表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/5

第3話 覇者の在り方。

ゆっくり読んでいってください!


2日に1回ぐらいのペースで書いていきます〜!

 

「そこを右に曲がると村があります.........」


「了解した!」


 俺達はゴブリンを撒くことに成功し、アリスの故郷の村に歩を進めていた。


「そろそろ村が見えてきます.........」


「おっ!あれがアリスの村か!」


「は、はい...........一応...。」


 どうしたのだろうか。

 先程から元気がない。


「アリス? どうかしたのか?」


「い、いえ!なんでもありません.........」


 絶対に何かあることは分かる。


 だがまぁ、あんな魔物に襲われたのだ。


 女の子には聞いてはならないことがあるのかもしれない。


「そ、そうか!」


 俺はずっとアリスを背中に背負っている状態で走り続けている。


 この世界の俺はスタミナという概念はないらしい。

 息は切れるが、辛くはない。変な感覚だ。


「そろそろ村に着くぞ!」


「は、はい.........。」


 アリスの村は森の中にぽっかり空いた平地に作られていた。


 見たところによると、文化はそこまで発達していないらしい。


 木造建築。と言えば聞こえはいいだろう。


 そして村の入口らしきところまで来た。


 村の入口には看板があり、俺の読めない字で構成されていた。


「あ、あの。空良人さん.........大事な話が.........」


「ん?どうしたんだ?」


 彼女は不安げに俺の方を見ていた。


 俺に何か打ち明けなければいけない。

 そんな類の目をしていた。


 すると、


「おぉ! 旅のお方ですか.........!?」


 村人が話しかけようとしてくれたようだが.........?


 彼は逃げ去るように村の奥に行ってしまった。

 何か不吉なモノでも見たような顔をして。


「お、おい!どうした!?」

「一体なんなんだ.........。」


 あぁ、そうか。

 俺が着ているのは彼からすれば異世界の服。

 多少驚かれても仕方の無いことなのかもしれない。


「あの.........空良人さん.........あの.........」


 あぁ、なるほど。そういうことか!


「すまないアリス、すぐ下ろすよ!」

「故郷の村で男におぶられて帰るのはさすがにないよな!」


 彼女も俺と同じ16歳ならば多感な時期なはずだ。


 というか、俺も多感なのだ。

 先程から背中に当たるささやかな祝福からは耐え難いものがある。


 そんな時期に男におぶられるのは辛いものがあった訳だ。


 俺は彼女を下ろし、


「村の案内。頼めるかな?」


 俺は彼女に手を差し伸べてそう言った。


「.........。」


 彼女は口を開こうとしなかった。


 ん?何か様子が変だ。









 そこで俺はやっと気が付いた。


「アリス。その足は一体どうしたんだ?」


「.........。」



 足から出血していた。

『足から』というよりも、


『足首から』という表現の方が正しい。


「アリス。君は歩けなかったんだな?」


 医学の知識がない俺でもわかる。


 切られているのはアキレス腱だ。


 アキレス腱が深く傷付くと人間は歩けなくなる。


 そしてその傷は、

 ゴブリンが付けたわけでも犬っころが付けたわけでもなさそうだ。


 人間の技術が詰められた鋭いモノ。


 要するに『刃物』で切られた様な傷だった。


 にしても何故だ?



「おいお前!何をしてくれたんだ!」


 村人が出てきた様だ。

 そしてこんなことを言った。






「生贄を村に連れ帰ってくるんじゃねぇ!」


「.........。」






 生贄.........?




 ヤツは今、生贄って言ったのか.........?



「.........。」


「.........騙す気はありませんでした.........。」

「ただ生き延びたかっただけなんです.........。」


 彼女は本当に生贄だった様だ。


 なるほど。これで謎は解けた。


 何故『覇者の森』と呼ばれるような所にただの女の子がいたのか。


 彼女が何故、足を怪我しているのか。


 .........。



 つまりは

 この村の人間がアリスを傷つけ、森に放置した。



 これは勝手な想像だが、

 この村の人間も嫌々やっていることなのだろう。


 さっきのやつも言い方は悪かったが辛いはずだ。


 人間が魔物に人間を.........餌としてやるなんて.........


 俺がいた日本では考えられない.........




「もう何も言わなくて大丈夫だ。アリス。」


 アリスは驚いていた。そして、


「ごめんなさい。ありがとうございます。」


「感謝か謝罪か、どっちかに決めてからまた頼むよ。」



 そして俺は村人たちに言った。


「とりあえず、話を聞かせてくれ!」


 そしてこうとも言った。




「俺はこの村を救うことができる者だ!」



 俺はこの村を救わなくてはいけないんだ。




 村人が一瞬静かになった後、その村人の中から老人が出てきた。

 腰は曲がっている老人だ。90歳は優に越えているだろう。


「あんた、村を救えると言ったが.........」


「ワシらの状況を知ってのことか?」


 そういえば俺はこの村について何も知らなかった。


 だが生贄なんてモノがないといけない村だ。

 だいたいの予想は着くだろ?


