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少年少女革命  作者: 四ノ宮凛
phase 3
26/32

マーブルの空

 夜明け前に僕らは東部を出港し、シャングリラ北西部のラグナロク戦線を目指した。

 極秘作戦であり、これは東部にも伝えられていない。知っているのは僕らとあちら側の一部のみである。その為か過去に類を見ないほどに厳戒な情報統制が明星号ではされていた。艦内で完結する通信であっても全て最高レベルの暗号化を使用、口頭で作戦に関する事を話す際は単語を複数入れ替えた暗号を原則使用。なぜここまでやるのかと疑問に思ったがラグナロク戦線はシャングリラの中でも有数の過激派組織であり、とりわけ連邦に危険視されている団体である為、同じく有力かつ民衆からの指示が一定数ある僕らとの接触は極力避けたいのではないかと聞いた。現により戦況が悪化すると考え今までアダンは接触を避けてきていた。これはガイアニズム系組織と違い特に仲が悪かったからといった理由ではない。

 それだけ危険なことではあるが、今の僕らが彼らと手を結ぶのは大きな意味があるとアダンは言う。だからこそこの作戦では絶対に情報を隠し通す必要があるのだ。


 イージス乗りは今回スクランブルを行う可能性がとても高いことからスーツを着た状態で待機…実質第二次戦闘配備だ。デッキのモニタリングや操舵などはいつもより数を減らして交代制だが僕らは変えが効かない以上寝る間も惜しんで待機するしかない。

 そうとは言ってもトイレに行くくらいは許される。アダンからああは言われても本気で道中連邦に襲われるだなんて思ってないからみんなかなり緊張感を持ってる訳でもなかった。


「あれ、レイだ。」


 偶然、明かりの点いた部屋にレイが入るところを見かけ、僕は気になって話しかけた。何もないならまずは睡眠を選ぶべき時間だ。彼はそれを大いに理解できる頭の持ち主だと思ってる。


「レイの番はまだ後ですよ。寝ないとキツくないですか?」


「ん?まあそうだな。ちょっとやらなきゃいけないことがあって、今回は大変だからね。」


 ふと、ドアの横にあるプレートを見るとそういえばレイとアダンは相部屋だったということを思い出す。単純に明星号には個室が少なく、相部屋になる人も多い。東部から来たテネシー兄弟だったり、モハメッドさんとウィル、ヘンリー姉さんとティーネさんも一応相部屋だが…ティーネさんはデッキでそのまま寝ることが多いので実質個人部屋だ。

 僕は寝てる時たま~~~~~~~~に能力が暴発して物をすっ飛ばしたり寄せ付けたりしてしまうので一人部屋にして貰った。本当は個人部屋が欲しくて話を盛ったことは今になっては誰にも言えない。

 レイとアダンは連邦軍からの付き合いだと以前聞いていた。ちょくちょく二人だけは他のメンバーと距離の違いを感じるというか、独特の空間が生まれているような気がしていた。


「あの…部屋の時のアダンって…どんな感じなんですか?」


「どんな感じ?」


「いや、デッキでリーダーとして立ってる時とはまた違う一面があるのかなって。」


「違う一面…ね。」


 レイは少し考えたのちに軽く笑いながら答えてくれた。


「どうだろうね。部屋でもあんな感じに掴みどころがない人だよ。そもそも、面を一つにして生きてるような人じゃない。僕自身も彼がどんな人なのかなんて、きっと何もわかってないんだ。」


 皮肉るように答えたレイは何も言わず手を軽く振って部屋へと戻っていった。同じ部屋で暮らしている、付き合いが長いからって大きく態度を変えるような人じゃないことはなんとなく察しがついていたけれどこうも簡単に否定されるのも何だか府に落ちなかった。







「掴みどころ、そんなにないかなあ。」


 先客がいた。笑いながら言うが目が笑ってない。いつもそうだ。


「そんなことどうでもいいだろうよ。」


「なんの作業を?」


「決まってるさ、作戦に関する細かな確認や残りの資源等々のチェックだ。」


「ふ~ん。」


「働き者だね、本当に男らしいさ。」


 ああ、もう。

 本当にこの男の言葉は腹が立つ。

 自分は全て見透かしてるとでも思いこんでいるこの男の言葉一語一句に腹が立つ。

 自分は完璧な男とでも言いたいのか。自分は全てに正しい決断を下せているとでも言うのか。

 傲慢だ。何もかも…!


