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第4話 森の覇者。

ブクマが10件を越しましたッ!


本当にありがとうございます!!

 

「さぁ、行こうアリス」


 俺は森を出たときと同じように、

 彼女を背中におぶって村の入り口を後にした.........


「空良人さん。本当にこれで良いんですか?」


『これ』とはどういうことだろうか。


「ん?何がだ?」


「私みたいな生贄一族を助けていいのかなって.........」


「そんな悲しいこと言うな。俺は好きでやってるんだ」


 俺は正直に、誠意を持って答えた。


「は、はい!」


 彼女はとても嬉しそうだ。


 可愛いなぁ。やっぱ笑ってる時が1番可愛い.........!


 女の子は笑顔であるべきだッ!




「グルルルルッ!ワンッ!」


「うわッ!びっくりした.........」

「キャッ!」


 魔物の犬が飛び出して来たのだ。


 さすが『覇者の森』だ。

 やはり魔物はうじゃうじゃいるらしい。


 まるでダンジョンだ。

 というか、そうなんだろう。


「グルルルル.........」


「ヤるか?お前.........!」


「クゥン.........」


 ん?なにか様子がおかしいぞ?


「ワンワン!」


 犬っころは寝転がる様にして俺に腹を見せた。


 どうやら俺との戦闘は望まないようだ。


「どうしたんでしょうか.........?」


「わからんな.........」


「と、とりあえず先に進みませんか?」


「そ、そうだな。あまり時間はないんだろうし.........」


『魔物』からすれば生贄という『飯』がない訳だ。


 腹が減って村を襲ったとなれば色々マズいだろう.........


『ざわざわ.........』




 ん?この森、さっきとは何か様子が違うぞ.........?


『ざわざわざわざわ.........』




「キシャァ!」

「ワンワン!」


「キャッ!キャー!」

「こいつら.........まだいたのか.........」


 森の中で俺達を囲ったのはゴブリンテイマー達だ。


「お前らの仲間を殺ったのは俺だ」

「仕返しにでも来たのか?」


 少し挑発も入れてヤツらに話しかける。


 俺は攻撃してもらえないと弱いのだ。

 なんて不便な能力なんだ.........


「キュウ.........」


 今までに聞いた事のないようなゴブリンの声だ。


 そして奴らの中から、

 顔がくしゃくしゃにしおれたゴブリンが出てきた。


 老人のゴブリンだろうか.........?



 そしてそのゴブリンは.........





「ドウクツマデ.........アンナイスル.........!」


「しゃ、喋ったッ!?」


 なんと人間の言葉を喋り始めたのだ。


「こ、こんなことはこの世界では普通なのか.........?」


「いえ.........普通ではありません.........ッ!」


 一応アリスに確認を取った。


 やはりこれは異常事態のようだ。


「洞窟まで案内してくれるって言ったのか.........?」


「ソウダ.........!」


 普通に意思疎通が行えている。


 だがどういうことだ.........?


「何故、お前らは敵の俺達を案内してくれるんだ?」


「ドラゴン.........オレタチノ.........テキ.........ッ!」


 火竜がゴブリンの敵.........?


 それはつまり、


 魔物の間でも争いはある.........という事なのか?


「ヤツハ.........オレタチノコト.........クウ.........」


 ゴブリンが.........食われているのか.........?


 こいつの言ってることが本当ならば.........


 人間はゴブリンに食われ、

 ゴブリンは火竜に食われてるって訳だ。


「なるほど。話はだいたい分かった.........だが.........」


「サキホドノ.........ブレイ.........ワビル.........」


 ゴブリンは何かを察したらしい。


 無礼とかいうレベルの話ではない。


 先程の奴らは俺たち2人を餌としか見ていなかったのだ。


 なんて都合のいい連中だ.........だが.........




「分かった。俺達を案内してくれ」


「え、良いんですかッ!?」

「こいつらはさっき私達を殺そうとした連中ですよ!?」


「アリスは洞窟の場所を知っているのかい?」


「う、うぅ.........」


「つまりはそういうことだ.........」


 俺達には洞窟への手掛かりさえないのだ。


 多少リスクはあるが仕方ない。


 こいつらを利用する以外に手はないのだ。



「カンシャナドハ.........シナイ.........ダガ.........」


「キサマニ.........『ケイイ』ハ.........ハラウ.........ッ!」



 老いたゴブリンがそう言うと、

 他のゴブリンは跪き、魔物の犬は俺に腹を見せた。


 これがこいつら流の『ケイイ』の見せ方って訳だ。


「魔物の敬意なんか受け取りたくねぇな.........」


 だが、


 あの村の連中に比べたら暖かいものなのかもしれない。


 彼はそんなことを思っていた。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 数時間後。


「こ、これが洞窟か.........」


 その洞窟は異様に大きかった。


 奥は真っ暗で何一つ見えず、

 まるで大きな口を開けた魔物のような雰囲気があった。


「ソウダ.........コレガ『ハシャノドウクツ』ダ.........ッ!」


 どうやらここの森は『覇者』という言葉が好きらしい。


 そんな森に転移した俺は一体何者なんだ.........



