その5
それは放課後の話だった。
「珍しく1人で歩いてる子がいると思ったら同じクラスのいつも寝てる子じゃないですか。」
「珍しく1人で歩いてる子がいると思ったら同じクラスのいつも本読んでる子じゃないですか。」
「一緒に帰ってあげたさは山々だけど、君の観察で忙しくてそれどころじゃ無いんですよね。」
「それは2人で帰ってるんじゃ。」
「1人で帰ってます。」
「僕も1人で帰ってる。」
「1人で帰ってる2人が並んで帰ってる。」
「お互い1人同士一緒に帰ろうか。」
「仕方ないなあ、一緒に帰ってあげようじゃないか。」
「わあ、嬉しいなあ。」
「気安く一緒に帰るんじゃない。」
「じゃあお互い1人で帰ろうか。」
「気安く1人で帰らせるんじゃない。」
「どっちだよ。」
初めての会話はこんな他愛の無い話から始まった。それからは一緒に帰ることや、教室で話すことも増えていった。
かつての彼女も小学生とは思えないほど容姿が整った子供だった。女子の集団のトップに君臨してもおかしくないほどだった。男子も密かに恋心を抱く物だって多かったはずだ。しかし彼女は容姿が整い過ぎていたばかりに周りが関わろうとしなかった。普通ならば大人になって行く過程で時間をかけて知っていく挫折や圧倒的な敗北感などのそう言う類のものを無意識の内に知らしめる存在だったからだ。故に彼女は孤独だった。そして目立った存在では無く、捻くれた性格、そして周りとの関わりが無かった為に人を寄せ付けない何かを醸し出していた自分も孤独だった。理由は違ったが、孤独な者同士引き合う何かがあったのかも知れない。周りからしてみれば何故二人が話をしているのかとか不思議なことばかりだったろう。僕たちとしても最初は話の通じる変わり者同士ぐらいにしか思っていなかった。