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少年少女革命  作者: 四ノ宮凛
phase 1
2/32

arc en "ciel"

僕はまだ未熟だ。

未熟だからそこ、少しの刺激が大きな感情を動かしていく。まだ心と身体が形成されきっていないからこそ、その体験が糧となる。

僕がその時に受けた衝撃はすべてを変えていく。



「来るって、どこに!?」


「『アニマ』は複座だから。前の席がまだ空いてる。乗って。」


「ちょ、ちょっと待ってよ!何がなんだか…第一、軍用のイージスなんて乗ったこともないし…」


『騎士』に助けられた僕は綺麗な彼女に来てほしいと誘われた。何がなんだか分からなくて頭の中で思考が暴れだして、混乱している。理屈、理性、判断、僕の中の全てが今という状況が何なのか必死に考え出すけれど心がそれを突き飛ばして僕はあの『騎士』へ向かって走り始めた。

あの娘に惚れたんだ。


「ああもう分かった!ワイヤー出して!」


「ワイヤー?そんなもの無い。手、乗って。」


え?手?

『騎士』は僕を掴んで手に乗せて背中のコクピットハッチへと運ぶ。どうにも危なっかしくて、とてつもなく怖かったが、とにかく今はコイツに乗るしかないのだろうと直感が働き、その恐怖心を押し込めた。

『騎士』、彼女が『アニマ』と呼んだ見たことの無いイージスは首や背にかけてあるハッチが2つある珍しい形をしていた。彼女は後ろのハッチに乗っており、僕は空いていると言っていた手前のハッチへと入る。さっきまで乗っていた産業用と違って、剛性がありそうなハッチに最先端のコンソールがあったが、基本的な操作方法はあまり産業用と変わりないように見えた。


「乗った?じゃあ行くよ。」


全天周囲モニターになっているコクピットの右側からワイプが出現し、彼女が僕へと話しかける。遠目で見るよりも彼女は綺麗だった。

まるで宇宙を集めて輝かせたかのような瑠璃色の瞳、人離れした艶と色彩を持つ薄紅色のショートカット、そして何よりも端正で人形のように整った顔は誰もが理想として抱く少女像の典型と言えた。まるで夢に出てくるかのような宇宙のお姫様が現実に現れたかのようである。


「キミ?ぼうっとしてたら頭ぶつけるよ。ほら、連邦軍が来た!行くよ!」


「え?あ?う、うん!」


アニマは電磁式エンジン特有の甲高い音を鳴らし、青白い電気を散らして浮遊した後に一気に加速しつつ、高度を徐々に上げる。


「キミのは産業用だからなかっただろうけど、こっちはちゃんとG緩和装置がハッチに付いてるから大丈夫!それでもちょっとは来るけど我慢して!」


「G?Gって何!?」


「さっきキミが加速したときに感じた圧力!とりあえず頑張って!」


なんとも無責任に通信を切られる。緩和されてるとは言っていたが、これでもかなり後ろに押し付けられるような感覚を覚える。

ふとモニタの後ろを振り向くと連邦のイージスが3,4いやもっとだ。かなりいる。どれもさっき僕を追ってきたときとは比べ物にならない必死さでアニマを追いかける。装備も明らかに対イージス用レーザーライフルや白兵戦用のソードを持っている。


「レーザーはロックされたら弾が速いからマズいんじゃないの!?」


「うん、ロックされなきゃ良い。」


「へえ!?」


アニマは不規則に、縦横無尽に、エンジンを最大限に唸らせて大地を自由に飛ぶかのような機動をする。連邦のイージスはこちらに向かって容赦なしにレーザーを撃ってくるが、当たらないと挑発しているかのように華麗にそれを交わしていく。その動きは機械のそれというよりも生物的なモノにも感じた。なにより僕はこの動きでだんだんと気持ちが悪くなってきた。


「ねえ、無いの?こっちにもレーザーとかガトリングは」


「アニマが嫌がるから持たない。」


「嫌がるって…機械でしょ?そんな生き物みたいに」


「アニマは生きてる。キミが乗ってたイージスも生きてるし、連邦のイージスも生きてる。」


「何適当な事言ってるんだよ!というかここからずっと平野だよ!?逃げるにも隠れ場所なんてしばらく無いよ。」


「へえ。」


またもや無責任に通信を切られる。彼女考えてるようで何も考えてない!テロリストの女の子に一目惚れして付いて行ったら死ぬのが僕の最後なのか!?勘弁してくれよ僕は付いてくことに希望を持ったんだぞ!