「でも中途半端は良くない。"隠し事"は隠してやることだ。」


「ッ…!!!」


 GATE、空間と空間を繋げる力。僕のポケットに入ったメモリーはGATEを通して彼の手の中にあり、それはもう既に部屋のコンピューターへと繋がれた。

 それだけは良くない。それは絶対に、彼だけには見せてはいけないデータだ。固めるか。いや怪しまれる。じゃあどうする!今、ここで、彼を…


「ほら!この経理!やっぱりヘンリーとモハメッドが経費でコッソリ色んな私物買ってたこと隠してただろ!」


「…申し訳ない。流石にそのまま記載すると二人が怒られるのが可哀そうでな。」


「それくらい良いっての!大変なことあったんだからね。」


「…ありがとう。」


「で、レイ。」


「今の件、固めようと思うほどだったか?」


「それは…」


「そんなに慌てるモンだからエロいものでも入ってるんだと思ったよ~。すぐ固めるの悪い癖だからな?」


「すまない…。」


 嫌いだ。

 この男が大嫌いだ。







 待機は万一の為だ。その万一とは突然、嵐のように訪れる。


「緊急戦闘配備!!!緊急戦闘配備!!!前方に連邦軍艦三隻!!!北斗型巡洋艦、大雪型戦艦、これは…雷鳥型!?周波数が一致しますが速力が前回の会敵と一致しません!!!」


「改修だ!しつこくなって戻って来やがった。」


 デッキへとアダンは戻り、仮眠を取っていたメンバーもそれぞれ位置に付く。まさかは本当に訪れた。これだけ情報を遮断していても奴らはやってきた。


「イヴ、大丈夫?出れる?」


「私は平気。シエルは。」


「大丈夫。今度は場所が近いから、お互い安心できるね。」


「…うん。」


 アニマへと乗り込み、出撃準備へと移る。改修してから時間が少なかったせいであまり習熟飛行は出来ずに実戦となってしまったが大方改修前と同じような操作感なのでなんとかなる…と思いたい。


「アニマなら答えてくれる。どんな姿でも、同じだから。」


「ありがとう。」


「XSA-0アニマ、発進どうぞ!」


「イヴ、シエル、アニマ出ます!」


 一回り大きくなりながらも前と変わらぬ滑り出しでカタパルトから射出される。付近の電磁波は弱く過ぎず強すぎず良好。ベストコンディションだがその条件は敵にとっても変わらない。モハメッドは腕の立つイージス乗りほど安定した磁場で命を落とすと言った。腕の立つイージス乗りではないが、安心せず普段以上に緊張感を持つことが重要だ。

 モハメッドの301、ヘンリー姉さんのバナナヘッドも出撃したのちにアダンの601も出撃する。アダンも出撃することに驚いたが人が足りないのだから仕方がない。艦はレイに任せよう。


「北斗型からはいつもの白ハンプティーね…!」


 白いハンプティー、少女の乗ったエース機だ。

 バナナヘッドがハンプティーにレーザーを撃ちこむが出力の低さから厚い装甲に阻まれる。機動力の利を生かしてナイフを射出し、急接近すると敵機も可変速レーザーを連射モードで撃ちだし接近を防ぐ。


「Yo、アイツらいつもは真っ先にアニマを狙いに行かねえか?今回は逆に避けてるように見えるんだが…?」


「気のせいだよ!あっちはあまりガンガン来ないしこっちから攻めてくよ!」


 言われてみれば今回はあちらから仕掛けてきたのに不自然に受け身な攻撃だ。なにかがある。とてつもない何かがある予感がする…。



「こんにちは。カルマのそっくりさん!!!!!」



「…ッ!301上方から何か来る!」


 ティーネさんの未来視を聞き咄嗟にモハメッドが回避をするとあと少しズレていればコクピットを真っ二つにしていたであろうサーベルが右マニピュレータを切断する。


「ッぶねえ!」


「…うそ。」


 イヴが見たことのない反応をしている。苦しんでいたり、怒っていたりするのではなくて、怯えている。彼女は人を殺せるイージスそのものの力に怯えることはあっても敵に怯えることは無かった。それはアニマに対する絶対的な信頼でもある。その彼女が目を見開き、肩を震わせ怯えた。

 僕は驚愕していた。眼前にあるものを素直に受け入れられない。目の前のイージスは一言、言葉で表すならば、


「黒い…アニマ…?」






「新型のイージス反応…これは、周波数は違いますがその他の機体データほとんどがアニマと一致します!」


 モニターにはありとあらゆる情報が改修前のアニマと一致することが示されている。全長、形状、ドールの反応。外装は違っているが明らかにアニマと同じ機体だと分かる。


「…まさか、もう…」


「…?レイさん?」


「関係ない、出撃中の全機に通達。黒いアニマはデータが無い。未知数だ!気を付けろ!」






「何が知らないけどアタシが頂くよ!」


 ハンプティーと交戦していたヘンリー姉さんは黒いアニマの方へと向かいその高い機動力で予測不能な複雑な動きをし、迷わせたのちに刃を向ける…もまるで踊るかのように軽やかな動きで交わし、そのままヒールバンカーで蹴り飛ばす。肩部のレーザー砲を露出させ撃ち出すとその全てのレーザーをバナナヘッドに対して方向を変え、何処までも追いかける。


