電磁の大地
星が丸いと自覚する瞬間なんてのは生きている間に存在しないのが人間の殆どだ。
大地を駆け、電磁の力で空を飛び回っても星は平らな地図のような世界にしか見えない。
「凄いなぁ…!イヴ凄いよ!丸い!めっちゃ丸いよ!」
「Ah…シエル、イヴはこれもう何回も見た事あるから…」
母星の時代、宇宙へと飛んだ人間もその事実にきっと驚いただろう。理屈や理論でいくらまとめられてもこの目で見たものに超えられるものは無い。そんな感動を何故僕は今してるのか少し時間を溯るとしよう。
「シエル、深追いはするな!このまま超電磁軌道に乗って高速で離脱する!」
明星号から聞こえるレイの声を聞き、僕は新型を落としたあとそのまま追いかけようとしたのを止められる。これは撤退。敵の殲滅は目的ではない。頭を冷やして考え直す。
「みんな!合流ポイントまで向かうよ!全力でここから離脱!敵もあの被害状況じゃ追ってこないよ!」
全機高速で戦線から離脱。ヘンリー姉さんの言う通り、連邦は追わずそのまま撤退していった。曰く奴らの一番の目的は基地でこっちは二の次だとか。
明星号に全員帰還すると基地から合流したメンバーが紹介された。
ジャック・テネシーさんとダニエル・テネシーさん。兄弟で彼らは東部都市国家軍から派遣されたらしい。基地が襲われた事で本国との繋がりを保つために二人は戻らずこちらに来たらしい。余談だが東部の軍服は黒を基調としたデザインでとてもカッコいい。志願兵がメインということもあってイメージ戦略も重要らしい。
そしてもう一人は基地のイージス整備をしていたダムザ・マッケンさん。ガガさんの古い友人でもあるらしくてもモハメッドさんとも魔改造技術で協力してる。彼は元々内地でアニマの整備をしていたらしく、誰よりもアニマには詳しいとのこと。
あ、忘れてた。勝手に付いてきたウィル。彼はとりあえずアダンからスパイじゃないか根掘り葉掘り聞かれた上でとりあえず無害なバカということで雑用を任されてる。扱いは雑だが念願の流れ石にかなり喜んでいた。
で、ここからの事だがアダンの言葉通り北部のテラ教に合流して補給を受ける事となった。しかし、テラ教側は交換条件として連邦への攻撃に加担することを提案してきた。テラ教は祝福派だが過激派で流れ石及び東部との関係はあまり良くないというのが本音らしい。それも過激な思想によるものでこちらとしてもあまり支援はしたくない集団らしい。何より彼らを支援することでこちらも危険視されることが一番嫌だったらしいが、基地が見つかった事と大規模な戦闘を行った為に割り切るとの事。
北部を目指すには連邦の監視網をくぐり抜ける必要があり西まで大回りしない限り戦闘行為は避けられない。しかし、中途半端な補給で戦闘を行い基地を放棄して逃げた僕らとしてはあまり戦闘はしたくない。だが西周りは避けたい。ではどこを通るか。
「上だ。」
「上?」
アダンが指を差すのは空。いや、既に明星号は電磁の力で飛びながら航行している。何が何だか分からない。
「アダン、シエルはまだ"アレ"やったことないんじゃなぁい?」
「そうだっけか?じゃあ説明するか。」
「ティーネさん、アダンさん?何が始まるんです?」
「これから俺達は宇宙に行く!」
「厳密には成層圏ギリギリだけどナー。」
ドヤ顔で放つアダンをティーネさんが冷静にツッコむ。あまり分からないけど宇宙って息できないんじゃなかったっけ。
「明星号は巡洋艦だけど自力で大気圏離脱と再突入が出来るように設計されてて、惑星間航行もちょっと考えられてたんだー。そんな設備のせいで色々普通の巡洋艦にしては装備が少ないのよー。」
「大気圏…惑星間…?」
「つまりだな!空の向こう側まで行けるって事だ!」
「アダン端折り過ぎでは。」
「ここから成層圏ギリギリまで上がって北部に向かい、あっちの拠点の手前で再突入する!そこまで高度を上げちまえばこっちを索敵出来ないからな。」
「じゃあスタンバイ始めるよー。みんな位置ついてー。」