「すまない。俺は何も知らずに発言した。」

「だがどんな状況であろうと、村を救って見せよう。」


 老人は俺の目をじっと見つめた後、こう言った。


「おぬしはただならぬ者なのは確かじゃ.........」

「じゃが.........」


「いいから話してくれ。爺さん。」


 老いた男は語りだした。


「この村には昔から言い伝えがあるのじゃ。」

「そこの森。『覇者の森』というのは昔は何も無いただの森じゃった.........。」


「じゃが今から300年前。森の奥深くにある洞窟に『火竜』が住み始めたのじゃ.........。」


「ワシらの祖先は戦った。この村の総力をあげてな。」

「だが、ヤツには叶わなんだ.........。」


「そしてある日、魔物達はこの村を襲ったのじゃ。」


「村はほぼ壊滅状態じゃった。そんな中、1人の村人からこんな提案があったのじゃ。」



「生贄を捧げて見るのはどうか.........と」



「最初は誰もが首を横に振っていたそうじゃ。」

「じゃが、襲撃の度に仲間や家族を失い.........」


「首を縦に振るものも多くなったのじゃ。」

 

「じゃが、いざ誰が生贄になるのか.........」


「誰も自分は死にたくはなかったのじゃ。」


「そこで当時の村長はよそ者を村に住まわせ。」





「そのよそ者の血筋を生贄としたのじゃ。」





「生贄を捧げ、村には平穏が戻った。」

「そういうことなのじゃ。」






 なるほど。









 胸糞悪い言い伝えだ。


 そしてこの村もクソだ。クソの集まりだ。


 他人事の様に語る爺さんも


 生贄という選択肢を取る村人も


 全員クソだ。



 生贄の血筋。つまりは餌用の人間って訳だ。


 そんなのは許されてはいけないはずだ。


 そんなのを選択してはいけないはずなんだ。



「んじゃアレか。その『火竜』を倒せば問題ないわけだな?」


「そ、そうじゃが.........おぬしに倒せるのか.........?」



 そんな会話の外。


「お、おい!何か来るぞ.........!!」

「な、なんなんだアレは.........!?」


 村人達が指を指している方向を見ると、

 何かモゾモゾとこちらに来るものがそこにはあった。


「まさか.........アレって.........!」


 村人がその正体に気付いた様だ。


 そして時間が経つに連れて、その正体を理解する者が増えていき.........


「「「ゴブリンだ! ゴブリンテイマーだ!」」」


 1人の村人がその正体を叫んだ。


 その瞬間、村人はパニックに陥ってしまった。


 そして目の前にいた老人合わせて全員が、

 家の中に隠れてしまった。




 そう。誰もが俺とアリスを見捨てたのだ。




 これが.........生贄ってことなんだろうか.........




「私のせいで.........ごめんなさい.........ッ!」


 彼女は泣いていた。魔物に襲われていた時よりも激しく。



「大丈夫だ。アリスは俺が守るから.........!」


 俺は許せなかった。


 捧げる村人たちも、求める魔物達も。


 目の前で女の子が泣いているって言うのに.........。


「キシャァァ!」

「ワンワン!!」


 そして気付けば目の前には犬に乗ったゴブリンがいた。


 ゴブリン達は仲間を連れて生贄を回収しに来たのだ。


「何がテイマーだ。ただのゴミめッ!」



 俺は今、気分が悪いんだ.........。




「「「キシャァァァァッ!!」」」


 俺を囲む様に、総勢50匹程のゴブリンテイマーがいた。

 そしてアリスもその囲いの輪に入っていた。



「さぁ、かかってこいよッ!」


 ゴブリンは一気に2つの『肉』に飛びかかった。




 そして愚かな彼らは気付いたのだ。








 飛びかかった『人間』の目が血のように紅く輝きを放っていることに。




 そして自分たちの運命に。




「お前らみたいな奴らは大嫌いだ.........ッ!」





 その瞬間、ゴブリンたちはおかしな現象に見舞われた。



『怪物』への攻撃が外れ、あらぬ方向へ行ったのだ。


 そして、そのあらぬ方向とは自らの方向だった。



『グシャァ』


 生々しい音が辺りに響く。




「.........。」


 その場には、しばらく静寂が流れた。




 そして.........。


『パチパチパチ』


「.........。」


 少ない音だった。




 .........。


『パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ』


 音は増殖した。






 そして.........。









『パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ』

『パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ』

『パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ』

『パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ』

『パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ』

『パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ』

『パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ』

『パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ』

『パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ』

『パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ』

『パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ』

『パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ』

『パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ』

『パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ』

『パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ』

『パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ』

『パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ』

『パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ』

『パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ』

『パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ』

『パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ』



 誰も声は出さなかった。


 たがその音は膨らみ続けた。


 その音は簡単に出せることができて、都合のいい音だ。






 拍手だった。

 それは目の前の勇者に対する村人からの拍手だった。


「.........................。」







 .........................。


「うるせぇよッ!クソ共がッ!」



「お前らの拍手なんていらねぇんだよッ!」



「俺はお前達を助けたんじゃねぇッ!」



「そこの女の子を助けたんだッ!」



「.........!?」


 指をさした方向には驚いているアリスがいる。


「覇者の森のことは俺がどうにかする。そのかわり.........」






「俺はこの娘をもらっていくぞッ!」


 生贄とかいうのは俺がここでこの手で止めてやるッ!




「.........!?」










 顔を赤く染め、少し嬉しそうに驚くアリスがいた。








最後までありがとうございます!


総合評価42ポイントになりました!

本当にありがとうございます!!



感想やアドバイス等もお待ちしてます!!


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