び気味だから、この辺りで、切るわ。」
「えぇ、逃げましたね。」
「さて、遅くなったので、駆け足で、エンディング。」
「はい、では次の目的地は?」
「銀望都市トラスコプ……北の、雪国との、境目にある、街だね。」
「おぉ、帝国もついに次回で終わりでしょうか?」
「そうね……そこからは、北国へと、入る予定。」
「では、思い残すことがないようにもう少ししっかり本を読んでから出発しましょう。」
「それは、帝国とは、微妙に、関係ない気が。」
「とりあえず、次回はそこから放送と言う事でいいんですよね?」
「……いいわ
ついでに、それまでに、いつも通り、お便りを募集。」
「現在募集強化中のお題は
今年になって自分のここを変えたい場所
冒険の疲れを取るための視聴者さんお勧めの方法
ノワさんの女子力をどうやって上げたら良いか
の、3つとなっております。」
「それじゃあ……今日もお疲れ様。」
「はいっ、ノワさんも視聴者の皆様もお疲れ様です。」
「次回も聴いてくれると、嬉しい。」
「ではでは、本日のウィッカラジオはここまで
お相手はさちと。」
「……ノワでした。」
「最後までありがとうございましたー。」
「……またね。」