シートへと案内され、ガッチリとベルトを締めて着席する。戦闘配備とはまた違う緊張感に戸惑いつつもまだ見ぬ世界との出会いへのワクワクが止まらない。
「セカンドエンジン、点火!」
電磁エンジンとはまた異なる耳を劈く轟音。唸るその音は体を内側から揺らすような鼓動で体感したことの無い感覚に驚く。
「Heyシエル!ロケットエンジンの感覚は初めてか?今じゃ燃料不足でほとんどコイツを使った乗り物はねえけどトンデモねえ感覚たぜ!」
「ロケットエンジンって…ええっ!爺ちゃんすら見たことないって…」
唸る轟音と真っ赤な炎。まさしく強さを体現したロケットエンジンの出力を最大まで上げ、どんどん大地から明星号が離れていく。高度の上げ方は電磁エンジンの比では無く、地表のものはミニチュアのように小さくなっていく。そして、今に至る。
「凄い…こんな景色が広がっていただなんて…」
成層圏ギリギリまで上がった明星号はシャングリラの大地を宇宙と空の間から見下ろす。その光景は何処にもないもので、今の自分には持ちきれないほどに大きくて、誰かとこの感情を分かち合いたくて仕方が無かった。
「しばらくシート外してていいぞ〜!再突入までは時間があるからな。」
アダンさんの言葉を受け僕は真っ先に艦橋の先に立って星を見下ろす光景に目を奪われる。
「イヴは前にもこれを見た事があるの?」
「うん。何度か。」
「凄い綺麗だと思わない?」
「綺麗。綺麗?綺麗ってどんな感じ?」
「えっ?それは?その、キラキラしてたり!心奪われたり!夢中になるような吸い込まれるような………」
「必死だネェ。少年。」
「haha!青春じゃねえか!」
「うるさいですよ!」
綺麗なんて感性、人間誰もが持ちうるものだろうからいざ説明を求められるとなんと伝えたらいいのか分からなくなる。綺麗だって思うものが例えられれば良いものの…
「シエルは私と話す時、凄く夢中。」
「へ?」
「私が"綺麗"?」
真赤に燃える感覚。体が火照っていく感覚。恥ずかしさと何とも言えない感情が入れ混じり心臓の鼓動が早まる。周りはニタニタと他人事で悪しき笑いを浮かべこちらを見てくる。分かってるなら何も触れないでくれ頼むから。僕が何も答えられずに慌てふためていて居るとティーネさんからその言葉がかけられた。
「再突入するよー。シート戻れー。そこイチャつくなー。」
「兄ちゃん、再突入で吐いたヤツ初めて見たよ。」
「イージスは分かるけど再突入で吐くのは流石にゲロ兄ちゃんの才能だと思うよ。」
分かるだろうか。
ネタにされることも無くただただロリっ娘二人にドン引きされる人間の気分を。
言いたくもないがあの後再突入の急降下する感覚にさっきのド緊張が重なって吐いてきた。幸い突入後にキてトイレに駆け込めたが気分は最悪だった。
「成層圏くらいで騒ぐからだよ兄ちゃん。」
「イヴ姉ちゃんに変に手を出そうとするからそうなるんだよ兄ちゃん。」
「うるさい!放っとけ!!!」
イヴに嫌われるなあ…吐いてばっかだしイージスの操縦もまだ一人前にはなれないし。彼女の前だとなんというか冷静さを欠いてしまう。普段からそんなに冷静に生きてないけど。どうにも緊張して仕方が無い。
「シエル、大丈夫?」
「ありがとうイヴ…もう背中さすらなくて大丈夫だから…」
イヴ、優しいなあ。嫌われるだなんて一瞬でも思った自分を殴り倒したい。彼女は僕が青ざめてから背中をさすってくれた。その事実で既に気が動転しそうだがとても嬉しかった。
「アニマはシエルの事気に入ってるから、体調崩したら大変。今の私じゃあの子は使いこなせない。」
「そんなこと無いよ。僕はイージス操縦なんてまだまだヘタクソだしアニマのポテンシャルも活かしきれてない。」
「でも通じ合える。」
「通じ合える?」
「シエルならきっと出来る。」
彼女の言葉の意味は分からなかった。彼女が何を示してその言葉を言ったのか、そんな表現をしたのか。僕には分からなかったし、彼女には何か特別な感覚があるのだろうと思った。
