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悪役ではない...けど、コレはどう考えてもおかしい。  作者: マタタビ師匠
第3章 始動編
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第9話:ヤケと間引き

戦闘回

グロさはない。

PM11︰00


「あ゛~」

四階建てほどのコンクリートビルの屋上、置かれた室外機に腰掛けながら、女子高生が出しちゃいけないような声を出して、私は黄昏ていた。


「友達が少ないのは今に始まった事じゃないけどさ...」

その通り、友達と言えるのは2、3人しか居ない。


「だからって...よりによってあんな現実知りたくなかった...」

友達が少ないのはまだいい。クラスの人と、滅多に会話しないのは、いいのか悪いのか分からないけど、その滅多に喋らない中に水瀬さん(攻略対象)が入ってるのはいかがなものか。しかも何故か向こうは親しげ。



ハァァアア...

ひときわ大きくため息をついて立ち上がる。

「もう、忘れよう。」

そうした方が心の傷は浅い。


既に出現させていた刀を左手でもち、ビルの(へり)に立ち、ネオンに照らし出された街を眺める。


「どーこかにいるかなー?」

路地裏、なし、ゴミの集積所、なし、人ごみ、なし

「...こんな時に限っていない...」



「困った時の夕凪さーん」

ということで、やって来ました『白領』。


「おーい夕凪やーい」

『なんだ』

後ろから声がかかる

「いたいた、ところで『魔』が確実にいるところ知らない?」

『何がところでだ。で、何をしに行くのだ?』

「何って決まってるでしょ?」

『......『魔』はサンドバッグではないのたがな、』

「いいでしょー?」

『そんなに『魔』を斬りに行きたいなら富士に行けばいい』

「!おおー、その手があったか!行ってくる!」

バタン


富士に続く扉を開けて意気揚々と出ていく夕を見送り、紅茶を傾けながらつぶやく

『アレで歴代の者達より有能など、詐欺であろう...』

記録に残る歴代鍵守も、単独で富士に行くほどではなかった。

『...努力も歴代でも類を見ないほどしておる故、慢心していない事が救いか...』

努力ひとつとっても、並々ならぬ心血を注いでいた修行中の夕を思い出し、まぁいいか、と思い直す。




ゆっくりと紅茶を飲む様は、若干の誇らしさも滲ませていたが、本人は気づいていなかった。




......................................................



富士、中でも青木ヶ原樹海は、自殺者の遺体が年間数多く発見される事でも知られ、行方不明者の報告が相次ぐ場所であった。


多くは自殺者の負の感情に当てられた『魔』による被害であり、樹海に1歩入ればそこは魔境であり、『魔』のあまりの数に、時たま討伐隊が組まれる程だ。そこではいかに『心象武器』を持つものであっても、油断すれば即三途の川へご案内だ。




そんな『魔』の蔓延る樹海にあっても夕の軽い歩調は変わらない。軽い足取りで奥地までたどり着き、周囲から寄ってくる『魔』を見渡しボソリと

「今日も大漁だ~」

呑気な声であっても、そこに油断はない。


手近な一体に歩み寄りながら何気ない動作で動き出す。斬りつける動きのまま次の一体へと斬りかかる。段々とその動きは早くなり段々と手数も増えていく。流れるような動きで白刃が煌めき、流星のようにも見える。