「レーザーがホーミング!?どうなってるんだい!?」


 高速でバナナヘッドが逃げるものの、しつこく追いかけるレーザーの一つに被弾し、股関節部の装甲が焼き焦げる。


「こっちに来たッ…!」


 空を滑るように、踊るように軽やかに舞う黒いアニマは両腕に直結したトンファーサーベルをせり出し、こちらへと向かう。

 バスターソードを構えてサーベルの一撃を受け止めるがその瞬間、足裏から飛び出すヒールバンカーでバスターソードごと弾かれて一瞬安定を損なう。


「なんだこいつ…!動きがアニマ並みか…それ以上に器用だぞ!?」


 バランスを崩したアニマに向かって敵は突撃し、あえて武器を向けずに頭部を頭部にぶつけてきた。


「貴方がカルマのそっくりさんね!」


 聞こえた声は聞き覚えのある声。この声は、イヴだ。イヴとは話し方も抑揚も、声の出し方も違うがはっきりと全く同じ声が聞こえた。


「わた…し?」


「素敵ね!私そっくりな声の娘もいるのね!凄いわ!」


「誰だ君は…なんでその声で僕たちに話しかける…どうしてアニマと同じ姿をした機体に乗ってる…!アンタなんなんだよ!」


 聞き覚えのある声で聞いたことのない笑い方をする。高らかに、悪魔のように、反抗的な少女のように。


「そうね自己紹介しましょ。でもその前に…!」


 両肩のレーザー砲が露出する。


「死 ね!!!!!」




「そうはさせるか!!!!」


 撃ち出す直前に"突き放し"、カルマと名乗る敵機の体勢を崩す。撃ちだされたホーミングレーザーから高速で移動して逃げる、が逃げきれないと思い、収束したいくつかのレーザーをバスターソードで受け止める。


「…面白ぉい。」


 カルマの少女は拡声器でこちらへとコンタクトをしてくる。僕らは何も答えない。


「簡単じゃつまらないもの、シミュレーションと同じはつまらないわ。楽しませて…!楽しませて!!!」


 ふたたびサーベルを取り出しこちらへと突撃する。すかさずこちらもバスターソードを構えて斬りかかる。刃が触れると力は均衡する。お互いマニピュレータの出力が変わらないのだ。それは強化されたはずのアニマのマニピュレータ出力にあの機体が匹敵することを示す。

 空中で白と黒の機体が高速で何度もぶつかり合う。精密な動きの連鎖にもはや他の機体では追従出来ない。


「凄ぉい…!面白い!!!もっと遊んで!昂ぶらせて!」






「凄い!アレがニールの言っていたカルマとV(ヴィー)か!あのゼロタイプに食らいついている!素晴らしいッ!」


「我々の501部隊も流れ石のイージスを押しています。行けますよ!ゾルフ少佐!」


 雷鳥号改めサンダーバード号艦内デッキ。そこは歓声に湧いていた。強化された艦の性能とこれまでの期間でより熟練度を高めたイージス隊、そしてダスター部隊とカルマの猛攻によりかつてない程に流れ石を追い詰めていたからだ。


「こちらが優勢だがあちらもしぶとい。あまり時間を取りすぎると予期せぬ自体も起こりかねない。気を抜かないように。」


「分かっているとも!そんなこと!」


 通信越しに神威号のダスター部隊所属、クランベリー・イーヴィルが冷静な声で二周りも歳が違うであろう中年軍人を注意する。階級は彼より下だがニール直属の部下であり、直接的にゾルフと関係がないからか華奢な少女が敬語も使わず話してくる。内心彼は苛ついていたがニールには恩義があるのであまり彼女らには強く当たれない。やるせない。




「あねさまを立てろ!ゼロタイプを討つのはあねさまだッ!!!」


 ストロベリー・ヴァレンタインがハンプティーを駆りながら通信で他のイージスへと伝える。彼女らは今回、あくまで引き立て役だ。舞台の主役は黒き業。彼女が一人気ままに舞うのに不自由しないように舞台を整える役割。事実、Vは通信で他のイージスとはコミュニケーションを取りたがらず、巻き込まれないように連携はダスター部隊が補助していた。


