第7話:高等部初日
転生してからはや15年、あと二年もすれば前世の享年だ。ひとまず私は高等部へ上がったわけだが、ほとんど持ち上がりなので変わったことといえば制服の装飾、まぁタイピンなのだけど、それが増えたくらい。私のタイピンは鬼灯をモデルにしてある。理由?ビジュアルと、花言葉・偽り からだよ。
私は元の厨二病容姿を黒髪黒目に偽装しているし、能力だって闇の精霊と相性がいいと偽っている。相応しいと思ってコレにしたけど、やっぱり見た目重視だと思うんだ。
話を戻そう。私は高等部に上がって中等部を卒業することになった。...のだが
「夕姉様、進学おめでとうございます...」
「あ、ありがとう...?」
なんか暗いな
「どうしたの?そんな暗い顔して」
「いえ、ただこれから夕姉様とは、校舎が分かれるので、会う機会が減ってしまうと思うと、しかも次に同じ校舎で生活できるのが1年後だなんて...」
え、そんなこと?
「何言ってるの幸くん、たった1年だし、行きと帰りはいつも一緒じゃない」
「...そうかもしれませんけど、僕にとっては大事な事なんです...」
そういうもの?
まぁ確かに、今まで私達は幸くんが初等部入学を果たしてからは休み時間や昼食 (これは学食がある)の時はずっと一緒だったけど、高等部からは人が一気に増えるので校舎も食堂も別になるから、本当に行きと帰りだけになる。
寂しくなるとは思うけど、私は クラスが別れた攻略対象の調査とかやることがあるので、そこまで深刻に思っていない、というか幸くんは、実の弟よりももしかしたらシスコンかもしれない。
用事が無い時は大抵一緒にいたがるし、いつの間にか私が実家で受けている護身術や体術の訓練に本当にいつの間にか参加していた。最初は二度見したくらい驚いたけど、今は普通に一緒にやっている。それに闇の精霊の制御訓練をお母さんに指導してもらいに行ってたし...
「...分かった、じゃあ何かひとついうことを聞こう、それで埋め合わせする。」
「何でも...ですか?」
「この際だ、なんでもきくよ」
「...いえ、今回はとっておきます。いつか言いますから、聞いてくださいね、絶対」
絶対、のところにやけに力が入っていたけど、女に二言は無い!(なんか違う気がする)
頷く私に幸くんは満足気だ。
というか、幸くんといえば、もう私の身長を超えているのだ。私も女性としては高めの身長だけど、成長期って恐ろしい...
まぁそれは置いといて
「じゃあ私はこれから高等部の説明会とか編入組との顔合わせとかあるから、またね!」
「分かりました、放課後また会いましょう」
「はいはーい」
まあ言ってしまえば自己紹介とかするだけだから楽でいいや、しかも名字があ行だから最初に自己紹介して、あとは聞いとくだけ、なんて楽な仕事だろう...
とまぁそういう事でやって来ました自己紹介!
「出席番号一番から順に自己紹介をしてもらう」
やっぱりね!
一応立ってやらないとだよね
「出席番号一番、朝比奈 夕です、こう見えて得意なことは運動です、宜しくお願いします」
やり切った一応ハードルも低めだ。私ってば親切
そんなことを考えていたから余計にびびった
「出席番号十七番、水瀬 穹です。得意なことは、そうですね...絞める...ですかね?」
その時クラス全員の心が絞められた気がした。
『ねぇ、何を絞めるの?何を!?』
『キュッてするんですか水瀬さん!?』
『もしかしてコイツヤバい?!』
私も絶賛混乱中だ。
「...次の人」
続きを促す担任の目は死んだ魚のように濁っている。現実逃避したなコイツ
「しゅ、出席番号18番!本村あいりでしゅっッ!
と、得意なことは、水泳ですっ」
嗚呼、かわいそうなあいりちゃん、混乱していて噛みまくって今は恥ずかしいのか机に突っ伏してる...ごめんねあいりちゃん、私が得意なことは、なんて言ったばっかりに...!
謎の罪悪感に苛まれた後は滞りなく(というか、十七番が特殊だったんだよ。)終わって解散になった。今は猛烈に癒しが欲しい。間違っても得意なことはがキュッとすることなんて人関わりたくねー...
普段の二割増のスピードで移動して中等部の前で待っていると、幸くんがこちらを見つけて、小走りで駆け寄ってくる。
「夕姉様、どうかされたんですか?いつもは僕が待っているのに、」
「ううん、何でもないよ、ただ癒しが欲しかったの。」
「...本当に大丈夫ですか?」
「ダイジョウブ...のハズ」
「とりあえず帰りましょう。」
「うん、帰ろう、すぐ帰ろう。」
車の中で色々聞かれたけど、口に出したら出てきそうで話さなかった。余計に心配されたけどしょうがない。
攻略対象にもしかして幸くん以外濃ゆいヤツしかいないの?だったら軽く死ねるんですけど...
次回、番外:中等部A君の独白