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少年少女革命  作者: 四ノ宮凛
phase 4
30/32

Boy(girl)'s Origin

次回の掲載は1/22です

 父は英雄でも何でもない。大衆の犠牲として、贄として差し出されたのに過ぎない。

 星が落ちたあの日の後、そう後。七星災害の被害は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。"アレ"に人々は蹂躙された。それが何であるかを口走るのは禁じられている上に今では七星災害による二次災害は火災や地殻変動だったと言っているがアレは災害などではなく明確な人間への攻撃だった。

 特に僕の生まれ育った軍都のエリュシオンは特にそれが酷く、必死の抵抗で多くの兵が命を落としたという。防衛線は城下町近郊にまで迫り、何としてでも城下町や方舟内部への侵攻を抑えたかった中央政府は決戦弾頭兵器の使用を決めた。

 しかし、それは無人で飛ばすにはあまりにも難易度が高く、二つ目のない一品ものだったせいで誰かを犠牲にして確実に任務を遂行する必要が出た。

 その贄として選ばれた…連れ出されたのが父だ。

 誰だってこんなことはしたくなかった。そもそも将官の父がやる仕事ではない。だが父は政治的な立場の弱さと、都合よくここで居なくなってくれた方が良いという人の血が流れているのか疑いたくなる精神の人間たちに無理矢理連れ出された。全てのエゴの為に父は世界に殺されて世界を救った。

 これは後から知ったことだが、七星災害が起こる前から各地に乱立し、領土問題などで小競り合いを繰り返す都市国家にしびれを切らした方舟の中央政府が各国家を中央に紐づけて集権体制を作ることでそれぞれの都市国家を管理するという計画があった。父はそれに反発していたが内地出身の上流階級ばかりな軍上部と中央政府では連邦設立に賛成する人々が大多数だった。

 いい口実になったのだ。七星災害による各都市国家の壊滅はそれを行うにはあまりに都合がよかった。だから中央さえ守られれば後はそれを妨げる人を排除するだけでことは成し遂げられる。父が居なくなって中央が守られれば一石二鳥だったのだ。

 そして僕は、偶然にも七星災害の直接的な被害…星が落ちたことによる街の消失から唯一生還した人間で、それが偶然英雄に祀りたてられた男の子供だった。

 だがそれが女と知られるやいなや周囲の声は良いものではなくなった。

 軍においては強い男尊女卑が息づいている。女性兵は一定階級からは上がれない、コネでもなければ要職は与えられないと言われている。英雄の子として立てたかった人々はその事実に落胆した。挙句の果てには星に落とされたことで持ってしまった強すぎる力によって悪魔、魔女とも言われた。

 女であること否定させ続けた少女はいつしか己が女であることを恨み始めた。自分が女として生まれたからこんなに辛いんだ。女でなければこんな目に会うこともなかったのだと。

 だから僕は軍に入るに当たって『ゲンイチロウ・カガミには双子の子がおり、その兄も生きていた。』という虚偽の事実を作った上で『レイ・カガミ』という男性の籍を用いた。

 そうして男として生きるうちに()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()女として生きるのは嫌だ。しかし男として生きれるのかと言われるとあまり実感できない。自分自身が分からない性自認の中、突然カップルごっこを始めろを無理難題を押し付けてきた少女にあの時僕は困惑を隠せなかった。今もこうやって昔を思い返して悩んでいる。

 随分と面倒ごとに付き合わされた。扱いの難しい子とは聞いていたがそれでも試験管ベビーで研究所育ちだからもっと感情の薄い子だと思っていた。IVとは顔は同じなのに性格が真反対だ。

 城下町へと走る高速鉄道でそう思いにふける。


「ここにいたのねレイ!」


「V、個室を出るなと言われていただろ。」


「あんなの狭くてつまらないわ。せめて景色でも見れれば楽しいのだけれど高速鉄道はシェードだらけでな~んにも見えないし。」


「…。」


 狭いって、君の部屋は列車一両丸々使った特別輸送車両だ。そもそも車両の間には暗証番号でカギをかけている上に警備も居たのだが突破したのだろうか。


「戻りなさい、特務大佐に怒られるぞ。」


「ねえレイ!セント・クライストに降りるのでしょ?」


「え?ああ、そうだね。まあすぐに基地に向かうけど…」


「あとでお買い物しましょ!クライストは陶器の街で有名だからいろんなものを見てみたいわ!」


「あんまり外は出歩くなって特務大佐が…」


「たまにはルールを破るくらいが楽しいでしょ?」


「何処で覚えたんだそんなこと…」


 ああもう、ペースを乱される。

 何もかもが決めつけられて、人の勝手な意味を持って生まれた、命の役割を明確に持つ彼女はどうしてあんなにも自由に、自分で選んだ生き方をしようとしていくのだろう。僕は自分自身がどう在りたいのか分からずにいるのに彼女はまるで自分の理想が分かり切っているようでどう在るのか知っているようで。

 悩まずに生きる彼女が羨ましかった。

・シャングリラ鉄道事情

シャングリラの鉄道は七星連邦設立時にすべて中央国有鉄道公社に統合。ただし、東部都市国家の圏内は実質的に東部によって運行されている。

方舟を中心にして放射状に路線が広がっており、方舟付近の城下町、『カスパール』『バルタザール』『メルキオール』『セント・クライスト』の四都市を結ぶ環状線が二路線存在する。片方は都市間輸送に特化した高速鉄道である。

その他環状線には東西南北各都市を繋ぐ外環高速鉄道が存在したが七星災害による影響で現在西部と南部で分断されている。また、東部へと繋がる路線は意図的にすべて分断されているため鉄路のみで東部には行けない。

電磁エンジンを利用した空船は良くも悪くも磁場に左右され、自動車では地形が悪すぎて長距離移動が難しいシャングリラでは最も発達した交通手段である。しかし、地殻変動が激しいために運休が非常に多く、不要不急路線の多い地域は分断されたままが多い。軍需によってかなり扱いが変わる交通手段である。

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