その瞬間、轟音が鳴り、アニマの身体が大きく揺れた。


「何!?どうしたの!?」


「ごめん、後ろのハッチの制御系統がレーザーでやられた。代わりにお願い。」


「代わりって…待って、僕がやるの!?」


「前から来てるよ!お願い!」


あまりにも無責任だこの女の子。そもそもイージスを動かせるようになったのは最近だし、そんなに上手く動かせる訳でもないし、無茶苦茶な動きで凄く気持ち悪い。そんな状況で僕に投げるなんてどうかしてるよ可愛いけど!

なぁ、死ぬかもしれないけどここでカッコいいとこ見せたら、良いのかな。この状況で彼女を護れれば。いきなり会ってそんなことしようだなんて正気の沙汰じゃないかもしれないけど僕は彼女に惚れたんだ。なんだってしてやる。どうにだってなってやる。考えるんじゃない。感情のまま動かすんだ。

やってやる。もうどうにでもなれ。操縦桿を握ってやるのは『逃げ』じゃあない。


「男ならァ!戦うんだぁぁあああああああ!!!!!!」


180度機体を旋回させ、急停止。高速でこちらを追っていた軍用イージスをぶつかる瞬間にアニマのソードを背から取り出し、コクピットのある頭部を切断する。

そしてその瞬間、眩い虹の光がアニマを包みだす。それはまるで母星で語られた『神話』のような神秘の光、この世のなによりも鮮やかな色彩を放つ光、誰かを護る為の暖かな光。

光はアニマを中心に広がり、それを浴びた周囲の十数機居た軍用イージスを内側から結晶のようなもので串刺しにする。

イージス達は次々と機能を停止させていき、追手は全滅した。

彼女に指示されたポイントまで向かい、周囲を確認した後にエンジンを停止させてひざまずく形でアニマをそこに停めた。


「なんだ…今の」


ハッチが開き、後ろに乗っていた彼女がこちらのハッチに入り、至近距離で僕に問いかけてきた。近い。あといい匂いする。


「キミ、すごいね。アニマ、普段私以外の言う事聞かないのに。それにアレ…」


「えっ、いや、ああ、僕も何がなんだか…」


「あっ、そうだ!」


そうだ、聞きたい事を聞けていなかった。

彼女に惚れたんだってのにそんなことすら聞けてなかったんだ。

そんなことすら聞けてなかったのに僕はこんなに必死だったんだ。

馬鹿馬鹿しいよな。そんなことも知らずに僕はここに乗って必死になって。


「君の名前、教えて欲しいんだ。」


「名前…?」


「あ、僕はシエルって言うんだ!シエル・アドロック。シエルってのは僕の先祖が母星にいた時に使ってた言葉で『空』って意味なんだ!これは昔おじいちゃんから聞いたんだけど…って聞いてもなかってね…アハハ…ごめん…」


「イヴ。」


「えっ?」


IV(イヴ)。私の名前。」


「イヴ…そっか…いい名前だね!…ってなんか変な褒め方だなぁ。」


「変な人。」


日が暮れる。シャングリラの一日は16時間だ。一日が訪れたと思えばすぐに日が暮れるのがこの星だ。だからこの星の一日なんて短くてなんてことのない日々ばかりが積み重なっていく。短いからなんとも思わず、忘れられていくだけの日々が過ぎていく。だけども僕はこの日を絶対に忘れることはない。今日という日を忘れることはないし、忘れない。

初めて好きになった人と出会った日だからだ。心を動かせられた日だからだ。退屈な日常を壊してくれた日だからだ。


「あっ、来た。」


頭上に浮かぶのは超弩級の電磁浮遊軍艦。エンジンの力で飛ぶ大艦艇。軍艦なんて西部の田舎には滅多に飛んでないものだから初めて見た。知っていたのは祖父が軍のイージスや軍艦の整備をやっていたから資料として見たことがあったからだ。


「アレがね、私達『流れ石』の本拠地にして動くアジト、『明星号』」


「明星号…どうして連邦の軍艦を…?」


「私達は連邦へのゲリラを行うレジスタンス。様々な権利を求めて攻撃を行い、圧政には抵抗して戦う。」


「私達はね、」


「キミをスカウトしに来たの。」

短いけどゆっくりマイペースに進めます。

アニマの正式名はXSA-0 animaです。

あと、イヴの綴りが変なのはわざとです。

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