プロローグ 〜 幼女との出会い 〜
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投稿頻度についてですが、この物語はもう執筆済みですので、毎日投稿をしてみようと思います。
プロローグと一章(題名はまだ決まってない)は一日で投稿して、そこから毎日投稿、とします。
では、本編へとどうぞ。
身体が強く投げられた感じがして、身体全体に強い痛みが走る。俺はその激痛で目を覚ました。
目を開くと、冷たそうな灰色をした埃だらけの天井が俺を迎えた。装飾もまさに実用的なものしか飾ってない。あるのは天井の真ん中にただ、細くて白い紐にしがみつくようにして絡まっている大きめの電球だけだった。冷房なんてものは言語道断だ。
頭を左手で抑えながら、俺は右手に力を入れて身体を起こした。暑さに耐えかねなくなって、俺はたまらず長ズボンを何度もまくる。
少し時間がかかったが、よろめきながら立つことができた。まだ頭が痛い。
その影響か、前後の記憶が無かった。なぜここに来たのか、何をしていたのか、それが全く思い出せない。
気を取り直して周りを見渡すと、ここは壁、天井全てコンクリートで固められた部屋だった。更に床は綺麗な模様のないコンクリートで固められていた。左側の壁と前側の壁の隅にただ一つ、本が一列に山積みされてあるスチール机と事務用の椅子が悲しそうに置かれているだけだ。まさにここは、だだっ広いだけの檻がない独房だった。
さらに、よく見るとこの部屋に一つだけ足りないものがあった。本当に重要なものが。
あるはずの扉が無かった。最初は俺の見間違えかと思った。だけど、同じ灰色の壁を見ているだけだった。
思いっきり頰にビンタをしてみる。物語とかによくあるあのビンタだ。その後にまた見渡しても、無機質な壁をただ見ているだけだった。
だけど、発見はあった。とても小さくて、大きい発見だった。
壁の隅っこでだいたい六歳頃くらいの幼い女の子らしき人が三角座りでうずくまっていた。顔の下半分は腕に隠していて、目と鼻の上の部分くらいしか見えない。いかにも物言いたげな表情でこちらを見ている。どうすべきか迷った俺は、とりあえず声をかけることにした。
「どうしたの?」
部屋に声が重く、そして低く響いている。俺は昨日見た『モテない男でもモテるコツ』を思い出しながら、笑顔で近づいた。まさかこんなものが今役立つとはな。
「この言葉......通じる?」
女の子にしては低い声で、小刻みに震えているような印象を受けた。
「あぁ。通じるよ。しっかりとね。」
俺は作った笑顔で答えてあげた。まぁ、こんな状況での作り笑いなんてたかが知れてるけど。
「なら......あなたは人なの?」
「え?」
なんの前触れもなく出てきた、当たり前の答えが返ってくる質問。俺は深読みせざるを得なかった。
「人なの?って聞いてるのよ」
女の子は俺の感情なんてそっちのけで返事を急がす。
「あ......うん。ひ、人だよ」
「ふーん。私以外に人がいるんだ」
小さな声でそう呟いたと同時に、女の子の黒いゴムで結んだ後ろ髪が揺れた。この女の子、ただ者じゃない。そんな予感は十二分にする。
「『え?私以外に人がいる』って、どういうこと?」
まず、着々と疑問点を切り替えしていかなければいけなかった。
「どうもこうもないわよ。そういう意味。......だけど、目が覚めたら人がいるなんてね」
「どういうこと?色々とさっきから内容が掴めないんだけど......。説明してくれる?」
こうも口が達者で幼い女の子。普通に暮らしていたらこんな人間は中々育たないはず。
例えるなら、知らない世界に踏み入れてるような感覚だった。
「知らないわよ。眠ってたらいきなり大きな音がして、目が覚めたのよ。そしたら、あなたがいたってわけ。」
よく分からない。
「ごめん。よくわかんないや。とにかく外に出ないと」
「『外』ってなに?」
「......え?」
またしても意味深すぎる質問だ。深読みなんてする必要のない質問。
「外ってなに、って聞いてるのよ」
「君はふざけてるの?」
「ふざけてなんかないわよ」
彼女は至って真面目な目つきで、俺を視てきた。そこには敵意などなく、まさに好奇心からなるものだと察した。
まさか、と思って俺はこの質問を投げかけた。それは、出来れば合って欲しくない質問。
「まさか君って、ここで生まれた?」
「そうよ。ずっとここで暮らしてるの。......『ここ』って何?この世界は『ここ』だけじゃないの?」
「......え?」
合って欲しくないものほど、よく当たるものだった。やはりこの子は『ここ』で生きてたんだ。