北部のスラムのような地帯。その奥に「テラ教」過激派のアジトは存在する。
テラ教。ガイアニズム信仰系祝福派の宗教。シャングリラの大地がもたらす電磁波、ドール、地形に感謝を示し、その豊かな資源と人類への可能性をこの星にもたらした大地神ガイアを唯一神として信仰する宗教。
その過激派は同じガイアニズム系贖罪派のパラディース教や連邦と頻繁に衝突を起こし、東部都市国家とも仲が悪い為にテラ教徒、パラディース教徒は穏健派過激派を問わず差別される人々だ。
僕にも彼らは物騒な人々の印象が強い。鉄道テロや輸送機を襲った事件なんかは何度も聞いた事があるし、北部は開拓とガイアニズム系宗教の弾圧によりもっとも軍備拡張が進められている地域で有名だ。
元々テラ教徒が住んでいた地域は北部の中心地に比較的近かったのだがガイアニズムの弾圧や七星災害によりかなりの奥地まで押し込められたらしい。北部の奥地は時期によってかなり厳しい気候になり、厳寒期には凍てつく大地と呼ばれる北部奥地はその環境からイージスには寒冷地設備が必須になり、パンドラバッテリーには誤作動を連発させ、人々は-80℃を下回る厳しい寒さに震える。七星災害で計画が大きく変わった事もあるが、こういった事もあって連邦の北部開拓はほとんど進んでいない。
幸い今は厳寒期ではなく比較的温暖な時期にあるため、僕らに寒冷地設備は必要無かった。もし必要だったならばテラ教側には向かえなかったらしい。
テラ教から支援を頼まれていることは連邦に占領された北部の都市ミューバラクの奪還と抗争を続けるパラディース教への攻撃。かなり攻撃的な内容で前線に出る可能性も否めないがこの条件を飲むしかない。
「いいかみんな、テラ教にはしばらくお世話になるがあまり深くは信用するな。」
「どうしてですか?」
「見れば分かる。停泊したらゲリラのリーダーに会いに行く。」
彼らの本拠地、ゲルマ・タルマへと到着し、明星号を停泊させると特徴的なタトゥーを顔に掘った人々が僕達を迎えた。
そのタトゥーは植物を思わせる曲線で構成されたものに稲妻を付け足したようなもので、一人一人僅かな違いはあったが基本的なパターンや最初見た時に持つ印象は変わらなかった。
彼等にはそれほど猛々しいような印象は無く、タトゥーは確かに威圧的かもしれないが民族的なその模様は街のゴロツキがするようなそれとは全く異なる。
民族衣装を着た彼らはとても穏やかに見えて僕は思っていた印象とまた異なると思った。
「やあ『流れ石』の御一行。待っていたよ。私はここの村長のマルクス。もてなしをしたいところだがこちらも急ぎでね。早速だがここのゲリラの指揮をしているレーニンに会ってもらいたい。」
「分かってる。こちらも急な要請を受けてくれて助かった。案内してくれ。」
村長はとても心優しく穏やかそうな老人で、杖をつき、長い白髪と長い白髭を蓄えている。村長と名乗るがゲリラを指揮している訳ではないらしい。となると、アダンさんが言うリーダーはもっと若い人物なのだろうか。
「着いたぞ。ここがゲリラの作戦指揮本部だ。中にレーニンが居る。では私はここで。」
アダンさんはマルクスさんの案内に何も反応せず、いつもよりも険しい表情で扉を開けて本部へと入っていく。戦闘の時以上に強張ったこの表情にレムセイでモハメッドさんと話していた事について聞いたのをいなされたことを思い出した。
「よう、久しぶりだなアダン。」
「7年前…イージス乗りだった頃以来だなレーニン。」
左目の大きな傷でタトゥーが割れた様な見た目をしているアダンさんと同じくらいの歳をした奥の椅子に座る褐色の男がレーニン。
鋭い三白眼はこちらを睨まれただけで寒気を感じるほどにヒリついた雰囲気を持つ男で二人が対面した途端そこには異様な雰囲気が立ち込めていた。
「俺は今でもお前を恨めしくて恨めしくて仕方がねえ。お前が俺達にした仕打ちは忘れない、お前も忘れちゃあいけねえ。」
