プロローグ :彼女の事情。
花の女子高生だった。つい先程までは、と但し書きがつくけど。
ちょうどお母さんに頼まれて買い物に出かけた帰り、日が沈む時間帯一人で歩いていた罰だろうか?
___逢魔が時...魔に逢う時間。まさにそれは___
通り魔だった、と思う。後ろから足音が聞こえた、と思った瞬間左の肩より右下に、焼け石を当てられたような痛みが走った。
かひゅっ
衝撃で一瞬意識が白く染まったあと、じわりじわりと背中を生暖かい液体が流れる感覚で
___ああ、刺されたのか、と悟った。前のめりにどう、と倒れた痛みも、身体を徐々に侵食してくる寒さに対する恐怖や、段々と遠くなる感覚でどうでも良くなった。
でも、意識が闇に飲まれる時思ったのは
___攻略、終わってない...!
何て事だった。
......あ!......ぎゃあ!おぎゃあ!
痛い痛い痛い!なに!?何なの!?
よく見えない視界や、激痛で私はそう叫んだはずだったけれど、自分の喉を震わせて出てきた声は、丸っきり赤ちゃんのものだった。
ッっ!?は!?あああああ赤ちゃんンン?!
混乱する私を他所に、周囲は私の体を洗ったり拭いたりで忙しい。と、暖かい感覚で、束の間痛みを忘れて泣き止むと、疲れた様子の女性?らしき声がくぐもってはいたが、確かに聞こえた。
「生まれて来てくれてありがとう...私と、あの人の、赤ちゃん...」
達成感に溢れたその声で我に返った。
『え、えぇぇえ、嘘、まさか』
転生、という単語が頭に浮かんだ。ラノベで流行りのジャンルだ。まさか自分が体験する時が来ようとは思わなかったッ!
ガラッ、バァン!!
いきなりドア(?)が勢いよく開いた音でビクッとなった。次の瞬間
「う、うう生まれたのかい!?ああ!、間に合わなかった!!」
「落ち着いてあなた、今やっと泣き止んだのよ。静かにしてちょうだい。」
「うぁっ、は、ハイぃ」
お、おう、なんと尻に敷かれた旦那さんっぷりだ、恐れ入ったよママさん...、
「名前はどうしようかしら、女の子だし、あなたがきてから決めようと思って決めてないの」
「うん、そうか、じゃあ〝 ゆう〟でどうだい?今ちょうど夕方だし、名字と合わせれば〝あさひな 〟だから語感もいいし」
「そうね、あなたが決めたのならいいわ。
じゃあ、ゆうちゃん、あなたの名前は朝日奈 夕。これから宜しくね?」
なまえ、名前か。前の私にこだわるのは、この新しいお母さんとお父さんに、ちょっと悪い気がするし、今のわたしは、朝日奈 夕として生きていくんだなって思えばそれでいい気がした。
「うきゃぁあ」
宜しく、と思いを込めて声を上げてから、眠気に耐えられず、とうとう寝てしまった。でも、本当に寝てしまう前に思った
___朝日奈 夕って名前、どっかで聞いたぞ
、と
ちーとなさりげ主人公、暗躍型、爆★誕