「しーあわっせわー」

スパ、パ、パパ ...4体


「あーるいってこーないー」

スパン、パン、パパパ...5体


「だーからあーるいってゆくんだねー」

突いたそれを蹴飛ばし横に迫る魔を斬り飛ばす


「いっちにっちいっぽ、みぃーかでさんぽ」

回転しながら4体まとめて斬り払う頭上の魔を突き刺す


「さーんぽすっすんでにーほさーがるー」

目の前に立つ魔を交互にすり抜けながら5体斬る


「じーんせいはー」

蹴り飛ばす


「わん」

斬る


「つー」

突く


「パンチ」

左手で殴る


「あーせかきべーそかーきあーるこーよ」

細々とした魔をいっぺんに斬る




少なくなった魔、だか奥から次々やって来る

「...ぃぃゎ」


「あなたがつけた」

2体燕返しで斬る


「あしあとにゃ」

木の間を蹴る


「きれいなはなが」

追ってきた一体が砂になる


刀を納め

「さくでしょう」

居合切りの要領で切り伏せる


「うでをふって」「あしをあげて」

斬斬斬斬 あと6体


「わん」

ごー

「つー」

よん

「わん」

さん

「つー」

にー

「やすまないで」

いち

「あーるーけー」

ぜろ



......................................................




「すっきりしたー」

『...』

合計46体、終わって帰って来ると夕凪の呆れた視線が刺さる

一時間もせず帰ってきたのだが、ずっと見ていたらしい夕凪に開口一番すっきり報告するとこれだ。



『相も変わらず...と言ったところか?』

「だね、ちょっと行っただけなのにあっという間に寄ってきたから殺っちゃった」

『...』

頭おかしいんじゃないのという目で見られた、心外な。

修業(けいこ)付けてくれた夕凪にそんな目されてもー」

そう。対である夕凪も全く同じことが出来る。むしろ物凄く細かい作業なら夕凪の方が上。時間がかかるけど、私もできるけどね。




ここ、白領では私の想像次第でほとんど何でもできる。仕組みもわかればちょいと工夫を加えて外へ持ち出すことも出来る。

特大のクッションを出してぼすんと埋まる

「ほーへー癒さるる~」

『阿呆め』

「きーこえーないー」

嘆息する夕凪は思う。詐欺だ、と。


「ストレス発散にまた来るよー」

『だからサンドバッグではないとあれほど...』

「分かってるけどー、減らすのは悪い事じゃないでしょー?」

『だからといって富士は本当は危険地帯なのだぞ?』

「だから間引くんじゃないかー」

そう。討伐隊が来る頃はMAXで多い。優秀な人材を減らすのは私としても避けたい。それに忘れているだろうか、私のゲームの中での役割、暗躍だ。

悪い意味ではない、むしろいい方の暗躍



一つはこの間引き、後は学園に秘密裏に設置してある結界装置の管理、これは代々の鍵守の外での役目だから外せば魔が溢れる。結構重大な役目なのだ。


結界装置は10年ごとくらいの調整で済むからいいけど、間引きは必要不可欠。




「記録的には、多くなってるんでしょ?魔」

『ふむ、一番多かった時代の7割に迫っているが、何か心当たりが?』

「ちょっとだけ」

一番多かった時代とは、初代の話だ。このこともあって桜花学園を創ったとも言われる。

心当たりといえば、ゲームだ。まだ世間に知られていないから影響も少ないけど、無の精霊が表に出ればもっと増えるだろう。魔が元の負の感情に含まれるナニかに沿った動きをするのはゲームでは知られた話。


それが、妬みなどなら、その対象となる人物経向かうことがあるのは明白。だからヒロインちゃんはよく魔に狙われたし、優先順位もヒロインちゃんだった。横に関係ない人がいたら無視してヒロインちゃんへ向かう。それを知らない攻略対象達がそれを解明するストーリーもある。




「あと一年したら増えるよ、もっといっぱい」

『...そうか。理由が分かっているならいい。こちらでも少しは備えよう。』

「うん、理由はその時教える」

『いいだろう。...そろそろ寝たらどうだ』

若干眠そうにしていた私に気づいたのか帰るように促す夕凪、お母さんって言っていいですか...

「おやすみ、またね」

『ああ』





部屋に帰って着替えれば、途端に眠気に抗えなくなる。

「学園、憂鬱だ...」

例の水瀬さん、これ以上関わるのはメンドクサイ

でも

「ふわぁーあ」

眠い




今度こそ寝た。


次回、接近

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