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少年少女革命  作者: 四ノ宮凛
phase 3
28/32

Answer

「居るんだろ?内通者。」


 そうだ、今回の件は疑念が確信に変わるものだ。今までは考えたくもない臆測でしか無かったが本格的にそれを疑わねばならなくなった。誰も仲間を疑いたくなんてない。当たり前だ。だが、アダンはそれに踏み込んだ。


「極力考えたくはなかったさ。東部経由でバレてる事も想定して今回みたいな策を練ったわけだが…こりゃ本格的に明星号(身内)に居るってことがほぼ確定的になった。」


「ああ、そうそう。これは黙ってたがラグナロク戦線への支援の話は全部でっち上げだ。あっちに連絡なんてしてないしする予定も無い。今回の出征は完全に内通者を炙り出す為の行動だ。」


 デッキがざわめく。まさかそれそのものが釣り上げる為の事だなんて一人も思っていなかったからだ。ふと、ティーネさんか一言も喋らず動かないのに気付く。もしかして彼女には…


「で、内通者を名乗り出させる為にここにみんな集めた。俺から言うとここで名乗り出れば見過ごしてやる。だから自分だと言うなら今のうちだ。ん?どうだ?手上げる気にはなったか?」


 ざわめいていたデッキは再び静まり返る。こんな状況だ。誰が怪しいなんて指を差してしまえば皆すぐに疑心暗鬼になってしまう。そんな状況を作りたい人物なんていない。言おうと思えば簡単だ。後から来たウィルは勿論怪しいし、東部からこちらに派遣されているテネシー兄弟だって外様だ。元からのメンバーだって完全に身の潔白を証明できるわけじゃない。自分だってそうだ。


「ティーネ、さっきからどうした?確かにいつも気だるげに眠そうな奴だが妙に静かだな?()()()()()()()()()()()()()()()()()()。」


「臆測だけで疑うのは良くない辞めろアダン。」


 レイが隣からアダンを静止する。周りの皆も気付いていたようだが触れなかった。


「見えてるんだろ?未来。だったらここの内通者にもう気付いててもおかしくないはずさ。」


「…何も見えてないよ。アタシには30秒後までしか未来は見えない。」


「それなら嘘さ!だって俺はもう…」


「誰か知ってるんだからなぁ。」


 GATEでアダンの掌に転送されたのは一つのメモリ。のように見えたが、アダンはそれを上手く折り曲げ、隠されていた別のメモリが露出する。二つのメモリを一つに偽装されていたのだ。

 偽装されたメモリをコンソールへと挿し込み、デッキのモニターへと映し出すとそこにあったのは連邦との機密通信のやりとり、そして最後の署名にあった文字は…


「なぁ?レイ。」


 その瞬間、体の感覚が無くなる。動けない!体が固められているかのように少しの動きも認めない。自分以外の全員も固められたようで動けなくなった事と突然の事実に混乱している。


「未来が見えてるティーネを真っ先に固めて口封じするだなんて、後で始末でもするつもりだったのか?」


「黙れ…」


「っていうかレイ、こんな大勢をまとめて固められるようになったなんて知らなかったぜ?」


「黙れ!」


 レイは懐から取り出した拳銃をアダンの脳天に向ける。しかしアダンはそれがなんだと言わんばかりに薄ら笑いを崩さず、口を止めることはない。


「撃ってみろよ。そっくりそのまま鉛玉をお前さんの脳天の目の前に送ることなんか造作もないんだぜ?だいたい、俺がいる時点でここで銃を使っても意味ないことに気付いてないのか?」


「黙れ…黙れ黙れ黙れ!!!」


「相変わらず感情的で肝心な時の冷静な判断に余りにも欠ける。軍にいたときからな〜んにも進歩してねえんだな。小さい頃見た親父さんそっくりだよ。」


「喋るな!!!」


 撃鉄の轟音がアダンの脳天に向け鳴り響くもその弾丸は彼に届く前に扉へと吸い込まれ、レイの頬へと転送されて掠める。


「ッ!」


「おいおい、俺がズラさなきゃ今死んでたぜ?」


「レイの能力は『首から上は固められない。』『俺の能力は固められても発動出来る。』そういう明確な弱点があることを俺が一番知ってる。お前もそれを分かってるだろ?」


 レイは顔をしかめ、拳を強く握り締める。僕たちは目の前で起きる突然の事態に驚き、混乱するしかない。何が起きているのか全く理解が追いついていない。


「内通者をバラしたところで僕をどうするつもりだ。」


「安心しろよ、殺すなんて物騒な事はしないさ。見過ごしてやるさ。」


「…僕はスパイだぞ。」


「そうだなぁ。スパイの癖にこっちに抜け道やら逃げ道を用意させた甘ちゃんなスパイだったが。」


「ッ!」


「皆も思い出してほしいけど、レイは情報を連邦にリークし続けたけどこっちにも逃げ道を残す様に何もかも、全てをあちらに伝える事はなかった。もし、バレてたら最初からどうにもならなかった場面なんていくらでもあった訳で。そういうとこがさ、中途半端なんだよ。」


 レイはますます怒りを顔に浮かべアダンへと掴みかかる。それでもアダンの表情は崩れない。アダンの煽るような口調は止まらない。


「その半端な覚悟をどちらかに傾けろ。お前は俺達の仲間で有りたいのか、それとも連邦の人間に有りたいのか、どちらかを捨ててどちらかに気持ちを決めろ。」


「そんなこと…!」


「それが出来ないならお前の一番の秘密をここでバラしてやってもいいんだぜ?」


 レイはその言葉を聴き激昂し、アダンの首元を掴んだまま地面へと叩きつけた。デッキに鳴る重い音がその激しさを伝える。


「僕は…お前の目的には賛同出来ない…!成そうとする革命と目指す世界に賛同なんか出来ない………!!!」


「決まったな。」


 レイはアダンの首元から手を離し、立ち上がる。背を向け、こちらには顔を向けぬまま固めた状態の僕らへ向けた話す。


「次会うときは命を奪い合う敵だ。さよなら。」


 レイはデッキから去り、モニターにはただ、救命ポットの無断使用を示す表示が映るだけだった。

 突然過ぎた。突然過ぎて、何も理解が追い付かなかった。嵐のように訪れたレイの裏切りに僕らは何も声が出ない。何を言ったらいいのか分からない。何もわからないのだ。




「…救難信号?なんでこんな所に…?よく分からない暗号のような信号も一緒に送られてきていますが…」


 改装を終えたばかりの連邦の巡洋艦、スーパー北斗号のデッキ。

 そこに居たのはニール・ツヴァイク。神威号、サンダーバード号、大雪号の流れ石交戦後に合流していた。本当は同じ艦隊を組んで交戦するつもりだったのだが、スーパー北斗号のメンテナンスに手間取り、間に合わなかったのだ。


「ほ〜う。この信号は…やっと来たか。」


「受け入れろ。私は格納庫に向かう。」


 救命ポットは艦へと格納され、その重々しい扉が開かれて中の人物が出る。兵士たちは警戒して銃を向ける。


「よせ、私の知っている人物だ。」


「お久しぶりです。特務大佐。」


「意を決してくれたかい。」


 ニールはニヤリと笑う。それはパズルのピースが揃ったと言わんばかりに、これは彼も知っていた事だと示すように。


「英雄の父を持つ子、レイ・カガミ。」

次回からはPhase 4です。

来週はお休みです。

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