第22話:夏休みの『魔』物V
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今日の討伐計画は青島から宮崎空港までの海岸線を対象にしているため、私たちは青島へ向かった。
漁港はあったが、船はすべて陸に引き揚げられ、船体に大小様々な傷がついているのが確認できた。
到着して全員が降りると、助手席に座っていたと思われる軍人が進み出て来た
「闇堂家率いる討伐隊の皆さん、私は今回の討伐にあたり、周辺警戒を受け持つものであります。
増加した『魔』による被害も少数ながら確認され、力を増したものとみられます。従って、あなた方が住民の安寧の行く末を握っていると言っても過言ではありません。
何卒、宜しくお願いします」
頭下げられちゃったよ
___ズシッと空気の密度が上がったように一瞬錯覚した。当主様だ
「聞いたかね諸君?肝に命じろよ、頼みでも命令でもなく『願われた』のだ。反故にすることは当主である私が許しはしないつもりだ。」
その言葉にどこからとも無く笑いが漏れた
「もちろん闇堂にそんな腰抜けはおらんと自負しているがな」
ニヤニヤしながら丹波がメリケンを嵌めた手を握ったり開いたりしている。時雨叔父さんは珍しく愛用のコンパウンドボウにイイ笑顔で強化の術をかけている
「私から命令することはひとつ。__殲滅しろ。」
「「「「応!」」」」
「全員、暗視は常にかけておけ。弓、銃組は手早く配置につけ、術師組は二手に別れろ。近接組は敵を近づけないように、以上配置につけ。」
足音も立てずに散開し、それぞれの位置につく。
私も銃を取り出し、本来はできない膝立ち仰角45°で構える。1m横では時雨叔父さんが同じように弓を構え、矢を生成した。
「弓、銃共に誘引弾───ッ撃!!」
銃の乾いた炸裂音と、矢が空気を切り裂く高い音が重なって、術式の込められた影響で鈍く光る銃弾が真っ先に着弾したのを追うように矢が海面に突き刺さった。
フッと風が止んだ次の瞬間
───カァァアアン!!!
光 、一拍遅れて音と衝撃波が走り抜けた。
光、音、衝撃波の刺激で『魔』をおびき寄せるが、殺傷能力は一切無いのが誘引弾の特徴だ。
効果は劇的に現れた。
──ざわり、と昼間と同じような視界に地平線が蠢いたように見えたそれは、『魔』のあまりの数に津波が押し寄せるかのようだった。
「術式用意!!」
術師が精霊に式を伝える。400メートル程向こうの海面に無数の円が描かれていくのがここからも見えた。その上を『魔』が通って見えなくなった時
「今!」
「「「解放!!!」」」」
その声がかかると、黒い網が展開され、それに触れた『魔』が消滅し、フィルターのようにそれに抵抗できた『魔』が飛び出してきた。
「大型のものを優先で狙え!」
それに先頭集団の大型の『魔』を吹っ飛ばすことで応える。狙いを絞り、引き金を引く度に仰け反りながら消滅していく『魔』。海中を進むものもすべからく撃ち殺すが、2mを越す巨体が消えた後の隙間を塞ぐように小型の『魔』が現れる。が、それを処理するのは私たちの仕事ではない。
待ち構えるのは丹波率いる近接組。
「フッハッハッハー!やっと出番だぜー!」
ちょっとうるさい
打ち寄せるようにやってくる『魔』を待ちかねたように笑いながら殴り殺していく。周りのヤツらも同類で、叩き潰し、斬り潰しながらも気持ち悪い程笑顔だ。
一連の流れ作業で細かいのしか居なくなったら、〆だ。
二手に別れた術師のうち幸くん率いるもう片方は始まってからずっと待っていたのだ。この瞬間を。
「第2術師組、やれ。」
合図の直後、頭上30mの空が直径10cmに満たない円に一瞬で埋め尽くされた。それが回転を始めると、真っ黒な弾丸が雨のように降り注いだ。
海面はその勢いで跳ね、あまりの弾丸の多さとスピードに霧のような細かい水滴になって空中を舞った。それが止んだあとは『魔』は1体も生きてはいなかった。
その光景はその夜宮崎空港前の海岸まで2回繰り返された。
初日、怪我人、撃ち漏らし共に、0
次回、夏休みの『魔』物VI