 そんなことを考えていると、


「そ、空良人さん!私、どうすれば役に立てますかッ!」


 アリスはこんなことを言い出した。


「君は怪我をしているんだ。無理はさせられない」

「アリスは入口で待っていてくれないか?」


 恐らく、アリスは俺に恩を感じている。


 そしてアリスの頭の中は恩を返すことに精一杯なのだ。


「そ、そんな.........」


 彼女はとても悲しそうな顔をしていた。


「大丈夫。俺はこの世界じゃ負けないよ」


「空良人さん.........」


 どうやら分かってくれたようだ。


「んじゃ、行ってくるよ!」


「空良人さん.........死なないで.........!」


「おうッ!」


『コツコツコツコツ』


 洞窟の中で反響する俺の足音。


「うわッ!なんだこれ.........」


 洞窟の入口から少し進んだ所には、

 魔物や人間、動物たちの骸骨が散らばっている。


「火竜ってのは肉ならなんでも食えるってことか.........」


 俺はそんな嫌味を吐きながら進んで行った。


「おいおい、これは一体なんなんだ?」


 骸があった所のさらに奥には、

 鎧を着ている骸骨達が無数に散らばっていた。


 派手なモノから、国の兵士と思われるモノまで。


 多種多様の鎧と武器が骸を守り続けていた。


「これだけの人間が.........犠牲になったのか.........」


 そして俺はとあるモノを見つけたのだ。


「ん?なんだあの光るモノ.........?」


「こ、これは剣.........!」


 その剣は何も無いところにポツンと佇んでいた。


 その剣はただの短い剣。




 いわゆる『短剣』というものだ。




 俺は魅入られる様にその剣を握った。


「よし!この剣を使うことにしようッ!」


 これから挑む『ハシャ』とやらを殺す武器を決めた。


「今日からよろしく頼むぜ!」


 暗闇の中でそんな独り言を言ってまた進むことにした。




 そして辿り着く。


『火竜』の巣。


 その巣では明るい火の光が絶えず燃え続けている。


「さすが.........火竜と言われるだけはある訳だ」


 俺は岩陰に身を隠しながらその光の正体を確認した。


 そこにいたモノは、


 何もかも見通すかのような深海の様に蒼い目。


 何モノをも捕食できるようにと神様が授けた大きな口。


 世界を股に掛けるための大きな翼。


 そして『火竜』特有の紅色の炎を見に纏わせている。



 俺の知っている『竜』に限りなく近いモノがいた。


 こちらに気付く様子もなくただ眠っていた。


「チャンスだ!不意を突くしかねぇ!」


 俺は慎重にそいつの首元へと歩を進める。


 いくら短剣と言えど、

 首を突かれてはさすがに一溜りも無いだろう。


「こいつは案外余裕だな.........!」


 そう高を括っていた。




 それはここに来た皆が体験することなのだ。


 そして皆、平等に『死』が与えられるのだ。


 目の前に居るのが『火竜』だと錯覚するのだ。


 それが錯覚と気付く頃には手遅れなのだ。




「ここまで来れば、この短剣で首元を突くだけ.........!」


 その時だった。


『ゴゴゴゴゴゴゴ』


 洞窟が揺れ始めた。


「お、おいタイミング悪すぎだろこりゃッ!」


 そして現れる。本物の『火竜』。


「ガォォォォ」


「おいおい、マジかよ.........!」


 どうやら彼は気付いた様だ。


 目の前の『火竜』は『赤ん坊』なのだと。


 そして『赤ん坊』には『親』がいることに。


 そいつは天高くから舞い降りた。


 そして彼にはもう1つの気付きがあった。


『赤ん坊』の真上には洞窟の天井が無く、

 太陽の光が入り込んできていること。


 そして『親』によって光が遮られ、

『火竜』の本当の姿が見えたこと。


「まるで.........鋼鉄だ。」


 赤い鏡のようになっている。


 鏡が太陽の光を反射して燃えているように見えたのだ。


 そして手に掛けようとしていた首をもう一度見た。


 これはかなり硬そうだ。

 生半可な剣じゃ切り落とせないだろう。


「ガォォォォッ!!」


 どうやらこれ以上の観察は禁止のようだ。


 そして上を見上げた。


「なんて.........大きさなんだ.........ッ!」