「アハハハハハ!!!!アッハハハハハハ!!!死んじゃえ!死んじゃえ!死んじゃえ!死んじゃえ!死んじゃえ!」


 周りへの影響を鑑みずホーミングレーザーをブチ撒けるカルマだが一部はVの意志と反して他の機体やら味方の機体にまで飛んでいく。


「邪魔ッ!」


 たまたま目の前に居た味方機の501を軽く蹴り飛ばし、ゼロタイプ目掛けて一目散に飛ぶ。動きこそ見惚れてしまうような美しさだが味方からすれば何も考えないものだからはた迷惑だ。

 ホーミングレーザーへの対応に相手も慣れてきたのか徐々にいなし方を覚え始める。それならば近くまで攻め寄って叩き潰せば良いだけだ。再び距離を縮め、サーベルで大剣と鍔迫り合いをする。


「アハッ!そこッ!!!」


 わざとこちら側から剣を引き、体勢を大きく崩した所にヒールバンカーをバスターソードへとぶつけて弾き飛ばす。

 カルマはアニマのマニピュレータをがっしりと掴み、捉え、再び頭部をぶつけてコンタクトを図る。


「つ か ま え た。」





「貴方たちとっても素敵…!だから、だからだからだからだからとっておきでブッ殺してあげる!!!」


「ッ…!」


 おかしい。能力はとっくに使っている。"突き放せ"ない!マニピュレータの力強さだけでなくあちらのパイロットからは何か不思議なものを感じる。


「何だよ…何なんだよ…!クソッ…!」


「みんな…まとめて潰してあげる…!!!」


 カルマの背から小型の子機(ビット)が六機ほど飛び出す。ビットはカルマの周囲を円形に囲み、それぞれが展開していく。






「チューニングビット…!?ここでの起動は…!通信…繋がってない!」


 異常を感じたストロベリーはカルマの方を見て驚愕する。"アレ"をここで使われるのはとても宜しくない。味方まで巻き込んで壊滅させかねない。


「ダスター部隊以外の期待は一時撤退!とにかくあねさまのカルマから離れて!」


「こちら、サンダーバード号。何が起きている!」


「説明は後だ!良いからイージス隊を引かせろ!死にたいのか!?」


 本艦からの通信を受けてダスター部隊のブルーベリー・エヴォルヴが声を荒らげて警告する。既に事は始まっており、一刻も早い退避が必要な事態だった。


「ダスター部隊全機、アンチライトニングシステムを起動しろ!死ぬぞ!」


 ストロベリーの声がダスター部隊のイージスへと伝わっていく。






「…ッ!逃げて!!!とにかく何か分からないけどヤバいのが来る!!!全機退避!!!」


 ティーネさんの未来視、当たらなかった試しは無い。何か恐ろしいものが来るのだろうがそれは一番僕が分かっているし、そして逃げられもしない。カルマの周りに展開されたビットが禍々しい電光を放ちながらそれぞれが高速に回転している。


「クソッ!逃げるもクソも…!」


「シエル…!」


 カルマの胸部から謎の機関が露出してビットと同じ電光を放つ。それはまるで共鳴するかのように光を放ち続ける。


「消えてなくなれ…!イミテーション・レイ!!!」


 その瞬間、カルマを中心に光の奔流が放たれる。その光の広がり、瞬き、まるで僕らが何度も繰り返した"不思議な現象"。

 逃げ遅れた連邦の501は光を受けて内側からドールが結晶化し、機関を破壊されて堕ちていく。光はアニマへとぶつかると凄まじい波に装甲が消し飛ばされそうになる。その激しい衝撃がコクピットの中へと伝わっていく。


「うわぁあああっっっ!!!!!」


「っ…!!!!」


 必死に操縦桿を持たなければ背を叩きつけられてしまうかのような衝撃の波。必死に抗い続けるが姿勢を保つのに精一杯だ。


「しぶとい!!!死んじゃえ…!死んじゃえ!!!」


 光の奔流は更に勢いを増してこちらへとぶつかってくる。だがその光はアニマの前で少しずつ、弾かれていた。いや、"いた"んじゃ無い、してるんだ。僕が…!!!