「いつまで引きずるんだ。救援に答えたからすっかり忘れてくれたと思ったけどね。」
レーニンが青筋を立ててアダンさんへと迫り、首元を掴みかかる。まさしく鬼のような形相を振る舞いに僕は一歩も動けない。
「忘れねえ忘れるわけねえ…!お前とピンク髪のガキが俺の故郷を焼いたことを俺はしっかり覚えてるぞ。」
桃色の髪、ふと思い浮かんだ人物はイヴだった。けれどイヴがそんなことをするような人物には思えない。彼女は優しい。無慈悲な事が出来る人間じゃない。イージスに上手く乗れないのもその葛藤があるからだと前に聞いた。
「その頃は軍属だったんだ。悪く思わないでくれよ。」
アダンさんの白けきった対応に馬鹿馬鹿しいと言わんばかりに掴みかかった首元を突き放し、再び席へと戻っていった。
「チッ…変に追い出しても村のジジイが口うるさく救援を頼みたがる…自分らの基地も守りきれなかった奴らを迎えるだなんて…」
「被害は最小限さ。リスクマネジメントは得意でね。」
「どうせ足切りだろうに…聞いてるぞ!基地の被害者0は嘘っぱちだってなあ!」
嘘?アダンさんは基地の避難はすべて完了したと言っていた。明星号と本国への地下鉄道でみんな逃げたと聞いている。確かに物資や設備は失ったが人的被害は無いと話していた。
「アダンさんどういうことですか!?人的被害は無いって…」
「後で話す、シエル。レーニン!アンタをこっちは信用してない!すこしでも怪しいことをすればこちらも相応の事をさせてもらう!指揮があればこちらも動く、次の村長も交えた作戦会議で会おうじゃないか。」
「どっちの台詞だ…クソ野郎が…」
「人的被害は無いって!」
「俺が確認した時点じゃ基地に人的被害は無かった!」
「"確認した時点"って…じゃあその後は!」
「ああ認めるよ!アイツの言うとおり出てるさ!俺たちが去ったあとに基地に連邦兵が入り込んでるのが分かって逃げ遅れた奴らがみんな殺された!地下鉄道は最初に逃げた奴らが封鎖してもう使えなかった!潜入されてるのに気付かなかったんだよ!」
「じゃあなんで無いって言い切ったんだよ!まだ安全が確証されてないならそれまで僕らは戦う必要が…」
「そんな甘い事は言ってられないんだ!」
明星号のデッキ。物々しい雰囲気が流れ、僕とアダンが激しく口論を続ける中、各クルーが不安そうに見守る。
「甘い事…?甘い事ってなんだよ…誰かを見捨てず生きる事は甘い事なのかよ…だったら闇市の事だって甘い事じゃないか!僕たちが必死にやろうとしてる事だって甘い事じゃないか!分からないよ分からないよ分からないよ!僕にはアダンの言う事が一つもわからない!」
アダンはその言葉を受けて僕の首を掴みかかり、そのまま床へと強く叩き倒す。それを見てクルー達は「やめろアダン!」と止めにかかり、デッキは混乱を極める。
「俺だってしたくてしたことじゃねえ!でも俺たちがここから世界を変えるには進み続けなきゃ行けないんだ!分かってくれ!足切りに見えるかもしれないがこれは成すために必要なんだ!」
「アダンはレーニンって奴が信用ならないって言ってたけど僕もあなたを信じ切ることが出来ない…!」
「やめろお前ら!いい加減にしろ!」
レイが能力を使った事で僕とアダンの動きを無理矢理止めて引き離す。レイに諌められアダンは納得がいかないながらもいつもの司令席へと戻り僕はいじけたようにしてデッキから出ていった。
アダンは人望がある。でもそれは一つの恐ろしいものにも見える。みんなあの人に付いていくけれどあの人が誤った道を進んでいたとしても誰も指摘できる人がいないんじゃないかって思えるんだ。彼が本当に信じられる人間なのか分からない。みんなの価値観が分からない。そんなにも命を勝手に扱っていいのかって。
【じゃあ君も命を勝手に扱っていないのかい?】
誰だ。誰の声だ。僕の中に誰かが問いかける。誰かが僕の葛藤を覗き見ては問う。誰だ。何処から?何が?