 デカい。とにかくデカい。


『赤ん坊』の数十倍はあるであろう。


 正に『親』。正に巨体だ。


 そして今から俺はその巨体と戦うのだ。


「ヤるかッ!」


「ガォォォォ!」


 ヤツは、手始めに火の玉を口から吐いて見せた。


 そして俺はヤツを凝視する。


 そしてイメージする。

 火の玉が俺を避けていく様子を。


「オラォ!!」


 そのイメージは見事に現実に成り上がった。


「グラァァァ!?」


 ヤツはかなり驚いていたがすぐに体勢を建て直し、

 第2の攻撃を俺に繰り出す。


 ヤツは持ち前の大きな翼で天高くまで飛び上がった。


 そして、急降下。


 ヤツの爪が俺に的中する予定の攻撃だ。


 だがその予定は俺の前では無力なのだ。


「ガゴォォォォッ!」


「黙って俺から避けろッ!」


「グガッ!?」


 そしてヤツは俺の横に落ちた。

 墜落という表現が最も正しいのかもしれない。

 それほどの巨体が堕ちた。


「クソッ!避けさせることしかでにないのかッ!」


 ゴブリンの時のように、

 自らを傷付けさせることは出来ないようだ。


 ここに来てただの短剣を仲間に加えた事を後悔した。


「こんな短い剣じゃどうにも.........!?」


 彼は短剣を見つめながら驚いた。


 その剣は紅く光り輝いていたのだ。


「な、なんだこれッ!」


 そして


「あッ、熱いッ!!!」


 異様に熱を持っていた。


 そして理解する。


 この剣は熱によって紅くなっていることに。


 何故、熱を持っているのかはわからない。


 だが.........!


「これなら、ヤツの装甲を溶かせるかもしれねぇ!」


 たったひとつの希望。


「グガァァァ!」


  ヤツはまだ立ち上がれていない。

 思わぬ墜落に足を取られている。


「今しかねぇッ!」


 俺は勢いに身を任せてヤツの首元に短剣を突き刺した。


『グツグツ』

 まるで沸騰した水のような音。


 そして音は.........


「.........」


「ハァハァ.........」


 ひとつ減っていた。


『親』は首を貫かれ、喉が潰れて息もできないようだ。


「すまんな。こっちの事情だ。」


『グザッ』


 俺はこいつに恨まれても仕方ないな.........


 そんなことを思いながら、

 俺はこの短い戦いに終止符を打った。


 戦いが終わると、短剣は熱を失っていた。


 そして辺りを見渡す。


「お前の親は俺が殺した。」

「俺を殺したいならかかってこい。」


 あの『赤ん坊』の攻撃が俺に当たることは無い。


 だが、これは一種の謝罪なのだ。


 俺の自己満足でしかない謝罪なのだ。


「ガルルルルル.........」


『赤ん坊』はそう言い残してその場を去った。


『赤ん坊』が言ったことは全く分からない。


 だが理解はできた。




『お前を必ず殺す。』


 目が言葉の壁を超えて俺に伝えて来たのだ。


「チート能力ってのも悲しいもんだ.........」



 俺は強い。強すぎるのだ。


 だから『火竜の親』を倒しても、

 懺悔の気持ちが残ってしまう。


 普通の強さならば達成感と高揚感に包まれるであろう。


 そして『英雄』への道を進むのであろう。


 だが.........俺は.........


『ヤツ』が人間や魔物、動物を食い荒らしているのは明らかだ。


 だが俺からすれば、『その程度のこと』なのだ。


 俺は『人間』でも『魔物』でもない。


 そう感じてくるのだ。


 人とは『自分との関係があるモノ』に同情するものだ。


 俺はどちらにも同情できてしまうのだ。


「俺は『人間』なのか.........『魔物』なのか.........」


 きっと.........どちらでも.................。



 .................。



 そして俺は洞窟を後にした。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

お楽しみ頂けたでしょうか!?


この男の物語はまだまだ続きます!!


もし良ければ、

感想やアドバイス、レビュー等よろしくお願いします!

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