第3話:王国の狙い
~王国側~
その日の夜。
「メリウスにバルクよ、今回の勇者の中に使えそうな者はいるか。」
「大体の勇者は強く、戦闘でも役立つでしょうが、適正で見るなら使えるのは全体の8割かと。特に黒崎 零は既に十分な戦闘力がありますね。四属性の魔法しかも使い勝手がいい光属性を持っている。そして物理系スキルも持ち合わせていて抜けがない。即戦力になりうるかと。」
「生産職に向いている者は全体の2割ほど、あまり目立ったものも居りませんが、強いて言うなら日向 陽子ですな。農作物の生産に有利と思われます。」
「適性のある役割につかせよ。特にその2人は上手くやって逃すな。間違っても裏切りの無いように徹底せよ。」
「御心のままに。」
~明視点~
明が起きると、零は既に起きていた。
「おはよう。零は早いな。」
「おはよう。よく眠れたか?」
「まぁ、それなりには寝れたな。」
「咲と陽子はまだ寝てるみたいだな。王城散歩でもするか?」
「そうだな。色々あるかもしれないし、見ておいた方がいいよな。」
「昨日に比べて随分と落ち着いたな。大丈夫か?」
「昨日は突然でちょっと興奮してたけど、一晩考えてたら落ち着いた。」
「あのまま厨二病発症するかと思って心配したぞ(笑)」
「うるせぇ、ほっとけ。」
そうして、明と零は部屋を出た。
部屋に出て当たりを見回すと壁掛けのランタンの灯る長い廊下に、兵士が10m置きに並んでいた。そのうちの1人がこちらにやってきた。
「どこに行くつもりだ。」
「明を誘って王城を散歩しようとしてるだけですよ。」
「ならぬ。勇者の外出は認められん。」
「ただの外出さえ認められないのは拘束が厳しすぎませんか?」
「黙れ。王様からの命令だ。こちらから呼ぶまでは部屋で待機だ。」
仕方なく部屋に戻ると、陽子と咲はもう目を覚ましていた。
「お、二人とも起きたのか?おはよう。」
「明くんおはよ。さっきの扉の音で目が覚めちゃった。昨日はもう帰れないかと思って取り乱しちゃった。ごめんね。」
「帰れないって決まったわけじゃないし、奈良旅行が異世界旅行にグレードアップしたと思えばいいよ。」
「零くん、、、そうだよね、ありがと」
その後も軽く話してみたが陽子の痛々しい笑みは変わらなかった。
(コンコンッ)
「これから訓練場は向かってもらう。用意が済みしだい移動を開始してくれ。」
連絡役らしい兵士は要件だけを伝えるとスグに出ていった。
「早朝の兵士といいさっきの人といい、勇者にも素っ気ない態度なんだな。」
「そうみたいだな。。。」
明の言葉に零はいつものように考え込み始めたようだ。
用意といっても何も持たずに連れてこられたため、スグに外へ出ると廊下に立っていた兵士の案内で外に連れ出され、訓練場に連れてこられた。
「でっけぇ訓練場だなー。」
「城も大きくて迫力すげぇー!」
「、、、。」
クラスメイト達は寝起きの顔やテンションでよく眠れたのか寝てないのかが分かる。
これから何が起こるか分からないというのに、男子の大勢は訓練場の広さに感嘆したり、城の大きさに興奮していて、女子のほとんどは男子と同じ部屋というストレスか、先行きが不安なのか、終始無言だったり不安げに当たりを見回していた。
そうこうして数分経つと、少し離れた場所にいた兵士から言葉が発せられた。
「静かに!」
ガヤガヤしていた男子達もオロオロしていた女子達も一喝で静まり、止まった。
「いまから昨日作った各々の鑑定紙を全員に配るのでよく見て生産に務めるか兵役に務めるか決めよ!」
「明、お前のステータス見せてくれ。」
「ほい、零のも見せてくれよ。」
「私達にも見せて〜。」
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相模 明 17歳
魔法系スキル:闇Lv.1
物理系スキル:なし
その他スキル:闇隠れLv.5・気配察知Lv.3
ユニークスキル:妄想習熟Lv.1
加護:邪神の加護
称号:転移者・邪神に気に入られし者
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黒崎 零 17歳
魔法系スキル:光Lv.1・火Lv.1・風Lv.1・雷Lv.1魔法
物理系スキル:聖光斬Lv.1
その他スキル:罠察知Lv.4・気配察知Lv.4・指揮Lv.4・心理学Lv.8
ユニークスキル:理想実現Lv.1
加護:女神の加護
称号:転移者・女神に気に入られし者
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日向 陽子 17歳
魔法系スキル:水Lv.1・風Lv.1・土Lv.1
物理系スキル:なし
その他スキル:成長促進Lv.3・植物鑑定Lv.4・品種改良Lv.3・器楽Lv.5
称号:転移者
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北条 咲 16歳
魔法系スキル:火Lv.1・風Lv.1・土Lv.1
物理系スキル:なし
その他スキル:暗器Lv.3・武具鑑定Lv.3・気配察知Lv.3・舞踏Lv.4
称号:転移者
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「え゛っ、お前のステータスヤベェな、ガチでチートかよ」
「いや、、、でもお前の闇属性も結構カッコイイんじゃないか?うん。邪神に好かれちゃってるし。」
「方や厨二病、方やガチのチートかよ。。。」
「とりあえず、明くんと零くんと私は兵役、陽子は生産みたいね。」
「咲の言う通りだな。てか、俺には『兵役を勧める』って紙も一緒に渡されたし。」
「陽子も貰ったよ〜?生産バージョンだけど。」
「うわぁ、零と陽子は貰ったのに俺はないぞ?」
「私も無いわ。というか、他に貰ってる人もほぼ居ないようね。」
そしてそのまま4人はそれぞれの適性にあっと登録用紙に名前を記入した。