【君が倒したイージスの中に人はいなかったのかい?】
それは、そんなわけはない。イージスには人が乗る。僕がイージスに乗っているように連邦のイージスにも誰かが乗っている。当たり前だ。当然だ。だから何だと言うんだ。
【その命と彼が見捨てた命、何が違うんだい?】
それは…
それは…
その違いは…
違いなんて…
「違う…そうじゃないんだ…違うんだ…僕はそんなことを言ってるんじゃないんだ!そんなことを知りたいわけじゃないんだ!僕だってやりた…くて…」
「シエル。」
「同じだけど違うんだ!僕だって僕の…!」
「シエル。」
幻の闇に飲まれ深く深く落ちていく最中。光が差すように聞こえた少女の声。僕が好きな人の声。あの人の声。イヴの声。
「イヴ…分からないんだ。命とか、心とか、世界とか、戦いとか。どうしたらいいか何もわからないんだ。」
「私、昔人を殺してたの。」
「イヴ?」
「第四特務部隊。『死の部隊』。そう呼ばれてた。連邦から命じられるままにテラ教徒もパラディース教徒も殺した。東部国家も。軍人だけじゃなくて市民も殺した。アダンと一緒に」
「何の話をしてるの…イヴ…」
「言われるままにアニマで人を殺して、その後アダンに連れていかれるままに流れ石に入った。それから私は何もできずに殺されてく人を別の視点から見た。」
「怖くなった。怯えていて、震えていて、大事なもののはずなのにすぐ消えてなくなる。自分でやってたのにその時は何も気付かなかった。」
「ねえシエル。今それに気付けたのって凄く大事。私に無いもの。だから大切にして欲しい。」
「…ありがとうイヴ。」
アダンに対する不信感が募るが彼の言葉だって間違っていない。あの時防衛で残れば全滅したいたかもしれない。改めて僕が今居る場所が戦場だという事を自覚する。半端な気持ちで要られる場所ではない。時に人である事をやめてしまうような無慈悲さが必要になるかもしれない。それでも人としてある心を持つことが重要だ。感情を持った生き物なのだから。
「ガイアさま、ガイアさま、テラの集落に我らの犯した大きな罪の化身が訪れているのです。」
巨大な鉄の蕾、それに話しかけるのは年端もいかない少年。
辺りには電気が迸り、無数のドールが生まれてくるかのように洞窟の天井からぶら下がる。
「ガイアさま、ガイアさま、どうか我々の罪をお許し下さい。星を貪り食い散らした我々の罪を。貴方様の騎士をお返しする事で…」
鉄の蕾が開き出す。花弁に色付き初め、徐々に開いていく隙間に見えるのは少女。
深い青、紺色の瞳をした少女。
・テラ教とパラディース教
シャングリラの特殊な土壌を信仰する思想、ガイアニズムの中におけるそれに対して感謝を示す祝福派がテラ教。
ガイアニズムの中でも勝手に神様の土地を汚してしまう(勝手に色々使ってしまう)ことを懺悔し、シャングリラの土壌を利用した技術やシャングリラそのものに人類が住むことを謝り続けるのが贖罪派のパラディース教
テラ教はイージスやエンジンも大地の恵み、神の恵みとして有り難ーく使います。
パラディース教はイージスやエンジンを嫌うので連邦や東部に積極的に攻撃します。
どちらも土壌を信仰するガイアニズム系ですが根本的な思想が異なり、テラ教ではシャングリラは神が人類の長い航海の果てに与えた楽園という思想。パラディース教では神様が住むはずの楽園を勝手に人類がドカドカ踏み入れて荒らしたという思想なので共通点は土壌信仰と唯一神が大地であり星であるガイアという点のみになります。
積極的に攻撃するパラディース教徒は厄介極まりない為、かなり嫌われています。テラ教徒はこれだけだとかなり無害に見えますが連邦がノアを聖地化しようとしている方舟信仰を推している為、連邦から見るとテラ教徒は厄介なので迫害対象でした。
テラ教徒は連邦からの仕打ちを受けて過激派となる人々が起きてそれが東部にも飛び火し、パラディース教徒とも思想の違いから喧嘩になるという事態に発展しています。
ガイアニズム自体はシャングリラ開拓黎明期に開拓地の末端で生まれた思想と言われている。
ちなみにどちらも大地そのものを信仰するため偶像崇拝が禁止されている。