「何も"突き放せる"のは物に限ってるだなんて誰が決めたんだ…!やれると思えばそれは現実になって僕の力になってくれる…!光を"突き放せ"ッ!!!こんな所で死ぬわけにも…イヴを守るんだ…!!!」


「しつこい…しつこいしつこいしつこいしつこい…!!!!!死ね!死んじゃえ!消えてなくなれ!飲まれて…食われて…吸い込まれて…!ここから…いなくなれ!!!!!」


「あああああああ!!!!!!!」


 ぶつかる光とそれを"突き放す"力のせめぎ合い。もはやイージス同士の戦いでなく、それはまるで神話の一端を見ているかのような光景だろう。純粋な意志と意志のぶつかり合いにお互いの心をすり減らしながらぶつかっていく。


「シエル…!装甲が…!!!」


「クソッ…!!!クソったれぇええええ!!!!」


 徐々に押されていき、脚部の装甲が剥がれていく。力の強さは徐々に"突き放す"キャパシティを超えていく。


「終わりよ!!!!!」


 けたたましい警報音がコクピットを包む。モニターを囲むEMERGENCYの文字。


「脚部のエンジンがやられた…!?…ぐわっ!!!」


 機体バランスを損ない、手を組んでぶつかりあっていたカルマが上側へと移る。"突き放す"力は徐々に弱まり機体はどんどん光に飲まれていく。

 そのまま装甲をいくつか壊され、高い空から堕ちていく。僕と、少女の、叫びと共に。

・NSA-000 カルマ

鹵獲したXSA-0のデータ、ドールの一部から細胞を採種して"ドールそのもの"から人の手で作り上げられたイージス。世界初の完全人工イージスである。ドールはアニマのクローンともいえる個体であり、構造も基本はアニマと同一であるが、内蔵武装が多彩でエンジン搭載数が4つに増え、マウントされている場所は両足両肩という変わった配置になっている。本機は最初からVに対して同調する様に作られているため、標準化装置を搭載せずにダイレクト・フィードバック・システム(通称:DFS)というシステムを用いてイージスを動かす事に最適化させている。

DFS…イージスが得た視覚、音、電磁波等様々なデータを直接パイロットの脳へとフィードバックすることにより、高い反応速度を持たせること及び、パイロットからの操縦を神経からダイレクトにドールへと伝えることで追従性を高めるシステム。人とイージスを直接神経で繋ぐ為、並大抵のイージスでは反応出来ないスピードと運動性を備える。元は標準化装置が完成する前に自己意識によって素直に操縦出来ないイージスをどうにか人の手に収めることは出来ないかと考えられたシステムである。脳に強い負担がかかる為服薬は必須である。本機のDFSはその黎明期に開発されたDFS搭載機「KG-X001系」をベースとしているが、死者も出るようなハードな本気とは異なり、ドールそのものがVに最適化されている為そこまでのデメリットは存在しない。が、多少の服薬は必要となっている。

武装

トンファーサーベル×2

マニピュレータに内蔵。使用時は腕部アーマーからせり出す。軽くて扱いやすく、カルマの高い機動性を損なわせない近接武装。

ヒールバンカー×2

足裏に内蔵。主に打突用に使用する。DFS搭載機特有の器用な動きにより、軽やかに脚技の攻撃が出来る。搭載されている場所から不意打ちにも強い。

ホーミングレーザー4門×2

両肩に内蔵されたホーミングレーザー。使用する際は四方に向いた円形の砲台が肩部アーマーからせり出す。連邦で開発中の最新兵器であり、ハンプティーの可変速レーザーライフルに並んでノアの最先端技術が投入されている武装である。エンジンに反応して自動探知し、亜音速で対象を追尾する。自動探知の関係上、意図しない場所に飛ぶこともある。ちなみに連邦のイージスには反応しないように設定されている。(一部の旧式機は反応してしまうこともあり、敵機であっても反応しないこともある。)

ホーミングにより収束させないとドールを貫けるほどの出力は出ない。一本一本はあまり強い出力とは言えないので少しいなされてしまうと相当装甲が薄い機体でもない限り有効ではなくなる。

一応、ホーミングを切り、全方位にまっすぐ飛ぶレーザーキャノンとしての使用も可能。

イミテーション・レイ、レイ展開用チューニングビット

背部のチューニングビットを機体周囲に展開。本機から特殊な感応波を放出、ビットによる増幅させることでイージスを問答無用で内部から破壊させる戦略兵器。その性質から味方へもダメージを与えかねないのでうかつな使用は自滅に繋がる。ダスター部隊専用ハンプティーはレイ展開前後の護衛用機体としても作られていたのでこれを無効化する専用のジャマーが搭載されている。

アニマの持つ不思議な現象を模倣し、搭載した兵装だが、完全に再現出来ている訳ではなく、本質的にあれと同じものであるかも怪しい。現にハンプティーはアニマの光を防げていないので同一のエネルギーであるとは断言出来ない。

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