第7話 魔物との実践訓練Ⅰ
不定期ですが、気ままに見てください!
最後に、不定期更新ですみません!
~1ヶ月後~
今日は異世界に来てから初の遠出である。今までは城の中や教会、訓練場には足繁く通ったが、今回は20キロも遠くにある森へと向かう。
異世界から来た勇者達は1ヶ月間に剣術、魔術、座学の基礎を学んだ。そして1週間前から4人1組の班分けがあり、俺は自分と同じ部屋で暮らした3人、つまり零、咲、陽子と組んだ。
そして、それと同時に今回は全員が自分で選んだ武具を持つようにしている。
この国にある装備は様々な形がありクラスメイト全員が好きな武器を選んだりしている。中には巨大な鎌だとか痛い武器を選んだ者も居る。ボロボロのローブまでは選ばなかったが、、、。
明の選んだ防具は素早さ重視の革製の軽鎧。それの上に丈が膝上までの濃い緑のマント。武器はドスに似た刃渡り30センチの片刃の直刀を両腰とマントの裏の合わせて3本。
零も軽鎧、そして膝下までの白くて薄いマント。刃渡り70㎝のバスタードソードを使っている。
咲は魔術師としての立ち回りを要求されるため、革の軽鎧だが特徴的なのは明や零のものと比べて薄く、申し訳程度の防御力で逃走の為に濃い緑色にしてある。
そして、地面すれすれまでの分厚くてフード付きのマントを着ている。これも濃い緑色。武器は近付かれた時のための刃渡り20センチの両刃の短刀を両腰に1本ずつ持っている。
咲は鉄製のプレートアーマーと、普通の鎧。武器は叩き切るのを目的とした、切っ先に向けて幅が広がっていくのが特徴的な両手剣のファルシオン。
俺たち4人は森での視界を広げるために頭装備を脱いでいる。
今回の遠出は訓練のためである。森の中での野営訓練を1週間も行い班での連携の取り方や自分の武器の使用感などを確認する。
野営の仕方は座学の時間を3時間削られて兵士達からみっちりと、ただし1度だけ教えられた。
見方によればオリエンテーションとも見えるが、男女が入り混じっての魔物が出る森での野営。野営拠点というただの森を切り開いただけの広くて平らな土地に、食料を3日分だけという過酷な環境で1週間も生き延びなければいけない。班ごとに野営の為のテント(支給された魔物の革を現地の棒を使って四角錐に組み立てたもの)を立てて利用し、食料、飲み水の入手も班ごとに行い、他の班の手助けなどを行えば程度によってその班だけ訓練期間が延びる事になっている。
立派なスパルタ訓練だ。
今までの訓練とは毛色の全く異なる、下手すれば死ぬかもしれないようなものだ。
唯一の救いはここに出る魔物が弱いということ、最弱種として名高いスライム種、ゴブリン種、オーク種と数は少ないながらもウルフ種である。兵士達によれば、普段通りの行動を心がければ例え1人でもこの森で1週間を過ごせると言っていた。
野営地に向かう四列横隊の中で、
「なんか緊張すんなぁ」
「そうだな。だからこそリラックスして、普段通りに行こう。俺達は一ヶ月目とはいえ勇者だ。兵士が言う通りに普段通りにやればいいんだ。」
大事なことなので二回言いました。みたいな事を言っている零も、平静さを装っているだけで、心の中では意外と不安なのだろう。長い間ともにいるからか、今では心の機微が分かる。
「そうよ!スライムが来たらぶっ叩けばいいのよ!」
「陽子、ぶっ叩くのはいいけど魔法剣を発動させるのを忘れるなよ?」
もともと陽子はただのアホだったが、意外なことにこの1ヶ月の剣術の能力は凄まじい。なにやら才能があるのか、魔法剣の上手さでは3位を大きく離しての2位(零は属性剣まで使えるからさらにぶっちぎって1位だが、、、)である。そのせいか少し脳筋じみた発言が目立つようになってきたが、どこか虚勢を張っているようにも見える。
「皆さんしっかりしてくださいよ?しっかり後ろから援護しますから、思いっきり行ってください!」
咲の方は地球では本の虫で人と関わらなかったが、訓練や同じ部屋での生活で一緒に過ごすうちに随分と打ち解けてきた。最近は零との難しい話が捗ってるみたいだ。
野営地に着いた時にはもう夕方でになっていた。
各班はそれぞれにテントを立てていく。テントの骨に使う木材の入手に手間取った班もあったものの、1時間も掛からずに全ての班の眠る用のテントは完成した。
そして、いよいよ訓練場を離れる時が来た!(まだ1時間ほどしか経ってないけど)
初日は食料を確保する必要はないが、水は早めに得なくてはいけない。
兵士達から与えられた地図にはここから北へ300mほど進むと小川があるらしい。
「さてと、これから全員で水汲みに行こうか。」
零がもうすぐ日が沈み始めるというのにそんな事を言い出した。
「確かに喉は乾いたけど、もう遅いし疲れてるから休んだ方がいいんじゃないか?」
「いや、疲れてるからこそ水は必要ですよ。疲労と水分不足は体にとても悪いですからね。」
零に加えて咲も賛成するなら例え俺と陽子が反対しても無駄か。人権とは平等ではないのだ。
「森へ行くと鬱蒼としげるシダっぽい植物が木々の間を埋めるように僕らの膝上まで伸びている。
その中をまるで獣道のような見えづらく、歩きにくい道も伸びている。」
「明何言ってるの?」
「いや、ここまで『いかにも』な森を見てたらつい詩的なこと言いたくなってな。」
「何が詩的よ。ただ単に見たままを言ったままじゃない」
「ふっ、陽子には分からないよな。草が伸びると道が伸びるを掛けてるんだよ」
「あーもー!そういうの分かんない!どーでもいい!」
「明、陽子、気を抜くなよ。散歩じゃないんだぞ?」
零がそう窘める。
「分かってる。零ももう少しリラックスしなよ。零らしくない。」
「、、、分かった。けど、油断は本当にするなよ?出ないとここに骨までスライムにしゃぶり尽くされるぞ?」
「きゃっ、怖いこと言わないでくださいよ!私怖いの苦手なんですから!」
「へー、以外、咲っていろんな本読んでるからそういうのに耐性あるのかと思った。」
「本やテレビで見るホラーなら大丈夫なのよ。けど、お化け屋敷とか体験型になるとほんと無理!」
「へー、意外な弱点だな」
その時、零が突然小さな声で
「しっ!みんな、静かに」
──カサカサ、カサカサ──
近くの葉が擦れる音がする。
次の投稿も不定期になるので把握をお願いします!